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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第曲章 結末
319/394

§306 誰?

「ご主人様、お目覚めです」


夕方ごろにイシャルメダが目を覚ました。

覚ましたとは言うものの、彼女は寝たままの姿から微動だにしていない。


「おっ、そうか。流石アナだな?

 いつもそんな感じで起きた事が判るのか?」

「はい、ご主人様の場合お目覚めになると呼吸音が大きくなりますので、

 もっと判り易いのですが」


あぁ・・・そうなんだ。

良く見てるな。

初めて知ったよ、そんな事。


「おおい、イシャルメダ?

 別に起き上がる必要は無いが、体調が悪かったら言ってくれ」

「う・・・ン?・・・」


目が覚めた直後に体調を報告させるには無理があったか。

イシャルメダはまだ殆ど微睡まどろみの中で、

真面マトモな返事は期待できそうも無かった。


「おは・・・よ、ユウキ?」


「おはようの時間では無く、もう夕方だ」

「おかげんはいかがでしょう?」


「だ、ダレっ?」


世話メイドが真面目で寡黙なイルマから、

優しそうだが口調は厳しめのアナに変わった事で彼女は困惑したようだ。


「もうしおくれました。

 イルマにかわりましてほんじつおせわをさせていただきます、

 アナンタともうします。アナとおよびください」


うーん・・・バーナ語。


意味は解るが脳が遠回りを強いられる。

イシャルメダとの会話ではどこか気骨無ぎこちない感じがあったが、

アナや航海中に出合った猫人族の船夫との会話は、

意味が理解できるまでタイムラグがあった。


どちらかと言えばこちらの方が正しいバーナ語なのだろう。

きっとイシャルメダは変則的なバーナ語なのだ。

それでか、イルマが理解できなかった。


「アナ・・・さんね、わ、ワか.た。アナタもユウキのドレイ?」

「そうですね、ごしゅじんさまにはよくしていただいております。

 あなたさまもごしゅじんさまのもとでせわになるとききましたので、

 こんごなにかあればわたしにおもうしつけください」


め。

真面に彼女らの話を聞いていると脳がバグる。

既にゲシュタルト崩壊気味だ。


「あー(コホン)、お互いに意思疎通ができて何よりだ。

 じゃあイシャルメダは今日1日体調に問題が無ければ、

 また明日実験をするぞ」

「う、ウン。またウデきる?」


「まだ追加の薬を準備していない。今度はまたウサギの検査だ」

「そ、そか、ヨかた。まえのはトてもイタかたのヨ?」


ま・・・まあそうだな。

あのエミーですら聞いた事も無い声量で悲鳴を上げていた。


「ついでにエミーも検査を行うのでな?」

「はい・・・大丈夫です」


自分の発するバーナ語であれば、エミーも理解できるようだ。

多分イルマもそうなのだろう。

やはりイシャルメダの話すバーナ語だけが特殊なのだ。


「そういう訳だから、食事を取りに・・・頼む。アナ」

「あ、はい。かしこまりました」

「あ、あの、私が・・・」


「エミーは寝ていろ。今日はