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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第囲章 新生
334/394

§321 集合

ナズとアナは自宅に帰った後で調理と掃除を任せる。


婚姻は成立したが、新婚旅行やパーティなんて無い。

一応明日はパーティの予定だが、実態は慰労会である。

いずれちゃんとするので、今は許して欲しい。


未だ皆が各自の仕事に追われる中、

自分はサンドラッドに向かい米と唐黍トウキビを買ってきた。

ここから米粉や唐黍粉を作るには石臼が必要だ。


果して1人で持ち切れるだろうか。

駄目ならヴィーを連れて来よう。

あ、いや、パニで良いや。


以前秤を買い付けた道具雑貨屋に向かった。


「おーい、済まないが」

「ハイハイ?ああ、どうも」


既にこの女将とは何度か顔を合わせているし、

高額な道具を買っているので顔を覚えられてしまっているようだ。


ジモティに認識され始めていると言う事は、

自分も地元民として根が張って来たのだろうか。

地域で暖かく歓迎されているような、ちょっとだけ嬉しい気持ちになる。


「石臼が欲しいのだが、あるかな?」

「臼ですかい・・・無い事も無いですけどね、

 大きいのは今直ぐには無いね」


「と言うと?」

「小さいのでしたら、ね。商売するんだろ?

 一度で沢山挽けそうな奴は注文に成っちまうよ」


「えっ、商売なんてしないが」

「そうなのかい?秤やら長くて丸い棒やら、

 お客さん変な物ばかり買ってくから、

 私ゃてっきり何か商売してるのかと思っちまったよ」


あーね?

以前棒を頼んだ時は小麦粉を練る道具が欲しいと伝えたし、

秤や今回の石臼と言うラインナップになると、そういう事になる訳だ。


パンは庶民からすれば買う物だ。

そもそも一般市民の家に窯なんて無い。

臼が必要になる時点でおかしいのだ。

納得した。


「ちょっとうちが大家族になってしまったのでな、

 パン以外にも色々道具が必要になってしまったのだ」

「へぇーっ。奴隷一度に増やしでもしたのかい?

 って事は金持ちさんだ、そりゃどうも。贔屓にして頂いて嬉しいね」


「い、いや、それ程金持ちって訳では無いんだが」

「まったく・・・謙遜はおよしよ、臼が必要になる位大所帯なら、

 奴隷だって5,6人はいるんだろ?」


いや、その倍だ。

余計な事は言わない方が良い。

折角地に足が付いて来たと言う話なのにこれでは浮いてしまう。


「そ、そうなのかな?ハハハ。で、麦や唐黍を挽きたいんだ。宜しく」

「家庭用ならあるよ、3000ナールだね」


高っ!


