表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第曲章 結末
324/394

§311 再開

ナズ、アナとの結婚は先送りだ。

色魔のギルド神殿を探さないとどうにも成らない。


イシャルメダの病状は一定の回復を見せ、

懸念事項だった言葉の方も商館へお願いした。

ヴィー達は救援活動へ送り出したまま、未だ帰って来そうな気配は無い。

自宅は予定通りならば、まだ後2日ばかりは掛かるだろう。


薬は作成後であるので、再びカビが増殖するまで暫くは何もできないし、

印刷作業も31層の攻略が進まなければ滞ったままだ。


現状では、もう何もする事が無いのだ。

かといって旅亭で飲んだくれているのも、それはちょっとどうだろう。


休日は確かに必要だが、

迷宮探索が仕事と言うのであればもうずっと休みだった。

31層の攻略を停止した後は、

言ってみれば休日に行うような作業ばかりであった。


何が言いたいか、自分が何を考えているか、整理してみてハッキリした。

自分は迷宮に行きたいのだ。

中途半端な状態になっている地図作成を終わらせたいのだ。


この国に居られるのもあと2日。

ヴィー達を待っていては完成も難しいだろう。

行こう、迷宮へ。

31層の攻略の再開だ。


ホドワの迷宮は街の中心部にある広場にある。

その横には冒険者が移動するための岩が設置されているのだ。

この大岩は後から設置されたのだろうか?

或いは最初からここにあって、

街作りの際にこの岩を移動シンボルとして残したのか。


ともかく自分は冒険者として、

この岩を利用してプタンノラの旅亭に飛んだ。

ワープを使う必要はもう殆ど無くなっていっている。


イシャルメダを前にして、

おかしなスキルを見せ付けて驚かれる心配も無い。

自分も段々と世界の条理へ逆らわないよう行動できるようになったものだ。


一般人で良いんだよ、ユウキ・フジモトは。

貴族になるのはミチオ君だけで十分なのだ。

世界にヒーローは2人も必要無い。



   ***



「ナズ、アナ、迷宮へ行こう。31層の攻略を再開したい」

「はい?ええとヴィーちゃんたちはどうなさるのですか?」

「私達だけで、と言う事でしょうか」


「ああ、そうだ。

 ナズもアナも、ドライブドラゴンへ対処できるようになったと聞いた。

 ジャーブもラティもそれぞれ十分に動けるようだし、

 5人で行って見たいと思うんだが、どうだろうか」

「そう・・・ですね、無理では無いかも知れません。

 動きは4層だろうが31層だろうが変わりませんので、

 後は階層が深くなった分の体力次第です。

 旦那様の魔法があれば私達はその時間まで耐えるだけですし、

 恐らく4層で練習した時と同じ程度の時間で終わるでしょう」


「ナズはどうだ?」

「ええっと・・・私はやはり手に巻き付かれてしまいますので、

 そこを何とかして頂ければ。イルマさん無しで大丈夫でしょうか?」


「なるほど、回復が必須だな?

 だがもう大丈夫だ。ナズはこのモンスターカードを付けてくれ」

「これは何でしょうか?」


「壷式食虫植物のカードだな。

 ・・・ええと、ジャーブやヴィーのように攻撃したら体力が回復する」

「そうなのですね?」


ナズの槍の空きスロットは残り2つ。

これをHP回復で消費しても、まだもう1つ残る計算だ。

最後の1つは有用なスキルを付けてやりたい。

槍だけに・・・。(ぷぷっ)


「ご主人様?」


「い、いや、ええと、ラティが持ってるのかな?」

「あ、はい。そうですね?」

ついでですので呼んで参ります」


そうか、ついでか。

ついでにラティの盾は回避2倍を付けて置こう。

現状で盾を持つアナ、パニには既に装着されている。


「お呼びでしょうか!」

「めっ、迷宮へ行くんですかぁ」


「そうだ、ラティは装備を出してくれ。

 ついでにモンスターカードを合成したい」

「はわわわ・・・はっ、はいっ」


「ユウキ様の傍におりますと、

 モンスターカードが貴重品だと言う事を忘れてしまいそうですね・・・」

「そうですよね・・・」


アナとジャーブがナズの合成の行方を眺めながら呟いた。


モンスターカードが貴重品なのでは無く、

扱うに失敗が多いから、挑戦しようとする者が少ないだけだ。

扱える人物が隠匿されているから陽の目を見ないだけだ。


現にオークションの場でモンスターカードは飛び交っていた。

勿論高い物である事には変わり無いが、

流通自体は普通に行われていたのだ。

蛤やザブトンの方が余程よっぽど出回らないよ。

誰でも消費ができてしまうので、近親者の胃の中に消えてしまうからな。


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv27

   強権のハルムンベルテ(詠唱中断 HP吸収 空き)

