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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第曲章 結末
321/394

§308 畏怖

「あっ!ユウキ、おかえり」

「おかえり・・・なさいませ、ご主人様」


「ただいま、変わりは無かったか?」

「ウン、だいじょブよ?」

「問題ありません。私も、こちらの方も」


アナをシュメールに戻し今日のお務めを頂いた後、

自分だけがトラッサの宿に戻って来た。


求婚直後に別の女の元へ行く酷い男、それがユウキだ。

今回ばかりは勘弁して頂きたい。

約束は約束なのだ。


そもそも論そういう相手でも無いし、きっと許してくれるだろう。


食事は片付けられた後であるし、

湯桶も2つ分運ばれて手拭いも絞られた形跡があった。

既に清拭も済んだ後なのだろう。


「エミー、ご苦労様。

 もう休んでも大丈夫だと思うが、こちらで寝るか?あちらへ戻るか?」

「では・・・たいと思います」


「え?何だって?と言うか平気であるならば声を出せ。

 辛いなら辛いとちゃんと言え」

「・・・申し訳ございませんでした、体調は問題ありません。

 できれば戻して頂きたいと思います」


「そうか、あちらに行くと1人になってしまうがそれでも良いか?」

「え・・・」


姉に会いたかっただけか。


「イルマは恐らく夜通しの作業だろう。

 流石に休憩はあるだろうが、事故はかなりの物だったらしくてな。

 従ってヴィーもパニもいないのであっ、ラティはいるかな?」

「そっ、そうですか。では・・・ここに残りたいと思います」


哀れラティよ、お前は今日1人で就寝だ。

ジャーブもか。


・・・逆に伸び伸びしてそうだな、あの2人なら。

ラティは絶対的に人が苦手過ぎる。


「と言う事だが良いよな、イシャルメダ?」

「えっ、べつにイイよ?みんなイぱいのほうがタノシ」


イシャルメダに向かってエミーに伝えたので、基本的にバーナ語のはずだ。


両人が理解できるように会話するにはこれしかないので仕方あるまい。

但しイシャルメダが返答した場合、エミーには理解できない可能性がある。

そして・・・多分この子はそれに対して反応を示さないので、

何かお願い事があれば自分から言う必要がある。

特に何も無ければ良いのだが。


「そうだ、イシャルメダ。明日の事なんだが」

「なぁに?」


「明日は朝・・・は無理だろうが、昼前には起きて欲しい」

「ドしたの?あっ、ケイヤクね?」


「それもあるが、宿を変えたい。ここでは色々不便なのだ」

「ソか、ユウキのいえイく?たくさんドレイいるのよね?」


「実は家を改修中でな。暫く住めなかったから宿を借りていたのだ」

「ふぅん?」


「そこに皆が集まっているんだが、

 こことそこを往復すると実はかなりしんどい」

「そ、そか、ゴ、ゴメンネ?」


「いや、こちらこそ済まないと思っている。

 自分勝手な思いでイシャルメダを拘束したり怪しい薬を試したり。

 自分の奴隷になれと迫るのも、本来はいけない事だ」

「そ、そんなコトナイよ?

 ワタシ、あのままアソコにイてもいつかダメになテるトコだた。

 ・・・それもスグに。

 ユウキがいろいろシてくれたおかげで、

 ワタシもうちょトだけイキていけそう」


「そう言ってくれると少しは楽になる。ありがとう」

「ウウン?ワタシも、アリガト。

 まだデあテすにちだケド、こなにもワタシのコトかんがエくれる。

 ユウキ、イイひと。ヤサシ」


余り褒められ過ぎても逆に申し訳なくなってしまう。

話題を変えよう。


「それで、またプタンノラに戻る事になるのだが、

 イシャルメダはそこで暮らしていたのだろう?

