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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第囲章 新生
339/394

§326 失踪

急ピッチで作成した32層から33層までの印刷物は、

インクを早く乾かすために団扇で扇いで対応させた。


昼食前にはエミーも多少起きられる程度には成っていたので、

そこで朝に用意したミルク粥をすすっていた。

昼食は不要だろうな。


ナズが昼の支度をするために作業から外れると、

イルマも手伝って食事前には30冊分の地図が完成した。

12層から22層までの地図は1部売ってしまったので、

それ以外は全て30部が用意できた。


ペラペラの薄い冊子ではあるが、

それを30部束ねた物3つにもなると結構な厚みとなる。


1山が新聞紙を廃品回収で出す際に束ねた位の重量があるので、

これを運ぶとなると大変だ。

勿論縛ってすら無い。

1人1束、3人で持って行くべきだろう。


食事後はアナとラティの2人でこれを売って来るようにと言って託した。

勿論迷宮の前までは自分が送る事になるのだが。


それ以外のメンバーはカモーツの移植作業をやって貰う予定だ。


こちらはジャーブにやり方を聞きながら、

ヴィー、パニ、ナズといったパワー系で対応に当たる。

ナズをパワー系に分類して良いかどうかは疑問だが、

少なくとも自分よりは遥かに力があるので仕方無い。


木の移植に付いては知見を持っている訳では無い。

それでも流石に周りの土ごとを移植する位の知識はある。


以前ニュース番組で桜の木を移設している様子を見た事があったが、

その際には根は布地のような物で丸い状態に巻かれていた。

どうやってあの状態にするかまでは勿論知らない。


根の周囲の土を縛って固める用途向けに麻袋を10個買って来た。

これに根を入れ、口を縛って持ち帰る予定だ。

元々果樹の世話をしていたと言うジャーブの知識を役に立てて貰おう。


「それじゃ、昼食を終えたら各自仕事に当たってくれ。

 あ、イルマは引き続きエミーの付き添いで良いぞ。

 エミーは夕方までに動けるようならば、

 様子を見て夕食の支度をさせてみてくれ」

「かしこまりました、そのように伝えて置きます」


「俺は移植ですか・・・頑張ってみます」

「そういえばラティ達が迷宮から戻って来ませんが、

 昼を伝えた方が宜しいのではないでしょうか?」


あっ・・・。

確かにナズがいないと駄目だな。



   ***



そんな訳でサンドラッドの冒険者ギルドにやって来たのだ。


合計6人をこちらまで飛ばすのは一苦労である。

パニでは運び切れない。

結局の所、こちらを商売の先にするのは効率が宜しく無い。


調子に乗ってアルバブールの迷宮も地図を取ってはどうかと考えもしたが、

よくよく考えたらこちらの国では迷宮はいずれ討伐されてしまうのだった。


アルバブールの迷宮はダイダリの迷宮よりも、攻略が進んでいるらしい。

そうなると本気で討伐を考える者か、深層で稼ぎたい熟練者向けとなる。

従って低階層の地図を用意しても需要は少ないだろう。


深層となると自分たちにはまだ手探りな領域だし、

34層以降の魔物との戦闘に慣れていない内から地図を取って行くには、

まだまだ力不足で無謀過ぎる。

それに腰を据えて挑戦するとなると圧倒的に時間が足りない。


自分たちの現在の実力は33層までであり、

作れる地図も、今はまだその位なのだ。

以前スキップして55層を攻略できたのは、

たまたま魔物の巡り合わせが良かったのだと考えるべきだろう。


欲を出して無謀な事は絶対にしてはならない。

用意できるラインナップ、それに売れ筋と言う事ならば、

どちらもダイダリの迷宮と言う事で丁度合っていた訳だ。


頑張って売って来いと言ってアナとラティを送り出した。

丁度良く冒険者利用チケットが2枚余っていたので、

早くに完売してしまったらこちらへ戻って来て休むようにと、

2枚をアナに渡して置いた。


以前サンドラッドの高級旅亭で貰ったアレだ。

余らせて置くのも勿体無いし、有効な活用先が見付かって良かった。


「それじゃ我々は果樹の方へ。アルバブールの迷宮へ行くぞ」

「かしこまりました」

「なるほど、その?迷宮の傍にあったのですね?」

「ハーイ」


そういえば皆行った事がなかったか。

迷宮自体にも入った事があるのは自分だけであった。


アルバブール付近の樹木を指定しゲートを開ける。

そういえば以前来た時は小雨が降っていたが、

