表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
7/20

7.花火

今日は実技の時間に早々と火魔法の強弱のつけ方で合格をもらい、時間が余ってしまったのでドミニクと二人で訓練所の隅っこで打ち上げ花火を作って遊んでいた。


ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン


連続で次々上げていく。


昼間だからあまり綺麗に見えないね。今度は夜に試したいな。


「マキの花火は美しい色がついてるな!形も複雑だし、こんなの初めて見たよ!」


「この世界の花火は色ないの?」


「ない!生まれて初めて見たよ!普通はただの黄色っぽい光玉が空で弾けて大きい音がするだけだ。こんな見た目の花火なんかないよ!」


ドミニク大興奮。私も楽しい。まだまだどんどん上げて行くよ!


ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン


「おいおいおいおい!すごいなこれは!」


実技の先生やクラスメイト達が集まってきた。


「なんだこれは!どうやってるのだ?」


「なんて美しいの!」


「私にもできるかしら?うちの領の皆にも見せてあげたいわ!」


「俺も!」


「これは金になりますよ!」


おおお!喜ばれて嬉しいい!私も調子に乗っちゃうよ!!


しかしこれはオリジナルではなく、以前テレビで見た長岡花火の丸パクリなのである。


ドーン ドドドドーーン ドドーン  パラパラパラ 皆に降り注ぐしだれ花火。からの、


ドドドドドドドドドーーーーーーン!!!


特大の連発でフィニッシュ!!


やり切った感が凄い。


「「「「 わあああああーーーーー!!!! 」」」」


パチパチパチパチ!


皆の拍手が止まらない。ふふふ。





そして私とドミニクは学長室に呼び出された。


部屋に入るとそこには学長と第三王子ルキウス殿下が待っていた。








「王様の誕生日ですか?」


「うん。3か月後なんだが。その日の夜に王都にあの花火を打ち上げてもらいたいのだ。もちろん二人だけでやれなどとは言わないよ。王宮魔術師たちにも手伝ってもらうし、私も出来ることはしよう。ただ、君らはその日の王都の祭りに行くことが出来なくなってしまうので申し訳ないのだが、頼む」


「はい!このドミニク・ロンデルダ、喜んでそのご依頼承ります!!必ず素晴らしい花火を打ち上げてごらんにいれましょう!!」


「ふぇっ?」


ドミニク?ドミニク?


「ああ!ありがとう!よろしく頼む。」


「はっ!!」


「よかった。嬉しいよ!さっき教室から君たちの花火が見えたのだ。素晴らしかった!このところ、父上のお祝いになにか贈りたいと考えていたのだが、あれを見た瞬間これだと!これしかないと思ったんだ!!」


「はいっ!」


ドミニクにこにこ。王子にこにこ。学長空気。


そうか、生誕祭みたいなものがあるんだね。お祭りかぁ。


行けないのは残念だけど王様への恩返しの気持ちも込めて私も頑張るよ!


