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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第32話 Story about ロザリオ 5-3

 ゲオルグの口角が、再び上がった。

「有難きお言葉。ご理解頂き、感謝いたします。

 いずれすぐにも、あなた方を中核施設にご案内できますでしょう。

 寛大な使者をお迎えできて、嬉しい限りです」


「中核施設を周回する60余りの孫衛星は、全て防衛用の備えですか?

 かつての、繁栄を誇りつつ宙賊の度重なる襲撃に苦しんでいた時期に、ここまで厳重な防衛の備えが築かれたのでしょうか? 」


 両手を広げて感激を表現するプルシャプラの代表に引き換え、チーフ・ミハルの問いかけは事務的な口調だ。

 歓迎されるより、相手について知りたい気持ちが先立っている。


「いえいえ、まさか」

 口角は上げたままだが、ゲオルグの調子もやや事務的になった「防衛用だけではありません。


 かつて我が天体都市にあこがれて流入して来た移住者たちが、住居として軌道投入したものが20個ほどと、在来住民の居住域を拡大するために、我らの祖先が投入したものが十個ほどございます。

 他には採取した資源の備蓄用や生産設備を設置するためのものが5個です」


「そうですか。となると、防衛用設備である孫衛星は、20余りですか」

「そんなところです。今では流入者施設の8個と、在来住民用の5個、備蓄や生産用の2個、防衛用の6個、これだけしか稼働しておりません」


「それだけで、宙賊への備えは大丈夫なのですか? 」

と尋ねたのは、ロザリオだった。

「マラカンダが撃退して以来、この付近にまで宙賊が姿を見せることは、少なくなりました。

 稀に見るものも小規模で、簡単に撃退できております」


「防衛に関しては、マラカンダが一定の役割を果たしていると言えるわけですか? 」


「ええ、まあ。しかし、彼らにとってメリットの大きい防衛しか、彼らはやりません。

 今のところ、プルシャプラの正確な座標を知る宙賊がいないことの方が、付近に奴らの現れない理由でしょう。


 かつてここを襲っていた、プルシャプラの座標を知る連中は、例のここを支配した強力な一団に蹴散らされて、どこかに行きました。

 その一団もマラカンダに撃退された結果、ここを知る宙賊がいなくなったのです。


 ですが、宙賊どもは確実に、近くで跋扈しています。交易船などは、頻繁に襲撃されておりますから。

 遠く離れた天体を行き来する船は、スペースコームジャンプなどをしない訳には行かず、そうすると、すぐに見つかってしまうのです。


 この付近ではスペースコームジャンプをしないよう、そしてここから極力放射を出さないよう、気を配ることで、今は何とか見つからないようにできていますが、見つかってしまえば襲撃を受けるでしょう」