今日は澄み渡った景色で遠くの方まで良く見渡せる位に晴れ渡っていた。


目的の果樹は転々と生えているものの、そう数は多く無さそうだ。

ひとまずは以前実を摘んだ樹木の前まで移動する。


「これ・・・なのですか?」

「こんな風に実が生っていたのですか、確かにこれは果樹ですね」

「これ、あのスっぱいヤツ?」

「これを持ち帰るのですか・・・。

 ちょっと僕達には口に合いそうも無いのですが・・・」


コーヒー牛乳のようにして飲ませたのはナズとアナだけである。

パニはあの実を食べさせられるのではないかと怪訝を示した。


「そのままでは食べられた物じゃないと判っているから、

 ヴィーもパニも心配しなくて良いぞ?」

「ふーん?」「そっ、そうですか。良かったぁ・・・」

「では一体どうされるのでしょう?

 何かしら食べるに適した調理法をお考えになられたと言う事ですかね?」


「食べるのとはちょっと違うが、まあそういう事になるのかな。

 これの移植作業が済んだらジャーブにも味わって貰う予定だから、

 頑張ってみてくれ。それじゃ掘るぞ?」


家の庭で使った鶴嘴つるはしのような装備、

アイアンピックを2つ取り出してナズとジャーブに渡す。

ヴィーではいきなり根を傷付けそうであったので、

まずはジャーブにお願いした。


「できるだけ根を傷付けないように──」

「お任せ下さい。まずは軽く掘って、根の広がりを調べます」


ジャーブは手際よく2m位の位置から土を返して掘り始め、

果樹の周りにU字状の溝を作り上げた。

流石である。


「後はそこから下の方に向けて掘って行けば良いのか?」

「そうですね、ではナズ殿、あ、っいえ、ナジャリ様、お願いします。

 あっ、い、いえ、ど・・・どうしたら」

「あっ、あの、ジャーブさんも、今までと同じで良いですからね?

 間違っていたら教えて下さい」


そういえばナズはジャーブの主人になったのだったな。

ジャーブがナズにやってくれとお願いするのも変だ。

そこまで考えていなかった、申し訳無い。


「ジャーブ、ナズやアナへの対応は今まで通りで良い。

 ナズでなければ多分作業は難しいだろうから、

 覚えさせる意味でもそこはキッチリ指導してやってくれ。

 ほら、ヴィーでは・・・な?」

「かっ、かしこまりました」「えー、アタイだってできるよ!」


「ヴィーはもうちょっと良く見て置け、後で何度もやって貰うんだから」

「ちぇっ・・・はーぃ」

(ヴィー様、ちゃんと見て覚えましょう。

 僕たちの今の仕事は良く見て覚える事ですのでっ)

(へーい)


ナズはジャーブに教えて貰いながら、

木の根が露出しないように少しずつ根元を掘り進めて行った。

ジャーブは余分に飛び出た根をぐるぐると巻き取りながら、

丸みを帯びた土の塊を作り上げた。

粗方の土が取り払われ、カモーツの果樹の根は丸い土の塊に収まった。


「流石は元果樹園の息子だな、手際が良い」

「まさかもう一度根巻きをする事になるとは思いませんでした」


「根巻きと言うのか?これは」

「はい。果樹の大きさにも依りますが、

 大体木の高さと同じ位に横に根が張っていますので、

 最低限必要な部分だけを残してこのように丸く刈り取ります。

 飛び出た部分は無理に切り取らずに、このように巻いて保存します。

 このままでは持ち運びに不便なので本来は麦藁で撒くのですが・・・」


「ああ、麻袋なら持って来た。ほら」


ポーチから10枚の麻袋を取り出し、ジャーブに渡した。


「おお、流石はユウキ様です。ご存じだったのですか?」


「うーん、他人がやっているのを何度か見た事がある位だ。

 詳しいやり方までは知らないので、ジャーブが居てくれて助かった」

「そうですか、いえ、知っているだけでも凄いと思います。

 普通街中で移植なんてしませんからね」


それもそうだ。

こちらの世界の価値観で言うならば、

例えばホドワの街に木を持って来て植えようなんて奴はいないだろう。

逆に邪魔だから切り倒そうと言う奴は居ても。


街には造園が行える者など存在しないのだ。

貴族とか、王宮とか、そういう場所の専属の庭師でもなければ。


となるとこういう技術は林業か、或いは果樹園の関係者となる。

たまたまジャーブが果樹園の出であった事が幸いした。

どんな偶然なんだろうか、これは。


一塊の根巻きが終わったカモーツの木を、

ヴィーとパニが大事に抱えて持ち上げた。


「それじゃ庭に繋ぐのでそれを置いて来てくれ。そうっとだぞ?」

「わ、わかってるよっ!」「気を付けてお運び致します」


(ヴィー様、ゲートをくぐる際はお1人で持たなくてはなりません。

 大丈夫でしょうか?持てますか?)

