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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第回章 展望
372/394

§359 嫌

緊張感と気分の悪さ、両方の不快感で目が覚める。


折角外国から帰って来てのんびりできると思っていたのに、

実際気が休まったのはほんの数日。

思えばクルアチに色々と気を回した事が原因で、

ストレスを溜めてしまっていた。

自分がそうなのだから、他の者たちもそうだったのだろう。


その件に付いては昨日で完全に片が付いた。

そして今日でようやく・・・、

ようやくボルドレックの件も終わりになる。


いや、なるよね?

もう流石に勘弁して欲しい。

次に何か言って来たら、今度は容赦しないぞ。


次は家ごとぶっ潰そう。

勝ったのはこちら側なので、再戦を仕掛ける権利はあるはずだ。

残った跡取り息子であるアイザックを殺してしまっては、また遺恨が残る。

面倒だが生かした状態で負けを認めさせねばならない。


吹っ掛けられた決闘と言うのは本当に面倒だ。

何せ相手がこちらに恨みを持っている訳なのだから、

勝って退けた位では振り上げた拳を大人しく下げる訳が無かったのだ。


そういえばアムルの一件では完全に盗賊団を壊滅をさせた。

今になって思えば、その方が逆に良かったのだと思える。

あの時は後になって残酷過ぎたとか、やり過ぎたかと反省をしたのだが、

甘っちょろい事を言わずに最初から全力で叩き潰すのが最善であった。


地球感覚で慈悲など向けてはいけないのかな?


なるべくなら波風立て無いようにやって行きたかったのに。

余りこの世界に毒され過ぎても自分らしさが無くなってしまって嫌だが、

今うちで預かっている子達の安全を第一に考えるとなると、

時には冷酷な判断を下す必要もある訳だ。


帝王学?

