Turn3~来美~
turnの表示が東真から私に切り替わる。それは私のturnだという事を示していた。私の横にいるタリスは相変わらずニヤニヤした気色悪い表情で私を見ている。
来美「何よ、その顔」
タリス「いや?お前が悩んでる顔が面白いなんて思ってねぇよ?」
それが嘘だという事は誰にでも分かるはず。コイツは嘘を付く時やけにニヤニヤするから。どうやら私はこの世界に来てから観察力が上がったようだわ。
タリス「早くサイコロ振れよ」
来美「分かってるわよ」
でも分からないのは、何でコイツが私を選んだのかという事。嫌な事を考えてないと良いのだけれど。私はそんな事を考えながらサイコロを回した。
――私、サイコロみたい……。
そんな考えがふと頭を過った。何でそう思ったのかは分からないのだけれど一瞬、はっきりとそう思ったの。
車の底にある生地にぶつかり、一度跳ねてからサイコロは止まった。車の床の生地が原因ね。
サイコロが指し示すのは、5。さっきは東真が偶数だったから、私が出した奇数は違う道を進むということを意味していた。
タリス「お前、さっき余計な事考えたろ」
タリスが嫌そうな顔で私の方をミラー越しに見ていた。私もミラーを見ながら応対する。
来美「そう?私は何か考えてる気は無かったのだけれど」
タリスは、あぁそうかいと言いそっぽを向いた。機嫌を損ねたようだったけれど、私には関係ないと、またサイコロに手を伸ばす。次は進むマスの数を決めるのよね……。
サイコロを投げ、止まったところで確認する。次にサイコロが示した数字は3だった。
来美「3、半分ね……」
中途半端。私も、このサイコロが示す数字も……タリスも。
タリスが運転する車は、ギルドと呼ばれる建物の中に入って行く。私は車が進むごとに見える風景を見ながら……なるべくタリスの方を見ないようにした。
タリスが止まったのは、東真と同じマス、ギルド内に沢山あるカウンターの内の一つ。さっき青いカウンターで何か話していた東真達はすぐ隣にいるみたい。
来美「私も東真と同じ説明を受けるのかしら?」
タリス「いや、違う。アイツとお前は違う職種のルートに進んだんだからな。」
偉そうに言うタリスに苛立ちを覚える。何よ、少し間違えたくらいで。
タリスは、不機嫌になった私を東真とは反対のカウンターに誘導した。
タリス「お前は、こっちだ」
赤いカウンターには、良く見る受付嬢のような人が立っていて、笑顔でこっちを見ている。
来美「……それで?ここは何の職業になれるマスなのよ」
タリス「それは受付嬢に聞け」
受付嬢「はい。では説明させて頂きます」
まるで機械のような反応を示す受付嬢に、少し恐怖を抱く。それをタリスは感じ取ったらしく、ニヤニヤした顔で私を見つめている。
……何よ、気持ち悪い!
心で思えばそれは自然とタリスに通じる。それが分かっているからこそ、敢えて言わない。
受付嬢「ここは、OLのマスになっています」
……あぁ、だからそんなに受付嬢っぽいのね。納得だわ。
タリス「…で?なるのか?ならないのか?」
そんなの決まってるわ。
OLなんてまだまだ安月給な職業。そんな職業やりたくないもの。
来美「勿論、辞退よ」
タリス「言うと思ったぜ。後で泣いてもしらないからな」
来美「例え嫌な状況になってもタリスの前では絶対に泣かないわよ」
タリス「あぁそうかい。……さてと!じゃあ俺達のターンは終わりだな」
即刻辞退された事で、ショックとも怒ってるとも見える顔をしている受付嬢さんを見て、何だか可笑しくなる。
OLさんは、せいぜい私のような運に味方された人を羨むと良いんだわ。そんな思いが込み上げてきた。
我ながら酷い人と思うけれど、何故だか楽しい。人を見下すという事が。
来美「次は稟の番ね」
稟はどんな姿を見せてくれるかしら。ううん。稟だけじゃない。他のプレイヤーがどんな滑稽な姿を見せてくれるのか。それが楽しみで仕方ないの。
……私ってばSね。
タリス「元からだろ」
来美「それもそうね」
人を踏み越えていく準備は出来てる。穢れるのも怖くないわ。覚悟もある。
他のプレイヤーには私と同じ覚悟があるのかしらね?
プレイヤーⅤ 東真
ゴールまで
“190マス”
プレイヤーⅠ 来美
ゴールまで
“190マス”
プレイヤーⅡ 禀
ゴールまで
“193マス”
プレイヤーⅢ 夜弥
ゴールまで
“195マス”
プレイヤーⅣ 叉玖埜
ゴールまで
“193マス”
OLという職業を即座に断った来美。それを予想していたタリス。
お互いを嫌っているように見えても何だかんだで相性がいいみたいですね。
さて次はプレイヤーⅢ、稟の番です。