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Turn1~playerⅢ~

※今回は切り替えが多いです。

一人称が「僕」→夜弥、「俺」→東真です。


――――――――――――――彼は、思い返す。


…僕はあの時、二人を救った。…でもあれは本当に正しい決断だったのだろうか。


僕は…大変な過ちを犯してしまったのかもしれない。


だとしたら、やり直したい。

あの時に戻って。


“お前なら出来るよ”


誰かがそう言ってくれたから、僕は勇気が湧いてきたんだ。


僕は…その人となら頑張れる気がする。


でも、他人は傷つけたくない。僕は皆を守りたいんだ…!


彼は決意した、あの時の二人を“正しい方法”で救うと。



ううっ…びっくりしたぁ…


?Ⅲ「おいおい大丈夫か?」


誰かの手を借りて起き上がる。


夜弥「あっ、ありがとうございますぅ…」


?Ⅲ「気にするなよっ。俺はお前の味方なんだから、助けて当たり前だろ?(笑)」


この声に僕は聞き覚えがあった。


まさか…


夜弥「さっきの…!」


?Ⅲ「おぅ、さっきぶりだな。」


夜弥「どうしてここに…ここは何処…?」


?Ⅲはまるで僕が混乱してるのが面白い、というように見下ろしている。


?Ⅲ「ここは人生ゲーム内だ。お前はプレイヤー3なんだよ。」



プレイヤー3…

僕がゲームに入ってる…?


どういうこと?

次元を超えてるの?


夜弥「これって…普通の人生ゲームじゃ…ない…ですよね。」


?Ⅲは首を傾げながら答える。


?Ⅲ「当たり前だろぉ?これはお前達の未来がかかったゲームなんだぜ~?」


夜弥「…僕が勝ったら…どうなるのぉ…?」


?Ⅲ「あの四人は俺の部下になるんだ。…で、君は君の自由。一応何でも用意してあげるけどどーする?」


無邪気な笑顔を振り撒くこの人の頭には、角が生えていた。


この人、人間じゃないのかな…


?Ⅲ「それよりさぁ、君のこと何て呼べばいい?」


夜弥「普通に夜弥って呼んでください。」


鬼羅「じゃあ俺の事もキラって呼んでくれよっ」


夜弥「キラさん…」


鬼羅「さんなんていらねぇって!短い間かもしれねぇけど、仲良くやってこうな!」


悪い人ではないみたいだ…


でも待って、僕が勝って得するのは僕と鬼羅さんだけ。


皆は鬼羅さんの部下になることを望んでいるのだろうか?


いいや、望んでない筈だ。

僕は…勝つべきなの…?


夜弥「もし…僕が負けたら…どうなるの…?」


鬼羅「そんときはそんとき。勝った人たちが望む通り。」


東真くんが勝てば東真くんの願いが、来美さんが勝てば来美さんの願いが、禀さんが勝てば禀さんの願いが、叉玖埜さんが勝てば叉玖埜さんの願いが叶うって事だよね…


鬼羅「でもな、勝った人だけじゃなくてスポンサーも得するようになってんだ。

…だから、夜弥が勝てば俺も得する。」


夜弥「鬼羅さんは…何を望むの…?」


鬼羅「……そうだな…、俺は部下が増える事を望むかな。


…と言っても、もう充分いるんだけどな。


俺はこのゲームを楽しむ為に参加してるようなもんだからな。


俺は夜弥の為に力を貸すぜ?」


全ては僕の意思…って事?

僕は願いなんてない。

僕はこのままで大丈夫だから。


僕に意思なんてない。

僕は人形みたいなものだから。


他の人の願いが叶うなら、

僕は何も望まないよ…

それが、僕を傷つける行為であったとしても。


夜弥「辞退って…出来ますか?」


鬼羅「えっ、辞退?」


夜弥「僕は何も望みません…強いて言えば、他人の願いが叶うことを望みます。…だから、僕はこのゲームを辞退します。」


鬼羅「…それでこそ俺の見込んだ奴だぜ!」


満面の笑みで僕の肩を軽く叩く鬼羅さん。


彼も僕と同じ事を望んでいたのだろうか?