いや、高いよ。

秤も1500ナールだったが、

それよりも精密な構造が必要になる石臼はもっとか。

業務用・・・リアナさんが使ってるだろう一度に沢山挽けそうな奴は、

更に倍位しそうだ。


それにしても臼だけで銀貨30枚か。

相変わらずちょっと便利に暮らそうと思うとべらぼうな金が掛かる。

量産品で低コストの道具なんて無く、

全てが一品物なのだから仕方無いか。

そういう世界だ。


道具屋の女将さんが出して来た物は、

何とか抱えて持てない事も無い重量であった。

しかし重い。


上の部分だけ先に運んで、下の土台は後で運べば良いだろう。

手拭いを10本と大き目の布をロール状のまま買い取って、

3度に分けて納屋へ運び入れた。


大き目の布はシーツに使うし、明日の風呂でも沢山必要になる。

1枚1枚大判で切って貰うよりも、

未裁断の物をそのまま買って行った方が早いと判断した。


キッチンで慌ただしく調理を始めるナズとエミーの横で、

バラバラに持って来た石臼を組み直し、

ゴリゴリと音を立てながら実を挽いた。


唐黍の実が終わった後は米だ。

上臼を外し、中に残った粉を綺麗に集める。

これだけでも結構な作業で面倒臭い。


下臼の部分はすり鉢状になっており、細かな溝に粉が残るのだ。

現代文明に囲まれて暮らしていると、

こういう単純な機構だって知らない事が多過ぎる。


風車や水車で挽かせるにしたって、

肝心の臼の構造を知らないんじゃあ作れっこない。

大学卒業にもなって余りにも技術の根幹を知らない自分を恥じた。


一体どれほどの日本人が、

こういった基礎技術を知っているのだろうか。

確かにそんな知識は近代現代に不必要かもしれないが、

先端技術は英知の積み重ねにあるのだと言う事を改めて思い知らされる。


手の空いたナズが尋ねて来た。


「ご主人様、それは唐黍粉ですよね?

 これからは私達がこのように用意すれば宜しいのですか?」


「そう・・・かな?そうだな。

 こちらで唐黍粉を買うと高いから、唐黍から買う事にしたいな。

 今挽いているのは米・・・いや、オーレズの実だ」

「ええっと、以前ふっくらと蒸した物を頂きましたが、あの実ですか?」


オーレズと聞いて、エミーも手を止めて見に来た。


「お、エミーも興味があるか?」

「・・・はい。食事を・・・ご用意するのは私達ですので」


まっ、真面目な理由だった。

そうだよ、技術は伝えないと。

自分だけしか作れないんじゃあみんな困るからな。


「ええっと、オーレズの実を挽いてコメコを作る」

「コメコ?」「メコ?」


ニュアンスが微妙なのでこの世界では浸透していない物なのだろう。


貧乏人向けの粥でしかない米を、菓子にしようとしているのだ。

まずは白玉団子、焼いてせんべいに、スープに入れてすいとんに。

10人分10合の米を全て粉に変え、粉末を集めて2人に見せた。


「これがメコ?でしょうか」


「コメコだ、コ・メ・コ」

「はっ、はい。コメコ、ですね?」


「涌かした湯に溶いて、これからモティを作る」

「モティー?・・・ですか?」


あれ、ちゃんと言えない。

モチ、モチ。


「モ・チ」


よしよし。


「モチを作る。焼いて食べたりスープに入れたり」

「かしこまりました。その先を教えて頂いても?」


「ああ、勿論。みんなでやろう」


コボルトスクロースを混ぜた菓子用の団子と、

コボルトソルトを混ぜたスープ用の団子の2つを作り、

エミーが買って来た材料から肉の切れ端と乾燥キノコ、

それから自分がプタンノラで買って来た干物を乱暴に切って入れた。

葉物も一緒に湯がき、すまし汁にしてみようと思う。


醤油が無いので魚醤で代用し、

やや濃い味付けの澄まし汁が直ぐに完成した。


コボルトスクロースを混ぜた団子の方は、

練って焙ってひと口サイズの物を幾つか作る。

そういえば串・・・。

串が無いので所謂いわゆるあの形状にはできなかった。


まぁええやろ、の精神である。


砂糖、醤油、味りん、片栗粉を混ぜ合わせて加熱すれば、

みたらし団子の餡になる。


砂糖と片栗粉は良い。

丁度良くスライムスターチが沢山手に入ったので、

これらの材料に困る事は無いのだが、

問題は味りんだ。


レモンとライムと炭酸水・・・それはミリンダである。


違う、味りんは発酵させた米から作るアルコール製品だ。

味りんなんて今から作れっこ無い。

味りんっポイ物を作らなければならない。


結局の所米を発酵させた物だとすれば、

練酒のアルコールを飛ばせば良いのだろうか?