 (ウン、多分ダイジョーブ。せーの・・・ほりゃァ!)

  (ではお先に向かわせて頂きます)


2人はフラフラとしながら迷宮横の大木まで運び、

そこからヴィーが雄叫びを上げながら独りで抱え揚げると、

自分の出したゲートへ向かって消えて行った。


グイグイッとMPが減った事が判る。

あの木は・・・1本で3人分位の重量がある。

都合4人位が通って行ったので、結構な消費をしたのだと思う。


只でさえ4人分の移動は堪えると言うのに、

ついでにパニも通って行った訳でこれは流石に厳しい。


勿論強壮剤は口の中に用意してあった。

慌てて飲み込むが、また直ぐに眩暈がした。

樹木を庭に降ろした2人が直ぐ戻って来てしまったのだ。


これは失策だった。

連続で通られると厳しい。


そもそも2人で移動されてはだめだ。

ゲートは間を取って潜って貰わなければ。

それに置いたら少し休むように言って置かなければ。


追加でアイテムボックスから2粒の強壮剤を摘まむと、

渇いて唾液が出にくくなった喉に無理やり押し込んで嚥下した。


「よし、じゃあこのままあと9本だな」

「では次はあちらの木にしましょうか」

「そうですね、あれなら同じ位の大きさですので行けそうです。

 余り大きくなり過ぎると手で運ぶには大変ですので・・・。

 アレなんかは多分無理ですね、

 根が大きくなり過ぎると重さが急増しますので」


「よし、じゃあ選定も含めてジャーブに任せる。

 ナズ、アイアンピックをもう1本だ」

「あ、はい、ヴィーちゃんの分ですね?」


自分とパニは根巻きをする作業員だ。

ナズとヴィーはジャーブの指示に従ってU字に掘り進め、

仕上げはジャーブが丁寧に丸く刈り取る。

その後はジャーブの指示に従って、自分とパニが丁寧に麻袋で包んだ。


「流石はナズ殿です。丁寧で、周りの土も崩れておりませんね。

 ヴィーはもうちょっと優しく武器を振らないと、土が崩れてしまうよ?

 土が崩れてしまうと根が傷んでしまうんだ」

「どうもっ、ありがとうございますっ。ふっ・・・ふっ・・・」

「ハーイ。もうちょっと?こうかな?ほいっ・・・ほいっ・・・」


10本全てが移設できた頃には、夕焼けで周囲が赤く染まっていた。



   ***



畑に植え直す作業はジャーブに任せ、自分はラティ達を探す。


流石にこれ以上放置しても地図は売れないだろう。

夕方ならば探索者は帰る一方で、これから入ろうとする者はいない。

ゲートをダイダリの迷宮傍の大木に繋ぎ、アナ達を探した。


こちらは一昨日から晴れていて、

辺り一面ひどい泥濘ぬかるみだった箇所も大分収まったかと言う所。

天幕も営業を再開していたし、簡易的な店も開いていた。

そのためなのか、探索者達は夕方にも拘わらずあちこちに見受けられた。


探索者ギルドの天幕付近に14,5人位の塊ができている。

アレかな?

野次馬根性的に集団の外周に着くと、つま先立ちで中心を見た。


恐らくはパーティリーダーであろう男が、

購入した地図を広げてパーティに見せているようだ。

この集団は、それを盗み見ようと集まって来た訳だな?


ともかく、これはアナでもラティでもなかった。

待ち合わせに指定したアルバブールの迷宮には来なかった訳で、

忘れてしまったのであればサンドラッドに帰ったのかな?


集まっているのは人間族と、狼人族と、エルフ。

それぞれ種族ごとに集まって何か話し合っているが、

生憎自分は狼人族たちの会話しか理解できない。

どうやら種族別に3パーティが集まっているようだ。


狼人族のパーティだけに絞って聞き耳を立てる。


(23層は、俺が覚えている限りは正確のようだ)

(ああ、そうだな、覚えがあるぞ)

(どうする?買うか?)

(無くても困らないが、あったら楽だよな)

(33層まであるっていうじゃないか、

 ここの攻略されてる最新層は28層のはずだろ?)

(って事は残りはガセか?)

(いや、逆に攻略したが報告してない可能性は?)

(なんでそんな事するんだ?

 攻略したのに報告して金貰わない奴なんているのか?)

