19 老害
『始まりました! バトルキングダム!
本日もあの二人がニューカマーを血祭りにあげる!
果たして挑戦者たちの運命は?!』
興奮気味なアナウンス。
おどろおどろしいBGMが流れるとスモークが炊かれ、レーザーの光が放たれる。
並んで歩く近藤とグラットニー。
二人が両手を上げてその存在を示すと、観客は大いに興奮した。
リング上には五人のヒーローたち。
いずれもニューカマーと呼ばれる、実戦経験のない新人だ。
彼らはこれから二人と戦わなければならない。
この後の運命を思うと、思わず同情してしまう。
「お前らぁ、よく逃げずに来たなぁ!
一人残らずぶっ潰してやるから覚悟しろぉ!」
グラットニーが彼らを指さしながら言う。
首から下げた鎖がじゃらじゃら。
最近、気に入っているらしい。
「おっ……お前らの方こそ覚悟しろ!
お前たちを倒して、新しい世代に希望を与えるんだ!」
そう宣言したのは、新型スーツで身を固めた若手のヒーロー。
イケメンと言うことで注目されている。
「へぇ……俺たちを倒す……いいじゃねぇか。
やってみろよ、クソガキども」
「覚悟しろよ! この『老害』ども!」
新人の中には実戦経験のある世代を『老害』と称する者もいる。
それほどまでに厄介な存在だと思われているようだ。
誉め言葉にしかならないなと、近藤は内心でほくそ笑む。
「おい、君。一つだけ忠告しておいてやろう」
「なんだ!」
「ヒーローに年齢なんて関係ない。
若かろうが、年をとっていようが、
勝利を収めた方が真の勝者だ。
そんなくだらないことを気にしていたら、
『本物』になれないぞ」
「くっ……」
近藤に言い負かされた新人は口惜しそうに唇をかみしめる。
「どうだ……今回の新人たちは」
「ダメそうだな」
耳元で小さく尋ねるグラットニーに近藤は肩をすくめて答える。
今回も苦戦せずに済みそうだ。
2対5という圧倒的に不利な条件。
にもかかわらず、近藤とグラットニーは新人連合を歯牙にもかけない勢いで圧倒。
瞬く間に壊滅させてしまった。
「行くぞグラットニー! 最後の一人だ!」
「おおっ! 来い!」
「やめてやめてやめて……ぎゃあああああああ!」
近藤は問答無用で突進するグラットニーの前に新人を突き飛ばす。
攻撃を受けた相手は跳ね飛ばされて宙を舞う。
地面に墜落すると完全に身動きが取れずにノックダウン。
『つよい! さすがは最恐最悪と恐れられる名コンビ!
誰かこいつらを止める者はいないのかぁ』
叫ぶようなアナウンス。
観客たちは狂ったように歓声を上げる。
「いるはずねぇよ、バカが」
「違いない」
開場を並んで後にする二人。
戦いの後の興奮も冷め止まぬうちに、二人は軽トラックへ乗り込んである場所へと向かった。