倉庫から一杯分をフライパンに掬って持って来た。


火が既に入っている竈門へ置くと、

フライパンの上ではぶくぶくと泡立ってアルコール臭が舞い、

香ばしい香りに変わった。

液体も焦げ付いて飴色だ。


味りんっポイかと言われればポイ。

直接飲んだ事なんて無いし、

実生活で味りんを使って調理なんてした事すら無い。


従って、舐めてみた所でそれが味りんかどうか判断できない。

一応舐めてみたけど、微妙に甘みがある変な味であった。

本当にこれで合っているのかと、

若干不安に成りながら魚醤と砂糖を加える。


シュワシュワとあぶくが出ていた液体が、

スライムスターチが加熱された事で固まり始め、

ドロッとした餡ができ上がった。

見た感じ理想とは掛け離れて黒いが、味は確かにみたらし餡っぽくあった。


成功である。

人間、適当でも何とかなると言う良い例であった。

ナズもエミーも、指に取って舐めながら首をかしげていた。


初めての味なのだろうな。


「それじゃ、自分が作るのはこれだけだから、後は頼む」

「はい、かしこまりました。新しいお料理は楽しみですね」

「でき上りましたらお呼び致します」


外からはジャーブとヴィーのスキルを放つ大声が響いていた。



   ***



「ご主人様、お食事が整いました」


エミーがやって来て戸の向こうから告げられる。

ちゃんと話せるようになったと思う。

かすれて殆ど聞こえなかった声が、

今ではハッキリと扉越しでも聞こえて来ていた。


エミーを撫でてやって食卓へと向かった。


久しぶりに居間へ全員が集まる。

10人の大家族が集まるテーブルは窮屈な感じも無く、

やはり作って良かったと感動を覚えた。


自分が入って来るなり、クルアチとイルマが立ち上がる。

ラティもそれに釣られ、更にイシャルメダも立ち上がった。


いや・・・うん。

綺麗に揃わないし、無理しなくて良いよ。


「座って良いぞ、食事の前に改めてここにいる全員を紹介したい」

「失礼します」「あっ、は、はい」「・・・?あ、ウン」


「アナ、悪いがイシャルメダの横で通訳をしてくれ」

「承知致しました」


全員がアナに注目する。

通訳が必要な女性、と言う事が理解できたのだと思う。


「まず一番奥にいるイシャルメダからだ。

 そのうち仕事を覚えたらリアナさんの所で働かせたいと思っている。

 ナズやエミーには申し訳無いが、

 調理の仕方を少しずつで良いので教えてやって欲しい。

 この通り未だ難しいブラヒム語が伝わらないので、暫くは商館通いだ。

 以前のヴィーのようにな」

「オーッ、アタイまたお姉ちゃんだ!」


「奴隷の扱いはしないので、序列は無いぞ。

 皆も何か頼まれたら素直に応じて欲しい。

 無理強いはされないと思うので大丈夫だと思うが、

 一応変な事を頼まれたら自分に確認してくれ。

 ヴィーも失礼の無いようにな?」

「あっ、ハイ」

「奴隷なのに奴隷では無い・・・とは、どう言う事でしょうか?」


「彼女は元々自由民だ。今でこそ彼女は自分の配下にいるが、

 商館で勉強させるため仕方無く奴隷の身分に落とした」

「なるほど、分かりました。失礼の無いようにさせて頂きます」


ジャーブが頭を下げた。


「あー、ジャーブはバーナ語が判るよな?

 そちらでは会話できるから、何か有ったら力に成ってやってくれ」

「おおっ、なるほど。よろしくおねがいいたします、じゃーぶです」

「あっ、ウン、ありガと。イシャルメダよ。ヨロしくね?」


イルマは良く判らないと言っていたが、

生まれてこの方ずっと人間に仕えていた奴隷の身なので、

同族や猫人族との会話が少なかったせいなのだろう。

と言う事はエミーに対しても同じと言える。


調理の手解てほどきを受けるには、

もう少し商館で勉強した後になるかもしれないな。

多少の下拵したごしらえはできるそうなので、

まずは見様見真似からだろう。


「それじゃあ順番に行くぞ。

 まずはドワーフのナズ、猫人族のアナだ。

 2人は奴隷じゃ無くなったので今後は失礼が無いように。

 今日から自分の妻になった。

 自分が不在の際に何かあったらこの2人を頼ってくれ」

「えええっ!?」「あっ、あの・・・」「おおー?」

「そ、そんな事が・・・」(こくこく。)


