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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第45話 Story about ロザリオ 8-2

「そして、地球連合への強烈な恨みと怒りを、宇宙にばら撒くのか?

 根絶やしなんて無理だぞ、広い宇宙に散り散りとなって暮らす航宙民族を。

 怒りは必ず残り、人知れず闇の中で増殖し、やがては手に負えない勢力となる」


「なるものか。航宙民族ごときに、そんなこと・・・・・・」


「なるさ。必ずそうなる。

 今は優勢な地球連合の科学技術も、いずれ覆る。人は学ぶ生き物だからだ。


 科学技術や軍事上の優位を永続させるなんて、いかなる勢力にも絶対に不可能だ。いつか必ず追い抜かれる日が来る。

 そして、技術的にも軍事的にも成長を遂げた巨大な怒りが、いつか地球系人類を飲み込むのだ」


「なぜそんな、極端な発想になる? 」


「極端じゃないだろ。地球時代にこんなことを、何度人類は繰り返した?

 いくつの巨大国家が、自らがばらまいた怒りや恨みに飲み込まれて、消え去ったのだ? 」


「それは、一面的な見方だ。

 野蛮な集団を潰していくことで、我らはより良い世界を築いて来た」


「地球をすら壊滅に至らしめる戦禍をも、我ら人類は経験したのにか?

 その惨状から、ようやく我らは気づいたはずだ。力でねじ伏せるやり方が、間違いだと。


 相手は、我らと同じく、生きることへの執念を秘めた人間だぞ。

 生存を阻む者を、決して許さぬ人間だぞ。

 力に屈することは、無いのが人間だ。


 一部の人間を、一時的に蹴散らしたりねじ伏せたりできただけで、図に乗ってはいけないのだ。怒りをばら撒いた者には、必ず相応の報いが訪れるのだ」


 激論を聞きつけたのか、かけ集まって来る人影がある。皆が同じ制服だ。

 それがオーエン・ブレトンの背後に、20人以上の人垣を作った。


「こんなに? いったい何人の集団で、地球連合を抜けるのですか、大佐? 」

 思わず声高になったロザリオが、相手の胸にある階級章で知った称号を叫んだ。


「1個小隊だ。戦闘艦4艦から成る部隊が、そっくり離脱を決意した。

 2百名を超える武官が、軟弱な宇宙保安機構に見切りをつけ、閣下の剛腕に望みを掛けた。


 これだけの人数が、閣下の名を出すだけで、このハミにおいて賓客扱いしてもらえる。

 それほどに、ターロック・マクロクリンの名は宇宙系の間で知れ渡っている。


 君も、これらの事実を知れば理解できるだろう。

 閣下の力をもってすれば、航宙民族など恐れるに足りないと」

 背後の20人ほどを振り返りオーエンが、つられてその武官たちも、胸を張った。


「君も来ないか? 」

 約20人の中の1人が、ロザリオに誘いをかけた。「閣下の偉大なる宙賊征伐事業に、君も参加できるのだ。こんな名誉なことは、無いのだぞ」


「いえ、私は、宇宙保安機構に残ります」

 言い返したい無数の言葉を飲み込んで、ロザリオは最小限の返答だけをした。


「ふん・・・・・・そうか。君も、キョセの臆病風に当てられてしまったか、可哀そうに。

 だが、もし勇気を取り戻したら、ここに連絡しろ。閣下と直接話ができる。

 君のような未来のある若者なら、閣下はいつでも温かく迎えて下さるからな」


 そう言って彼が腕に巻いた端末を操作すると、ロザリオの端末が着信を知らせた。

 受け取りを拒否することもできるが、受け取るだけはしておいた。


「よし」

 そのことで脈ありと感じたものか、オーエンが満足そうにうなずく。「じゃあな、キョセ。もう、お前と会うことは無いだろう。軟弱な機構で、せいぜい頑張れ」


 言い捨てたオーエンたちが立ち去るのを見送ったロザリオは、受け取ったデータを確認してみた。

 ターロックの連絡先とみられるアドレスと共に、今回離脱を表明した者たちの名前も、一覧にして示されていた。


 腕の端末の上に立体文字として浮かんでいる名前の一覧を、なんとなくスクロールさせながら見ていたロザリオは、そこに知っている名前を見つけた。

「し・・・・・・ショーン! ショーン・ブランケット! あいつ! あいつも、パータリプトラに。結局、こうなってしまった。散々言って聞かせたのに」


「知り合いか? 」

 力なく、チーフ・ミハルが尋ねた。

「ええ、ミナブ星系の養成所での学友です。やっと職員になれたのに、こんな・・・・・・」


「流出が止まらないな。強硬策を叫ぶ人々が、続々とパータリプトラに行ってしまう」

 そう言って落ち込んでしまったキョセ・ミハルの隣で、気まずい沈黙の時間をロザリオは過ごすことになった。


「本当に良いのか、ロザリオ? 」

 ポドルムで合流した、シェリングの問いかけだった、「そのオーエンって人に付いて行けば、ターロック・マクロクリンに会えるのだろう?


