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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第四章 資金
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§058 裁縫

2人へ遺留装備品の分配が終わった。


それにしても、ナズに渡した鉄製の装備は自分にも厳しい。

Lvが上がると着けやすくなるのだろうか?


種族に重量ボーナスがある位なのだから、

装備Lv、或いは適正職と言うのもあるような気がする。

単純に自分の筋力不足と言うのは棚に上げた。


残った装備を自分で着てみる。


銅の兜と小手はまあまあ軽いので付けられると思うが、

これではあまり強化にならないと思う。

結局色々試してチェインメイルだけにした。


自分とアナの、未強化部位をメモしておく。


 自分 → 頭、足、手 アナ → 頭、体、手


「じゃあすまんが、防具屋で売ってくる。すぐ戻る」

「いってらっしゃいませ」



   ***



先ほど売却でお世話になったばかりの探索者ギルドの壁に出る。

ここは防具屋の目の前にあるし、往来も激しいので溶け込み易い。

あの客また戻って来たよ、とか思われそうも無くて安心だ。

気にしすぎだろうか?


外に出ると、もう辺りは日が落ちかけて紅く染まっていた。

急がないと店が閉まってしまう。


「ごめん下さい」

「はい、どうなさいました?」


「迷宮でいくつか装備を見付けたので売却をしようと思って」

「アラアラ、そうなのね。ちなみにどのあたりで?」


出所を聞いてくるあたり、しっかりしていると言うか。

行方不明者の情報も聞いているだろうから、

この人を介して情報が集約されているのかもしれない。


  ──xxさんが亡くなったって噂、本当だったみたいよ、

    あの人達が装備してた品っぽい物をこの前売りに来てねえ・・・。


噂の発信源は、大体商店のおばちゃんなのだ。


「9層の魔物部屋に落ちててね」

「あらまあ、あなた大丈夫だった?」


「おかげでがっつりダメージを食らったので、

 ついでに新しいのに換えようかと」

「そうなのね、ゆっくり見てってちょうだい。

 あっ武器があるんだね、ちょいとまっておくれよ」


防具屋のおばちゃんは奥に引っ込んで、老婆を連れてきた。

多分この人が、この店の真のオーナーで武器商人なのだろう。


いくつかは自分の手元に置いたし、特徴的なプレートメイルは倉庫だ。

全部売る訳では無いし、流石に誰とまでは辿り着けないか。

自分の払い下げ品も混ざっているし。

さっきから気にし過ぎだ。


防具屋のおばちゃんが鑑定している間に、

用意しておいたメモを頼りに、未強化の装備を更新する。


 自分頭 → ・竜革の帽子(空き 空き)

 自分足 → ・竜革のブーツ(空き)

 自分手 → ・竜革の手袋(空き 空き)

 アナ頭 → ・竜革のカチューシャ(空き 空き 空き)

 アナ体 → ・竜革のジャケット(空き)

 アナ手 → ・竜革のミトン(空き 空き)


なかなかスロット3つ付きは厳しい。

竜革ともなると、在庫数も限られているのでこれで一杯一杯だ。

トラッサの防具屋にも行って最善を選ぶべきだろうが、

そこまで空きスロットに固執している訳でもない。


今の段階で、そう沢山のスキルを合成していける余裕はなさそうだから。

せいぜい1個か2個あればいいはずだ。


「お待たせ、吟味はすんだかい?どれも一緒だとは思うんだけどね。

 たまにいるんだよ、こっちの方がいいとか悪いとか、

 あたしに言わせりゃどの鍛冶師が作っても、どこで拾っても、

 壊れるときゃ壊れるし上手く行く時は行くもんだよ」


まあ、そうなのは知ってる。


「そ、そうなのか、しかし思い入れが違うかな」

「思い入れ?」


「ほら、こう・・・武具の方からさ、語り掛けて来るんだよ。

 一緒に冒険したいよ、連れてってくれって」


某テーマパークのぬいぐるみを選ぶコツらしい。


目が合った瞬間にトキメク子がいると。

その子は他のぬいぐるみとは違う特別で、買うとか持って帰るんじゃない。

「お迎え」するんだそうだ。

合コンの定番ネタだ。


「へえ、そんな事いう人は初めてだよ。語り掛けて来たかい?」


「ま、まあな、この子たちをお迎えして行こうと思う」

「変な事言うねえ、でもあたしは悪い気はしないね、その考え」


女の店員は合計数を確認して値段を言ってきた。

        

