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悪役令嬢レティシア・バセットは死んでいる  作者: デスゲームお嬢様
1 悪役令嬢とガラスの温室
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変り者のエリ1

 庶民の子が王立学園に入学できる。

 それはとても名誉なことである。

 一方で、それは身分における格差をまざまざと見せつけられることになる。

 庶民であれば、一生かかっても手に入れられないような宝石を貴族の人々はまるでおもちゃみたいに無造作に置く。

 制服だってそうだ。

 こんな上等な衣服など身に着けたことないと私が感動した制服も、貴族の方々からは地味だとか窮屈で面白みに欠けるという評価だった。


 そして国内で最高の教育を与えるという学園で学ぶ貴族の子弟たちは皆、学ぶことよりも毎日を楽しく生きることの方に心血を注いでいた。


 なんということだろう。


 私はショックを受けた。

 神童と呼ばれた私は幼い頃からこの学園に通うのが夢だったというのに。

 最高の教師、最高の設備、最高の環境が整ったこの学園で学べば将来、人々の生活を幸せにできるようになるとそう信じていたというのに。

 この学園に貴族の子弟だからとして入学できる人々は、学問や研究なんかにはほとんど興味をもたず、貴族の子弟の交流の場になっていたのだ。


 この学園に庶民が入るのはとても難しいというのに。貴族に生まれたというだけで、彼らがただ遊んで暮らしているとうのは許せなかった。

 私は心の中で彼らを軽蔑していた。


 そんなわけで、私は入学からほどなくして友達ゼロのひとりぼっちとなった。


 もともと、庶民だ。知り合いもいないこの環境。学ぶためにきているのだから期待なんてしていなかった。

 だけれど、入学からしばらくたったある日、同じく庶民としてこの学園に入学を許された上級生には「馬鹿なやつ」と言われた。

 それはこちらをさげすむでもなく、からかうわけでもなく、ただ淡々とした彼の感想だったらしい。

 この学園に入学して、最高の環境で学ぶと同時にこの機会を利用して貴族様とお近づきになれば将来の職にも困らないというのだ。

 ただ、研究が好きなだけだとしてもこの場でコネクションを作っておけば、将来王立期間への推薦やパトロンになってもらえる可能性が広がる。

 それなのにも関わらず、周囲と仲良くなろうとしなかた私は「馬鹿なやつ」らしい。


 でも、私はそんな目的で誰かと仲良くなるなんてできなった。

 それに今までだって、神童と言われ大人たちから感心されることはあっても友達なんていなかった。

 今更、だれかと仲良くする方法なんて分からない。


 私は、「馬鹿なやつ」のまま学園で勉強をすることしかできなかった。


 初めての学期末のテストを迎えることになると、にわかに学園は騒がしくなった。

 テストが終わったあとのバカンスやパーティーの計画。一応、テストだということも気にして図書館にくる生徒も増える。


 いままで図書館に興味をもつ人間などいなかったのに。

 それに今まで遊んでいたくせに、直前に対策を立てて何とかしようなんてもう遅い。学習は日々の積み重ねが大事なのだ。


 図書館や自習室のにぎやかさは日に日に増していった。


 私はそのテストに関する緊張感とテスト後のお楽しみにたいするわくわく感のまざった空気が苦手で、とうとう図書館から飛び出した。


 しずかに本を読める場所に行きたかった。


 この広大な敷地を誇る学園ならばどこかに私が一人になれる場所があるに違いない。

 私はそう思って今まで寮の自分の部屋と教室、図書館しかなかった行動範囲を広げることにした。


 そして道に迷った。


 入学当初、校内の見取り図も配られていたのでそれを持っていれば大丈夫だろうと思っていた。

 だけれど、実際は学園の敷地は見取り図よりも広大であると同時に、見取り図にない建物もあった。

 どうやら、生徒が勝手に学園の土地を一時的に借りて作った建物がいくつもあった。おげで本来とおりぬけられる広場や庭が行きどまりで、学園はまるで迷路のようになっていた。


 日が暮れて暗くなってくるころには自分が一体どこにいるのか分からなくなっていた。


 きっと、だれも私を助けに来てくれない。

 なんせ、寮の部屋も通常なら二人で一部屋なところ、庶民の場合は特に学力が高い人間を特別に入学させることから一人部屋を与えられていた。おそらくそれは建前で、貴族のルームメイトになって無駄な劣等感を抱かないようにするとか、無用なトラブル(窃盗の容疑とか)をさけるという狙いもあったのだと思う。


 それに私は寮の夕食の席にも顔をほとんど出さない。

 放課後の時間の大半は図書館で勉強をしたり本を読んで過ごし、夕食は部屋に持ち込んで食べていた。

 だから、私が今日、部屋に帰らなくてもいつもどおり図書館にいるのだろうと思われて誰も探しに来てなどくれない。


 やはり私は本当に「馬鹿なやつ」だったみたいだ。


 そのうえ、方向音痴でもあった。

 気が付いたときは、学園の敷地内にいるはずなのに木々に囲まれた森の中にいたのだ。

 真っ暗な森のなか時々光るのは獣の目だろうか。私が疲れて歩けなくなるのをねらっているのだろう。

 遠くの方で不気味な鳥の鳴き声がした。


 怖い。


 私は小さな子供のようにその場に座り込み泣き出してしまいたかった。

 だけれど、それではどうにもならないことが頭で分かっている。

 子供のように感情を吐き出せたらどんなにらくだったろう。

 私の中で、不安や後悔、恐怖が渦になって上から下までめぐりだす。

 苦しくて陸の上なのに溺れそうな気分だった。

 素直に感情を出せたらきっともっと楽になるし、何か名案も浮かんだかもしれない。


 でも、恐怖に支配された私のできることは、ただ止まらずに歩き続けることだった。


 そして、救いの光はあるとき突然あらわれた。

 森の中に突然、ガラス張りの温室が現れたのだ。

 ガラスでできた建物なんてみたことないから、それはまるでおとぎ話の中にでてくる妖精が住んでいる水晶かと思ったくらい美しかった。

 水晶のような建物の中には、色とりどりの花が咲き乱れていた。

 さっきまで真っ暗だった森のなかに突然数々の色と光があふれだす。


 私はその光景に思わず涙がこぼれた。


 安心したのかもしれない。

 温室の中に故郷でも咲いている白い花があったから。

 ずっと、孤独で怖かったのだ。そう、森のようなこの場をさまようずっと前から。学園に入学してから。

 私はずっと歩き続けることしかできていなかった。

 止まらずにどこにいくかも分からない道を歩き続ける。

 どんなに孤独で苦しく、乾こうとも。


「あなたは誰?」


 そう声をかけて振り向くと、そこには見たことたこともないくらい綺麗な少女がいた。

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