 何か土産になりそうな物とか、美味しい食事処とか知らないか?」

「ユウキはグルシアのヒトじゃないんだケ?」


「ああ、ここトルキナと言う国に住んでいる。

 前にも言ったように、冒険者に送って貰って銀貨6枚、船で10日」

「そ、そカ。ワタシ、なにがメズラシかよくワカラナイ。

 オミセも、ワタシがはたらいてたミセ、もうナイし、

 オきゃくトるヨになテからはゼンゼンシらなイ」


やはり駄目か。


彼女は町人だったとしても生活が厳しく管理され、

殆ど奴隷と同じ状態だったのだろう。

全ての娼婦がそうある訳では無いとは思うが、

借金のカタで売られた身なのだから逃亡防止と言うか、

厳しい制約があったのだと想像できる。


「じゃあ、せめて好きだった食べ物とかは?」

「あ、ジャ、サカナほしたやつ」


干物か。

アナも気に入っていたようだし、

猫人族は匂いが強い食べ物を好きな説、

やっぱり有りそうだ。


「判った、うちの子らも好物なので買って来よう」

「ほんと?ウレシ。えへへ・・・またたべられル」

「あ、あの、私達は不要ですので・・・」


エミーは干物を拒否した。

達、と言うのはイルマの事だろう。


この2人は狼人族。

ロクサーヌは嗅覚が優れていたので、匂いには敏感だった。

カレーのような香ばしい匂いでは無く、

干物は腐った匂いが中心であるので特に鼻に付くのだろう。


面白いな。

こういった所に種族差と言うか、生物ベースの違いが垣間見える。


ヴィー達はどうなのだ?

竜人族は元が鳥、百舌モズ速贄はやにえでは無いが、

ある程度腐った・・・干からびた物も食べるのだと思う。


あはは、ホント面白い。

エマーロはベースがイルカなのだっけ?

テレパシーで会話できたりしてな・・・あははは。(そんなまさかね?)



   ***



──ご主人様は私達へ正式に結婚を申し込まれると、

  ご主人様の国の儀式?にならって宝石を配られ、

  その後は病気の女性の看病にお戻りになった。


  そしてアナさんと2人。

  シュメールの旅亭に残された私は混乱していた。


「どどど、どうしましょう、アナさん!私、平民に戻ってしまいました!」

「そ、それは私も同じです。

 ナズさんは元々平民でしたので宜しいのでしょうけれど、

 私はそれが恐ろしくてなりません」


「そっ、そうですよね?どうなるのでしょう、私達は」

「今後はご主人様の妻としてお支えすれば宜しいのでしょうけれど、

 私には平民の妻が何をすれば良いのかさっぱり判りません。

 ナズさん、申し訳ありませんが私に色々教えて下さい」


「えっ、ええっ!?そ、そんな事を言われましても、

 私だってどうすれば良いのか知りませんよ?」

「ナズさんにはお母様がいたのでは?」


「私が物心付いた時にもう父は亡くなっていましたので、

 母がどんな妻であったか全く知りません・・・あっ、そうだ。

 リアナさんのような感じで宜しいのでしょうか?」

「あの方は夫人と言うよりは、どちらかと言うとあるじのようです。

 参考にはなりませんね」


「そっ、そうですよね・・・」

「どうしましょうね・・・。

 お支えするのだと言いましても、私はその方法を知りません。

 商館でも習っていません・・・」


「あの・・・主人が奴隷と結婚する事自体がもう既に稀な事ですし、

 もっと言えば平民に戻される事その物が稀ですので、

 最初からそういう事は教えないと思うんですが・・・」

「そうですよね・・・」


((はぁーーーーっ))