「買取が35点で36100ナール、お買い上げが6点59600ナール。

 面白い話を聞かせて貰ったんだ、どっちもサービスしとくよ。

 45565ナールと41720ナールで、差し引き3845ナールだ」


差し引きで考えると、逆に儲かってしまった。


自分が手にした装備品は結構な物であるにも拘らず、

売却額のほうが上回ってお金が返って来るのは素直に嬉しい。

竜革装備は結構な金額なのだろうと言う予想はしていたが、

それ以上に売却品が良い物だったと言う事か。


鉄製の武器や、銅製の防具が数点あった。

きっと金属製品からは値段が跳ね上がるに違いない。

次に装備を更新する際は大出費を覚悟せねばなるまい。


「ところで女将さん、この剣はいくらになる?」


アナに持たせていた惰眠のカトラスを取り出した。


「ふーん、カトラスだね?」


「スキルを付けてある」

「へえそうかい、ちょっと見せとくれよ、・・・おかあさーん?」


奥に引っ込んだ老婆が怠そうな顔でやって来た。


「何だね、まだあるのかね、一度に見せとくれよ。

 これかい?・・・うーん、武器に宿りし魂よ、その力を解き放て、

  武器鑑定!」


老婆が呪文を唱える。


恐らく老婆には鑑定結果が見えている事だろうが、

こちらには何も変化が見えない。


他人にも見えるように表示ができるのであれば、

誰もが安心して取引ができるのだろうに。

しかし、そう上手い事行かないのがこの世界のルールだ。


「ほう、これはあんたの言うようにスキルが付いてるね。

 ・・・しかも睡眠添加かい、こりゃ欲しがる奴は多いだろうねえ」

「いくら位の物なのだ?」


「うーん、15万・・・18万ナールで売っていてもおかしくは無いが、

 買取となるとせいぜい3万5千ナールだね。

 おまえさんがどこで手に入れたか知らんが、いい値で売りたいんなら

 ウチじゃなくて競売所の仲買人に渡した方がええと思うね」


「18・・・凄いのだな、スキル付きの装備品は」

「元がそう出回る物でも無いでな」


そういうと老婆は奥に戻っていった。

まあ、ここで売っても損すると判っているのなら、

オークションを扱う商人に任せてもいいか。


この世界に来て初めて、自分の力で財を作れた満足感に拳を握った。

いや、作ったのはナズだ。後でナズとハイタッチして赦して貰おう。


ハイタッチ、この世界にあるのか?