鬼羅「でもな、このゲームは辞退できないんだ。」


夜弥「えっ…」


鬼羅「それとな、確かに…他の人の願いが叶う事を願うのは良いことだ…けど、自分も大切にしなきゃ駄目だぞ。


自分はどうなってもいい。


なんて思っちゃ駄目だ。

もし、夜弥が居なくなったら夜弥はもう、人助けが出来ないんだぞ?」


そう…なんだけど…

僕は既に死んでいる訳で、もう人助けなんか…


鬼羅「本当は言っちゃいけないんだけどな、ある人が勝ったら夜弥、お前はもう一度…死ぬ前に戻るんだ。


やり直せるんだぞ?

お前が優しいのは分かってる。お前が死んだ理由だって…人助けのつもりだったんだろ?


生き返ってやり直したいとは思わないのか?」


!!


鬼羅さんの言葉が胸に刺さる。

…鬼羅さんは、僕がどうして死んだのか知ってるのだろうか?


首を絞められて死んだ……。

でも確かにあれはー…


夜弥「やり直せるなら…」


やり直したい。

彼を、彼女を、ちゃんとした方法で助けたい!


無力な僕にはあの時、犠牲になることしか出来なかった。


でも…今は。


違う方法で助ける事が出来る気がする。



夜弥「運に任せてみます。もし僕が勝ったら…それは、運命だと僕は受け入れます。


でも無理矢理勝とうとは思いません。犠牲を出したくないから…」


鬼羅「夜弥らしい判断だな。」


鬼羅さんは穏やかな表情をしていた。


鬼羅「じゃあ、進むとするか。おい、サイコロは持ってるよな?」


夜弥「さっき渡された奴ですよね…」


僕はそれをずっと握りしめていた。


手を開くと、サイコロをあまりに強く握っていたせいか、手に跡が付いていた。


…でもこれは、


僕の決意の強さを物語っている気がする。

これは今まで周りに合わせて…他人の為に何かをしていた僕が初めて自分の為に持った意志だった。



鬼羅「サイコロを振ってくれ。」


僕は鬼羅さんに促され、サイコロを振った。


サイコロに余り威力は無かったらしく、地面で一度跳ねた後はすぐに止まった。


確認してみると、どうやら3のようだ。


夜弥「3…みたいだよ?」


鬼羅「行くか。」


車に乗り、3マス先まで行く。すると、東真さんの姿が見えた。


東真「おっ!」


夜弥「あっ、東真くん…!」


鬼羅「…とマリ子だな。」


マリ子「ご無沙汰してます。」


徐々に近づく車。

それは予想を反していた。


東真「同じマ…」


「それ」は東真くんが話している途中に起きてしまった。


マリ子「東真さんっ!」


ガンッ!!


嫌な音が響く。


夜弥「東真くんっ!!」


僕は悲痛の叫びをあげていた。


車は「それ」が起こった後に停止した。


まるで「それ」が目的だったかのように。


鬼羅「おい!大丈夫か!?」


間違いなく、この車が…

「衝突」した。


本来なら、衝突するのは車だった筈だ。


でも東真くんは車に乗って居なかった。


だとしたら…!


夜弥「東真くんを轢いて…!?」


鬼羅「落ち着け、夜弥。」


夜弥「でも東真くんがっ…!」


鬼羅「東真を轢いてなんかいねぇよ。あれは金属音だっただろ。ガンッ…てな具合に。人間轢いてたらあんな音は出ないから安心しろ。」


夜弥「じゃあ…」


何を轢いたの…?

