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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第63話 Story about スパルタクス 12

「改めて、じっくり話をさせて頂きたい」

 対決派がそう言って来たので、彼らは会議室でテーブルをはさんだ。


 決死の覚悟で戦いの場に駆けつけようとしたスパルタクスだったが、ニーシャプールを飛び立つ直前に、戦闘の終了を聞かされた。

 アールパード族の先鋒が駆け付けた時には、戦いは終わっていたそうだ。

 防衛部隊は壊滅的な状態だったそうだが、敵は一隻残らず追い払われていたという。


 それ以外の詳しい情報を聞く前に、スパルタクスたちは引き返して来た。

 そして今、会議室で席についている。


「サランジュを追い詰めたことが、こんな結果をもたらすなんて、我々のやって来たことは間違いだった。

 サランジュの要求をそのまま呑むつもりはないが、意見の合わない件は一旦保留して、帝国への対応について協力することを、最優先に考えよう。

 融和派と対決派の連名で、行政府にそれを進言したい。協力してもらえるか? 」


「今回の侵攻については、不問に付すということでいいな」

 ディックが問うと、対決派の面々は大きく頷く。


「もちろんだ。帝国に脅されて、仕方なくやったことだろう。

 それを問題にしていたら、協力なんてできない。


 サランジュ以外の諸部族に対しても同様に、今回の侵攻に関して罪は問うべきではない。

 ただ、諸部族で力を合わせるように、説得はするべきだ」

 このことで合意に至った融和派と対決派は、固い握手のあと揃って行政府へと足を運んだ。


 彼らを見送ったスパルタクスたちは、アナスタシアの身柄を引き取りに向かった。

 今頃は、牢から出されて自由の身になっているはずだと、聞かされていた。


「ありがとう、助けてくれて。怖かったわ、どうなるかと思って・・・・・・」

 セシリアに抱き付いて涙ながらに語るアナスタシアを、ほっとした気持ちで見つめていたスパルタクスは、腕の端末の着信音に気付いた。


 アナスタシアをはじめ、複数の虜囚を保護したことは、ドラヴァレットに報告してあった。

 全員を故郷に届けてやれないかと相談し、その話はポフダンからロカレーンにまで届けられたはずだ。

 牢にいたのは全員、プルシャプラ出身者だった。


「今すぐ連れて来てくれ、とドラヴァレットが・・・・・・おおっ、なんと、宇宙保安機構の戦闘艦がここに来ているそうだ。

 プルシャプラへの送還は、彼らに任せられると」


「本当に? こんな宙域に、保安機構が?

 バーラーブ付近にいたのですら驚きだったのに、そこから5百光年も踏み込んだ、ここにまで?

 帝国の影響を調べるために、未知の宙域に踏み込んでいるチームがいるのは知っているけど、従来の活動範囲を大幅に脱しているわ」


 首を傾げるセシリアの手を引いて、スパルタクスは歩き出した。

「とにかく行こう、スペースポートに。さっき出撃するつもりで行って、とんぼ返りして来たばかりの場所だが、もう一度あそこに行かないと」

 そこで、ドラヴァレットが待っている手筈だった。

 彼にアナスタシアたちを引き渡せば、役目は終わる。


 もうニーシャプールにも用は無いので、その後には、彼らは住居に戻って荷物をまとめ、部屋を引き払う手続きを済ませ、またスペースポートに向わなければならない。

 それをこの日の内に済ませる必要は無いのだが、スパルタクスは気持ちが急いていた。


「お前は、保安機構の者に会って行くのか、セシー?

 それとも、お前もこのまま彼らに、保護してもらうか? 」

 セシリアがマゼーパ族やアールバード族と行動を共にするつもりでいることは、既に確認済みだが、すぐ近くに宇宙保安機構が現れたとなれば、改めて意思を確認すべきだと思った。