   鉄の兜(空き 空き 空き)

   抗縮の鉄鎧(麻痺耐性 空き)

   耐熱の鋼鉄籠手(炎耐性 空き)

   黒豹の鋼鉄グリーブ(移動力上昇 空き)

   身代りのミサンガ(身代)


 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv43

   サーベル(-)

   浮草の盾(回避2倍)

   竜革のカチューシャ(-)

   鉄の鎧(-)

   鉄の籠手(-)

   鉄のグリーブ(-)

   身代わりのミサンガ(身代)


ラティの装備に若干の不安を覚え始めた。

これでも本来ならば40層まで行ける装備品らしいが、

前衛と言う意味では心許無さは否めない。


ナズも中衛と言う立ち位置であったため、耐性装備は麻痺だけだ。

次はラティとパニの耐性を揃えるべきなのだろう。

ひとまず自分が帯刀していたアルマスをラティに手渡した。


スラっと輝く剣筋を、鞘から出して確認させる。

自分が以前使った後はろくに手入れもしていなかったので。


「ラティ、サーベルでは力不足かもしれないからこれを使ってくれ」

「あっ、ありがとうございますぅ」

「中々に強そうな剣ですね?」


「おっ、流石はジャーブ。判るのか?」

「い、いえ、軽そうで剣体の輝きに曇りが無く、

 それでいて突くにも斬るにも向いている武器に見えましたので・・・」


そう・・・か。

斬ってヨシ、突いてヨシ、おまけに剣身は軽い。

今まで使っていたサーベルから見ても上位の武器である事は間違い無い。


「じゃあもうそれはラティにやる。オリハルコン製なので大事にしてくれ」

「オッ、オッ、オッ、オッ・・・」


ラティがオットセイになってしまった。

足がガクガクしている。

肩から震えて剣先がブレている。

このまま戦地に赴いてしまって大丈夫だろうか。


「ラティ、お前の事はその位に大事な存在だ。これからも頼むぞ?」

「はっ、はっ、はっ、はっ・・・」


今度は犬になってしまった。


どうしろって言うんだ。

あれか?

撫でてやれば良いのか?


「取り敢えず危ないので剣を下げろ」

「はっ、はっ、ハイッ!」


剣を収めさせて優しく抱いてやり、頭を撫でた。


「あっ、あっ、あっ、あっ・・・」


うーん・・・。

八方手を尽くすも彼女の心は未だ溶けず。


「ラティ、その剣に恥じぬよう頑張りなさい」

「は、はいぃぃぃっ!」


アナが励ますと、ラティはようやく返事ができたようだ。

アナの命令なら強張らずに聞けるのか?