そんな物は一介の日本人学生が習うような物では無い。


何を以って社会の得とするべきか。

何を以って家の得とするべきか。

微温湯ぬるまゆの日本で育った現代っ子には匙加減が難しい。


そんな葛藤に気付いたのか今日のナズのキスは柔らかく、

腰にも手が回って来て優しく包み込んでくれたのだった。


アナも今日に至っては飛び付いて来る事も無く、

抱擁し合うナズと共に後ろから包み込んでくれて、

いくさの合図では無く安らぎを与えてくれたのだった。


全く、昨日の事と言いアナには敵わないな。


そしてイルマはただその様子をきょとんと眺めているだけだった。


今日は彼女の元主人と戦う事になる。

彼女の深層は解らない。

自分の出した決断とその結果が、

イルマの望む事に成るべく近しい事でありますように。



   ***



──主人はいつも奥様達と情熱的な接吻をされてお目覚めになる。

  どちらかと言うと、奥様達が楽しんでされているように見えていた。

  主人のお世話をするようになって以来、

  お2人はずっとその日課を続けているのだとか。


  私はまだ主人に可愛がられた事が無いので良く解らないが、

  お務めの前に後にと幸せそうな笑みを浮かべられている奥様方を見て、

  もうずっと羨ましく思っていた。


  私も、病気を治して頂いた後はそこに・・・。

  ぴちゃぴちゃと水音を鳴らす深めの接吻を見聞きしながら、

  私は1人で舌を動かしてみるのだった。


  けれども、今日の奥様達の様子はいつもと違っているようだった。


  理由は解っている。

  私が以前お仕えしていたアイザック様と、今日決闘をなさるからだ。

  奥様方が主人を心配なさっているのだと言うのは良く解った。


  私も同行する事になっているようだが、

  できる限り主人の足を引っ張らないように気を付けたい。

  主人は昨日、アイザック様の元へ戻っても良いと仰られた。


  直ぐにお断りした。


  望んで仕えた訳でも無い。

  望んで奉仕した訳でも無い。

  私はただ命令だから従っただけである。


  今の主人は、私に選択を与えて下さる。

  私の心を汲んで下さる。

  妹とともに、理解しようとして下さる。


  迷宮で生計を立てられるお方に仕える身なのだから、

  職務として迷宮へ行く事は避けられない。

  怖いが、これは仕方の無い事だと思う。


  ただそれも全員が安全である道を必ず模索されておられるし、

  私もこれまで危険な目に遭った事などは一度も無かった。

  全ての奴隷に、高級品らしい命の替えになる装備を配られておられた。

  どこまでお優しいお方なのだろうか。


  果樹園の話をされた時、アイザック様の元に戻るかと問われた時、

  私は主人の元から離されてしまう事に恐怖を感じたのだった。


  私も・・・そう、

  2人の奥様のように主人をお慕いし始めてしまったのだ。

  もっとお仕えしたい、まだ恩返しができていない。


  売られる前に商館で教育を受けた際、

  何時までも同じ主人の元で仕事をする事はできないのだと教わった。

  私達屋敷の奴隷は頻繁に取り替えられるのが普通であり、

  例えそれがどれだけお優しい主人に当たったとしても、

  それは変わる事が無いはずであった。


  勿論ボルドレックの屋敷で働いていた時だって、

  別段待遇が悪かったかと言えばそうでは無くって、

  どちらかと言えば傍若無人に振舞う子息や、

  先輩奴隷イェーラの立ち振る舞いに不満があった位だ。


  この主人に至っては・・・。

  そういう事には成らないのだと言う事は見て取れる。

  奴隷同士、皆気持ち悪い位に仲良しであるし、

  妹はこの家で最も信頼の置かれている騎士?の同族と結婚を許された。


  妹はもう安泰なのだ。


  じゃあ、私は・・・。

  妹と共に農園で働かせるおつもりなのかとも考えたが、

  どうやらそうでは無くってずっとお傍に置いて頂けるらしい。


  アイザック様の件も、私が望めばと言う形で選択肢を頂いた。

  決闘を回避するための取引材料にされた訳でも無いし、

  相手の勝利報酬として当てられた訳でも無かった。


  やはり私はここにいる事を許されている。


  それだけで、私は満たされた気持ちで一杯だった。


  いつものようにお部屋の掃除と寝室を整えた後、

  庭木の手入れを行い、奴隷に似つかわしく無い豪華な朝食を頂き、

  主人に連れられてユーアロナの騎士団へ向かったのだった。



  ***



  ユーアロナの騎士団ギルドは、街の中腹よりも上層にある。

  大階段の横にドンと構えられた大きな建屋には、

  広い訓練用の広場があってここが決闘にも使用される。


  ボルドレックが主人であった頃には、

  何度もここで決闘の試合が行われた。


  私は控室で待機させられ、

  荷物を運んだり借り受けた戦闘奴隷の武器などを管理したりと、

  何かしら直接の指示・・を受けた事は無かったが、

  イェーラはいつもボルドレックの傍に付いていた。


  その理由は現主人との決闘で明らかになった訳であるが、

  捨て駒にされそうだった私を救って頂けた事には本当に感謝している。


  このユーアロナ騎士団をお尋ねになるのは2度目なのだと、

  主人はそう仰られた。

  多方面に顔が利きそうなお方であるのに、

  どうやらこの街には余り知見が無いようだ。


  その位で無ければこの街で悪評が高かったボルドレック相手に、

  決闘なんてしようと思わなかったのだろう。


  そして2度目だと仰っていたのにも関わらず、

  どこに行くのか解っておられる様子で、

  奥様2人と共にずんずんと建屋の中へ入って行かれた。


  こういう場合、奴隷の身分である者は外で待つのが常である。

  私は入り口でお辞儀をして主人を見送った。


  暫くすると、主人が戻って来られた。

  装備・・・などは未だ身に着けておられない。

  主人が直接お戦いになるのでは無いのだろうか。


  ナズ様もアナ様もどちらもお強いし、

  場合に依っては家の誰かを呼ぶと言う事も考えられる。

  直ぐに私は掛け寄って、ご挨拶をしてお出迎えした。


「お帰りなさいませ、ご主人様」


「ああ。話し合えればと思ったが、まだ本人と会ってすらいない。

 相手は何としても決闘を望んでいるらしくってな。

 外で待つようにと言われた」


  その後に続いて、見覚えのある男性が現れた。

  お供などはいないのでお1人だ。

  見間違えるはずが無い、アイザック様本人であった。


  屋敷におられた頃よりはややお顔が引きしまってはいるが、

  髪型はボサボサに乱れておられ、やつれた感じにも見受けられた。

  見る限り、お家には戻られていないのだろうか。

  そうであればもう少し整えられているはずである。


  鎧を身に着けておられるので体格などは解らないが、

  あんな物を着ておられるのだから、

  以前よりはたくましくなられたのだろう。


「お前が商人ユウキか」


  アイザック様は主人を呼び付けにされると、

  いきなり食って掛かった。

  横にいた騎士2人が止めに入る。


「そうだ、ボルドレックの子息、アイザック殿かな?」

「フン、白々しい。貴様のせいで私は騎士団を退役になったのだ。

 その落とし前は付けさせて貰うぞ」


「そうは言っても、吹っ掛けて来たのはお前の親父さんだ。

 自分は火の粉を振り払っただけに過ぎない。

 そのせいで退役になったのは残念だが、自分の所為では無いぞ?」


「貴様は弟を殺したドワーフの奴隷を持っていたのだったな?

