12 必殺技
グレイトアッシュの必殺技。
それは高速で繰り出される拳の嵐。
しかし、無駄にあちこち殴るのではない。
おんなじ場所をひたすら高速で殴り続けるのだ。
その名もハンドレッドクラッシュ。
数秒のうちに同じ場所を100回殴るだけの必殺技。
あまりにもシンプルではあるが、これが怪人たちにはかなり効いた。どんな屈強な怪人であっても、高速での連続攻撃には耐えられない。
しかし、この技にも難点がある。
同じ場所を殴り続けなければならないので、相手がある程度消耗しないと極められないのだ。
そのため、この必殺技を繰り出すまでに、素早い動きで相手を翻弄しつつ、じわじわとダメージを与えて敵の体力と耐久を削らなければならない。
回復能力を持ちで、なおかつ高い俊敏性の持ち主である近藤は、敵がヘロヘロになるまで粘りに粘る。
それが彼の戦闘スタイル。
グラットニーとは真逆である。
少しずつ相手の体力が消耗するのを待って、必殺技を使う機会を見定めればいい。
……と思っていたのだが。
今のグラットニーは遊んでいるように見える。
体力を温存しようとしているのか、それともからかって遊んでいるだけか。
どちらか分かりかねるが、このまま無駄に時間を費やすのは悪手だろう。
何をたくらんでいるのか分からない。
であれば、思い切ってハンドレッドクラッシュを発動してしまうか?
「いい加減に覚悟を決めろ!
俺を倒したいと思わないのか!」
挑発的に両手を広げて大声を上げるグラットニー。
まるで必殺技を使えと言わんばかりの態度だ。
ここで敵の挑発に乗れば、何かしらの反撃を食らうだろう。
間違いない。
だが……。
「ああ……お前が望むなら、やってやるよ」
近藤はグラットニーの求めに応じることにした。
今の奴は隙だらけだ。
懐に入って必殺技を極めれば……。
もしかしたら倒せるかもしれない。
「うおおおおおおおおおお!」
一瞬で距離をつめてグラットニーの懐に入る。
そして、そのまま必殺技を発動。
ドドドドドドドド!
高速で繰り出される連続パンチ。
この必殺技は摩擦によって発生した熱により、あたかも腕が燃え盛っているように見える。
真っ赤に燃え盛る近藤の右腕が、グラットニーの胸を殴りつける。
何度も、何度も、何度も。
「うらああああああああああ!」
最後の一発を撃ち込んだ近藤は確かな手ごたえを感じた。
さすがのグラットニーもこれには……。
「その程度かよ、この負け犬が」
次の瞬間、近藤の顔面にグラットニーの拳が食い込んだ。