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12.悪役令嬢

第一回緑葉祭りの花火のテストと銘打ち、

私達は南の王領のひとつに向かうことになった。


第3魔術師隊の人達は転移陣で夕方着いて、夜のうちに転移陣で帰城する予定だが、


ルキウス殿下とドミニクと私は朝から湖や村で遊んで、夜に花火をして泊まってから王都にもどる予定だ。


南の王領はルキウス殿下が大公位についたら拝領することになっていて、殿下は管理を学ぶために時々訪れているらしい。


最初は私達も転移魔方陣で来る予定だったのだが、

ルキウス殿下が馬に乗ったことがないので乗りたいと言い出し、ドミニクも乗りたがったのでペイヤンの馬で向かう。


ペイヤンが馬の準備をしているあいだ3人で庭をうろうろ。


「未来の大公領かぁ。ルキウス殿下はいつから大公になるか決まっているのですか?」


「兄上の子供に王子が2人以上生まれたらかな。

王位継承権が5位以下になったら大公位を賜ることになる」


「へぇー」


「まだ兄上は婚姻を結んでいないので少し余裕はあるが、領について勉強することが多いので大変だ」


「へぇー。大変ですねぇ。

あ、そういえばドミニクはルキウス殿下の騎士になることになったんですよね?その時はドミニクも一緒に行ってしまうんですか?」


二人は同じクラスになったことや花火の企画など一緒に行動するうちにとても仲良くなっていた。


「うーん。まだわからないな。ドミニクは私の側近になるので、共に動く事になるから行ったり来たりかなぁ」


「そっかぁ...」


「マキ寂しいんだろ!」


「遊びに来たらいい。それか我が領に移住してもいいぞ!それか私の魔術師になってもいいな」


「それはいい!」



「馬きたよー」

馬に乗ったペイヤンが上空から舞い降りる。


「大きいな!」


「ほんとですね!」

笑顔キラキラ。わかるわかる。馬は最高だからね。


男の子2人は自力で飛び乗る。私はペイヤンに抱っこして乗せてもらう。


「行くよー」


馬が飛び上がる。


「「「 わあーー!! 」」」


「これは凄いな!」

感動してるルキウス殿下。


「あっ!王城がもうあんな小さく!」


「今日は馬が機嫌が良いよぉ」


馬が嬉しげに鳴いて、宙返りした!


「「「キャー!」」」


今度はスクリューみたいに回転しながら上に下に。


「「「 キャー!! 」」」


キャッキャッしてたらあっという間に着いてしまった。


南の王領は気候も暖かく、農業、漁業、畜産、林業、など全般が盛んで富んでいる土地だそうだ。


そのため豊かな人間が多いのだが、それに伴う貧困格差も大きいのと、

国で禁止されている奴隷の売り買いなどもあり、管理するには手腕がいるんだそうだ。


上から見る景色はとても綺麗で、ドミニクと2人魅入ってしまう。


そして見えてきた領主の館は巨大な城だった。


「綺麗なところですねぇ」


「ありがとう!さぁ、こっちだ!」


出迎えの執事服のおじさんや、騎士達に挨拶してルキウス殿下の後に続く。


とても大きい湖があって、その水が引かれて城の堀になっている。


湖に着くと、侍女のお姉さん達がテーブルや椅子、軽食など至れり尽くせりに用意してくれていた。


「マキ、ここならオニギリも大きく戻っても大丈夫だぞ!」


「あっ!そうですね!」

髪止めにはまっているオニギリに大きく戻ってもいいよと声をかける。


「ギャーーーー!!」

大きな声で騒ぎながらムクムクと大きくなるオニギリ。


目玉からどのような行程でサイクロプスに戻っているのかよくわからなかった。


「僕のルーチェもいるよ!」

ドミニクも懐から小さな雪うさぎを出して地面に優しく置いてあげる。


雪うさぎは鼻をクンクンして周りの匂いを嗅いでいる。全ての動作が可愛らしいなあ。


癒されるなぁ。


「ギャーーーー!!」


「オニギリ、湖で遊んでいいよ。城の皆にはサイクロプスも連れてくるって説明してあるから」


「ギャッギャギャギャー!」


「ありがとうございます!オニギリもお礼言ってます!」


「よし行こう!」


「「 イエッサー! 」」


湖は透明度がすごくて、中にいるのか魚影がよく見える。

半魚人もいるんだって!!


