表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
18/20

18.捜索

ゼフの行方が分からなくなってから2日が過ぎた。


最後に会った時点でもう瀕死に近いように見えたのに、早く見つけないとと気ばかりが焦る。


私の持つ情報は全て出したし、王命が出て、ドドン伯爵とゼフは王都だけではなく国中で捜索してもらっているが、いまだ何の手掛かりもないのだ。


ただ、緑葉祭りの日に大勢の人間が行方不明になっている事がわかった。

黒幕はドドン伯爵だと思われ、これはゼフの言っていた復活の陣の完成に関係があるに違いなく、

さらわれた人達の安否も心配されている。


マルセルさまや、弟のシュヴァルツェさん、エストレナム領の騎士達も駆け付けてくれ馬で空から怪しい場所を探してくれている。


私は今、ゼフが作った髪留めにこもった魔力から見つけることが出来ないかと、王城の魔術師長の元へ来ている。


「無理ですね」


「そうですか...」


「残念ながら作った人間を追跡できる魔法は確立されていないのです。お力になれず、すみません」


「いえ、いいんです。私こそ無理を言ってしまってすいません」


「さらわれた人達の誰か一人でも位置追跡の魔道具を身に着けていたら追えたのですが、そちらからも追えず...」


「さらわれた人達も同じ居場所にいると思いますか?」


「ええ。おそらくは」


「...そこから何か手がかりが見つかるといいのに...」


「そうですね。まだ希望はあると私は信じます」



魔術師長にお礼を言って部屋を出る。


今日は一人で王城まで来たので、馬車を手配してもらい一人で帰る。


ペイヤンに今日の予定を聞かれた時に、予定はないと答えた。それでペイヤンは私が一日邸にいると思って今日は捜索隊に参加しているのだ。


というかそのつもりだったのだが、髪留めを眺めていて急に思いついて魔術師長に会いに来たのだ。

まあ、ばれないでしょ。このくらい。


馬車の中で、ゼフが魔力を吸われていて枯渇状態なら魔力ポーションをたくさん用意しなければいけないのでは?と、ひらめく。


もしも再会時、マリア嬢のようにしわしわになっていたとして速攻でポーションを大量にかけたら吸うかもしれない。

首が落ちても復活した千太郎くんの例もある。私の元の世界での常識はこの世界では非常識だ。


急いで馬車の馭者に、ポーション屋の前で下ろしてほしいと伝える。


ポーション屋は細い路地にあり、馬車を無理に止めると人の通行の邪魔になりそうだった。


馭者に帰りはまた馬車を拾うから待たないで帰っていいと言うと、危ないと心配されてしまう。


電撃魔法の魔道具を大量に持ってきたのを見せると渋々戻って行った。


店に入り、魔力ポーションと普通のポーションを持ち金で買えるだけ買う。


バカなことをしているのかもしれないが、これはリスクのない用心である。可能性全てに賭けるのだ。


めちゃくちゃ重い鞄を提げて、王城を見上げる。


ゼフは部屋から花火が見えたと言っていた。この街のどこかに居るのだ。


「ギャギャ!!」


「どしたの?」


急にオニギリが騒ぐので髪留めを外す。


なんか黒いモヤが髪留めを包み込んでいて思わず投げ捨てる。


「なにこれ!オニギリ!こっちおいで!」


「ギャッギャッ」


急いで髪留めから離れてこっちに転がってくるオニギリを拾う。


「なんだあれ」


モヤに包まれる髪留めを見ていて思った。マリア嬢を殺した奴じゃない?


王妃の宝石から出てきたモヤに似ている。


もしかしてだが、都合のいい解釈かもしれないけれど、ゼフの魔力を吸っていたモヤが髪留めの魔道具にこもったゼフの魔力を吸いに来たとか...


無いかな...


