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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第四章 資金
55/394

§054 右手

ニードルウッドのボス、ウドウッドのボス部屋は

前のパーティがまだ戦っているようで扉は開かなかった。


「この階層のボスも長く待ちそうかな?」

「ええと、ここのボスは単調なので、

 長くて20分、早いと15分位でしょうか」


ジャーブが答えた。

この階層からはアナも経験が無いので、

迷宮の知識はジャーブの経験に頼る事になる。


それにしても、1つ下の階のミノで30分掛かるらしいのに、

敵が強くなって所要時間が半分だと?

どういう計算だ。


「そんなに早いのか」

「パーティメンバーも多くなりますので」


「なるほど」


そうか。

ミノなら2人でも行けるが、

この階層からは4人以上で組む必要があるからか。


初心者と脱初心者で、殲滅速度が違うと言う事らしい。

単純に階層と難易度はイコールでは無さそうだ。

いや、そういうメンバーを組まざるを得ないと言う難易度なのか。


迷宮はボッチやコミュ障には厳しい世界だ。

自殺未遂者に推奨するような世界では無い。

そんなに世渡りが上手ければ、死ぬ程の窮地に陥る事は無いだろう。

人生に愛想を尽かせた人は、剣と魔法の世界は選ばない方が良いと思う。


──ゴゴゴゴゴ・・・。


「おお、意外と早く開いたな」

「前パーティが入ってから、時間が経っていたのでしょう」


「ええとジャーブが入って初めてだな、正面がアナ、左へジャーブ。

 ナズはアナの後ろに付け。自分は右に行く」

「「はい」」「分かりました」


駆け足で部屋中央に移動する。

煙が晴れる時点で、包囲は完了していた。


いつもなら先制して攻撃を仕掛けている所だが、

こいつの脅威はその長い枝腕を振り回した際に、

どのタイミングでぶつかって来るか読み難い点にある。


逆に言うと、枝を避けた時が攻撃チャンスなのだ。

ニードルウッドの攻撃やスキを理解していないと、このボスは戦えない。


両枝が大きく振られる。

ジャーブは大剣で逸らし、アナは受け止め、ナズはそもそも当たらない。

自分には足元へ来たので、前に飛び込んだ。


オーバーホエルミング!


飛び込みながらスラッシュを発動し、

袈裟、逆袈裟、突きの順に攻撃を入れる。

心の準備さえできれば、3回のスキルがしっかり決まるようになった。


突きに合わせて体を押し出し、再び距離を取った。

どうだ、この完璧なコンボ。

迷宮初心者の頃とは違い、動きも多少サマになって来た。


頭上スレスレを電柱くらいの太い枝がかすめて行った。

(あっっっぶねえ!)