肉食の大きい魚がいるから食べられないように気を付けるよう注意をうけた。


喜び勇んで湖に走っていったオニギリが実は泳げなくて、溺れて沈んでしまったのを救出したり、


湖にプカプカ浮いていた雪うさぎが肉食の魚に食べられてしまい大騒ぎになったり、色々あったがとても楽しかった。ちなみに雪うさぎは無事に助けることが出来た。


昼は城下の街で食べようということになり街へ繰り出す。


ルキウス殿下はよく来てるみたいで、領民の人達に笑顔で挨拶される。


屋台で、串焼きの魚や肉串、お好み焼きみたいな見た目のものと、イチゴっぽいフルーツを買って公園のベンチで3人で食べる。



「美味い。こういう食事はさすがに王都では出来ないからこっちに来たら時々街にこうやって食べに来るんだ」


「僕は屋台の食べ物を食べるのは今日が初めてです」


食べ終わってそのままベンチでボーッとする。


水遊びして程好く疲れたからウトウトしてしまう。


「眠くなってきたね」


「そうだな」


「城に戻って少し休もうか?

朝も早かったし、まだ夜まで長いからね」


城に戻ると、侍女の人達が忙しそうに動き回っている。


執事のおじさんがスススっと近寄ってきて、ルキウス殿下に何かささやく。


「チョチョリーナが?勝手に来たのか...」


「王妃様の許可はもらってあると」


「余計なことを...それで、今は何処に?」


「連れてきたお友達の令嬢方と庭でお茶を」


「ドミニク、マキ、すまん。チョチョリーナが勝手に来てしまったようだ」


「あ、はい。大丈夫です」


「僕も大丈夫です」


「私は少し顔を出してくる。......2人も来てくれるか?」


「「 はい 」」


3人でお茶会をしているチョチョリーナ姫達のところへ向かう。


庭では姫と、ご令嬢が3人お茶会をしていた。


「チョチョ、来るなら事前に言え」


「お母様がいいと仰ったわ!」


「それでもだ。それで何しにきた?」


「お父様のお誕生日に花火の練習をすると聞いたの。見たかったのよ!」


「はぁ。わかった。だが花火は夜だから終わるのは遅くなる。友達は大丈夫なのか?」


「皆さん仲良しだから大丈夫よ」


「...部屋は用意する。だけど泊まらずに終わったら帰るんだ」


「ふん。わかったわ」


「それとこの2人は手伝ってくているロンデルダ侯爵家のドミニク・ロンデルダと、マキだ」


「そう」

チョチョリーナ姫にギロッと睨まれる。

なぜなのか敵意をあからさまにぶつけられて、

おどおどしてしまう。


「行こう2人とも。もう少ししたら第3魔術師隊も来るだろう」


「ねぇ。待って。貴方、お座りなさいよ」


「わ、私ですか?」


「チョチョ止めて。2人は私が頼んだ仕事できてるんだよ」


「だって。私、お兄様のお友達に興味があるのよ」


「また今度ね。行こう」


3人でルキウス殿下の私室に入る。


「ここなら入ってこないだろう。特にマキ。気を付けてね」


「わかりました」


「でも殿下、そんなに気を付けるように必要があるのですか?」


「前はそんなことなかったんだけどね。学園に入ってから変なんだよ。変わってしまった」


それは...もしかして乙女ゲームの強制力とかだったりするのだろうか。


でも攻略対象者だろうなというルキウス殿下やドミニクはそんな影響されているとは思えないし。



夕方頃、第3の皆が着いて、

花火の順番や各担当の割り当て、打ち明ける位置や角度などの確認。


私は花火の形の新しいアイディアのスケッチを部屋に忘れてきてしまったので取りに行くことにした。


忙しそうにしている第3やルキウス殿下、ドミニクに声をかけづらかったので、1人でささっと行ってこようと打ち合わせ部屋を抜け出した。


自分に割り当てられた部屋に小走りで向かう。


城が広くて移動が大変だ。


ようやく着いた部屋のドアを開けるとそこにはチョチョリーナ姫と取り巻きのご令嬢が3人いた。


私の荷物を漁っていたようで服やスケッチ、持ってきたお菓子などがばらまかれていた。


「嫌だ。貴方、戻ってきたの?」


取り巻き令嬢Aがサッと私の後ろに来てドアを閉めてしまう。


「あの、何してるんですか。勝手にこんな...」


「あら、お兄様に纏わりつく女を調べるのは当然でしょう?」


令嬢BとCが私の両隣にきて、腕を組んでくる。力が強い。


「ねぇ、身分差ってご存じ?」


私の方へ近づいてきて扇子で顎を上げられる。


「目障りだわ。汚ならしい平民」


ジャキッ


横を見ると令嬢Bに片側の髪の毛を根本からハサミで切られていた。


「なっ!やめて!」


なんという定番!恥ずかしくなるほどの王道である。