でもそれだとすると、近くにあの黒い宝石があるとか?というかゼフが近いということになる。


あれは魔力を吸い終わると宝石に戻るよね。


「つけるよ!オニギリ!」

「ギュッ!」


髪留めの魔力を吸い終わったのかモヤが離れる。


急いで髪留めを拾って後を追う。モヤがもやもやしていて見えにくい。


「オニギリ、あれ見える?あれを追いかけたいの。私だけだと見失いそうだからオニギリも手伝って!」


オニギリの緑目の部分をモヤに向けながら後を追う。


何度か見失うがやはり二人だとどうにかなるもんだ。


モヤの入っていった家を見る。人気が無いがかなり大きなお屋敷。認識阻害がされているみたいで在ると意識していなかったら通り過ぎてしまいそうだ。


誰か仲間を呼んで来るべきか一瞬迷ったけれど、このままいこう。オニギリいるし。


「痛っ」


結界みたいなのまで張ってあるよ。これは確実にいますね。


「愛の力が奇跡を呼んだようだよ」

「ギャッギャッ!」


結界とか私達には効かないのである。オニギリは超脳筋。魔法無効だ。


サイクロプスは元々魔法が効きにくいのだが、全然効かないわけではない。魔法無効というのはオニギリの固有スキルである。


そうなのです。オニギリがチート野郎だったのである。ほんと契約してよかったよ。


屋敷の前でオニギリを本体に戻し抱っこしてもらい、結界を消滅させ敷地に入る。


道を歩いていた人達が悲鳴を上げ逃げまどっていたが、騒ぎになることは好都合である。


「よしっ。下ろしてオニギリ。ゼフの命がかかってるからね。急いで探そう!建物は壊していいけど浚われた人もいるから殺しちゃわないように気を付けて!」


「ギャウ」


「あ、それと周りの人が気付くようにいっぱい声出していいよ!」


そして私は急いで耳に守護魔法をかける。


「ギャオーーーーーーーーー!!!!!」


それからはもう、蹂躙とはこのことか。と思い知った。これでオニギリってまだ子供なんだよなぁ。


サイクロプスが大人になったら国くらい簡単に滅ぼせるんじゃないかな...後で調べよう。


今はまずはゼフを探さないと。


「ゼフーーーー!!!」


「ゼフーーーーーー!!!」


そこらじゅうを探しまわる。


見つけたと思って我を忘れてしまったけど、これ私の勘違いで普通に関係ない家だったらどうしよう。と、洒落にならない可能性が頭に浮かぶ。


「誰かいませんかー?!」


「すいませーん」


「!!」


何も考えず入った部屋に死体が沢山あった。皆、シワシワで変質し人の形では無くなっている。


生きている人が居ないか探すが、誰もかれも死んでいた。


皆、苦しんで死んだのだろう。その痕跡が怖かった。背中がぞくぞくして全身に鳥肌が立ち、震えが止まらない。

酷い。


伯爵は、愛の為にどれだけの人を殺し、不幸にしてきたのだろう。


「ギャーーーギャッギャ!!」


オニギリがちょっと来てー!と呼ぶので向かうと、地下室の入り口があった。


「ギャギャッギャッギャ」

「うんうん。ここは壊したら中の人が危ないから呼んでくれたんだ。お利口だねオニギリ」

「ギャ」


「ちょっと入ってみる。オニギリはこのままゼフを探して。二人で早く見つけよう」


階段を降りると、部屋が沢山ある。


右側に広い部屋が一つ、左側には部屋が沢山、奥には三つ部屋がある。


大きな部屋の真ん中に魔法陣が描いてあったが、大量の血がある。血まみれの何かを引きずったような跡が奥の隅にある階段に続いていた。


左の小部屋の殆ど全てに魔道具で拘束された死体がある。


ぶよぶよにふやけた人達、どろどろに溶けた人達、半分骨がむき出しにされた人達、臓器が無い人達。皆悲愴な姿で死んでいる。


奥の部屋はひとつには何かの毛玉みたいなものがあり、ひとつは空で、ひとつにゼフがいた。


「ゼフ!!!!」


見つけた!駆け寄って頬を撫でる。


生きているのか死んでいるのかよくわからなかった。


ゼフはとても細いのであまり揺らすと骨が折れそうで怖いのだ。


取りあえず魔力ポーションを顔にかけ、念のため普通のポーションもかける。なんとなく眉間にしわを寄せたような気がする。


「ゼフ!ゼフ!!」


ポーションをもっとかける。


「ゼフ!!!」


胸に顔を当て心臓の音に耳をすます。わからない。たぶん死んでるの?かも。


ポーションをかけ、頬を掴んで口を開けさせ中にもぶち込む。


「ゼフ!!!」


「ゲホッ」


「ゲホッ ゲホッ や、 ゲホッ やめて ゲホッ」


「ゼフ!!!!」


抱きしめると、またグッタリしてしまったので魔力ポーションとポーションを飲ませる。


「ゲホッ。マキ...お願い...やめて...」


「??」


なにを?