 それだけでも十分決闘を要請するに値する。今直ぐにその娘を差し出せ」


「その話はもう決着が付いた。

 お前に差し出す義理は無いし、こちらは一切得をしない。

 代わりにその費用を払ってくれれば考えよう」

「何だと!犯罪奴隷を匿うのか!」


「事故だったのだから犯罪奴隷では無かったのだろう?

 こちらは高い金を払って彼女を正式な商館から買ったのだから、

 そちらも正式に彼女と見合う金を払うべきだろう。

 お前の親父さんにもそう伝えたのだが、

 彼は金では無く力で解決しようとしたのだ。自分の所為では無いぞ」

「黙れ!貴様のお陰で俺は帰る家すら無くなったのだ!

 許さんぞ!ただで済むとは思うな!」


「お前の親父さんが金に物を言わせて借りて来た奴隷数名に、

 自分は借りた奴隷1人で勝ったのだ。聞いていなかったのか?

 見た所お前は1人じゃないか、死に急ぐような真似はするな」

「これは名誉の問題だ!

 貴様だってその女2人しか連れておらんでは無いか!

 お前の持つ奴隷全てを殺し、お前も殺す!」


「失礼だな。この2人は妻なので奴隷では無い。

 妻は今回の話に無関係なので、決闘をする相手ですら無い。

 まあ1人はお前たちが探していたドワーフの女だが?」

「なっ、なっ、何だとぉ!貴っ様ぁ!罪ある女を娶ったのか!

 ではそちらの女と試合だッ!」


「と、申されておられますが、

 決闘を申請された相手は自分であって妻では無いですよね?」

「む?まあ、そうであるな。

 挑戦者が勝てば決闘の再申請は認められるが、

 負けた場合家人への申請は認められん。

 アイザックよ、そういうのはまずこの男と戦って勝ってからにせよ」

「クッ・・・では直ぐに勝負せよ!」


  主人とアイザック様の話し合いが終わったらしい。

  話し合いと言うよりも一方的に喧嘩を売られただけであったが。


  アイザック様はもう少し冷静な判断ができるお方かと思っていた。

  ここまで判断力の欠ける怒り狂ったアイザック様を見たのは初めてだ。


  そうまでさせる事が・・・あったのだと私は思った。

  騎士団を退役させられ、家を失い、

  今アイザック様はどこで何をして生活をされておられたのだろうか。

  悪いお人では無かったはずだが、不憫で成らない。


  しかし今は最も信頼を置いている主人に、

  ただ食って掛かるだけの敵であるお方。

  同情はしたが、肩を持つ気など最初から無かった。


「お前、イルマ!イルマなのか!」


  アイザック様はようやく私に気付いた様子であった。

  以前着ていた給仕服に比べたら遥かに上等な服を与えられ、

  今の私は街娘の格好をしている。

  髪もアナ様に整えて頂いているし、奴隷には程遠い身なりだ。


  それは、妹を見れば良く解った。

  主人の元で、妹は見違える程可愛らしく見えた。

  要するにアイザック様から見て、私も。


  それにしても、勝手に返事をして良いのだろうか?

  主人を見ると頷かれた。


「そうでございますが、何か御用でしょうか」


  そう返事をすると、再びアイザック様は主人に突っ掛かった。


「貴様!!私から職務や家を奪うだけで無く、イルマまで奪ったのか!」


「いや、ボルドレックがナズを要求して決闘を仕掛けて来たから、

 自分は代わりに屋敷奴隷を1人寄越せと要求しただけだ。

 そうで無ければ対等な決闘に成らないからな?

 自分が望んでイルマを指定した訳では無い」


  主人は嘘を仰られている。


  元々私を手元に置くためわざと吹っ掛けられ、

  最初から私を指定するおつもりだった。

  どちらかと言えば、クルアチまで身請けた事の方が謎であった。


「イルマを返せ!」


「それは決闘の条件に入っていない。自分を殺せばイルマは死ぬぞ」


  再び主人は嘘を仰られた。

  私を守る、優しい嘘。

  私は死後解放に遺言がなされているのだと、既に聞き知っている。

  

「イルマ、お前は私の元にやって来た時に、

 誠心誠意私の世話をするのだと、そう言ったでは無いか。

 そんな男に仕えず私の所へ戻って来い!」


  再び主人を見る。

  返事をするお許しを頂けた。


「それはボルドレックの命であったからです。

 今は別の主人に仕える身でありますので、

 あなた様の命に従う義理はございません」


「そう言わせられているだけなのだろう?

