虎の衣を借る狐
ある森に、大きくて、ずるがしこい狐がおりました。
森の動物たちは狐のことが大嫌いでした。
しかし、いつも雌の虎が狐の後ろを歩いているので、悪口は言えませんでした。
森の動物たちは、どうして虎が狐について行っているのだろうと思っていましたが、やっぱり虎は怖いようで、黙っていました。
また、狐は、森の動物たちが虎に怖がっているのを、自分を怖がっていると勘違いしているようで、いつも威張り散らしておりました。
“いつか、あの狐をこらしめてやりたい”
森の動物たちみんな、そう思っていました。
ある日、森で一番物知りな梟が、森の動物たちを集めて、言いました。
“狐の後ろに着いていっていた虎が、人間に殺された”
森の動物たちは大喜びしました。
これで、あの狐をこらしめることができる。
みんな、狐がこの森にいるのが嫌なのです。
狐を追い出す計画はすざましい速度で進んでいきました。
決行は明日です。
みんな、緊張と興奮で震えていました。
翌日、いつものように狐が威張りながら道を歩いていました。
しかし、誰も道をあけません。
狐は不思議に思って、近くの兎に話を聞きました。
“今日は誰も跪かないし、誰も道を譲らないんだね”
“そりゃあそうさ、君は今日この森を追い出されるのだから”
兎が言うと、狐を取り囲むようにして森の動物たちが現れました。
そして次々に狐に罵声を浴びせていきます。
“威張るのならそれ相応の実力を持て”
“虎の力をまるで自分の力のようにふるまうな”
“出ていけ、森が汚れる”
森の動物たちは出ていかないなら無理やり出ていかせる気のようで、じりじりと歩みよっていきます。
すると狐が折れたのか、肩をすくめながら言いました。
“君たちの気持ちは分かったよ”
“じゃあ、はやく出ていけ”
“ああ、違う違う”
“? どういうことだ?”
狐は、頭のてっぺんをつかむと、おもむろに引っ張り上げました。
ずるり、と毛皮が脱げ、そこにいたのは、
“つまり、それ相応の実力を持っていたらいい訳だろう?”
狐と、全く同じ大きさの虎でした。
「虎の衣を借る狐 裏話」
その虎は非常に賢い存在でした。
その為、人間が自分たちを恐れていることに気がつきました。
そして、その恐れ故、いずれ自分が殺されると知ってしまいました。
賢い虎は考えました。
“どうしたら殺されないか?”
賢い虎は必死で考えました。
そして、人間は、弱い動物はあまり狩らないことに気がつきました。
もし狩るとしても、舐めてかかることも。
“遊び半分で殺そうとする程度ならなんとか抵抗できる筈”
そう考え、虎は弱い動物を探しにいきました。
幸い、体格は小さかったので、すぐに自分と同じ大きさの狐を見つけました。
虎はその狐を殺し、その毛皮を着込みました。
“さあ、これで安心だ”
そうして、賢い虎改め狐は、ある森へと移住しました。
その森には一頭の雌虎がいました。
雌虎は狐を虎だとすぐに見破りました。
“あら、格好いいわね”
“ありがとう、それじゃあ”
虎は雌虎の近くにいて、虎だとばれては大変、と、逃げました。
その行動に疑問を持った雌虎は、その狐の後ろについて、様子を探ろうとしました。
そうして、雌虎は狐の後ろについて歩くようになったのです。
※性格は元々です、また、虎は毛皮を取った後着なおしました。
※大きな狐→後ろをついていっている虎より一回り小さいぐらい(賢い虎と同じ)と考えください。