悪役令嬢は占いがお好き3
「つまり、学園内で占いなど風紀を乱す商売を行っている生徒がいるということか」
アーノルドが二人の女子生徒から聞き出した情報を王太子に話すと、王太子は困ったような顔をした。
別にそんな連中なんて放っておけばいいのに。だまされたもなにも、もとからそんな保障もないものに対して大金をつぎ込むのは愚かなことだ。貴族であれば、この先うまい話しにみせかけた詐欺にいくつもであうことになるだろう。それが学生のうちにあるていど安全な環境で身をもって体験できたのだから勉強代となるはずだ。アーノルドはいちいちそんな人間にかまっていられないし、姉のレティシアが全くかかわっていないというのならばもうこの件から手を引いてしまいたかった。
だけれど、幼馴染の王太子はその情報だけでは満足しなかったらしい。
王太子は昔からおせっかいで、お人好しなところがある。
「まあ、占いなんてくだらないものに現を抜かす生徒のことです。放っておいても別なトラブルにぶつかったはずです」
できるだけ、穏便に今回の問題にかかわりたくない。
アーノルドは王太子の関心をこの件からそらせて、必要においじて姉の悪口をいう連中の口をふさぎたいと思っていた。
「占いに頼りたいくらいつらい思いをしている生徒がいるということだろう?」
アーノルドは王太子の少し悲しそうな視線に気づいた。
この目にいつも負けるのだ。
すべてを憂う、王族の純粋なまなざし。
それはアーノルドに限らない。おそらくバセット家全員に言えるだろう。
王族のこの悲しそうな瞳をみるといてもたってもいれなくなる。
その憂いを晴らすためにさまざまなことを解決せずにはいられない。
それはおそらく、バセット家の血のようなものだろう。
王族の憂いを晴らすために全力をつくさずにはいられない……結局のところ、バセット家もお人よしなのであった。
「あー、もう。分かりましたよ。我が姉君レティシアの名をかたっているやつが粗悪な宝石をうっているという噂もありますし。調べりゃいいんでしょ。調べますよ」
「そうか、頼んだぞ。アーノルド」
王太子はそういうと、花がほころぶように笑った。
この人はこういうところがずるい。
姉のレティシアには幼い頃から、この王太子以外にも結婚を申し込む声があった。
それは、この国よりももっと大きな国の王からも望まれていたのだ。
困った父親はとうとう自らが判断するのをやめ、すべてをレティシアにゆだねた。
まだ年端もゆかない少女に自分の人生を決めることになる結婚相手を選ばせるのはあまりにも無謀だと思うが、姉のレティシアは自らこの王太子を選んだのだ。
別に自分の生まれた国だとかそういうことはレティシアには関係なかったともう。現にレティシアは婚約を申し込んだ人間すべての釣書に目を通し、そのうち何人かとは実際に会って話をした。
レティシアにあった人々はその聡明さに舌を巻いたらしい。
だが、実際にレティシアが婚約者として選んだのは王太子だったと両親から聞いている。
だけれど、世間にはレティシア自らが婚約者を選んだということは伏せられている。
王太子は少し頼りないところもあるけれど、きっと良い王になる素質があるのだろう。
レティシアの行動にはすべて意味がある。
それはアーノルドの人生において、何度も覆そうとして覆すことができなかった真理である。
レティシアが死んでもなおそれは変ることがない。
そして、レティシアが選んだ男である王太子に従うのは間違っていないことになるのだった。