 また再び私の元に戻って来い。お前を買い戻せる金ならある」


  金・・・。


  ボルドレックなら持っているだろう。

  けれどもこの酷くやつれたお姿であるアイザック様に、

  私を買い直せるお金を出せるのだろうか。


  家には帰っておられない様子であるし、

  およそお金を持っている風合いには見られなかった。


  それに私は魔法使いのジョブを頂けている。

  ボルドレックが決闘時に連れて来た魔法使いのお方は、

  謝礼金として50万ナールを支払っていたのを知っている。

  お借りしただけで・・・だ。


  例えそれが奴隷であったとしても、

  買い付けるのであればもっと・・・。


「お言葉ですがアイザック様。

 私はこのご主人様の元で、自らの価値を高めさせて頂きました。

 恐らくアイザック様では今の私をお買いになる事はできません」

「何だと?どういう事だ」


「まあ買えない事は無いんじゃないか?

 イルマは現在魔法使いのジョブを取らせている。

 競売で買ったとしたら150万ナール程度だろうな。

 元屋敷女中、魔法使い。

 おまけにまだまだ若く性的奉仕もできるとなると、その位だろう?」


  主人が私の値段をお伝えになった。


  私が・・・150万ナール。

  確か、私が売られた際は妹と2人で60万ナールだったはずだ。


  年の近い処女の妹と2人一緒であったと言う特殊性は、

  それが1人であれば当然意味を成さない。

  更に中古であるならばその価値はぐっと下がる事になる。

  只の家政奴隷であればせいぜい4,5万ナール。

  元屋敷勤めを加味したとて良くって7万ナールが精々だ。


  私の・・・価値・・・150・・・。

  私は私の手にした待遇と私自身の価値、

  凄い主人に必要とされた事への自己肯定感に、

  ただただ震えが止まらなかった。


「な、何だと!嘘ばかり吐きおって!

 奴隷が魔法使いなんぞに成れる物か!

 イルマ、こんな嘘吐きの主人の元など居ても無駄だ!私の元に戻れ!」

「お断り致します。私は今後もこのご主人様にお仕えして参ります」


「騎士様?他人の奴隷にちょっかいを掛けると言うのは、どうなのだ?」

「当然許されざる行為であるので、

 お前には相手へ決闘を持ち掛ける権利が与えられる。

 この場合あちらから求められているので、願ったり叶ったりだろう?

 丁度良かったでは無いか」


  主人は騎士様にこのやり取りを止めさせるよう頼んだようだが、

  素っ気無く返されてしまったようだ。

  やっぱり決闘をして主人が勝たれなければ、

  この意味の無いやり取りは終わらないのだ。


  それよりも未だ騎士にすら成られておられないアイザック様より、

  今の私の方が強いのでは無いだろうか。


  一般的に25層で戦えるようになれば騎士への就労が認められると、

  ジャーブ様からはそう聞いていた。

  私は55層で戦った身だ。

  アイザック様より先に行かせて頂いている事は間違い無い。


  それに鍛錬を始めて20年は掛かるとされる冒険者に、

  主人はハンダールと言う男をたった数日で就かせていた。


  私は知っている。

  主人は何も仰らないが、

  主人の元で育った奴隷は皆恐ろしい強さになっているのだと。


  ラティ様からは主人と同じパーティに入った際に、

  急激にレベルアップしたのだと言う話も聞いた。

  それに殆ど戦った事の無いはずのクルアチが、

  55層の魔物を相手に果敢に攻め込み、弓を乱射していた。


  訓練も何も受けていないお屋敷奴隷だったクルアチが、

  たった数日であんな風に成れるはずが無い。

  であるならば、やはり主人と行動を共にした者は急成長を遂げる。

  ラティ様の話と合致するのだ。


  私も、就けて頂いた魔法使いと言うジョブの強さは理解できていた。

  それに僧侶として被災地で治療に当たった際にも、

  私は熟練の僧侶だと何度もお褒め頂いた。

  僧侶として主人と共に行動したのは、

  ・・・まだほんの数日だったはずなのだ。


  私の実力は・・・このアイザック様より確実に上である。


  覚悟を決めた。

  私が戦いに出ると言えば、アイザック様は諦めるだろうか。


「ご主人様、私が・・・、私が戦います!」


「えっ?お、おい、流石にそれは」

「ご主人様、私に提案がございます。

 私に、アイザックを討ち取らせては頂けませんでしょうか。

 それで終わりにして見せます」


「え、い、いや、駄目だってば。危険だろう」

「私がアイザックを下せば、

 もう言い掛かりのような物は付けて来ないのだろうと思います。

 やらせて下さい。あの男に負ける気は致しません」


「待てっ!う、嘘だろっ!おい、イルマ!