  私とアナさんは同時に溜め息を吐いて、

  余りにも行動が被ってしまったのでお互いを見詰め合った。

  何から何まで同時であったのでそこで噴き出してしまったが、

  もうそれすら同時だった。


「ぷっ、あはははは」「ふふふふふ」


「アナさんも笑うんですね?」

「そっ、そうですか?笑えるような事があれば笑いますよ?私だって」


「そうなのですか?今まで見た事がありませんでした」

「そう・・・かもしれません。

 そうですね、笑えるような事は・・・少なかったのだと思います」


「そうですか・・・ずっと張り詰めていらしたのですね?」

「そう・・・なのでしょうか。

 ずっと1番奴隷の立場を頂いていましたし、

 失敗をしないようにと気を張っていたのかもしれません」


「そうですか・・・でも、もうそれも必要ありませんよね?」

「どうしてですか?」


「だってほら、私達はもう奴隷では無いのですから」

「そ、そういえばそうですね。

 昨日、ご主人様は緩くで良いと仰っておられました」


「そもそも、もうご主人様でも無いのですよね・・・」

「そうですね・・・」


「これから何とお呼びしたら良いのでしょうか?」

「何も、わざわざ変える必要は無いのだと思います」


「そうなのですか?」

「ナズさんは、ご主人様から離れたくありませんか?」


「そ、そんな事は考えもしませんっ、ずっとお傍にいたいと思っています。

 王宮への推薦だってお断りしましたし!」

「ではお仕えしたいと言う意思は変わらないと」


「勿論ですよ!あっ、・・・アナさんはそうでは無いのですか?」

「いいえ、同じ気持ちです。

 ですので、ご主人様とお呼びし続ければ良いのではないかと」


「そっ・・・・・・そうですかね?」

「そうですよ?」


「そうですか」

「そうですね」


  再びアナさんが笑った。


  私も頬が持ち上がっているのが判る。

  アナさんと一緒だと言う事がとても幸せに思えた。

  私の選択は間違っていなかったし、

  アナさんも選択を間違えなかったのだろう。

  だからこそ、今ここで笑い合えている。


  そのままでも幸せなのだと思っていたけれど、

  今の方がもっと幸せだった。

  自然とアナさんと抱き合っていた。


「でもどうして・・・ご主人様は私達を選ばれたのでしょう?」

「それに付いては私なりに考えてみました。

 ナズさんは聞いたら驚かれるかもしれませんが・・・」


「何かお聞きしたのですか?」

「いいえ、そうでは無いのですが、私の推測です」


「アナさんはとても頭が良い方だと思っていますので、

 そう考えたのであればそうなのだと思います」

「ありがとうございます。・・・私が考え着いた結論から言いますと、

 ご主人様はこの世界の人間では無いのだと思います」


「えええええ!?」


  えええええっと?・・・・・・・・・あれっ?続きは?


  私が驚く事を知っていて、アナさんは敢えてそのまま黙っていた。

  落ち着くのを待っていてくれたのだ。


「ど、どういう事でしょうかっ」

「まず最初に私達が買われた際の事を思い出して下さい」


「はい?ええと・・・私は買われて直ぐに、

 迷宮へ行くのだと伝えられて怖かった事は覚えています」

「常識をお持ちの方であれば、

 普通はお妾の候補を危険な迷宮へ連れて行かないと思います」


「そっ、そうですよね?」

「それからご主人様は複数のジョブをお持ちです。

 それも好きな時に切り替えられますし、

 私達もそのお力の恩恵に与かりました」


「そうですね?ご主人様の他にもそのようなお方がいるのだと、

 以前アナさんから聞きましたが」

「神話の中に、複数のジョブを得た神の話がありますがご存じですか?」


「いいえ、存じません。そんな話をアナさんは良く知っていましたね?」

「以前・・・仲間になった奴隷の子が言っていました。

 私達は主人より早く寝て遅く起きる事は許されませんでしたので、

 夜や朝などに話す時間は多かったのです」


「ではやはりご主人様は神様なのでしょうか?」

「いえ、最初からご主人様は別の国から来たのだと仰っておられました。

 それに、しつこく神では無いとも否定しておられます」


「それで別の国と言うのは、別の・・・世界から?」

「神話として私が聞いた話は、そういった方の伝記だったのでは無いかと」


「でっ、では、実際にあった話なのですか!」

「そこまでは判りませんが、

 お伽ぎ話であったならば誰もが知る程に話が広がりますでしょうか?」


「そっ・・・そうですよね」

「更にご主人様はそういった方の伝記を読んで、

 後を追い掛けて来たのだとも仰いました」


「はい、それは聞きました。ミーティオ?様でしたっけ?

 それはアナさんが直接聞かれたのですよね?」

「それこそが例の神話の本なのではと。

 会った事も無いし生きているかも判らないのに、

 そのお方が住まわれている方角だけ判ると言うのは変です」


「確かに、言われてみればおかしな話です。

 でも、その方と同じ場所では無く私達の国に来られた理由が不明です」

「そうでしょうか?