油断してはいけないのだった。


今のは攻勢に出るタイミングだったはずだが、完全に逃した。

突きでスラッシュを入れて、更に逆に斬りながら離れ、

今度は枝の動きに注視する。


植物系の魔物はどっちを向いているのか解らないし、

攻撃の起点も明確に定まっていないので気が抜けない。

弱点があるとしたら攻撃が大振りであると言う点だ。


ウドウッドの特徴は大きさもその1つだが、

恐ろしさの元となるのは攻撃枝の数だ。

下に4本、上にも3本ある。


ニードルウッドは片手、または両手を回転して振り回すだけの動きだが、

ウドウッドは上からの振り下ろしや、下からの振り上げ、

回転攻撃の際に遅れて枝がしなってくる遅延攻撃もある。


幸いな事に上と下が別々の動きをする事は無いので、

1本でも動きが分かれば予想は立てられる。


今度は左回転、幹だけ動いて枝の動きは無いから遅延攻撃だ。

左側の枝に注目する。


来たッ!枝は上側に振られる。

頭を下げてダッキングで避けてから、

スラッシュの3コンボを入れた。


離れた直後に頭上からの振り下ろしが来た。

デュランダルを構えて斜めに逸らし、

その枝をスラッシュで叩く。


次の右回転の直接攻撃では、足をすくわれた。


ブーツ越しだったが、軽くは無い痛みが響く。

と言うか、どんな装備をしていてもダメージは基本貫通だ。

防具で減算されたダメージが、直接体に蓄積する。


我慢できる範疇はんちゅうである事が幸いだ。

薬を必要とするまでは無い。

痛みを堪えた分チャンスを少し無駄にした。


オーバーホエルミングでスラッシュを1回入れ、直ぐに距離を取る。

しかしそのままボスが煙となった。


「うー、足を引っ掻かれたが、結構痛いな」

「大丈夫でしょうか?」


「まあな、強くぶつけた位の痛みだ」

「待って下さい、今お薬を・・・」

「いや、要らない、あっ、要らないから。痛みはちょっとだ」


ナズがアイテムボックスの詠唱をしようとしていたので止めた。

そもそもデュランダルで攻撃したので、

受けたダメージ分は既に回復している。


「それにしても1分も経っていません。ユウキ様は強過ぎます」


オーバーホエルミングを用いて平均2回斬り付けたので、

スラッシュの攻撃力2倍とデュランダルの攻撃力5倍も併せて、

1ターンで平均20倍のダメージを与えている。

みなし20分は戦ったはずだ。

敢えてそれは言わない。


ウドウッドはリーフを落とした。

ニードルウッドのレアと同じなので有難味が薄い。

さっき一杯集めたし。


レア枠のワンドが出ても、

スロット付きが選べる武器屋で選んだ方がマシな気がする。

つまりハズレボスと言えよう。

戦い方だけ学んで、倒せる事が解ったので次に行く。


9層に入るとジャーブが申告してきた。


「ここのボスはかなりの速さで、手恐いです」


「兎だな?」

「ご存じですか、失礼しました」


いや、何が出るかは知らないが。


速いならラピッドラビットだろうと思っただけだ。

ウサギの毛皮も肉も良い値段になるはずだ。


ん?待てよ・・・。


あれは雪も降るような地方だったから、

ウサギのコートが売れたのであって、

この地方でもウサギの毛皮が良い値段になるとは思えない。


そこんトコ、どうなの?

教えてジャブえもん。


「ウサギの毛皮の需要はあるのか?」

「基本的に、出回る革製品は殆ど兎の皮なので普通に買い取って貰えます」


レザーハードレザーは?」

「それは装備用で、また別です。

 ウサギの方は装飾品とか、家具の握り手とか」


つまり、装備品以外はウサギの毛皮ハイドと。

コートに使われる位だし、柔らかくて馴染むのだろう。


それよりも、ウサギのモンスターカードは妨害だったはずだ。

ナズの槍に付けて置かないと今後困る。

アナの剣にも欲しい。

最低2個は出さないといけない。


珊瑚の方は、ボスが楽勝だったから300回も倒せたのだ。

ラピッドラビット300回は、ここが低層階であっても流石に厳しい。

と言う事で、兎の毛皮300枚を目指そう。

ミチオ君も確か兎の毛皮300枚を集める過程で1個出していた。


300匹で1個、338匹で2個出た実績がある・・・。

大体400匹で2個とも考えてられないか。

そうすると、モンスターカードの産出率は約0.5%程では?