よくわからないが生き返ったようだ。こんどは間に合った。よかった。


「マキ...隣の部屋に光の眷属の子供がいる...さっきまで生きてた...彼を助けて...」


「えっ!う、うん」


光の?ガゼさんの弟?行方不明の?


急いで隣の部屋へ。


毛玉に魔力ポーションとポーションをかける。


口がどこにあるのか丸まっていてわからない。わかれば飲ませれるのに。


「ねえ。起きて!ポーション飲んで!」


「起きて、ガゼさん、すごい探してるよ。会いたいって。大好きだからって」


魔力ポーションとポーションをかける。



「起きて。起きたらお兄ちゃんに会える。がんばれ!」


魔力ポーションをかける。


「戻っておいで。がんばれ」


「......うる、さい。冷たいんだけど」


「生き返った!ポーション飲んで!」


「まだ、死んでないし...飲ませて。魔力の方」


小鳥が口を開けてる!かわいい。ガゼさんはガチムチ猛禽類なのに弟はコザクラインコって似てないね。


飲ませてあげるとこくこく飲んだ。かわいい!


思わず、頭をなでなでしてしまう。


「はぁ...」


ぐったりと、私にもたれかかって上目づかいのジト目で睨んでくる。


「あんた誰?」


「え?えーと...マ、マキです」


「...」


なんだろう。何か怒ってる?


カタッ


音に驚いて振り向くと、立っている事さえ辛そうに見えるゼフが何かの魔道具みたいなものを持って部屋に入ってきた所だった。


「マリウス、封印を...たぶんこれが、カギ」


ふらふらと近づいてきて私達の隣に倒れ込むように座る。


「解ける?」


「たぶん...前にいた、人を、これで封印、した、のをみた」


封印?マリウス君封印されてるの?


あ、だから逃げれなかったのか。


「たのむ」

毛玉の胴体の中にひっこめていた足を出すマリウス君。


その足は発光する紫色の魔力で魔法陣と呪言がぎっしりと書き込まれ、真っ黒く変色しシワシワに干乾びていた。


「............」

声が小さくて聞こえないが魔道具に何か呪文を唱えるゼフ。


一瞬後、魔道具が紫に怪しく光り、マリウス君も共鳴するように光る。


「............」


マリウス君の体中から赤黒い線虫のようなものが這い出して来て、空中に溶けるように消えていく。


「うっ、うっ。う、うあ」


苦し気に冷や汗を流し、私にしがみついてくる。


マリウス君をギュッと抱きしめる。


呪文を絶え間なく唱え続けるゼフにジロッと睨まれる。


「うっうっ。痛いよぉ」


泣き出し更にしがみついてくるマリウス君。抱きしめる私。


睨んでくるゼフの瞳孔が開いていて怖い。


少しずつマリウス君の足にあった魔法陣や呪言が消えていく。





それが完全に消えた瞬間、


「来る...」

マリウス君が呟く。


そして、


ドガーーーーン


なんか火の玉堕ちてきた。


地下は半崩壊である。


飛び散った瓦礫が頭に当たったゼフは意識を失い、

欠片がかすった私の頬は切れた。

上から落ちてきた石塊に直撃されたマリウス君は頭からダラダラ血を流している。


そして、火の玉はガゼさんだった。


「最悪...痛いんだけど...バカじゃないの...」

ぶつぶつ文句を言うマリウス君。気持ちはわかる。ゼフが死んだらどうすんだ。


「見つけたぞ!!!マリウス!!我が弟よ!!」


「声めっちゃでかいっつーの。聞こえてるし」

小さい声でぶつぶつ文句を言うマリウス君。なんか、大変ですね...お兄ちゃん無茶苦茶で。


「心配したぞ!!」

どかどか歩いてきて、マリウス君を満面の笑顔で抱きしめる。


じたばた暴れるマリウス君。...あれ、息できなくて暴れているんじゃ...?


「わっはっはっはっ!!」

急に笑い出したよ。この人こういうキャラだったの?


その後、マルセルさまの馬騎士達や、城の騎士や魔術師達、街の警邏隊、大勢の味方が到着した。


大捜索が行われ、


沢山の被害者たち、


そして伯爵の遺体が見つかった。






評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