(うーん・・・そうだよな)


攻略開放されていない29層以降の真偽の審議中だったか。

それで買いかねている訳だ。

それよりもこうして1冊を複数パーティに共有されてしまうと、

売れる物も売れんな。


(いや、買ってみておかしかったら返金して貰えば良いだろう?

 ギルドで売ってるんだからちゃんとした物のはずだ)

(そうだよな、多少間違ってたら直してくれると思うし、

 完全に違ってたら返金してくれるだろう)

(よし、じゃあ買おうぜ、ひとり銀貨3枚ずつだ)

(ああ、俺は賛成だ)

(うーん、未攻略階層が描かれている事が引っ掛かるんだよなあ・・・)


狼人族グループは囲みから抜けて探索者ギルドの天幕へ向かって行った。


お、と言う事はそこにラティがいるのかな?

33層まで行って来たと一言説明してやれば良かったと思うのだが。

自分はそのパーティの後を尾けて、天幕へと向かう。


探索者ギルドの天幕は1人用であり、

その業務は階層の案内だけだと思う。

従って小さく、狭い。


ここに本来のギルド員とアナ、ラティが居れば狭いだろう。

そんな事を考えていたが、

中から出て来たのは中年のおじさん1人であった。

あれ?2人は?


「さっきの地図なんだが」

「はいはい、どこの階層かな?」


「23層から33層までのを1つくれ」

「はいよ、銀貨16枚」


狼人族のパーティリーダーは6人から銀貨3枚ずつを集め、

でき上ったばかりの真新しい地図を買って出て行った。


(おいっ、早速確認してみようぜっ)

 (じゃあ手っ取り早く23層だ)

  (ハーフハーブか?余り儲からないじゃないか)

   (俺達で早く倒せるのはそこ位じゃ──)

    (俺としては売り物になる25層に──)


「ええっと、ちょっと済まないが」

「ン?おたくも地図をお買い上げで?」


「い、いや、その地図はどうしたんだ?」

「昼過ぎに妙な2人組が来てな?

 ここで売っても良いかと聞かれたので、

 そういう事はギルドに聞いてくれと伝えたら直ぐに戻って来て、

 ギルドで地図を買い取ってここで売る事に成ったんだとよ。

 まあ、ここでの仕事は暇だったし俺も退屈しなくって良いねぇ」


ん?委託販売?

いつの間にそんな所まで漕ぎ付けたんだ?


「ええっと地図はいくらだ?」

「お、やっぱり買うのか?

 11層までが銀貨4枚、22層までが銀貨8枚、33層までが16枚だ」


自分が指定した金額よりも銀貨1枚ずつ値上がっている。


・・・ハッ!

ギルドのマージンか。

そういう事か。


「な、なるほど、ありがとう」

「ナンか?聞く所によると結構正確らしいぞ?

 確認した偉いさんも驚いてたみたいだから、

 アンタも買っといて損は無いぜ。1人だろ?

 11層までの地図、銀貨4枚の価値はあるはずだ」


案内人の探索者は自分に1冊を見せて来た。

作成者である自分に売り込まれてしまっているが、

こんな感じで売ってくれるのであれば商売は安泰だろう。


と言うか、そういう事であれば補充をしっかりしなければならない。

何日か置きに必要部数を聞いて届ける必要があるかも知れない。


「な、なるほど・・・、た、確かに正確のようだ」

「だろう?お前さんが入る階層なら、

 そんなにしっかりした地図は必要じゃないかも知れんが、

 今後パーティが増えて奥へ行く事になったら重宝すると思うぜ」


「そ、そうか。今は金が無いので、た、貯まったら考えよう」

「ここが攻略しやすい迷宮と知られたら、

 今後はもっと人が集まって来るかもしれないなあ。

 今の所11層までの地図は後15冊しかないから、

 買いたかったら早めになっ」


15・・・半日でもう半分売ったのか。

午後からと言う事ならば、探索者達の出入りは少ないはず。


いや、帰りの客か?

