~time~
…薄暗い部屋の中にあるモニターに、キャラメの姿が映し出された。
キャラメ「timeの申請、でショ!夜は嫌いでショ。」
?「…やっとtimeの申請が来たか…分かった、timeを開始しよう。」
キャラメ「期間は明日の朝まででショ。」
?「あぁ、いつもの時間だろう。」
キャラメ「じゃあ宜しく頼むでショ。」
モニターからキャラメの姿が見えなくなると、?は豪華な椅子に座り、“仕事”を始めた。
?のいる部屋は書斎のようで、書類や資料が乗った机や、本棚がある。
そして、モニターとマイク。
?はマイクを使い、timeの開始を宣言した。
仕事が終わり、またモニターに目を向けた。
そう、?はゲームの進行をサポートする者であり、このゲームの審判なのだ。
ありとあらゆるデータを管理し、イカサマがないか、常にチェックを怠らない。
timeで自由時間を開始するプレイヤー達を見て、?は溜め息を漏らした。
…今回の奴らは頭の回転が弱いようで、なかなかゲームが進まない。
観戦している我としては、淡々とゲームを進めて欲しいのだがな。
?「……お前ならどうする?」
?は自分の傍にいた人物に問いかける。
?2「………」
それを聞いた?2は小声で、?に耳打ちした。
……。
成程、それもいいかもしれないな…。
?はもう一度モニターに目をやり、にやりと笑った…
叉玖埜がターンを終えた途端、急にアナウンスらしきものが入った。
?「キャラメの申請により今から、休憩…“time”を開始する。
時間は、今から明日の朝…八時までだ。
その時間内は何をしていても何処に居ても構わないが、時間までには元のマスに戻るように。戻らなかった者にはペナルティを課すぞ。
では一時の休憩を楽しむがいい…」
急に入るアナウンスに戸惑いを隠せない。
何なんだ?この制度は。
…というか、このアナウンス…声に聞き覚えが無いぞ?
マリ子「timeになったみたいですね。…あ、東真さんには話してませんでしたね。timeっていうのは、簡単に説明すると自由時間です。…さ、何処か行きましょうよ。」
…自由、か…
そういえば、お腹すいたな…。
こっちに来てから何も食べてないしな、何か食べ物を買うとするか。
車がある位だから、食べ物も普通に売ってるだろう。
東真「マリ子、ここら辺で何か食べ物を買える所は無いか?」
マリ子「ありますよ?」
禀「東真さん、私もついて行っていいですか?」
東真「あぁいいぜ。」
叉玖埜「…………。」
来美「タリス!この辺に高級料理店ってないかしら?」
タリス「あるぜ?行くか?」
来美「勿論よ。」
何やら来美達は高級料理を食べに行くらしい。
来美がタリスを引き連れる形になっているようだ。
タリス「お嬢様気取りってか!」
来美「いいじゃない、それ位…」
タリス「まぁ、いいけどな。」
タリスがニヤリと笑う。
来美は気にしてないようだが、俺は少しその笑顔が引っ掛かった。
何だ、こいつSと見せ掛けてMなのか?
キャラメ「禀、私は貴女についていくでショ。」
禀「ありがとう、キャラメさん。」
キャラメ「キャラメで良いでショ。」
何とも和やかな会話。
チームプレーもバッチリみたいだ。
叉玖埜「ゼリアム…」
ゼリアム「何だ、叉玖埜よ。」
叉玖埜「あのさ、ルールについて詳しく知りたいんだけど。」
ゼリアム「叉玖埜が望むなら仕方ない。なら、向こうの木陰で話すとしよう。」
叉玖埜「あそこまで車運転するの面倒…」
ゼリアム「全く…」
そうゼリアムが呟いた瞬間だった。
空から大きな手が出てきて、叉玖埜達の乗った車を持ち…その車を木の側まで持っていった。
まさかあれがゼリアム本体の手なのか?