無ければパ・・・いや今のは悪かった。無かった事に。


それじゃあと詫びを入れて、防具屋を後にした。

後は家に帰ればナズの手料理が待っている。

新婚夫婦のノリだな。

実際には一所帯なのだが。


女の子が食事を作って家で待っていると言う

憧れのシチュエーションに心躍る。

現代日本でそんな事言おう物なら、たちまち総スカンだ。

憧れる位は許して欲しい。

ここは異世界だし、そもそも彼女は使用人だ。



   ***



「ただいまー」

「おかえりなさいませ、ご主人様。お食事の用意ができております」


台所に出たので、テーブルに4人分の食事が並べられているのが見える。


「そうか、お疲れ様。アナとジャーブは?」

「先ほど一度こちらに来られたのですが、お部屋にいるのでは」


部屋、と言うかそういえばジャーブの部屋と言うのを考えていなかった。

タンスと2台のベッドはキッチン手前の部屋で

風呂用にする予定の部屋ともう1つ空き部屋があるが、

そちらには何も置いていない。


「しまった、ジャーブのベッドとタンスを用意していないな」

「ええっ?それではどうしましょう」


「今からでは家具屋も閉まっているだろうし、今日は床で我慢して貰おう」

「それでしたら私が」


「ナズが床で寝て、自分がジャーブと寝るのは嫌だなあ」

「そ、そうですよね、ごめんなさい・・・ジャーブさん」


「いや、忘れてたのは自分だからナズが謝る事は」


──ガチャッ。


「お疲れ様です、ご主人様」


アナが帰ってきた。

洗濯を終えたのだろう。


「アナもご苦労様、かなりの出血だったし洗濯は大変だったろう?」

「いいえ、この位は問題ありません。それより、ご主人様のシャツですが」


そういえばミノに突っ込まれて、腹に2つの穴が開いたシャツを捨てた。


「まあ破れた物は仕方無いんじゃないか」

「いえ、その事なのですが」


なにせこういう世界だ、ちょっとのほつれ位は修理して

長く使うのは当然でも、肝心の針や糸も結構しそうだ。

それらを買うより、中古の服の方が安いまであると思う。


「で、ジャーブは?」

「あ、はい。もうすぐ来られるかと思い──」


「お待たせしました、ユウキ様、お帰りなさいませ」

「遅かったな、何をしていたんだ」


「はい、ユウキ様の破れた服を捨てると聞いたので、

 アナンタ殿に自分なら修繕できると進言しました。

 雑貨屋で針と糸を買ってきて、今修繕が終わったとこです」


そう言ってシャツを見せる。


「おお」


乱暴に継ぎ目が見えるが、これなら普通に着れそうだ。

買って来なくても良かったかもしれない。


「凄いな、そんな技能を持っていたのか」

「以前は貧乏戦士だったのでこの位は」


なるほど、生活全般の雑用ができるのは嬉しい。

自分もその位はできると思うが、義務教育の家庭科で習った位だ。

それでも十分通用しそうなのが凄い。文部省バンザイ。


「ところで、その針と糸はどうした?」

「アナンタ殿に払って頂きました。正確にはナジャリ殿からですが」

「はい、以前頂いた私の小遣いから出させて頂きました」


「そうか、その分は補填してやるからな、幾らだった?」

「いえ、これは私がしたくて出させて頂きましたので」


公私混同は避けないと、良かれと思って無駄な物を買われても困る。

折角の小遣いなのだから、本当に欲しいと思った物を買って欲しい。


「アナ、気持ちは嬉しいが、生活と娯楽は分けろ」

「か、かしこまりました、150ナールです」


やはりちょっとするな。

中古の服と一緒、そんなものか。


「糸と針だけで150ナールか、結構するな」

「いえ、俺が買ったのは裁縫道具一式ですので、

 他の物がもっと大きく破れても直せます、ご安心下さい」


「あ、そうなの?」


じゃあ、これから服がほつれた時はジャーブに任せよう。

ミチオ君のように、麗し処にじゃんじゃんドレスを与える日は遠そうだし。


ナズに銀貨2枚を渡し、釣銭の銅貨50枚を受け取った。


「では食べよう、いただきます」

「「いただきます」」「あっ・・・はい」


前から気になっていたヤギの肉。


かぶりついたら肉汁があふれ、スパイスが効いていた。

ん?このスパイス買って来たのか?ナズには渡してなかった。

・・・無駄な出費をさせて申し訳無い。後で渡そう。


「この肉は旨いな」

「ありがとうございます、昔やっていたように味付けしてみました」

「とても柔らかいですね、こんなに美味しい肉料理は初めて食べます」

「何の肉なんですか?俺も初めてです」


「パーンだ、2日前、いや3日前だったか?に倒した」

「ユウキ様だったら余裕で倒せそうですね」


「食べた事は無いか?」

「俺たちのような日銭で稼ぐ者は中々食べられません。

 手に入ったとしても肉を焼く手段もないですし、売った方がマシです」


たしかに、厨房が使えないと宿で暮らすものには難しいのかな?


「厨房に出して焼いてくれとお願いするのは?」

「食堂ならやってくれると思いますけど、

 肉を出してさらに金まで取られる位なら、

 普通に売って、安い肉料理を食べた方が得ですね」


「そうだな、食材を出して金取られるのは納得できないな」

「そもそもパーンは5、6人のパーティでないと危なくって」


「まあ確かに」


家を借りられるフルメンバーの探索者は稀なのだな。

それだけ贅沢と言える。

ジャーブが自分を金持ちだと誤認したのも頷ける。


「ナズは?」

「私は余った食材で食べた事はあります」


「調理法を知ってるんだから当然か。じゃあウサギの肉は?」


「それは高級品ですので、庶民でも中々口にできません。

 宴会をしたいと言われて持ち込まれた物を、

 母が料理した事があった気がします」

「俺は小さかった頃に一度だけ食べた事があるのですが、

 どんな味だったかすら覚えていません」


誕生日や休日の豪華料理の逸品か、話の通りだ。


ヤギの肉と兎の肉は両方ともボスのドロップ品なので、

ボスの強さ的に言えば買取金額にあまり差は無い気がするが、

肉の可食部分で大きく差がある。


一切れ100ナールと、4人が腹いっぱい食べれて100ナールでは、

身入りの少ない兎の肉は高級品と言う事になるだろう。

売った事も買った事も無いのでいくらか知らないが。


じゃあそれより高価なザブトンやトロなんかは、

極稀に流通する滅多にお目に掛かれない食材って事だ。

ルティナだって、献上品で食べた事がある程度だった。

食道楽ミチオ君達、いい物食べてるなー。


「明日はボスも何回か倒してみようと思うから、すぐに食べれるぞ」

「「えっ?」」


何か間違ってる?この迷宮のラピッドラビットは肉を落とさないとか?


「いや、だから倒せば肉が出るだろう?」

「お売りにならないのですか?」


そっちか。


「美味しいらしいからな、食べたいだろう?