 伝記をお読みになって来られたけれど違う場所に来てしまった、

 それもご主人様の意志では無く勝手に・・・。

 ご主人様は別の世界からその方を追って来たけれども、

 その方とお会いできなかったと考えれば辻褄つじつまが合います」


「そっ、その通りですっ」

「不思議な道具もお持ちでした。

 私達の知らない道具を作り出し、それらを扱える技術もお持ちです」


「ええ、それは知っています」

「私たちの住む世界の別の国からやって来たのであれば、

 何故その国の別の者がこれまでこちらにいなかったのでしょうか。

 長距離移動ができるお力を誰もが持っているのであれば、

 絶対に噂になったり不思議な品物が溢れているはずです」


「そっ、そうなのですか!」

「私はここシュメールに来て確信しました。

 ご主人様がお持ちの技術は、この世界のどの国にも存在しないのだと」


「ええええ!?」

「思い出して下さい、ご主人様はどちらからやって来られたと?」


「ええっと・・・シュメールの方から来たと?」

「それにしてはこの国の事を余りご存じありませんでしたし、

 観光と称されまして色々珍しい所を見て歩かれました。

 そして・・・どこにでも行ける移動魔法をお持ちでしたのに、

 パニを船に乗せてわざわざこちらまで移動されました」


「そっ、そういえばそうでしたね?」

「ご主人様の仰ったようにシュメールから来られたのであれば、

 移動魔法で戻れるのですから面倒な手段を取る必要は無いはずなのです」


「た・・・確かに!

