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悪役令嬢レティシア・バセットは死んでいる  作者: デスゲームお嬢様
7 悪役令嬢は占いがお好き
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悪役令嬢は占いがお好き4

 聖天使レティの占い。

 それは、毎週水曜と木曜日の間に行われる。

 悲しみいっぱいの子供が遠くに行く。

 マザーグースの詩を参照するとそんな意味になりそうだ。

 占いに頼るのはきっと悲しいみでいっぱいでどこか遠くに行きたい人間なのだろう。


 気持ちが分からないわけではないが、占いに頼るのは愚かな人間だというアーノルドの考えは変わらない。


 そして、人気は人気を呼ぶ。

 多くの生徒がそのレティの占いを受けること自体が難しい中でその集まりに正体されることが一つのステータスになるのだ。

 普段から立場が微妙な貴族の子弟ならば、きっとそのステータスだけで日ごろの鬱憤を晴らすものになるのだろう。


 門限も過ぎた真夜中に選ばれた生徒たちが集まったのは今は使われていない教室だった。

 紫色の天鵞絨のカーテンで壁は隠され、水晶や怪しげな道具がならぶその空間は確かにエンターテイメントとしてはなかなかのものになっている。

 子供だましと怪しげな雰囲気がより、その空間を神秘的に作り上げていた。

 まさかここまで怪しげなものが子供だましなわけがないと、逆に説得されてしまうような感覚に陥るのだ。


 アーノルドはこの空間に相応しくいつもと違う服装をしていた。

 目の大きさが変わって見えるくらい分厚い眼鏡をかけ、洋服も普段来ているものとは違うサイズのあわないものを着ていた。

 王太子の側近として動くために、変装用の服はたくさん用意していた。

 王太子のお忍びに付き合わされることもあるので変装は欠かせない。

 わざと肌の色の青ざめて見えるように、肌の下に緑色の粉をはたいた。

 今のアーノルドはおびえた田舎貴族の子弟そのものだった。

 ひどく顔色がわるく、唇がわずかに震わせていた。

 田舎では貴族として不自由なく生活していたのに、王都の学園に入学して自分の生活が貴族としては下級の部類にはいることに気づいてしまった。下手に学園に入学しなければなにものとも比べないため幸せでいられたはずなのに。そんな、不幸な田舎貴族にアーノルドは変装していた。


『いいですか、アーノルド。誰かを演じるときは、ちゃんとその人間として生きなければなりません。ただ表面の情報だけをなぞるのではなく、その人間がどんな風に考え過ごすかまで再現しないと、あなたが本物でないことは相手がどんなに無知であってもばれてしまいますよ』


 姉のレティシアが昔言った言葉を思い出す。ちなみに、姉がこう宣ったのは、彼女の思いつきでクリスマスに家族で出し物をするときのことだった。

 王太子の側近として、変装したときではない。

 ただ、小さな子供がクリスマスの夕べに家族に披露するための劇で姉のレティシアはそんなことを小さな弟たちに教えたのだ。

 役を生きるために、アーノルドは雪の中で凍えそうになったあとに暖炉の前に連れていかれたり。貧しい少年がどんな気持ちでごちそうを食べるのか知るために食事を制限するなど少々無茶なことをすることになった。

 別にそれらは姉であるレティシアに強要されたわけではない。

 彼女の言葉を聞いて、それの実現のため必要だとアーノルド自らが考えたどりついた方法だった。

 まあ、こういってしまってはなんだが、アーノルド・バセットがレティシア・バセットの弟であることが間違いないことを示すエピソードだった。

 つまり、姉弟して一流を目指すあまり普通の人間であれば無茶な行動をしがちなのである。


「大丈夫?」


 アーノルドが震えていると声をかけてきた人間がいた。

 アーノルドはびくりっと全身で驚く。

 本当に驚いていた。

 それはアーノルドが油断していたわけではなく、田舎貴族になりきっていたためだ。自分みたいな田舎者に優しい言葉をかけてくれる生徒なんてこの学園にいないと思い込んでいたから。

 ふいのやさしさが心にしみた。


「う、うん。ちょっと気分が悪くて……はじめてなんだ」


 アーノルドが気まずそうに答える。


「大丈夫。きっとレティ様にあったら気分がよくなるよ。最初はみんなそんなものさ」

「そうだといいけど」


 アーノルドはおびえたように返事をしたあと、一瞬だけ素に戻る。姉れあるレティシアに会うことができたなら……きっと気分もずっと良くなるし、自分の人生にはきっと二度と間違いが起こることなどなくなるだろう。

 姉のレティシアに会いたかった。

 それはレティシアが死んでからずっとアーノルドが願い求めてきたことだ。

 そして、アーノルドは誰よりもそれがかなわないことを知っていた。


 時刻が進み日付が変わろうとした瞬間、部屋の灯が一瞬で消えた。

 風もないのに、いくつもの灯がいっせいに消えて、その部屋は暗闇につつまれた。

 不安に思うことばやこれから起こることに期待する息遣い、暗闇のせいで鋭くなった嗅覚によりさっきまで感じなかった香りを感じるようになった。


「……みなさん、ようこそいらっしゃいました。あなた方は選ばれた特別な生徒です」


 その声はしわがれていた。女のものであるが、姉のレティシアのものとは全くことなるそれにアーノルドは分かってはいたけれど落胆した。

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