 何だっけ、しぇーまやき?にして欲しい」

「シェーマですね、かしこまりました。明日用意致します」


ロクサーヌが提案した食べ方だ。

記念すべき、この世界の料理の1品目。とても興味がある。


「ああ、それから、ナズはこれをアイテムボックスに入れてくれ」


アイテムボックスから食材っぽいものを纏めて出す。


ラムとヤギの肉をナズに渡した。

コボルトソルトとコボルトスクロース、コーラルゼラチンは、

日持ちしそうなので使っていない皿の上に置いた。


「調味料を収納する箱なんかも合わせて買っておいてくれ。

 後は、ミルも必要だな?」

「かしこまりました」


「ジャーブ、オリーブは何層に出るのだっけ?」

「ナイーブオリーブでしたら、俺が行っていた階の1つ手前の11層です」


「そうか、明日行ってみよう、食材を集めないとな」

「ご主人様、大丈夫でしょうか、私はまだ8層に入ったばかりです」


既成概念的にはそうなんだろう。

だがアナ、お前はLv30で上級職に転職してるベテランなのだ。

ジャーブより強いぞとか言っても、信じて貰えないかもしれないが。


「ジャーブがいれば安心だろ」

「そ、そうなのですが」


「無理そうならすぐに帰る、オイルは4,5個もあれば十分だろ?」

「お店で売っているひと瓶当たりがこの位です。

 魔物から出るオリーブオイルがどの位の量なのかは存じませんが、

 そう沢山は必要ないのではないでしょうか」


ナズが料理の知識が豊富なのは助かる。


・・・あれ?何でナズは料理人のジョブ持ってないんだ?

探索者のLvが足りない?


料理人のアイテムボックスは30×30だった気がするから、

探索者?戦士だったっけ?Lv30が必要なのだろう。

そうか、それなら足りてない。


環境が整ったのだから、自分も料理人と錬金術師を取得するべきだろう。

明日は家の工事の業者が来る。

探索は早めに切り上げて、自分の事や家の事をしよう。

ジャーブ用にベッドとタンスも買わなければ。


明日もやる事は一杯だ。

∽今日のステータス(2021/08/14)


 ・繰越金額

     金貨  3枚 銀貨 51枚 銅貨102枚


  装備品売却     (34960→45448й)

   メイス              2000

   鉄の槍              1000

   レイピア             2200

   ロッド              2000

   鉄の剣      ×4      4000

   銅の兜              1000

   硬革の鎧     ×4      4500

   ローブ               100

   銅の小手             1000

   皮のカチューシャ ×2        50

   革のジャケット  ×2      4000

   革のブーツ    ×3      5250

   皮のブーツ    ×4       160

   皮のサンダル             20

   革の帽子     ×3      1950 (交換品)

   皮の鎧               200 (交換品)

   硬革のジャケット         2000 (交換品)

   皮のグローブ             30 (交換品)

   革のブーツ    ×2      3500 (交換品)


  装備品購入     (59600→41720й)

   竜革のカチューシャ        8000

   竜革の帽子           10000

   竜革のジャケット        14000

   竜革のミトン           8000

   竜革の手袋            9600

   竜革のブーツ          10000


  裁縫道具              (150й)


            銀貨+36枚 銅貨-22枚

  ------------------------

  計  金貨  3枚 銀貨 87枚 銅貨 80枚



 ・装備更新


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者  Lv35

   竜革の帽子(++)チェインメイル(-)竜革の手袋(++)

   竜革のブーツ(+)


 ・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv31

   鋼鉄の槍(++)

   鉄の兜(-)チェインメイル(++)鉄の籠手(-)鉄のグリーブ(-)


 ・アナンタ 猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv13

   硬直のエストック(石化添加 +)鉄の盾(+)

   竜革のカチューシャ(+++)竜革のジャケット(+)

   竜革のミトン(++)柳の皮靴(回避上昇)


 ・ジャーブ 狼人族  ♂ 28歳 戦士  Lv22

   バスタードソード(++)

   竜革の帽子(++)竜革の鎧(+++)竜革の手袋(++)

   竜革のブーツ(++)



 ・異世界13日目(日没前)

   ナズ・アナ8日目、ジャーブ2日目

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 自己フォロー 今日のステータス) そういえば、§051でジャーブに竜革装備を揃えていましたね。 竜革の鎧は3000/12000のようでした。 (何となく装備ランクで倍々や4の倍数上…
[気になる点] 今日のステータス) >装備品売却 (34960→45448й) > 硬革の鎧 ×4 4500 > 革のジャケット ×2 4000 > 皮の鎧 200 (交換品) > 硬革のジャケット…
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