 彼女との別れは身を切られるより辛いが、もし保護されることを望む気になったのなら、そうしない訳にはいかない。


 一方で、スパルタクスも保安機構に、地球連合に帰化したいと申し出る選択肢はあるのだが、彼は彼で、マゼーパ族やアールバード族と行動を共にする決意は固い。

 セシリアが保護を望むとなれば、今生の別れになるかもしれない道を選ぶしかないだろう。


 だが、セシリアが保護を望まないことは、スパルタクスには分かっていた。

 念のため一応尋ねはしたが、答えの分かっている質問だった。


「何を言ってるのよ、タック。私はまだ当分、マゼーパ族やアールバード族の厄介になるつもりよ。

 だから、機構の人に会うのもやめておくわ。

 地球系がいると知ったら、彼らは、何としても保護しなければと使命感を燃やしちゃうかもしれないでしょ」


 予想通りの答えを聞いても、彼の急いた気持ちは収まらなかった。

 セシリアが保安機構と合流しないなら、急ぐ理由など無いかもしれない。

 しかし、保安機構とロカレーンの会談から、できるだけ時間を置かずに、セシリアをロカレーンに会わせなければならない。

 スパルタクスにはなぜか、そんな義務感が湧いていた。


「今頃は、ロカレーンが保安機構の者と会談を持っているだろう。

 セシーのことは言わないだろうけど、君に必要な情報を受け取る可能性はある。


 地球系を保護した場合の一般的な対処法を、ロカレーンが保安機構に尋ねておくかもしれない。

 もしそうなら、その返答は、正確にセシーに伝わるべきだ。

 いずれにしても、早い方がいい」


 こんな考えが理由になるのか分からないが、セシリアを引きずるようにしてスパルタクスは歩く。

 当の本人は、急ぐ素振りなど見せないのに。


「ちょっと、タック、痛いわよ。そんなに引っ張らないでよ」

 片手をスパルタクスに引かれ、もう片方の手でアナスタシアの手を取るセシリア。

 保護された他の面々も、急ぐべきなのかどうか判断に迷う感じで、ある者はスパルタクスに歩調を合わせ、別の者はアナスタシアの隣に留まっている。


「保安機構が来ているのだから、急いだほうが・・・・・・」

「何でよ? 保護してもらう気はないのだから、急ぐ必要なんて・・・・・・」

「いやでも、早い方が・・・・・・」

「そうなの? そうかしら? 」

「念のためだ。念のために、急いでおこう」


 地中を走る公共交通機関でスペースポートに着いても、スパルタクスとセシリアはこんな感じだった。

 急いた面持ちで手を引く彼と、痛いと悲鳴を上げながら引かれる彼女だ。


 セシリアに手を引かれていたアナスタシアが、クスクスと笑い出した。

 恩人2人の滑稽な姿に、久しぶりであろう心からの笑いを噴出させた。

 他の面々もつられて笑う。


 1人くそ真面目に先を急ぐスパルタクス、悲鳴を上げるセシリア、笑いながらついて行く保護された人々。

 スペースポートの通路を、こんな賑やかな一団が進んで行った。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/10/28 です。


 何十人とかそれ以上の人を乗せる大型の宇宙船とうのは、現代にはまだ存在せず、それが停泊するスペースポートというのも当然現代には無いので、これをどんな感じに仕立てようかというのは、すごく悩みます。


 地球くらいのサイズ天体だと、大型の宇宙船が地上にまで降りて来るというのはエネルギーの無駄が多いように思えるので、スペースポートは軌道上の施設という描き方を、本物語ではしています。


 ニーシャプールは小惑星サイズの天体にあるので、スペースポートはもっと都市の近くに置くのがふさわしいと考えました。

 でも天体の表面に造ったのでは、やはりエネルギーの無駄が多くなると思います。


 微小とはいえ天体の重力に逆らって、天体に強く衝突しないような制御をしないといけないことが、無駄を生じさせると作者なりに考えたわけです。

 ニーシャプール市街は地下にありますが、比較的表面に近く、重力が邪魔になる位置です。


 そんなわけで、ニーシャプールのスペースポートは天体のど真ん中=重力中心、つまり地中奥深くにあるという設定になっています。

 回転軸に沿って宇宙船は地中に入っていくという説明は、少し前にしていましたが、重力中心という深い位置にまで入っていくとは告げていなかったと思うので、改めてここで書いておきます。


 重力中心ということは、そこでは見かけ上無重力になっているということです。

 あらゆる方向に同じだけの重力が働いて、相殺し合った結果としての無重力状態です。


 天体を貫通する一直線の穴をあけ、そこを目掛けて物体が落下して行ったら、途中までは重力に引かれて等加速度運動を続けます。

 そして徐々に重力が弱まって加速度が低下し、中心部で加速度がゼロになり、中心部を過ぎた所からは後ろ向きの加速度がかかるようになります。


 宇宙船が止まるのも泊まるのも、こういう環境ならエネルギー的に有利だと作者には思えます。

 そんな考えから、ニーシャプールのスペースポートは天体地中奥深くの、重力中心に造られている設定なのです。


 スペースポートと市街を何度も往復したスパルタクスとセシリアを想像する際には、そんなことも考慮に入れて頂けると助かります。

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