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銀河戦國史 (迷走の北辺暗黒天体群域)  作者: 歳超 宇宙(ときごえ そら)
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第22話 Story about スパルタクス 1-2

 右覇星王という仰々しい肩書きのナンバーツーを皮切りに、参加者が順に仰々しい挨拶を述べ、仰々しく盃をあげて行く手筈のようだ。

 数十人の代表者全員が盃をあげるのに、どれくらいの時間が掛かるのだろうと思うと、ぞっとして気が遠くなる。


 その間、挨拶を述べる者以外は、左肩に右拳を置く敬礼のまま、微動だにしてはいけないらしい。


 ナンバーツーが盃をあげ終えると、進行役がナンバースリーのもとにそれを運ぶ。

「次なるは、左覇星王の位を賜りしマゼーパ族が長、ポフダンに御座います。

 我らが族勢も、大王のおかげをもちまして・・・・・・」


 臣下の言上が繰り返される。

 言い尽くすと盃をあげ、進行役に戻す。

 時間をかけて族長たちが、位の高い順に言上して盃をあげる。


 代表の中には、リモートで参加している者もあった。

 何かの都合でここに参集できず、音声のみを討議の場に届けている。


 盃は、代理の者があげるようだ。

 コンソールから声だけ発する族長の席ではなく、その一段後ろにある輔佐役の席に、例外的に盃は廻された。


 ここでスパルタクスにとって、最も馴染みの深い声が聞こえた。夢の中で、何度も聞いた声だ。

 現実世界で指示を出す場面を想定して、夢の中でも実物と同じ声を聞かせていたらしい。

 意図的に記憶させられ、聞くだけで、忠誠心や畏怖の念を掻き立てられてしまう声でもある。


(マイロード・・・・・・)


「リモート参加で失礼いたしております。

 わたくしどもアフシ族も、偉大なる大王クルトゴル様の庇護下において、培養奴隷を駆使した営みにより、絶大な収益を得ることができております。

 バクトラ王国の威光を背にした各部族の略奪戦などに、大量にご使用頂いております。

 そこで得られた戦利品といたしまして・・・・・」


(・・・・・・そんな、マイロード・・・・・・)

 スパルタクスには、衝撃の発言だった。


 彼にとっては最高位にいるはずの、この世の全てとさえ思っていたロードが、航宙民族から成る連合王国の、構成部族の長の一人に過ぎないなんて。

 それが、個人的利得の為だけに、彼らを大量に貸し出す商品として扱っていたなんて。


 ロードが何のために自分たちを使役し、収益などを要求していたのかなんて、考えたことも無かったが、そこには何か崇高な目的があるのだと、心の奥底で思い込んでいた。

 1つの航宙民部族を富ますなどという下世話な目的に、自分たちの生涯は費やされていたなんて。


 ロードの後にも、挨拶の言上は続く。ロードが並み居る臣下の1人でしかない現実が、そのことからも印象付けられる。

 こんなちっぽけな存在に人生を捧げるのが、培養奴隷だったのだ。


 悔しくみじめな気分に、彼が打ちひしがれている間に、族長たちの言上は終わっていた。

「では、評議に入ろうか」

 進行役の一言で、場の空気が変わった。

 型通りの挨拶には、参加者全員がうんざりだったのが分かる。ここからが本番だ。


「まず初めに言わせていただきたい! 」

 振り絞ったような大声が場を襲う。

「いや、発言の順番は・・・・・・」

 進行役が手を挙げてたしなめようとするのにも構わず、発言の主は続けた。


「なぜバイルク族などが、この評議に出席しておるのだ。

 中核部族しか、この評議会には参加できぬはずだ。

 あまつさえ、我らより上位の席を占めていることに付いて、納得のいく説明を頂きたい」


「説明も何も」

 鼻で笑うような口調で、話題の族長が応える「我らバイルク族が、あなた方より上位の中核部族だからですよ」


「何を、寝ぼけたことを!

 バクトラ王国における中核部族とは、古の帝国エクパティアの侵略を退けた戦いにおいて、特に戦功のあった11の部族を源流に持つ集団のことを示すのだ。


 偉大なるクルトゴル大王へと繋がるバクトラ王国の始祖によって、対立の著しかった百近い部族が糾合され、エクパティアをも退ける大同団結を成し遂げた。

 その撃退戦で、始祖王のもとへといち早く馳せ参じた11部族の裔のみが、バクトラ王国の中核部族なのだ。

 バイルクごとき新参が、でかい顔をするでないわ! 」


「過去の栄光しか無い者たちだけで、国の大事を評議する時代は、とっくに終わっております。

 現状の勢力や王国への貢献度が考慮され、我らは、バクトラの中核部族に迎えられたのです」

「ふざけたことを・・・・・・」


「バイルクの族長の申す通りだ」

 進行役が、強引に声をねじ込んだ。「建国時の戦功や現状の貢献度など、様々な要素を勘案して、我らが大王の裁定されたことだ。誰にも文句は言わせぬ。

 建国時からの地位に甘んじて、現状では大した貢献もできておらぬ古参部族が、大きな声を出すものではないわ」


「うぅっ、ぐっ・・・・・おのれ」

 不満はたっぷりでも返す言葉を無くした者は置き去りにして、評議は進んだ。


「・・・・・・というわけで、割り当てられた上納高を、最も大きく上回る財を献上したのは、今回もバイルク族ということに・・・・・・」


「意義あり!