ならば400匹倒そう。

そしてウサギを2つゲットする。

今日の目標が決まった。


「アナ、この階の魔物はウサギだ、気配でわかるなら優先してくれ。

 モンスターカードが2つ出るまではこの層を超えない」

「かしこまりました」


とはいえ、通常の魔物であるスローラビットは、

その名の通り遅くて倒しやすため、

この層も人気エリアとなっている。


獲物は奪い合いだ。

せめてもの救いは9層もなると迷宮自体がかなり広い事だ。


「すぐ近くに出遭った事のない魔物の気配がします」


先導したアナが警戒をする。

アナはスローラビットには出遭った事が無いのだと思う。

自分はこの世界へきて間もなくの頃、荒野で出遭った。


その時はデュランダル一振りで倒せたので何でも無かったが、

今回はそうは行かないだろう。

1つ前の層のニードルウッドでも5刀を要する。

それならば、ここでは倒すのに6回か7回は必要だ。


それに前回は非アクティブだったが今回は積極的に襲ってくる。

ボスへの布石にもなっているはずだし、しっかり動きを研究した方が良い。


「おそらくこちらですね」


角を曲がると直ぐにスローラビット4匹が現れた。

2匹と2匹の纏まりになっている。

つがいか2グループなのか、

たまたまそういう配置だっただけなのか良く判らない。


「手前2匹は任せた、奥を取って来る!」

「「「はいっ」」」


右奥のスローラビットが跳ねて近付いて来た。

どう動くのか、見極めてからでは遅い。


すぐにオーバーホエルミングを使用し、様子を見届ける。

その隙に目の前のスローラビットがタックルを仕掛けて来ていたが、

避けながらスラッシュ3回を入れる。


だいぶスラッシュの扱いにも慣れてきた。

落ち着いていれば3回は固い。

4回はたぶん頑張っても無理だ。


奥のスローラビットは2回跳ねただけで、その場で立ち止まった。

飛距離が合わなければ立ち止まるのか。


多分ボスは止まったりしない。

ラピッドラビットはフェイントを仕掛けてくると言う話だったから、

この動きからフェイントを読み取れと言う事なのだろう。

スローでのチュートリアルと言う事だ。


次に飛び出してくる動きに注意をしながらデュランダルで叩く。


オーバーホエルミング中に3回のスラッシュの練習だ。

スラッシュ!スラッシュ!スラッシュ!


1回目は剣がするっと通り、2回目は空を切った。

3回目は完全に無駄になった。

スラッシュ4回分以下の体力なのだろう。


奥の方でまごついているスローラビットに、

さっきと同じようにスラッシュを当て、

最後はスラッシュではなく通常攻撃を当ててみた。

1刀目で倒せたので、デュランダル換算では7回分と言う事が判明した。


7回か・・・。これならスラッシュ無しでもまあ戦えない事も無い。

逆に、オーバーホエルミングでスラッシュを3回発動させても、

結局次ターンにもつれ込んでしまうのであれば、

最初から2ターン分時間を掛けて剣を振っても同じ事かもしれない。


あ、いや、スラッシュを3回やってから1刀?

或いは一振り当てた後スラッシュ3回?

どちらが楽で効率が良いかはやっていくうちに解るだろう。


「ご主人様、数多く倒す方が宜しいのでしょうか」

「うん?・・・まあそういう事になるな」


アナが発言してきた。

気が付いた事は言えと命令している。

そして機転が利く子なのだ、思う所があったに違いない。


「恐らくですが、

 この階層は見付かっていない隠し部屋が2つあるようです」

「どういう事だ?」


「魔物が集まっている部屋が2つあります。

 この階層位になりますと普通は危険ですので避けるのですが、

 ご主人様の場合全て倒すと仰る気が致しましたので」

「なるほど。でかしたアナ、その通りだ。行ってみよう」


気配で気付いたのか。

臭いで判断するロクサーヌとの違いが生きた。

部屋を隔てると判らないと彼女は言っていた。


直ぐ行こう。今行こう。早く行こう。ほらほら。†

オーバーホエルスラスラスラッシュだ。


全体魔法攻撃が無いのが悔やまれる。

あ、いや、自分にはボーナス魔法がある。

やるか?