 私にっ!私にずっと尽くすのだと誓ったでは無いのかッ」

「それはボルドレックに仕えていたからです。

 貴方様に仕えていたのでは無いと、先程も申し上げました。

 今はこちらのユウキ様に仕える身。

 それも私自ら進んでお仕えしたいと、そう思える立派なご主人様です。

 この身を捧げ、ご主人様に掛かる不名誉は私が払います」


「あー、で、誰が出るのか決めたと言う事で良いか?」


  騎士様がいい加減にしろと私達を責付せっつかす。


「え、いや、イルマ?厳しかったら直ぐに降参しろ。

 負けたって良いからな?」

「いいえ、負けません。

 その代わり、ご主人様の装備を私にお貸し頂けませんか」


「弓なんて撃った事無いだろう?どうするんだ・・・」

「持つだけで魔法が強くなるのだと、仰っておられました」


「え、あ、ああ。そうだな。あれ?イルマに言ったっけ?」

「ええと、アナさんからお聞きしております」


「あーもう、何でも共有されているのだな」

「ありがとうございます」


  私は主人がいつも使っておられた弓と、

  いつも着ておられた装備品をお借りして、

  決闘の場に向かった。


「アイザック様、さあっ!

 ご主人様とお戦いになられたかったら、

 この私をくだしてからにして下さい!」


「正気か!?イルマっ!私はお前を傷つけたくは無い。

 殺してしまいたくは無いんだ!こっちに来てくれ!イルマッ!」

「ご主人様を殺せば私も死ぬのですから、同じ事ですっ!」


  私は先程主人が言われた嘘を重ねた。


「あー、ではもう始めて良いか?お互い距離も取っている事だし始めろ」


  騎士様が始めの合図を、怠そうにおこなった。


  真面目であったアイザック様には不名誉な事なのだろう。

  私は小声でファイヤーボールの詠唱を完成させると、

  最後の言葉は発せずにアイザック様の動きを待った。


  初めの1発目が大事だ。

  ひるませ、矢で攻撃し、MPを吸わせて頂く。

  そうすれば、アイザック様はMPが枯渇して倒れられるだろう。


  それでも尚向かって来るのであれば、私は手加減をする気など無い。

  相手は主人に仇成す不届き者なのだ。

  かつて仕えた相手には、何の忠義も恩義も感じられなかった。


  ・・・そうだ、私はあの屋敷で働く事が  だったのだ。

∽今日の戯言(2022/08/13)


ほとんどすべてのキャラクターに於いて、

それぞれがスポットライトを浴びられるように、

それぞれの性格を生かした独自のエピソードを用意しました。


キャラ設計段階で用意したイベントや、

切っ掛けがあったのでいつか興そうと温めたイベント、

イベントを消化するに当たって新たに練り直したキャラ、

それは色々です。


皆さんはどのキャラのイベントが良かったでしょうか。


ボルドレック関連になると、

何度もナズやエミーが出てきてしまうのは仕方がありませんね。


ラティはあまり他人のイベント事には関わって行きませんが、

彼女には丸ごと一本別シナリオがあるために、

冷遇をしている感はありません。


「今日のステータス」で確認して頂ければ判るように、

番外編の執筆は本編進行度とは別時期に、改めて執筆していました。

ガラッと主観が変わったお嬢様が主人公であったため、

本編に戻った際はギャップの違いに暫く混乱したのも良い思い出。


中堅パーティの結成分散を見せたかったというのもありますが、

元々番外編アレはラティの生い立ちを印象付けるために作ったので。

ラティ派も(いるのか?)満足して頂けるかと存じます。


萌えヒロインでもないですしね?

この位で勘弁して頂こうかと思います。



それにしても結城君はワイヤーカッターなんて異世界に持って来て、

一体どうするつもりだったんでしょうか。


何かしらそれっぽいベントを作る予定があったのですが、

もう既に詳しく思い出せません。

確か、この世界にワイヤーなんてまだ作れっこないだろうと言う事で、

イベント自体を潰した記憶があります。


完全に持って来損ですね。

忘れていた訳ではありませんよ?


どんなゲームにだってあるじゃないですか。

謎の使用しないアイテム、それもまたロマンかな。



 ・異世界106日目(朝)

   ナズ・アナ100日目、ジャ94日目、ヴィ87日目、エミ80日目

   パニ73日目、ラテ52日目、イル・クル49日目、イシャ23日目

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