 保安機構より強硬な作戦で、ミス・セシリアを取り戻してくれるかも知れないじゃないか。

 このままバーラーブに向かうより、有望かもしれないぜ。お前の友人も、そう考えたのだろう? 」


「強硬策がセシーの救出に繋がるなんて、俺は思わない。

 バーラーブに行くことも、直接的に救出にはつながらないだろうけど、今は地道に情報を集めるしかないよ」


 言葉の上ではきっぱりと否定しても、心に引っかかるものが無くはなかった。

 ターロックの力を借りて、セシリアが拉致された当たりの宙域を徹底捜索し、見つけた航宙民族を片端から征伐していけば、もしかしたら、セシリアを助け出せるのかも知れない。


 だが冷静になって考えれば、広大な宇宙を闇雲に探して、航宙民族の船や施設に行き当たる可能性の低さは、文字通り天文学的な水準になるだろう。

 何百とある航宙民族の船や施設を偶然見つけたとして、そこにセシリアがいる確率は、限りなくゼロに近い。


 技術力の差から、見つけさえすれば、地球系が航宙民族の撃破に失敗することはまず無いと思われるが、そんな見積もりはセシリア救出に役立つものではない。


 情報収集を地道にやるしかない。ターロックだって宇宙商人か何かからの情報提供で、航宙民族の船や施設のどれかの所在を知り、攻撃を加えたのだ。探して見つけたわけじゃない。


「情報収集しか、ないか」

 長い沈黙の間に、シェリングも同じように考えたらしく、ぼそりとつぶやいた。

「うん、情報収集しかない」

「あら、情報が、来たわよ」


 思わぬ角度からの声は、マニエラだった。「機構本部から、ミス・セシリア捜索の最新情報が来たわ」


 ロザリオの隣で沈黙していたキョセ・ミハルが、手元のコンソールを叩いてその情報をモニターに表示させた。

「どんな情報ですか? 」


 自分のモニターに表示させることもできるロザリオだったが、チーフに問いかけた。 

 だが、情報に目を通すや顔つきを変えたチーフ・ミハルは、ロザリオの問いに答える代わりに、コミュニケート担当に声をかけた。


「ターロック・マクロクリンとの通信を開けるか、ミス・マニエラ?

 ロザリーがさっき、連絡先の情報を受け取っていたのだが、それを使ってここから話ができるかな?

 へラックレス第1航路に近いここからなら、ワープ通信で双方向の対話が可能なはずだが」


「やってみますわ、チーフ。情報を、回してもらえるかしら、オフィサー・ロザリオ? 」

「うん」

 ロザリオが腕の端末を操作した1秒後、マニエラが彼女の席のコンソールに、指先の連打を浴びせた。


「通じました。今、呼び出しています」

 2分ほど待った。ロザリオの席のモニターに、頬と下唇が異様に突き出した五十がらみの男の顔が、映し出された。


 映るや否や、ニンマリと笑う。

 通信が開くタイミングで、急に無理矢理に作ったのが手に取るようにわかる、白々しい笑顔だった。


「連絡をくれて有難う。現役機構職員の我が事業への参加希望を、心から歓迎するよ。

 共に宙賊を征伐し、宇宙に平和を築こうではないか」

 肩から上しか映っていないが、大袈裟に腕を広げて、親しみやすさや包容力をアピールしているのが分かる。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/6/24  です。


 ワープ通信などという技術が、しれっと登場しました。

 数百光年離れた所との、情報のやり取りも可能となる技術です。現実世界にもある電磁波でやれば、数百年の時間がかかってしまいます。

 電磁波を届かせることが、できたとしての話ですが。


 この物語は、移動に関しては荒唐無稽です。通信も素粒子等の移動ということになり、荒唐無稽が混入しています。

 できる限り荒唐無稽を排除するタイプの、ハードSFとして本物語を描いているのですが、移動に関しては荒唐無稽を導入しないと、全銀河規模の物語を成立させられないので、そこのところはご了承願います。


 光の速度を超える通信という荒唐無稽が、どうしても必要となるのが銀河規模のSFなのですが、本物語では2種類の超光速通信が登場します。


 タキオンという、質量虚数で光の千倍の速度で飛ぶと設定しているものを使う通信が、その一つです。

 この素粒子で満たされた空間内では、宇宙船なども超光速移動ができるという滅茶苦茶な設定も導入していますが、タキオンで超光速通信もできることにしています。


 無論全て荒唐無稽で、科学的根拠など何もありません。というか、そんな訳あるかと作者自身も内心で叫びつつ、しかしこうでもしないと、銀河を舞台に物語が展開できないからと、割り切ってやっています。

 光の千倍という、とんでもないスピードを設定していますが、それでも百光年くらいの距離になったら、何カ月もかけないと相手に通信が届きません。

 そんな空間的スケールの物語だと、心に留めて頂きたいところです。


 もう一種類の超光速通信手段が、ワープ通信です。

 シリーズ全体で見ると、スペースコーム以外の場所でも使える時代と、スペースコームでしか使えない時代があり、この物語の時代ではスペースコーム内でしか、ワープ通信は使えません。


 スペースコームという時空が著しく歪んでいる空間でのみ、ワープが可能な時代があるという設定になっていて、移動でも通信でもそうだとしています。

 移動では1回のワープで進める距離にも制限を設けていますが、通信に関しても長い距離だと中継基地などが必要だったりします。

 今回の話で出て来たように、双方向での通信も可能になります。


 時代が下れば、スペースコーム以外のどこででも、素粒子だけはワープできるようになったりもします。

 何だかややこしいかもしれませんが、時代が下るにつれて移動や通信の技術が進歩していく、という設定も、歴史物語として描いていく上で必要な要素だと作者は考えているので、このややこしさは避けるわけにはいかないと思っています。


 まあ、読者様におかれましたは、この辺のややこしい所はあまり気にせずに、とにかく数百光年離れた人とも双方向での交信ができちゃっているのだなと、思っておいて頂ければ結構かと思います。

 何が起こっているのかが分かる程度に、この物語では何が可能な設定になっているのかを理解しておくのが、必要になる。SFって、そんなモノではないでしょうか?

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