・・・いや、そもそもLvが低すぎてまだ発動させられないと思う。

うっかり使えてしまったらMP切れでどん底自殺だな。

危ない危ない。


アナに道案内されて、通路を進む。

道中にもウサギは出るので、それも頂く。

試行回数は多い方がいい。


「ご主人様、この向こうです。恐らくどこかの壁が開くはずです」


壁を探る。

ペタペタと触ればいいのか?それとも押す?

壁の開錠条件が良く分からないので、強く押しながら進んでいく。


「うーん、何も無さそうだが」

「おかしいですね・・・。反対の通路でしょうか」


「反対側にも通路がある?」

「はい。この部屋とは少し離れた位置に、魔物の気配が点在しますので、

 恐らく別の通路があります」


入口から一直線に来れて、簡単に見つかるような部屋なら、

もう既に誰かに発見されているはずだ。

人気エリアなんだし。


「じゃあ大回りするか」

「はい」


アナは向こう側にあるらしい通路を目指して

気配を頼りに道を探った。

道中に出てきたウサギも締めた。


「すみません、あちらに行けそうな道がありません」


「と言う事はその向こう側のエリアそのものが、

 どこからかの隠し通路から入れるエリアと言う事だな」

「恐らくは」


「じゃあ右手作戦だ」

「右手?」


「右手を壁に当てながら、ここからずっと一周する」

「かしこまりました」


全員で壁をペタペタ触りながら、道沿いに移動する。

この真ん中渡るべからずだ。

傍から見たらおかしな連中だろう。

誰ともすれ違っていないのが幸いだが。


迷宮の通路には行き止まりがある。

隠し部屋が無いかどうか、突き当りを触ってみるのは基本らしい。

そこが魔物の集団がいる部屋の可能性があるから、

腕に自信がないものは触れない。


そして隠し扉なら一定時間で閉まろうとする。

一度発見したり、地図などが出回っていない限り、

知らないものは永遠に知る由もない。


そんな突き当りがいくつも存在する。


「あっ、ここです」


アナが何かに気付き、壁に手を当てて押し込むと、

左右に線が入り、スッと奥へ引っ込んだ。


「こちらは、倒されていない魔物が多くいるような気がします。

 階層全体で言うと人はそこそこ多いのに、

 こちら側の魔物だけ多く残っているのが不思議でした」


「では未発見エリア、もしくは知る人ぞ知るエリアなのだな」

「そのようです」


よっしゃあ、入れ食いじゃあ!

これで毛皮もモンスターカードもはかどるはずだ。


「9層では1年ほど戦いましたが、この壁の向こうは初めて見ます」


ジャーブも知らないのか。


1年潜って発見されない壁。

発見できたとして、ウサギは狩りやすいので誰にも言わない。

意図的に広まらないのか。


「では先ほどの魔物の部屋へ向かって行こう」

「では、左手で」


左側にあるのか、なるほど。

∽今日のステータス(2021/08/11)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者  Lv34

  設定:探索者(34)剣士(30)英雄(21)騎士(11)

     賞金稼ぎ(11)薬草採集士(1)

  取得:村人(5)戦士(30)商人(30)色魔(1)奴隷商人(1)

     暗殺者(1)武器商人(1)防具商人(1)農夫(1)


 ・BP132

   キャラクター再設定   1pt   6thジョブ     31pt

   獲得経験値上昇×10 31pt   武器6        63pt

   必要経験値減少/2   3pt   詠唱省略        3pt


 ・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv29

 ・アナンタ 猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv3

 ・ジャーブ 狼人族  ♂ 28歳 戦士  Lv17


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者  Lv35

  設定:探索者(35)剣士(30)英雄(21)騎士(12)

     賞金稼ぎ(12)薬草採集士(4)


 ・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv29

 ・アナンタ 猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv5

 ・ジャーブ 狼人族  ♂ 28歳 戦士  Lv18



 ・異世界13日目(朝10時頃)

   ナズ・アナ8日目、ジャーブ2日目



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  8 ニードルウッド    /  ウドウッド

  9 スローラビット    /  ラピッドラビット

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