「その際には、マラカンダは、防衛の責任を担ってくれそうにないのですか? 」

「彼らにとって大きな損失が生じる前には、撃退するでしょう。

 しかし、我らプルシャプラの民を守り抜く意識は、彼らには有りませんよ」


「一方では強烈に搾取し、他方で防衛責任は果たさないのですか。

 早く彼らの束縛を脱したいと願うのは、当然ですな」


「そうです。ヤツらによる搾取さえなければ、資源採取や交易で力を回復し、宙賊に対抗できるだけの武装も手に入れられるはずなに」


「マラカンダの束縛を脱するために、ガウベラ帝国の力を借りようという動きなども、起こったりしているのでしょうか? 」

 話がここに至ると、しばらくロザリオにばかり質問させていたチーフ・ミハルが、一気に本題へと舵を切った。


 プルシャプラが帝国と接触したらしいというのは、トンラ族から情報を得ていた。

 星間往来を中継している施設の1つで、プルシャプラに向かう交易船に、帝国の密使と思われる人物が乗り込むのを、目撃した商人がいたそうだ。

 この情報を得たことが、今回のプルシャプラ訪問をチーフ・ミハルに決意させたのだった。


「よ・・・・・・よく、そんなことをご存知ですな。帝国からの密使がここに侵入していたことを、我々も、つい最近知ったばかりだというのに。

 その密使は、プルシャプラの住民の中でも、最もマラカンダへの反抗心の強い者を選んで、交渉を仕掛けていたのです」


「帝国と手を結べば、束縛からの解放が可能だと言って、扇動したわけですか? 」


「そんなところです。密使と接触した者が仲間を募り、徒党を組んで執政委員会に、帝国との同盟を提案しました。

 親帝国派が、我が天体地中都市の中に誕生したのです」


「密使は、既にここを去ったのですか? 」

「はい。どうやらまた交易船に紛れ込んで、どこかに姿を消したようです」

 ロザリオは、思わずチーフの方を見た。目が合う。2人とも同じことを考えていると即座に分かった様子のチーフが、それを口にした。


「会わせて頂けませんか、帝国の密使と接触したという方に? 」

「ええ、もちろん。直ぐに、ここに連れてまいりましょう」

 ゲオルグが後ろに控える補佐官を振り返ると、その中の1人が、腕に巻いた端末を操作し、別の1人が足早に部屋を出て行った。


 接触者を待つ間に、彼らはプルシャプラでの暮らしぶりについて、色々と尋ねた。

 興味本位の世間話にかこつけていたが、これも任務の一環だ。


 総人口が1万人にも満たない天体都市だが、周囲の孫衛星には、それを倍する人口が住んでいるそうだ。

 周囲に住む半分は、在来の住民の内の天体都市から溢れてしまった者たちで、残りの半分は移住者の末裔だそうだ。


 その3者の間に、明確な身分の差があるらしい。

 中核天体に住む1級市民、在来の血筋だが中核天体の外に住む2級市民、そして移住者の血筋である3級市民だ。


 住民たち全体の利害にかかわる重大事の決定は、全て1級市民だけで行われ、2級3級はそれに従うだけだそうだ。

 2級市民は防衛用孫衛星の内側に暮らしているが、3級市民は外側であるとも聞かされた。

 今でも6個が稼働しているという防衛用孫衛星だが、それらが守る対象は、1級と2級の市民だけだということだ。


 地球連合は友好関係の条件として、完全な市民平等や民主政を求めてはいないが、できるだけそういう状態に近づけるように努力してはいる。

 その実務も、宇宙保安機構は担っている。


 プルシャプラと友好関係を結ぶとすれば、ロザリオたちもここの身分格差や権限の局在を、解消する方策を考えなくてはならない。

 相手の文化や伝統を頭ごなしに否定してはいけないし、実力行使で強制するなんてことも許されない。

 それでも彼らに、人権意識や権利の平等を理解してもらう努力は、しなくてはならない。困難を極める課題と言えた。


 来歴についても訪ねた。この衛星に住み着く以前には、2百年に及ぶ宇宙放浪の時期があったことや、その前には、別の天体で暮らした時期があったとの、伝承があるそうだ。


 その天体において、深刻な内部分裂が生じ、彼らの祖先となる一派はそこを飛び出してしまったらしい。

 追放されたのか、自分たちから出て行ったのかは分からないが、仲間だった人々と袂を分かち、2百年もの放浪に身をやつし、プルシャプラに辿り着くまでの不安な日々を耐え忍んだそうだ。


 プルシャプラの事情を聞き出せば聞き出すほど、また、彼らの地球連合との友好への願望の強さを知れば知るほど、チーフ・ミハルにもロザリオにも使命感が募った。

 こんな感じでしばらくの時が過ぎると、密使との接触者が、会談の場に姿を見せた。


「俺はシェリング・ドットだ。あんたたちは、ガウベラ帝国の敵なのか、味方なのか? 」

 まだ20歳にも満たなそうな接触者は、挨拶も何もすっ飛ばしていきなり尋ねた。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/3/25  です。


 プルシャプラの歴史についての情報は、整理できておられますでしょうか?

 あれこれと色んな履歴を詰め込んだので、混乱されているでしょうか?


 千数百年も前に別の天体に住んでいた人々が、何らかの原因で袂を分かって、プルシャプラの祖先となる人々がその天体から行く当てもなく無く飛び出し、2百年にも渡る不安に満ちた放浪の旅を越え、衛星である今の天体に辿り着いた、ということになっていました。


 ここで繁栄の途につき、千年という月日を経て一時は、周辺諸部族の盟主としての立場を獲得するに至りました。

 流入者が増え、自分たちで新たな孫衛星を軌道投入してでても住み着くほどに、プルシャプラは魅力的な天体都市となりました。


 ですが、多くの宙賊の襲来に苦しむ事態が発生し、軍事用の孫衛星を20個余りも設置して防衛に腐心しましたが、強力な一団に制圧され支配される悲劇に見舞われました。


 マラカンダという別の部族の力を借りて、何とかその強力な一団を追い払い、支配や奴隷状態からは脱しましたが、今度はマラカンダに搾取されることになってしまいました。

 この状況を打破するために、独裁体制に移行することで強力な政治を実現しようと試みる一派がクーデターを画策したこともありましたが、未然に防がれ首謀者たちは追放処分となりました。


 独裁体制にはならずに済みましたが、マラカンダによる搾取は続き、更に差別される立場の2級や3級の市民もいるという、悲劇的な状況は続いている。

 こういったところに、ロザリオたちが訪れたということになっています。


 以上、ルール違反かもしれない後書きでの補足説明でした。

 プルシャプラに住みつく以前の歴史に関しては、この物語のストーリー理解に特に必要ではなく、シリーズ全体の世界観を構築するためのくだりだと、ご理解ください。


 日本という国も、まずは縄文人が渡来して来て、その後に弥生人が渡来して来たと考えられています。

 弥生人は、大陸に住んでいた集団が枝分かれして、その内のいくつかが日本に来たのでしょう。


 日本のどこかに移住先の当てがあっての移動だったのかどうか、作者には知識がありませんが、住み慣れた場所を離れ、共に過ごした人々と別れての移動は、命がけとも言うべき勇気の要る決断だったでしょう。


 元の集団と別れたのも、敵対的なものだったのか、協議と同意の末の友好的な分裂だったのかと、想像が膨らみます。

 このままここに全員でとどまっては、全滅するだけだという状況になり、話し合った上で有志の者たちが旅立ちを決意し、良き新天地が見つかったら呼び寄せると良い残し、出て行った可能性もあるのではないかと思います。


 こんな実際の歴史への想像を基に、未来の宇宙の歴史を描いてみているわけです。

 ストーリーには関係ない、こういった世界観にも関心を向けて頂けると、作者としては物凄く幸福なわけです。

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