各々が驚きの声を上げる。

イシャルメダが後からアナに翻訳されてワンテンポ外れて驚いていた。


「ナズは鍛冶師、アナは暗殺者と言うジョブに就いていて、

 どちらもこの国では稀なジョブになる。

 余り外では公言しないように気を付けて貰いたい」

「分かっております!」「は、はい・・・」「かしこまりました」


「次、自分の奴隷で1番奴隷のイルマだ。

 彼女は元々お屋敷奴隷だったので、作法は良く知っていると思う。

 今後は家の事を任せるので、困ったらイルマと相談するように。


 それから巫女のジョブに就いているので、

 怪我をしたら直ぐイルマから治療を受ける事。

 ちょっとした怪我でも放置するなよ?」

「分かっております!」「はーい」「宜しくお願いします」

「えっ・・・あ、あの、私が1番で宜しいのでしょうか」


「お前は自分の奴隷の1番だ、今日からそうなった。宜しく頼む」

「あ、あの、他の方々を差し置いてわた──」


「良いから話を最後まで聞け。納得できるはずだ」

「は、はい、かしこまりました・・・」


「自分の2番奴隷はクルアチだ。

 これまで商館で言葉の勉強をしていたからずっと不在だったが、

 今日からはずっと一緒になるので仲良くしてやってくれ。

 迷宮でも戦えなくは無いと聞いたが、クルアチの方はどうなのだ?」

「あ、はい。戦えと言われましたら、その覚悟はできております」


「だそうなので、もう少ししたら迷宮に連れて行くと思う。

 みんな、宜しく頼むぞ」

「宜しくお願いしますね?」「分かりましたッ!」「ハーイ」


「3番目はイシャルメダになる。

 さっきも言ったように一時的な契約で奴隷となっているだけなので、

 失礼が無いようにな。地位的にはナズやアナと同じだと思ってくれ」

「そうなのですね?」「宜しくお願いします」「はーい」


「自分の奴隷は以上になる」

「えっ?あ、あの俺は?」「ええっと、妹はどうなるのでしょうか」

「あっ、あっ、あの、わ、わた、私っ、もうここに居られないのですかぁ」


「後はこれから決めて貰う。ナズ、腕を出せ」

「え?あ、はい、こうですかね?」


「ジャーブ、エミー、腕を出せ」

「ええと、はい」「かしこまりました・・・」

「旦那様、もしや・・・」


察しの良いアナは既に気付いたようだ。

無詠唱でインテリジェンスカード操作を使用し、

奴隷商のジョブでジャーブとエミーをナズに付け替えた。


これからナズはこの2人を配下に置く。

ナズは調理に一家言持っているし、

同じ調理師としてエミーに対して色々頼み易いと思ったからだ。


「あ、あの、も、もしかして私がエミーちゃん達の主人なのですか!?」


「そうだ、2人を宜しく頼むぞ?」

「えっ、あ、あの、はい、が、頑張ります。

 宜しくお願いしますね?エミーちゃん、ジャーブさん」

「い、いえ、それは俺が言うべき言葉なのですが・・・」

「宜しくお願いします、ご主人様」


エミーにご主人様と呼ばれたナズがあたふたしていた。

この様子ではどちらが主人か謎である。


「アナ、腕を出せ」

「私もですか!」


「そうだ。パニ、ラティ、腕を」

「はっ、はい」

「えっ、えっ、あの、あっ、あの、あのですが、あのですねぇ?」


ラティが混乱したまま呆然としているので、

無理やり腕を取って袖をまくり上げた。


「ヴィーも付けたいのだが、まだ未成年なので移譲ができない。

 3年後改めて譲る事になるが、

 今からヴィーはアナが主人だと思って敬ってくれ」

「えっ?・・・ご主人サマご主人サマじゃなくなるの?」


「ヴィー、私の主人がご主人様なので、

 ご主人様がこのままご主人様である事に変わりありません」

「ええっと・・・そっ、そっか。ご主人サマ2人?ってコト?

