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22 さめない夢を君に

「はぁ……また怒られちまったなぁ」


 軽トラのハンドルを握ったグラットニーが言う。

 先ほど、長官よりお叱りの電話を頂いたところだ。


「いいじゃないか、別に。いつものことだ」


 助手席で窓を全開にして腕をもたれかける近藤が言う。


 二人が乗る軽トラは、海岸沿いの道路を軽快に走っていく。

 ちょうど海の向こうから太陽が昇っているところだった。

 水面に映った朝日の光が美しい。


「俺たちはそれなりに結果を出してる。

 首になったりはしないだろうよ」

「だと良いんだけどなぁ……」

「にしても、連中の動きが活発になって来たな。

 そろそろ本命様がお出ましかもしれない」

「悪の総帥が復活したって話、あれマジなのかな」

「多分な」


 巷では怪人の目撃証言が相次いでいる。

 絶滅したはずの悪の組織が再結成されたという情報も入って来た。


 世界は再び混とんに沈む。

 連日、不安をあおるようなニュースが報道されていた。


 正直言って、ワクワクしかしない。


「ああ……早く世界が危機に陥らねぇかなぁ」

「物騒な事言うんじゃねぇよ、アッシュ」

「……すまん」


 グラットニーに言われて、素直に謝る近藤。


「さぁ……どうやって悪の総帥を罠にはめるかな」

「あんた、そんな事ばっかり考えてるのかよ」

「ああ、俺はこういう奴だって知ってるだろ。

 嫌になったらいつでもコンビ解消してくれてもいいぞ」

「バカ言うな。あんたみたいな最高の相棒、捨てられるかよ」


 ニヤリと口元をゆがませるグラットニー。

 近藤もつられて笑う。


 リングの上では最強でも、実戦では実力を発揮できないグラットニー。

 試合では強くなくても、実戦では未だ負けなしのグレイトアッシュ。


 二人が力を合わせれば、どんな時も負けない。

 近藤は最高のコンビだと思っている。


 軽トラには二人の姿が揃ってプリントされている。

 それはもう最高に仲良さげに……。


「おい……あれなんだ?」

「え? あっ――




 どがあああああああああああん!




 突然、軽トラが爆発した!

 ミサイルが撃ち込まれたのだ!


「いてててて……おい、アッシュ! 平気か?」

「お前の方こそ大丈夫か?」


 さっさと脱出した近藤が、軽トラの残骸からはい出してきたグラットニーに声をかける。


「アンタ……俺のこと、マジで心配しないよな」

「当然だろ、俺の相棒なんだから」

「へへへ……しかし、誰だよこんなことしたの」

「見ろよ、あいつらだ」


 目の前には大量の半グレ落ちした泡沫ヒーロー。

 そしてスーツで武装した戦闘員。

 道路を埋め尽くすほどに大量の敵が集まってきている。


 二人がここへ来るのを見越して、大勢で待ち伏せをしていたらしい。


「どうやら今度は俺たちが罠にはめられたみたいだな」

「あんなの、罠のうちに入らん。

 とっとと倒して試合会場へ行くぞ。

 観客たちが俺たちを待ってる」

「遅刻しないと良いけどな」

「どんな状況でも間に合わせるのがプロってもんだ」


 近藤の言葉ににやりと笑って「違いない」と答えるグラットニー。


 二人は恐れることなく、敵対する集団に歩み寄っていく。

 背中を預けることのできる仲間がいれば、どんな恐ろしい敵にも立ち向かっていける。


 夢から覚めるのは、当分後のことになりそうだ。

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― 新着の感想 ―
[良い点] ヒーローの悲哀を描いた作品は多々あれど、 落ちぶれた…というほどではないものの雑魚専と言われてしまうポジションという 何とも言えない主人公の立ち位置が斬新でした。 もうお前怪人だろと言いた…
[良い点] >ああ……早く世界が危機に陥らねぇかなぁ 最高ですwwww この台詞、このキャラクター。 たらこ様でなければ、めちゃくちゃ胸くそ悪いキャラクターになりかねない。 だけど、たらこ様の描く…
[良い点] 完結おめでとうございます! かっこよかったです! グラットニーが良いやつで良かった~。 軽トラなのが良いですね♪ あの母親がじつは未亡人で、いずれ近藤と結婚するとか妄想したりしてました笑 …
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