そこの宿屋の天幕で休憩しているパーティたちが買って帰ったのだ。

恐らくは。

明日にも無くなりそうな勢いである。


「そうか、ありがとう」


適当にお礼を述べつつ地図は返却した。

ではアナ達はどこに行ったのかと言う事になる。


恐らくは2人分のアルバブールへ来るチケットは、

探索者ギルドへ交渉しに行った際使ったのだと思われる。


と言う事は帰りのチケットが無いし、

そこで立ち尽くして待っている訳にも行かないので、

一番近いダイダリの街で休んでいる可能性が高い。

ダイダリの冒険者ギルドへ向かい、近くの食堂を探した。



  ***



結論から言うと、アナ達を発見する事はできなかった。

食堂や酒場の場所を聞きいくつか回ったし、

探索者ギルドにも赴いて地図を売った2人組について尋ねたが、

どこに向かったかまでは判らないとの事だった。


地図の確認に付いてはギルドのお偉いさんが呼び出されて、

6人体制で迷宮に向かって確認したそうだ。

流石に短時間で全部を確認する事はできないだろうから、

各階層の入口付近や中間部屋付近を見て回ったのだと思われる。


・・・いや、しかし。


非常時の待ち合わせ場所を決めて置かなかったのは失敗した。

アナ達が何処に行ってしまったのか確認を取れない。

パーティに入っていたら各町に飛んで影を探せば良いのだが、

今ではそれすらも不可能である。


可能性があるとすれば、プタンノラかサンドラッドか。

2人に土地勘があるとすればどちらかだろう。

自分たちが作業をしていたアルバブールは、

迷宮どころか街にすら来た事が無い。

それを言うならばダイダリの街にも行った事が無かったはずだ。


幸い売上金があるだろうから、

はぐれたとしても宿屋位は泊まれると思う。

ただ、アナやラティが率先して金を使うかといったら判らない。

あの2人であればこらえて野宿しそうな感じだ。


不安な気持ちにさいなまれながら、

サンドラッドの冒険者ギルドに向かう。

やはりギルド建屋で待っている事も無く、外にもいないようだ。


日中ずっと外に出ては暑いだろうし、食堂かもしれない。

アーケードに向かい、その前にある食堂や酒場等も探ってみたが、

いずれの場所でもアナは発見できなかった。


アナの足取りを考えてみる。


渡したチケットは2枚。

ダイダリの迷宮からダイダリの街の探索者ギルドへ交渉に行く。

往復だ。

そこでチケットは2枚消費した。


1人1回1枚であるはずなので、

主人であるアナが交渉に向かいラティはここで待っていた事になる。


戻った事でアナとラティはダイダリの迷宮にいる事になる。

そこから町まで・・・ダイダリの街ならば2人で銀貨6枚だ。

サンドラッドなら12枚。


可能性で考えるならばダイダリの街だろうが、そこに彼女らはいなかった。

そしてサンドラッドにもいないとなると、金を節約した可能性がある。

中途半端にプタンノラへ行って待っていると言う線は考え難い。

そもそもアルバブールの迷宮へも来なかったのだ。


であるとすれば・・・ダイダリの迷宮の中か、

ダイダリの簡易宿泊所である天幕の中だ。


再びダイダリの迷宮の横の大木に出る。

一番近くの宿屋の天幕に入って確認すると・・・。


「お疲れ様です、旦那様の方の作業は終わりましたでしょうか?」


そこでアナは待っていた。


「あ、ああ。どこに行ったか判らなかったのであちこち探したぞ」

「色々手間が掛かりましてアルバブールまで行けなくなってしまい、

 ここで待たせて頂きました。

 旦那様であればお判りになるだろうと思いまして、

 ここで待っていた次第です」


「う、うん。そうか、流石だ」


自分が読めると踏んだ上でここで待っていた訳だ。

いや、まあそうなんだけどさ。

良かったよ、外国に置き去りにしなくって。

結婚した翌日に花嫁失踪とかシャレにならないじゃないか。


安堵の溜息を吐きつつラティの所在を確認すると、

奥でモコモコになって寝ているのがラティなのだそうだ。


アナに揺さぶられて強引に起こされたラティは、

モゴモゴと口を動かして「おはようございます」と挨拶をしたが、

まだ夕方だとアナから訂正を受けていた。


良いじゃないか、別に。

業界人の挨拶はいつでも「おはようございます」だぞ?

と、心の中でツッコミを入れた。

∽今日のステータス(2022/06/03)


 ・繰越金額 (白金貨29枚・利用券2枚)

     金貨 27枚 銀貨 99枚 銅貨  3枚


  売上金             (74300й)

   ~11層  × 30部      9000

   ~22層  × 29部     20300

   ~33層  × 30部     45000


  宿泊費               (100й)

   簡易宿泊所 ×  2        100


  雑貨購入

   麻袋    × 10        100


  移動費                 (0й)

    ダイダリ迷宮→ダイダリ     利用券2枚


     金貨+ 7枚 銀貨+41枚

  ------------------------

  計  金貨 34枚 銀貨140枚 銅貨  3枚



 ・異世界93日目(昼前)

   ナズ・アナ88日目、ジャ82日目、ヴィ75日目、エミ68日目

   パニ61日目、ラテ40日目、イル・クル37日目、イシャ11日目

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