 アナ姉・・・ちゃんサマ?」†


ちゃん様は駄目だろう。

色々イケない所に引っ掛かりそうだ。


「アナ様かアナお姉さまか・・・」

「い、いえ、今まで通りでお願いします」


アナからダメ出しが出されてしまった。

アナ様は駄目か。

お姉さまも駄目らしい。


「じゃあアナ姉ちゃんで良いらしい」

「あいッ、アナ姉ちゃんお願いします!」

「はい、ヴィーも今まで通りで大丈夫ですよ」

「よっ、宜しくお願いしますぅ・・・」


「ラティはアナと一緒の方が迷宮では捗るだろう?

 これなら自分がいない時でもアナとパニと共に一緒に回れる。

 指揮権をアナに任せただけなので、これまでと変わらずやってくれ。

 アナなら厳しい命令をしないと思うので、安心できると思う」

「はっ、はいっ。あ、ありがとうございましたっ」


「ぼっ・・・ボクは・・・。

 ユウキ様のご寵愛を頂ける事はできなかったのですね・・・」


1人沈んでいる子がいた。

寵愛とか、今更何を言っているんだと思ったが、そうか・・・。

パニの中ではずっと自分の妾になる事を夢見ていたのか。

そういう趣味は無いと初日に言ったんだけどなあ。


妾になる教育を受け、愛されて大事にされる、

それがパニの全てだったのだろう。

その事に今ようやく気が付いたが、何もかも遅かったようだ。

そこは申し訳無い。


「パニ、済まなかった。

 今までずっとパニの事を騙していた事になるのかな?

 お前はヴィーの結婚相手として購入した。

 お前が愛すべきはヴィーで、寵愛を受ける元はヴィーなのだ。

 ヴィーの事は嫌いか?」

「えっ・・・あ、あの、で、では、やはり僕は」

「パニ・・・」


ヴィーが心配そうにパニを覗き込む。

今にも泣きだしそうだったパニが、

ぐっと目尻を袖でぬぐうとヴィーをキッっと見詰めた。


「ヴィー様の事はずっと気にはなっておりました。

 それはいけない事だと思っておりましたので、

 これまではずっとその想いを我慢して参りました。

 お許し頂けました事を嬉しく思います。ヴィー様に尽くして參ります」


「だそうだが、ヴィーはそれで良いな?」

「え、あ、ウン・・・なんかちょっと・・・ドキドキする。

 あ、あ、あ、あんまりコッチ見て欲しくナイ・・・」


ヴィーの照れている仕草を見るのも初めてだ。

初々しくて良いじゃないか。

で、12歳って結婚できるの?どうなの?


未成年だと無理かな?

結婚は無理でも子供ができたらどうなるんだ?