「ところで、マキ。君は異世界の転生者なのだよな?やはりあの花火は向こうのものなのか?色とりどりで驚いたよ」


「あ、はい。花火は向こうでもとても人気があるんです」


「しかし、君たちは魔法の無いところから来たと聞いているのだが魔法もなくどうやってあんなものを?」


「あっ、あの、それはですね、火薬というものがありましてそれに火をつけてですね物理的に」


「火薬?それはなんだ?魔力が無くてもそんなことができるのか。こちらにもあるのだろうか?」


「いや。えーと。えーと...わかりません!す、すいません!私、火薬に詳しくなくて...」


火薬の材料とか全く知らんのである。


「そうか。残念だ。ははっ。そんなしょんぼりして。気にすることはないぞ。魔法があるから別にその火薬などはいらんしな!ただの好奇心だ!」


「はは。そ、そうでふね」


「それでだな、魔術師長に言っておくので、後日王城から呼び出しがいくだろうからよろしくな。共に頑張ろう!」


ルキウス殿下って元気でテンション高いよね。たしか15歳だっけ。いつも食堂でメニューを見てるイメージだったけどこんなかんじなんだね。



学長室を出る頃にはもうペイヤンが迎えに来る時間になっていた。


馬車乗り場でドミニクと別れてペイヤンといつものように今日の出来事を話ながら帰宅した。





**********





「よく来てくれたな二人とも!」


王城を訪れた私達をルキウス殿下が迎えてくれる。


今日は花火の件で王宮魔術師の人達との顔合わせの日である。



「ルキウス殿下今日はよろしくお願います!」


「お願いします!」


「うん。こちらこそ!」


こっちだよ!と連れていかれたのは宮廷魔術師長の部屋。魔術師長って千太郎くんの師匠なんだよね。どんな人かな。


ガチャッ


「魔術師長!」


ノックもしないで開けるルキウス殿下。



というか、お付きの人とか護衛とか居ないんだよねこの王子。


さっきも一人で城の入り口のとこで私達を待ってたので驚いたよ。


「おお、殿下。来ましたね」


魔術師長は40代くらいで以外と若い。


でも、なんだろう。


無個性というか、別れたら顔を忘れてしまいそうな。


それって普通じゃないよね。私は人の顔を覚えるのはかなり得意なのだ。


たぶん認識阻害系の魔法を使ってるんじゃないかなと勝手に推測。




「うん。これが言ってたマキとドミニクだ。」


「マキです」


「ドミニク・ロンデルダです」


「はい。魔術師長です。名前は秘密です」


「魔術師長は、ちょっと呪われててね。その都合でまぁ色々あって名前は秘匿されてるんだよ」


「「呪い!?」」


「はい。でも移らないから安心して下さいね」


「えっ。あの大丈夫なんですか?」


「大丈夫ですよ。名前と一緒に封印してあるので問題ありません」


ワォー!だよ。


すごいね。呪いか...怖いね。でも、やっぱり優しいだけの世界じゃないのだ。


「緑葉祭の夜に三人で花火を打ち上げたいから手伝ってほしいということでしたよね。第3魔術師隊でよろしいですか?」


「うん。一隊に20人だったな。十分だ。ありがとう!」


「いえいえ。我らが王の祝いですからね。喜んで協力しますよ。それで今日はその特別な花火というものを私も見せてもらおうと思いまして。よろしいですか?」


「ああ。もちろんだ。魔術師長と第3魔術師隊にまずはみてもらわなければ!いいか?二人とも?」


「はっ!もちろん!」


「は、はい!」


「よーし。じゃあ第3隊を演習場へ」


魔術師長が言いながら人差し指をクルクル回すと指先から光の玉が出てきて壁を通り抜けどこかに飛んでいった。


「じゃ、私たちも行きましょう」





演習場へ着くと第3魔術師隊の皆さんがすでに着いていた。


「第3隊のみんな!皆の協力に感謝する!こっちにいるのがマキとドミニクだ」


「ほーい!」


「よろしくっす」


「よろしくお願いします!」


「かしこまり~」


思いの外緩い隊である。


「よろしくお願いします!ではいきます!」


ドーン ドーン ドーン ドーン ドーン


「「「 おおおおー!! 」」」


ドーン ドドドーン ドドーン


「「「 ふわぁぁぁー!!! 」」」


ドン ドン ドン ドンドン ドンドンドン ドンドンドンドン


ドーン パラパラパラパラ


ドドドドドドドーーーン


「「「 スゲー!! 」」」


「ファンタスティックゥ!」


「かあちゃーーーん!」


「ワァー!!」


大好評でした。皆、大興奮。ルキウス殿下とドミニクもキャッキャッとはしゃいでいる。


これだけ喜んでもらえるとやりがいあるなあ。


「素晴らしいです!明るい昼間でさえこれですから、夜ならばどんなに素晴らしいだろうか!」


魔術師長も喜んでくれている。


「だろう!ぜひ父上の祝いの日に王都に打ち上げたいのだ!」


「みんな!やるぞーー!!」



「素晴らしかったわ!ねぇ、お母さま!」


「ホホホ。そうね、王も気に入るに違いない」


チョチョリーナ姫と、綺麗で色っぽい女の人が近づいてきた。


「母上?!なっ、なぜここへ?」


王妃様なの?!


「たまたま通りかかったのだ。

ふぅん。お前にしてはいい余興を考えたな。楽しみだのぉ」


なんかめっちゃ怖い。首をかしげてメンチきってる王妃怖い!


ルキウス殿下もいつもと少し違うし。委縮してるというか覇気がないというか。


王妃様は第3隊と私とドミニクには目もむけない。居ないみたいに。


威圧感が凄いし、自分以外皆見下してる感じ。なんか嫌だこの人。嫌い。


「は、はい。母上、いえ、王妃陛下。御心のままに」


「ふぅん。たがえるなよ」


二ッと笑った顔が怖いですから!


王妃様が戻って行くとき、一緒に居たチョチョリーナがチラッとこちらを見たのだけど、学園では仲良さげに見えていた兄のルキウスを見て笑ったんだよね。蔑むような嫌な目つきだった。


学園と自分のホームでのキャラがずいぶん違うようだ。




パン パン パン


魔術師長が手を叩くと、さっきまであった重くて嫌な空気が消えた。


「さて、みなさん正気に戻ってください」


「あ、っ!すまん。ありがとう魔術師長」


「いえいえ。では、美しい花火も見れましたし私は他の仕事があるので行きますね。第3隊、殿下を頼んだよ」


魔術師長は去っていった。凄い人だな。


その後、少し打合せして練習は王都から離れた場所でしようという話になり、時間や構成はまあおいおい決めていこうということになった。


練習をあまり見せちゃうと本番当日の感動が薄れちゃうからね。




「さっきは母上が申し訳なかったな」


私たちを帰りの馬車乗り場まで送ると言って付いてきたルキウス殿下が謝ってきた。


「母上は...いや、そうだな、二人とももしも城で王妃を見かけても出来るだけかかわらないように気を付けてほしい。出来れば、気づかれる前に逃げてほしい」


「...わかりました」


「はい」


馬車乗り場に着く。


「ではな。また明日学園で会おう」


ニコッと笑って手を振り戻っていくルキウス殿下。


「ちょっと疲れたね」


「ああ。帰ろう」


別々の馬車に乗り込み邸まで王宮の馬車で送ってもらった。




評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