恐る恐る車の下を覗く。


夜弥「…!」


僕は、轢かれてしまったらしい機械…マリ子さんの部品を、発見してしまったー…


~~~~~~~~~~~~~~

マリ子が轢かれた…。

俺のナビゲーターがだ。


これからどうやっていけっていうんだ…!


何も知らない俺一人で、何が出来るっていうんだ…!


?「…ドウカシマシタカ?」



聞き覚えのある声の聞こえる方を向くと、そこには片腕の取れたマリ子が立っていたー…


~~~~~~~~~~~~~~


夜弥「大丈夫ですかっ…!」


僕はマリ子さんに駆け寄った。どうやら取れてしまったのは左腕らしい…


鬼羅「腕が壊れたせいで、マリ子に異変が起きたみたいだな。


まぁ、いいや。

しょうがないから俺が元通りにしてやるよ。」


~~~~~~~~~~~~~~


あの時、マリ子は俺の名前を呼んだ。


あれは「危ない」とマリ子が察知したからだろう。


マリ子が察知をしていなければ、俺は今頃…考えただけで悪寒がする。


マリ子が轢かれる前に言った言葉…それは


「貴方の事は私が…!」


守る、といいたかったんだろう。



変わり果てた姿でもマリ子は俺を守ろうとしている。


「どうかしましたか?」と最初に言ったのも、俺に心配を掛けまいとするマリ子の気持ちだ…



最初にマリ子と会った時には抱かなかった想いが込み上げてくる。


東真「マリ子…すぐに直してやるからな。」


俺はマリ子に聞こえないように呟き、飛んだ部品を集め始めた。


~~~~~~~~~~~~~~


東真くんが今どんな気持ちかは容易に想像出来たー…いや、分かった。


東真くんが、今にも泣きそうな表情をしていたから。


本当に申し訳ない。


僕も東真くんと同じように、部品を拾っていく。


少しでも早く、マリ子さんが戻れるように。


僕には彼女を助ける事は出来ない。


情けない事に、頼れるのは鬼羅さんだけ…。


鬼羅「部品集め終わったら言ってくれよ~」


鬼羅さんはどうして、そんなに冷静でいられるんだろう。


こんな現場を何回も見てきたから?…それ以上に悲惨な現場を目撃しているから…?