そのうちラティはアナに付けようかな。


「じゃ、ダイダリの迷宮へ向かうぞ。

 今日は2人ずつ送るので、ラティはパーティを組み直してくれ」

「えっ、えっ、ええっと?ど、どういう事でしょうかっ」


「自分のパーティにはヴィーとパニ、イルマが居て外す事ができない。

 一度に送れるのは2人までで、今日はラティがパーティを組んでくれ。

 自分は別パーティだ」

「かっ、かしこまりましたッ」


2回に分けてラティ達をダイダリ迷宮の入り口へ送り、

最後に自分も迷宮傍の大木の元へ向かった。


一時は泥濘ぬかるみが広がり水浸しだったこの一帯も、

今日は水が引いていて何とか通行できる状態へと戻っていた。

それでも木道はベコベコと沈み、足場は宜しく無い。

仮設テントもまだ営業を再開していない様子であった。


・・・これではこの時期の討伐は難しいな。


そんな事を考えながら、入口から31を指定して迷宮の中に入った。


「今回はラティにはちゃんと戦って貰う必要があるので、

 魔物と出遭ったら画版は自分に預けてくれ。

 アナも前以て受け渡しができる位の時間で指示を出して欲しい」

「かしこまりました」「わ、分かりましたぁ」


31層の地図は全くと言って良い程取れていない。

以前は通路を2つ3つ曲がった位。

その位で音を上げてしまった。


当時難敵だと思われたドライブドラゴン・・・。

あれから装備や練習の成果がどうなったか見ものである。


「早速ですが魔物です!ドライブドラゴンは3匹、

 後からノンレムゴーレムも迫ります!」


アナが警戒を呼び掛けるとラティは画版を外してこちらに手渡し、

自分はそれを首に掛けて背中へ回した。


矢を引き絞る動きは特に制約も無さそうだ。

別に床へ置いても良いんじゃないかな?

踏んだら割れそうかな?不便が無ければこれでも良いかな?


余計な事を考えている間に前衛は魔物達と接触をしたようだ。


左にジャーブ、右にアナ、中央がラティでナズはやはり中衛を陣取る。

逆三角形の布陣にナズは遊撃なのだろう。

ノンレムゴーレムがのっしのっしと歩く手前を、

相変わらずこんがらがった状態のまま浮遊しているドライブドラゴンに、

ジャーブとラティは斬り掛って行った。


ジャーブが横に剣を振ると、

ドライブドラゴンはするりとかわしてジャーブに噛み付こうとする。

剣を振ったのは囮の動きで、そのまま縦切りに変えて脳天を割った。


ダメージを受けて怯んだドライブドラゴンが、

その位置取りを嫌って上空へ逃げ帰る。

追撃を掛けようとジャーブが突くが、

その動きをドライブドラゴンはまたしてもかわす。


その突きすらも囮であった。

突きからの振り上げに依ってドライブドラゴンは天井へ叩き付けられ、

ひるんで制御ができなくなり落下した。


ナズが駆け寄って来て錘の部分で叩きのめす。

やはり動きが鮮やかだ。

練習の甲斐は有った。


ノンレムゴーレムが追い付き、その隙間を抜けようとしていたので、

ジャーブはそちらに向かったようだ。

いつも通りナズの大槍にはドライブドラゴンが絡み付き出す。


そんな事と無関係にナズは槍を壁に向けて撃ち付け、

錘の部分でドライブドラゴンの腹を打ち、

斧の部分でドライブドラゴンの尻尾を斬った。

当てるごとにHPが回復している訳で、

そのまま噛み付かれても平気だろう。


現状ではそこまで侵攻を許しておらず、

ナズの手元までは拳3つ分程度の距離がある。

ドライブドラゴンは噛み付こうと必死に口をパクパクさせていたが、

槍から連続で受ける衝撃の重さからなのだろうか、

そこから先へ進めないようであった。


奥ではジャーブがノンレムゴーレム相手に、

華麗なカウンターを食らわせていた。

もうこの2人に対しては何の心配も要らないだろう。


みっ、見とれていた訳では無いぞ?