 アナさんは凄いですっ!良く気が付きましたね?」

「恐らくはご主人様もこの国は初めて・・・いえ、

 私達の住むこの世界全てが初めてなのだと思います」


「そう・・・なのですか、そう・・・ですよね。

 食べ物の名前をご存じなかったり、

 私達が普通に知っている事を聞かれたりしました」

「ご主人様の知識は迷宮の事だけで、それ以外はお持ちでない様子です」


「ではその、『伝記』と言うのは迷宮の事を書かれた本であって、

 その知識だけでこちらの世界に来られたのだと?」

「恐らくは・・・」


  アナさんのお話は突拍子も無い事だと思ったけれど、

  言われれば言われる程全てが当てはまった。

  ご主人様は・・・人間だけれど私達の知る人間族では無い方なのだ。


「別の世界のお方・・・」

「それがご主人様の本当の姿なのだと思います」


「神の国──」

  「──かどうかは判りませんが、

   神話の元になるようなお方が極稀に現れるのでしょう」


「物凄い方に買って頂いた訳ですね?私達は・・・」

「そこで、ナズさんの先程の疑問なのですが」


「ええと、はい。何故私達だったのでしょうね?」

「私はご主人様の命令で、

 アムルと言う街で悪徳だとされた用聞き商人を探らせて頂きました」


「ええと、はい。その後戦利品を売ろうとして、

 ご主人様は冤罪で騎士団に捕まったのでしたよね?」

「その仕事をする前に立ち寄られた場所で、

 戦利品とは別の、宝石の入った木箱を掘り起こされたのです。

 その宝石と言うのが、私達が頂いたこれです」


「ええっと、これ・・・ですか」

「恐らく、ご主人様は『そこ』に初めて来られたのでは無いのかと。

 ご主人様のようにお強い方が迷宮は1層から、

 宿屋暮らしでしたがある程度にお金を持ち、

 他に収入は無いと仰っておられたにも拘らず、

 借家をお決めになられました」


「ええと、はい・・・」

「ご主人様はこちらの世界にお越しになられた際に、

 最初はアムルへお立ち寄りになられたのでは無いのかと。

 そこからトラッサまで徒歩で向かわれ、商館をお探しに。

 そこで直ぐ私達をお求めになられた・・・」


「え、えええ?ちょっとそれは、いくら何でも・・・」

「そして、ナズさんと・・・私は最初から結婚相手として選ばれた」


「え、えっと、流石にその話は無理がありませんか?」

「私達が同列に1番と言うのは、最初からそのおつもりだったのでしょう」


「そ・・・そういえばそうでしたね」

「ご主人様の足取りが、今なら大体判る気がします。

 ご主人様がお話しになった事を繋げますと、

 最初に降り立ったアムルでお持ちになった珍しい物をお売りになり、

 その取引相手に狙われた事を知るとお持ちであった宝石を隠し、

 トラッサまで来られた後は結婚相手として私達を選ばれ、

 終の棲家としてホドワの家をお決めになられた。

 そして、ご主人様を尾け狙った悪徳商人へ報復に向かわれた」


「すっ、凄いです・・・。

 言われてみましたら確かにその通りで、おかしなところはありません。

 アナさん、良くそこまでお判りになりましたね?」

「ですので、私達は最初からご主人様の妻となるために身請けられ、

 そしてこの宝石は最初から婚姻の印として用意されたのではと。

 ご主人様のお出になった国では、

 婚姻の証として宝石を送るのだと仰っておられましたし、

 大事に隠されていた事とも合致します」


「そう・・・だったのですか・・・」

「私達の扱いが丁寧だったと言うより、

 一般市民そのものだと言う事にも納得が行きませんか?」


「全てアナさんが言われた通りだと思います。凄いですね、アナさんは」

「・・・あっ、そういえば」


「はい?まだ何かあるのですか?」

「ええっと、ご主人様が以前からお使いになる素早く動くスキルですが」


「ええっと、はい。私には突然消えたように見えるのですが・・・」

「同じ事をされた方がいらっしゃいました」


「ええええ!?」


  今日はもう何度驚いた事だろうか。


  ご主人様からも驚かされたし、アナさんからも。

  もしかして私はまだ朝方に飲んだお酒が抜けていないのだろうか。

  これは夢、夢かもしれない。

  私が微睡まどろみの中で見ている夢なのだ、きっとそうだ。


「ナズさん?ナズさん!」


  アナさんが私を現実に呼び戻す。


「はっ、はいっ!だっ、大丈夫です?」

「ええとですね?

 以前ボルドレックとの決闘の場にやって来た決闘代理人の1人に、

 ご主人様と同じように高速に動かれる男が居ました」


「ええっ!?でっ、ではその方も──」

「いえ、その方はご主人様とは違いスキル詠唱をされておられましたし、

 ご主人様は一瞬でその男を討たれて勝ちとなりました」


「と言う事は、その方は普通のお方だった訳ですね?」

「はい、相手は英雄タロス・・・ご存じありませんか?」


「えええっ!?・・・ええっと、夢なら早く終わって下さいませんか。

 そろそろ理解が追い付きません」

「ナズさん、ナズさん・・・残念ながら全て現実です。

 頬を叩きましょうか?」


  お願いしますと言うと、

  次の瞬間アナさんは加減もせずにバチンと私を引っぱたいた。

  ・・・頬が痛い、やはり現実なのだ。


「たっ、タロスを・・・?と言うか、生きていたんですか!あの人」

「そうみたいです。ご主人様が討ち取ってしまわれたようですが」


「と言う事は、ご主人様は英雄・・・?」

「のスキルをお持ちなのだと思います。恐らく、タロスと同じジョブを」


「でも、それだとしても同じ速さで動かれるのでしたら互角なのでは?」

「ご主人様は恐らく更にもう一手上のスキルをお持ちのようです。

 途中までは同じ速さで動かれておられましたが、

 突然私ですら目で追えない速さで行動され、

 瞬く間も無くタロスに剣が突き刺さっていました・・・」


「ええっと・・・」

「それがあの決闘の場で起こった全てです」


  いつもはお優しい所だけしか見えていなかったご主人様が、

  この時ばかりは急に恐くなってしまった。


「私達、どうなってしまうのでしょうか・・・」

「死ぬまで愛され続けられるのだと思います」


「ぷっ・・・アハハハッ」

「ふふふふ」


  アナさんの言葉に妙に納得をしてしまい、また吹き出してしまった。

  そしてアナさんは今日3度目の笑顔を見せてくれた。

∽今日の戯言(2022/05/13)


なんだかもうそろそろ終わりそうじゃろう?


もうちょっとだけ続くんじゃよ。



 ・異世界87日目(21時頃)

   ナズ・アナ82日目、ジャ76日目、ヴィ69日目、エミ62日目

   パニ55日目、ラテ34日目、イル・クル31日目

   プタン旅亭宿泊17/20日目 シュメ旅亭宿泊17/20日目

   トラッサ旅亭宿泊5/6日目

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