僕には分からない。

けど、一瞬…鬼羅さんが悲しげな顔をしたのを僕は見逃さなかった。


東真「これで全部だと思うぜ!」


夜弥「鬼羅さん…!お願いします…!」


鬼羅「おぅ、任せておけ。」


鬼羅さんは僕達が集めた部品に手をかざし、


「…無かった事に。」


…と呟いた。


その瞬間、部品は次々と宙を舞い、マリ子さんの腕のあった部分に収まっていった。



鬼羅「…こいつはロボットだから替えがきく。…だけど俺は、マリ子はマリ子であって欲しいと思うんだ。いくらロボットだからって命を粗末にしちゃいけないだろ?」


哀愁漂う瞳で語る鬼羅さんの前に、僕達は何の言葉も発せられなかった。


ただ、「命を粗末にしちゃいけない」という言葉が、僕に重くのし掛かった。


~~~~~~~~~~~~~~


マリ子「データ修復中…データ修復中…」



さっきまで人間のような態度をとっていたマリ子が…


機械が言葉を発するように、データ修復中…と繰り返す。


俺には、何だかそれが悲しく思えた。



一本角や夜弥が見守る中、マリ子は徐々に意識を取り戻していく。


マリ子「………ぁ。」


夜弥「マリ子さんっ…!」


東真「マリ子!」


鬼羅「大丈夫か?左腕は動くか確認してくれ。」


マリ子は大丈夫、と示す為に左腕を動かして見せた。


良かった、ちゃんと直ってるみたいだ。


東真「…名前知らねぇけど…ありがとな。」


鬼羅「壊したのはこっちだ。君が謝る必要はないだろ?東真くん。」


マリ子「私…何が…」


あくまで修復したデータは体や意識を戻す為のデータらしく、左腕が無いときの記憶は無いらしい。


俺は状況を詳しく話した。


マリ子「そういうことだったのですか。」


夜弥「ごめんなさい…僕が3を出したばっかりに…」


マリ子「私は大丈夫です。直りますから。それより、東真さんが無事で良かったです。」


にっこりと微笑むマリ子。


東真「ありがとな、マリ子…」


マリ子「そんなしょぼんとしないで下さいよ。ほら、もっと他にも話す事、あるでしょう?」


そう言われてみれば、同じマスに止まったのは、夜弥が初めてだ。


…話す事…か。


鬼羅「東真くん、どうした?」


!!


そうだ!一本角の名前を聞いてなかったな。


しかも、スポンサーと直接話が出来るのも初めてだ。


東真「…名前は何て?」


鬼羅「キラっていうんだ。宜しくな。」


俺は、夜弥が大人しめな性格だった故に、スポンサーが優しそうな人で安心した。


東真「スポンサーってどうやって決まるんだ?」


鬼羅「スポンサーが、味方する子を決めるんだ。」


東真「何で俺にはスポンサーが居ないんだ?」


鬼羅「“人間代表”だからさ。」


人間…代表…?


鬼羅「だから君が勝ったらまた人間になるんだろ?」


俺は前にマリ子が言っていた事を思い出した。


転生して悪魔…とかなんとかのやつだ。


…ということは、来美は悪魔代表って事になるのか!?


東真「じゃあ夜弥は…」


鬼羅「妖怪代表、だよ。」


夜弥「妖怪代表…?そんな話、初めてだよ?」


鬼羅「まぁ、一応妖怪代表ってなってるけど俺の場合はあまり関係ないからな。


ちなみに東真。君は神と悪魔と天使と妖怪を敵に回してるんだ。気をつけないと命を落とすぞ。」


東真「つまり、神と悪魔と天使と妖怪と俺…人間で戦ってるようなものなのか。」


鬼羅「普段なら、冥界の王が裁きを下すんだ…でもな、たまに裁けないやつが出てくるんだよ。そいつらを集めてゲームで…つまり運で…来世を決めるんだ。」


裁けない…?どういうことだ?


夜弥「地獄に落とすことも、天に昇らすことも出来ないの?」


鬼羅「あぁ。主に自殺した奴とかな。」


自殺…

確か禀と叉玖埜はそうだったな。


鬼羅「死んだのは本人が悪い訳じゃない。だが、死なせたのは自分。


良い奴だとも悪い奴だとも言えないだろ?


だからどっちにいくか決まらないんだ。」


悪とも善とも言えない奴が集まったゲーム…そういう事なら、俺も真ん中って事か。


鬼羅「っと!長話もこれ位にしておくか。」


夜弥「?」


鬼羅「次のプレイヤーが待ちわびてるだろうしな。


夜弥、ターンを終了するぞ?いいな?」


夜弥「うん。」


夜弥…いい奴と組めて良かったな。


次の番の奴は…叉玖埜か。


確か、

神はまだスポンサーをしていなかったな。


って事は、叉玖埜のバックには神が居るって事か。


これは手強いな…

プレイヤーⅤ 東真


ゴールまで

“197マス”


プレイヤーⅠ 来美


ゴールまで

“195マス”


プレイヤーⅡ 禀


ゴールまで

“196マス”


プレイヤーⅢ 夜弥


ゴールまで

“197マス”






彼は、力は弱いですが心は強いみたいですね。


自らを犠牲にしてでも、他人を救いたいという願い。


しかしそれは結果的に、自分という一つの命を捨てるようなものです。


それでは、一人を犠牲にするのと変わりありません。


彼は鬼羅によってそれと過去の過ちに気付きました。


その過ちを修正すべく、周りに被害が及ばない程度で叶えようと考えたのです。


心優しき彼は、一体どこまで駒を進められるのでしょうか。


このゲームが進んだ時、何かを「犠牲」にしなければいけない事に気付いていない彼がー…。


…さて、次はプレイヤーⅣ。

最後のプレイヤーです。


彼はどんな事を思っているのでしょうか。




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