良く判らないので後は成り行きに任せよう。


「で、だ。大分話が逸れたが紹介を続けるぞ?」


誰もがヴィー達に注目し、こちらの話にあまり注目してくれなかった。

寂しいが仕方無い。

彼らに取って重大事件が起きた訳だし、

冷静に話を聞ける余裕なんて無いだろう。


「ヴィーとパニはこの通り結婚させる。

 ヴィーは竜騎士で、パニは冒険者のジョブに付いてる。

 迷宮で世話になる事は勿論だが、

 パニにはあちこち飛ばして貰う事になるので、

 これから世話になる事も多いだろう。

 買い物やお使いの際はパニに頼んでくれ」

「かしこまりました」

「・・・あ、ああ、ウン、ソうなのネ?」


2人の事を知らないクルアチだけが返事をし、

アナからの翻訳を受けてイシャルメダも反応した。

良いよ良いよ。

元々この2人の為の説明なのだし、彼女達が聞いてくれればそれで。


「ジャーブは騎士だ。かと言って騎士団に所属している訳では無いので、

 何か悪い事をしても連れて行かれたりしないので安心してくれ。

 でも悪い事はするなよ?」

「ええ!?い、いえ、しません」

「・・・ジャーブはキシさま?スゴーい!ヨロしくおねがいしますっ」

「え、はい。まあ、きしといってもおれがなにかするわけではないですが」


イシャルメダ的にも騎士は凄い扱いらしい。


警察官に憧れたりご苦労様と思う気持ちに近しいのだろうか。

善良な市民であるならばそういう思考に成るはずだ。

ヴィーはどう思っているか知らないが。


「それからエミーだ。うちでは食事を担当してくれるので、

 食べたい献立があれば事前に伝えると反映してくれるかもしれない。

 これからジャーブの妻になる」

「かしこまりま──」「えええええ!?」


いや、そこでイルマが驚くなよ・・・。


「イルマ、静かに。

 この2人は兼ねてより恋仲なので、今日この場で結婚を認める。

 好きな時に適当なギルドで婚姻の届をして来い」

「ありがとうございます!」「ありがとうございました・・・」

「よっ、宜しいのですか!」


「妹が結婚するのは宜しく無いか?」

「い、いえ、そういう意味では・・・」


「良いならそういう事なので宜しく。

 エミー、良かったな。姉からもお許しが出たぞ」

「お姉ちゃん、ありがとう・・・」

「い、良いのですか・・・よ、良かったですね?エマレット・・・」


「これから世話になります!姉上殿!」

「えっ、いえ、あの、そのような呼ばれ方は・・・」


「イルマは紹介しなくてもクルアチは解るな?

 今後怪我をしたらイルマに直ぐ治して貰ってくれ」

「分かりました。イルマ様、1番の就任おめでとうございます」


クルアチから微妙な祝福をされた。


我が家では1番なんて地位は全く機能していない。

他の家・・・例えばボルドレックのような一般的なお屋敷では、

強権を得られる事になる訳なので奴隷に取っては花形なのだろう。


イルマはそれを理解しているので、やはり複雑な顔をして見せた。


「最後に探索者であるラティだ。迷宮では地図を作成する係りになる。

 地味だが強力で、実は一番凄い。迷宮では最も信頼できるので、

 何か判らない事があれば気軽に聞いてやってくれ。

 ちょっと理解力が足りない所があるので、

 何かお願いしたい時は最初から全部説明するように」

「かしこまりました」

「・・・・・・ふぅん、スゴいね、いちばんつよいヒトなのかな?」


ちょっと違うが近い物だろう。

その認識でも別に問題無い。

今後の安定収入は全てラティに掛かっている。


実際迷宮でもそれなりの強さを見せていた。

ジャーブと一対一サシで戦った場合、

どっちが上なのかは測り兼ねる所もある。


「では遅くなったが食事にしよう。用意してくれたナズとエミーに感謝だ」

「「「「いただきます」」」ーッス!」

「あ、はい。ありがとうございます」

「・・・・・・あ、あれ?これ、みんなでやるのね?」


クルアチは仕方無いとして、イシャルメダまでやらなくても良いと思う。

皆勝手にやっているだけだ。


「イシャルメダまで真似する必要は無いぞ、

 皆勝手に自分の真似をしてるだけなので」

「あ、ウン。ウフフッ、ヘンなの。ユウキのイエ、おもシろいね。ふふっ」


クスクス笑っている場合では無い。

ウチでは主食のパンを好きなだけ皿から取り合う方式なので、

モタモタしているとヴィーに全部掻っ攫われてしまう。


・・・まあ弱肉強食だと言う事を肌で覚えて貰うためにも、

敢えて何も手助けはしなかった。

目の前から食事が消え饑文字ひもじい思いをして、

初めてこの世の摂理を知るのだ。


それが我が家のルールであるので。

∽今日のステータス(2022/05/28)


 ・繰越金額 (白金貨29枚・利用券2枚)

     金貨 28枚 銀貨 32枚 銅貨 91枚


  雑貨屋         (4600→3220й)

   布(ロール巻き)         1500

   手拭い     × 10      100

   石臼               3000


  食糧品店              (160й)

   オーレズ(米) × 10       60

   唐黍      × 10      100


     金貨 -1枚 銀貨+67枚 銅貨-80枚

  ------------------------

  計  金貨 27枚 銀貨 99枚 銅貨 11枚



 ・異世界91日目(15時半頃)

   ナズ・アナ86日目、ジャ80日目、ヴィ73日目、エミ66日目

   パニ59日目、ラテ38日目、イル・クル35日目、イシャ9日目

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