皆の出方を探っていただけだ。

ここでようやくサンダーストームを発射した。

勿論オーバードライブ込みだ。


ゆっくりになった事で、アナの動きを見る事ができる。

実はさっきから何をやっていたか、全く見えなかったのはナイショだ。


アナは左手を起点とするよう、戦闘のスタイルを変えたようだ。


まずは腕を突き出し小さな盾を押し当てに行く。

ドライブドラゴンは徒手攻撃を避けようと、

Ω状に体をくねらせ回避する。

そのまま攻撃を仕掛けようと首だけ反転させ、

口を開けて腕に噛み付く格好を取った。


アナはその動作を先読みし、

既に用意していたサーベルが通って行く。

囮に乗せられてドライブドラゴンは首筋を掻っ切られた格好だ。


ドライブドラゴンの反撃は続く。

今度は尻尾部分が振られてアナのサーベルを巻き取ろうと絡み付いた。

そこでまた盾の出番だ。


ドライブドラゴンの顔を目掛けて盾ごと押し付けるように注意を逸らすと、

それを嫌ってドライブドラゴンは首を逸らした。

その瞬間アナの蹴りが入って尻尾は剣先から外される。


奴よりもスピードが上回った事でできる芸当だ。

ジョブ補正、装備補正、パーティ補正が乗っている。

何も無しならこうは行かないのでは無いだろうか。


ラティから戦術を学び、新しい装備の扱いを学習した彼女は、

与えられた条件を生かし華麗にドライブドラゴンを制していた。


但しこれだと負荷はかなりの物だ。

ジャーブやナズに比べて運動量が多過ぎる。

今後はアナの疲労具合を見ながら探索を進めた方が良いだろう。

場合に依っては後衛へ下げて休憩を取らせた方が良いかも知れない。


ラティは最初から最後まで、

防衛一徹で可もなく不可もなく、消耗を抑えて安定した動きを見せていた。

それで良い、それで良いんだよ。


アナの場合は状態異常の武器を持っているので、

当てなければ期待に応えられないと言う負い目もあるのだろう。

確かに1匹が大人しくなれば、後は一方的なのだ。

1人の手が空けば後は加速度的に楽になる。


自分は奥にいたノンレムゴーレムへ矢を発射し、

先程消費した分のMPを回復させて頂いた。

問題無く2ターン目の魔法を使用できる。

勿論ボーナス魔法も込みである。


2回目の魔法を唱え終わった辺りでアナは1匹を封じる事に成功し、

そのままラティの手助けに回ったようだ。


その際ラティはガンガン攻撃を繰り出すような戦術へ変更し、

アナは無防備となった後方から一方的に攻撃を繰り出すだけであった。

連携が取れている、と言うかラティも状況学習が早い。


本来ならば10年近く戦って来たのだから、

その位できなければ迷宮の深部へと進んで行けないのだろう。

いわゆる才能とやらだ。


ラティはやはり迷宮の申し子であった。

ボーナスポイントを振る際に対人関係へ振るのを忘れたのだな。

きっとそうだ。


暫くして全ての魔物が煙へと変わった。

ノンレムゴーレムは属性全てに弱点が無いが、

それはドライブドラゴンも同じ。

HPの量もさほど変わらないようであった。

と元々強化されてる奴であるので。


結果的に5ターンで魔物の群れは殲滅できたが、

アナには2匹を沈黙化させた後、休憩をお願いした。

ナズは一方的にドライブドラゴンを蹂躙じゅうりんするだけだし、

ジャーブはもう殆ど動かないので。


「行けそうだな?」

「はい、これなら31層でも大丈夫そうですね」

「やはりご主人様が居らっしゃると迷宮も楽ですね!」


い、いや、そうかもしれないけれど、

その言い方はどうなんだろう。

少なくとも楽だと認識はして欲しく無い。


「アナはどうだ?かなりの運動量だったと思うが、疲れの方は」

「そうですね。装備のおかげでしょうか?自然と体が動きますし、

 思ったよりは疲れておりません。ありがとうございます」


「ジャーブもラティも、無理は無かったか?」

「俺はこの通りです」「だっ、大丈夫ですぅっ」


良さそうである。

ここにヴィーとパニが加わった所で、

あの竜人コンビは踏ん捕まえてボコボコするだけだろうから、

現状では前列の魔物が1匹減る位で特に変化は無さそうか。


5匹目同時に出た際は自分の方へ零れて来る事を想定して、

一応はデュランダルで戦う用意をして置いた方が良いのかもしれない。

懸念はその位であり、4匹は間違いなく対処できそうであった。


「ではラティ、続きを」

「はっ、はいぃぃ」


画版をラティに戻し、彼女は地図を描きながらアナに指示を再開した。


暫くは2人が先行し、ジャーブと2人で付いて行く。

ナズは自分の後ろであった。


振り向くとニコッと笑顔を向けられ、

この可愛く勇敢な少女が自分の妻なのだと言う事を思い出して、

ちょっぴり照れ臭くなってしまった。

まだ婚姻の登録は済んでいないが。


「来ます!今度は3匹、お供はケープカープが2匹です」


アナが指示を出すと、ラティは画板を首から外して持って来た。


次は厄介な組み合わせになりそうだ。

ケープカープ2匹が前を覆ったら通路はパンパンになり、

後ろになるドライブドラゴンは近寄って来られない。


阻まれた向こう側には攻撃が届かないので魔法の攻撃を許す事になる。

逆もまた然り。

ドライブドラゴンを1対1で取ったとしても、

ケープカープが奥になり2匹は詠唱を開始するだろう。


ドライブドラゴンとやり合っている際に、

巨大なボディでタックルを仕掛けられるかもしれない。

どちらに転んでも厄介な相手である。


ワープを外して鑑定を取っているお陰で先制攻撃を仕掛けられる事が、

自分達の唯一のアドバンテージであった。


「見えましたッ!」


こちらも鑑定ウインドウが出現して確認できた。

どうやら鑑定スキルも魔法の有効範囲も同一距離の模様だ。

スキルと言う事なら射程は変わらないのかもしれない。


オーバードライブ!ガンマ線バースト!サンダーストーム!