 進行役殿、バイルク族の上げた収益の多くは、我らカルルク族の縄張りにおいて略奪を実施して得たものであります。


 他所から横取りした財を献上した者が評価されるなど、納得がいかぬ。

 それさえなくば、おぬしらごときに上席を盗られることも無く、もっと大きな収益を我らは手にできたはずなのだ。

 評価どころか、バイルク族は、不法行為を糾弾され処罰を受けるのが当然の理で・・・・・・」


「異なことを申されますな、カルルクの族長殿。

 我らバイルク族が、いつカルルクの縄張りを犯したというのですかな」

 まくしたてるカルルクの族長を、バイルクの族長は落ち着いた声で受け流す。


「とぼけるな!

 我らの基準宙域より北東下に3日分の距離の微小天体群や、正北下に4日分の距離の遊離惑星は、先祖伝来の縄張りだぞ。

 そこの天体で集落を営む定住民からは、我が一族が5百年も前から、頻繁に略奪を行って来たのだ。

 その、当然我らが手にするはずの収穫を、お前たちが・・・・・・・」


「あなた方カルルクが基準宙域から3日かかるその微小天体群に、我らは我らの基準宙域より2日で到達することができるようになりました。

 基準宙域からもっとも速く辿り着ける部族こそが、そこからの略奪を恣にできるというのは、我らがバクトラ王国の始祖がお定めになった、尊き掟でございますぞ」


「違う! あの微小天体はカルルクのものだ。

 あれの住民らからの略奪は、我らの特権なのだ。

 ずる賢く性能を向上させた宇宙船で成し遂げたインチキな速度など、我らからあの微小天体を横取りする理由になるものか」


「インチキなどと失敬な。

 宇宙船の速度を向上させる技量も、バクトラ王国の臣下に求められる重要な能力です。

 より早く宇宙船を走らせられる一族こそが、航宙民族としては優秀なのです。


 そして優秀な一族が、より広域の縄張りを取り仕切った方が、多くの定住民を屈服させられますし、大王にも多くの財を献上できます。

 優秀な一族こそが、バクトラ王国を発展させられるのであります。現に、我らバイルク族の献上財は、あなた方カルルクを軽く上回っておるではないですか。

 遅い者は、使いものにならぬのですよ、カルルクの族長殿」


「うっ、き・・・キサマぁっ! 」

 怒りをあらわにしたが、継ぐべき言葉が見つからないことを、カルルクの族長は表情で露呈してしまっている。一本取られた格好だ。


 その他の部族の代表者たちは、ほとんどが白けた表情だ。

 自分たちの利害に直接関わらない案件には、興味がないらしい。

 大王に至っては、何を考えているか分からない無表情で、目をつむり腕を組んでいる。

 ここまでのやり取りを、聞いていたのかどうかも分からない。


 進行役だけが、議論を収束に向かわせなければと、焦った様子で両者を見比べていた。

「バイルク族に、やや理がありそうかな」

 一瞬の沈黙を見計らい、収束に向かわせる言葉を放ってみたが、直後に横やりが入る。

 今回の投稿は、ここまでです。 次回の投稿は、 2023/1/14  です。


 地球上で実際に繰り広げられた歴史と、同じようなことが宇宙において繰り返されたら…。

 それがこのシリーズの基本テーマです。


 今回出て来た、航宙民族による部族連合王国というのも、実際の歴史に登場する集団をモチーフにしています。

 ですが、その実在の集団が実際にどのようなものだったか、作者が手に入れた資料に描かれていることや、そこから作者が汲み取ったイメージが、どれくらい正確なのかは、極論すれば誰にも分かりません。


 今回出て来たシーンでは、略奪を糧とし且つ当然の権利であるかのように考える、今の我々の価値観からは極悪としか言えないような集団として描かれていました。


 物語に出て来た集団が本当はどうなのかも、まだ明らかにはしていませんが、モチーフとなった歴史上に実在する集団も、そんな極悪集団だったかどうかは、定かではありません。

 その集団の末裔かもしれない、現代を生きる人々について、それを理由に何らかの偏見を持つなんてことは、絶対に間違ったことでしょう。


 でも、歴史上のある集団に支配され略奪され恐怖と貧困のどん底に陥れららた民族の末裔である人々にとっては、そんな偏見を抱いてしまうのも無理からぬものがあるかもしれません。


 現在、日々新聞紙面やニュースをにぎわせている、侵略戦争や人権弾圧なども、もしかしたらそんな「無理からぬ偏見」に根差したものなのかもしれません。

 だからといって偏見を肯定するわけにはいきませんが、こんな偏見に根差す侵略や人権弾圧をする人々を、単純に悪と決めつけ非難するだけでは、分断や対立が深まるばかりなのではと懸念しています。


 侵略や人権弾圧は許せない、でも単純に非難するだけではダメ。どうすれば良いのでしょうか。

 答えは皆目分かりませんが、少しでも色々な事情を知っておくことが、第一歩になるのではないでしょうか。


 SF小説を読んで知るべきことを知るなんてことは、誰も期待しないでしょうが、知るべきことがあることに気付けるSF小説というものならば、実現可能かもしれません。


 そういうSFを書いていますとは、口が裂けても言えませんが、そんなSFにしていきたいという志だけは持っています。

 今のところは、独りよがりに気持ちを空回りさせているだけだと自覚していますが、でもそんな気持ちがあるのだということだけは、ちょこっと主張させて頂こうと思いました。

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