令嬢AとCに押さえられ、Bに反対側の髪も切られてしまう。

こういうことをするのに慣れてるのか手際がいいし動きも早い。


「ギャーーーー!!ギャー!!!!」


オニギリが騒ぎ出す。


「ひっ」


「喋ったわ!」


「生きてるの?!」


押さえつけていた手を離し一瞬で離れるABC。


「おかしなものをつけてるわね」


チョチョリーナ姫に扇子で弾かれ、オニギリと髪留めが飛んでいってしまった。


「ギャッギャッギャッ!」


「気持ち悪いわ。踏み潰して」


チョチョリーナ姫がオニギリの外れた髪留めをグリグリ踏み潰しながら言う。


オニギリはABCが踏み潰そうとするのを躱しながらコロコロ転がる。


「止めてください!」


オニギリが本体に戻ったら城が壊れてしまう。前の召喚状の悲劇が思い起こされる。


どうしよう。


実のところオニギリの心配はしていない。今は目玉だけど本体はサイクロプスだし。


それよりチョチョリーナ姫や取り巻き令嬢がオニギリを怒らせて殺されたらと思うと冷や汗が止まらない。


「はぁ。つまらないわ。戻りましょう皆さん。そろそろ花火も始まるわ」


全然捕まらないオニギリに焦れたのか飽きたのかわからないが急に興味をなくすチョチョリーナ姫。


床に散らばった私の私物をわざとらしく踏みつけながら4人は部屋を出ていってしまった。


「これは、困ったな」


散らばる荷物や髪の毛を見てため息。


こんなことされるなんて、まるでヒロインみたいだ。殿下と恋愛フラグ立ってないのに...


「オニギリ、大丈夫?痛いとこない?」


「ギュッ!」


「よかった。せっかくゼフが作ってくれた髪留めも壊れちゃったね。オニギリも気に入ってたのに...」


髪留めは全体的に歪み、金属の留め具が取れていた。


「ショックだな...それにゼフに謝らないと。ゼフこれ見たら傷付きそう。悲しませたくないなぁ」


壊れた髪留めをハンカチに包み、オニギリをポケットにいれる。


侍女の人を探して声をかける。私の髪をみて驚き、事情を話すと悲しそうな顔をされた。


髪の毛の散らばった部屋を片付けてもらい、髪型を整えてもらっていると、ルキウス殿下とドミニクとペイヤンが部屋に飛び込んできた。


「マキ!」


「髪が?!」


顎のラインに揃えてもらった髪をみてショックを受けている3人。


悪役令嬢もので髪切りは定番だし、

女性のスキンヘッドやモヒカンも普通にある世界から来た私は平気である。


でも押さえつけて鋏で髪を切られるときはかなり怖かった。

耳とか切られたらどうしようとか。


実際、やろうと思ったら無防備な目や鼻が攻撃されることもあり得た。


最終的にはオニギリを戻すか、魔法で撃退することも出来たけど後々の事を考えて我慢してしまった。


もしもチョチョリーナ姫が残虐系悪役ならやられていたと思う。


「ごめんマキ。こんなひどい...」


沈痛な顔のルキウス殿下。ドミニクとペイヤンも深刻そう。


「いや、そんな。気にしないでくださいよ!隙があった私にも非があります。言われていたのに用心が足りなかったし」


「...」


「髪も、私の元居た世界ではこれくらいは普通ですから!」


「...」


「怪我もないし」


なんなんだよ。面倒臭いな。なぜ被害者の私が慰めねばならんのか。


こっちは髪留め壊されて本当は頭にきてるのに。


なんかムカムカしてきた。


「...」


「...」


ムスッとして不機嫌になり無言になった私。


部屋に気まずい空気が漂うがフォローする気はもうない。


「チョチョは城に返すよ。これはダメだ。

令嬢方にも相応の罰を受けてもらう。

マキは花火のデモは来なくていい。部屋で休んで。...本当にすまなかった」


硬い表情で頭を下げるルキウス殿下にドミニクが驚いて止める。

王族は簡単に頭を下げてはならないのだ。


ルキウス殿下とドミニクが部屋を去り、ペイヤンが残る。


「王都の屋敷に帰る?」


「そこまでしなくてもいいかな。疲れちゃったからもう寝る」


「わかった。また何かあったら大声だして。すぐ来るから」


「うん。ありがとう」


ペイヤンが部屋を出る。


疲れたな。と、ベットでオニギリとゴロゴロしていたらいつの間にか眠ってしまっていた。



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[気になる点] >湖にプカプカ浮いていた雪うさぎが肉食の魚に食べられてしまったりと、色々あったがとても楽しかった。 だ、大丈夫だったんですか?
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