ここで弓を番って奥にいたケープカープを狙う。

どうせドライブドラゴンには当たりっこないのだ。

4射分の矢を当てられる軌道上に射出できた事を確認して、

最後のサンダーストームを使用した。


オーバードライブが解け多少のMPが回復する。

勿論足りないので追撃だ。

速さで言うと、浮遊する魔物より泳ぐ魔物の方が若干速い。


ドライブドラゴンを押し退けて1匹のケープカープが前に出ると、

続いてその道を通ってもう1匹が前に出た。

ドライブドラゴンが後列となる。


むしろ、避けて譲った?

接触しようとすると味方でも敵でも関係無く、

ドライブドラゴンはくねって体を逸らすようである。


ジャーブとラティが通路の端に張り付くと、

左右からケープカープを挟み込んだ。

できるだけ真ん中に固定させる狙いだ。

こうする事で魔物はお互いの体が接触し合って避け難くなる。


考えたな?


若干できた通路の端の空間を、

ドライブドラゴンは通りたそうにウネウネとうごめいた。


あーっと、奥の魔物の詠唱が見えんぞ、これは。

一応ケープカープは宙に浮いているので、

潜るようにして見れば何とか詠唱マークは確認できる。

が、どうやって止めるのだ。


ほら、やっぱり!

奥のドライブドラゴンが詠唱を開始したようだ。

申し訳無いが1発は来るぞ。


慌ててオーバードライブしてからジョブを入れ替え、

反射鏡を使用して回る。

結構な消費量でクラクラして来た。

いや、オーバードライブの燃費が悪いのだ。


早速目の前のケープカープに矢を撃ち込んで回復をさせて貰った。


「キャァッ」「イタタタ」「おっ、これは・・・クッ」「あわわわ・・・」


前衛陣が苦痛の声を上げる。

見た目に何も見えないが切り刻まれているような様子を感じ取った。

これは・・・風魔法だ。


恐らくナズたちはブリーズストームを食らったようだ。

当然4人分が反射されているので、

耐性分を考慮しても風魔法1発分のダメージを反射した事だろう。


残念ながら風魔法の対処はまだ何もできていない。

ラティには火魔法の耐性装備も揃えていないので、

魔法ダメージの軽減は自分の反射鏡だけに頼る事となる。


50%カットしても意外と痛そうであった。

ジャミル、落札を急いでくれ。


直ぐさま全体手当てを使用する。

アナとラティ以外は攻撃すれば回復するのでオーバーヒールかもしれない。

そうは言ってもその分多く回復する訳でも無いし、

無駄を覚悟して使用しなければならない。


次はこちらのターンだ。

2回目の魔法を唱え切った後、

やはり地べたを這いながらドライブドラゴンの詠唱を確認する。


詠唱マークが見えるが、今度は右と左の魔物だ。

流石に連撃は厳しい。

止めに行きたい所だがケープカープが邪魔過ぎる。


自分だけでもあちらへ行けないか?