本体がこっちの世界に入り込む時は、俺らの何十倍もの大きさの手等が見えるんだな。
~~~~~~~~~~~~~~
叉玖埜「…いい眺め。」
ふぅん、こんな風にこっちの世界に影響してくるんだ。
ちゃんとこっちの世界に影響をもたらした部分は見えるみたいだね。
…じゃあ、イカサマは出来ない訳か。
ゼリアム「…叉玖埜よ、何事も面倒などと言うな。」
叉玖埜「でも今回、あそこに皆が居て困るのはゼリアム、君でしょ?だから態々移動させた。違う?」
ゼリアム「………。」
図星だな、これは。
ゼリアム「そうだ。確かにあそこに皆が居ては困る。ルールを細かな所まで知られたら厄介だからな。」
成程。
てことはルールが肝心って事か。
叉玖埜「じゃあ皆から離れたし、早速話を聞かせてもらおうか。」
~~~~~~~~~~~~~~
鬼羅「夜弥、自由時間だぜ。何をする?」
夜弥「うーんとぉ…」
鬼羅「向こうでは皆、何か食べに行くみたいだぞ?」
夜弥「じゃあ僕は東真くんについていくよ。」
鬼羅「じゃあ、車で近くまで移動するぞ。」
夜弥「うん。」
そう言って鬼羅さんは車を運転し始める。
僕は運転出来ないから、鬼羅さんに任せきり…情けないなぁ。
今度のtimeの時、教えてもらおうかなぁ。
車は徐々に進んでいく。鬼羅さんは安全運転を心がけているらしく、スピードは遅い方。
鬼羅「おーい!そこの四人ー!」
東真「ん?」
マリ子「あ、鬼羅さん!」
禀「夜弥さん、今晩わ。」
車を皆の近くまで寄せる。
禀さん達の止めた車の隣にとめた。
禀「丁度良かった!今、皆でご飯を食べに行こうと…」
夜弥「僕も、一緒に行きたくて来たんだぁっ。」
東真「じゃあ行くか。」
マリ子「今日、歩いて疲れましたし、私達も乗せてもらいましょうよ。」
鬼羅「全然いいぜ。乗るか?」
東真「じゃあお言葉に甘えて。」
キャラメ「私達の車、乗るでショ?」
マリ子「じゃあ、私は鬼羅さんの方に乗ります。東真さんはキャラメさんの方に。」
東真「おぅ、了解。」
キャラメ「じゃあ乗るでショ!」
僕達の乗っている車には、マリ子さんが来るみたいだ。
マリ子さんは、僕の座っている助手席の後ろに座った。
マリ子「それにしても、夜弥さんと鬼羅さん、仲が良いですね。運転席と助手席に座るなんて。」
鬼羅「そうだな。マリ子達は車乗ってねぇし、来美は後ろに座ってタリスに運転してもらってるし、叉玖埜はその逆だもんな。」
夜弥「僕達と禀さんの所しか助手席に座って無いんだ…。」
マリ子「…はぁ、私達も乗れば良かったかなぁ。」
鬼羅「昔の事、引きずってんだろ。きっと。」
マリ子「そうかもしれませんね…」
昔…?
このゲームをやった人は僕達以外にも居たんだ。
その時に何かが…?
マリ子「車はどうも好きになれないんです。」
鬼羅「そうだろうな。」
夜弥「………。」
僕には話の展開が分からず、ただ聞くだけしか出来ない。
本当は、ちゃんと話を聞いて理解したいけど…マリ子さんの心の傷に触れたらいけないしなぁ…
今回は会話を聞くだけにしておこう。
鬼羅「昔話はこれくらいにしようぜ。夜弥が困った顔してるしな。」
マリ子「すみません。重い内容で…」
夜弥「僕、別に困った顔なんて…」
してる…かも。
夜弥「……でも、マリ子さんが謝る必要は無いと…僕は…思います。」
マリ子「…優しい人ですね。夜弥さんは。」
マリ子さんに言われ、何だか恥ずかしくなる。
僕が偉そうに言える立場じゃなかったのに、何か偉そうに言っちゃったなぁ…。
鬼羅さんが話をしながら車を進めて行く。
後ろにキャラメさんの運転している車が続く。
夜弥「店に着くまで後どれくらい掛かるのぉ?」
鬼羅「30分位か。ちゃんとした店に入りたいしな。」
ちゃんとした…って…
ま、まさかちゃんとしてない店もあるのぉ…!?
~~~~~~~~~~~~~~
車に乗ってるのは俺とキャラメと禀。
男は俺一人じゃんか。
何を話せば良いんだ…?
思ってみれば、こっちの世界に来てから殆どマリ子以外と話してないじゃん!どどど、どうすればいいんだ!?
禀「そういえば、こうやって会話する機会ってありませんでしたね…。」
東真「あぁ、そうだな。」
とりあえず話題を振ってくれたから一安心。
禀「…東真さんって、将来の夢とかあるんですか?」
…将来の…夢?
東真「あんま将来の事考えた事ねぇけど、普通に大人になって、お金に困らない程度に仕事頑張って、普通にー…」
キャラメ「その、“普通”はかなり難しいと思うでショ。」
運転をしながら会話に入るキャラメ。運転しながら話すなんて慣れてるんだな。
東真「確かに難しいな。でもまぁ願望だから。」
禀「そうなんですか…」
東真「禀は?」
禀「!!」
あ…いきなり名前で呼ぶのはマズかったかな?
キャラメ「パティシエが夢だったと聞いたでショ。」
東真「へぇ…似合うんじやないか?」
禀「え…」
~~~~~~~~~~~~~~
今、東真さんが言った「言葉」に過剰な反応を見せてしまった私。
名前で呼ばれたからじゃない。「夢」…そう、夢っていう言葉に反応を示したの。
私は確かに…
「夢」
があった。
パティシエになりたかった。
その為に沢山お菓子作ったりして勉強した。
だけど。
いつからかその「夢」は完全に消えた。
どうして消えちゃったんだっけ?
あ、あの時だ…
「約束」を破ったあの時に夢を追いかける気力をなくしちゃったんだ。
あんな光景を見ちゃったから…
はい、今回は誰も進んでいないので、マスの表記はしませんよw
あの子が過去にした約束とは?
夢を諦めた理由とは?
それは次回明かされます!
さて、?と?2も出てきましたが、その正体とは?
こちらはもう少し先になりそうですね。
では、お楽しみに。