いや、行けば良い。

鑑定とワープを交換し、

オーバードライブして向こう側へゲートを繋いで弓を引いた。


ドライブドラゴンと言えども、流石に詠唱中は無防備なようだ。

避けられる事も無く、それぞれに1本ずつ矢が刺さり詠唱を中断できた。

魔法を止められた2体は怒り狂ったようにこちらへ向かって来る。


フ・・・お馬鹿さんめ、自分は帰らせて頂くよ。


全員が移動完了しなければゲートは開きっ放しであり、

それはパーティしか通る事ができないのだ。

自分がゲートを潜って退避を完了させると、

後を追ったドライブドラゴンは壁に向かって激突しこんがらがっていた。


「仕留めました!」


アナから有難いお言葉が入る。

ケープカープの1体が硬直しており、

それは地面へ落ちると横になった。


現状でL字状に通路を塞いでいるようだが、

ドライブドラゴンにしてみればこんなもの邪魔でも何でも無いはずだ。

空いた空間を2匹が滑るように通って来た。


ラティが1匹を相手取り、ナズは一旦突いて囮の一撃を放つ。

その後槍柄に絡ませて壁との蹂躙じゅうりんを開始した。

頼もしい。

彼女の戦い方はもうこれに決まったような物だ。


遅れてやって来たもう1匹についてはジャーブが取った。

アナはもう1匹のケープカープを先に仕留めるようだ。

ここまで阿吽の呼吸でお互いに魔物を融通し合っている。


いや、アナが指示を出しているようにも思う。

自分の立ち位置ではちょっと距離があるので、

アナの声はこちらに届かない。

今後もタクティカルな判断はアナ頼みになりそうだ。


こんな頭脳明晰が伴侶だなんて、自分は幸せ者である。

優越感と満足感で浮足立ってしまった。

まだ婚姻の儀式は済ませていないが。


「やりました!」

「おっ、お願いしますっ」


2匹目の処理が終わったらしい。

そしてラティが助けて欲しいらしい。

直ぐにアナはラティが戦っていたドライブドラゴンの背後に回った。


自分も3ターン目の魔法をお見舞いする。

床で横になっているケープカープには弓が撃ち込み放題であるので、

MPの心配は無くても良いし何だったら狙う必要すら無い。


思いの他無理無く5ターン目の魔法を使用できた。

残念ながら今回のアナは3テとは行かなかったようである。


「ご苦労様」

「ご主人様の移動魔法は戦闘中にも移動できるのですか!」


「おお?どうやらそうらしいな」

「すっ、凄いです!ご主人様はっ!」


今まで使った事が無かったっけ?

迷宮内で盗賊に襲われた時位か?

そういえば脱出に使用した事は一度も無かったな。


今回は戦術的に用いたので使用する選択肢になったが、

今後もやれる事は色々やって行くべきだろう。


「あわわわ・・・だっ、ダンジョンウォークとはちっ、違うのですねぇ」


ラティも今更である。

散々迷宮へ直接・・・移動してないや、ラティは。

基本的にパニが送っていた。


何度か直接送った事もあったと思うが、頻度は少なかったように思う。

外ではパニが、迷宮ではラティが。

移動には2段階必要なのが彼女の普通であるので、

自分のパーティに入ってみて改めてと言う事なのだろう。


あれ?そういえば今回は別行動だったよ。


アハハハハ!

今更ながら、自分は単独ソロパーティなのであった。

残りのパーティメンバーは・・・ドラッハだね!

∽今日のステータス(2022/05/16)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv27

   強権のハルムンベルテ(詠唱中断 ++)

   鉄の兜(+++)抗縮の鉄鎧(麻痺耐性 +)

   耐熱の鉄籠手(炎耐性 +)黒豹の鉄グリーブ(移動力上昇 +)

   身代りのミサンガ(身代)

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv43

   サーベル(-)鉄の盾(+)竜革のカチューシャ(-)

   鉄の鎧(-)鉄の籠手(-)鉄のグリーブ(-)

   身代わりのミサンガ(身代)


  ↓


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv27

   強権のハルムンベルテ(詠唱中断 HP吸収 +)

   鉄の兜(+++)抗縮の鉄鎧(麻痺耐性 +)

   耐熱の鉄籠手(炎耐性 +)黒豹の鉄グリーブ(移動力上昇 +)

   身代りのミサンガ(身代)

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv43

   アルマス(-)浮草の鉄盾(回避2倍)竜革のカチューシャ(-)

   鉄の鎧(-)鉄の籠手(-)鉄のグリーブ(-)

   身代わりのミサンガ(身代)



 ・収得品

   岩        ×  1   寄生ワーム    ×  1

   肝        ×  1   竜皮       ×  6



 ・異世界88日目(13時半頃)

   ナズ・アナ83日目、ジャ77日目、ヴィ70日目、エミ63日目

   パニ56日目、ラテ35日目、イル・クル32日目

   プタン旅亭宿泊18/20日目 シュメ旅亭宿泊18/20日目

   トラッサ旅亭宿泊6/6日目



 ・ダイダリの迷宮

  29 ノンレムゴーレム   /  レムゴーレム

  30 ケープカープ     /  カーブカープ

  31 ドライブドラゴン   /  ランドドラゴン

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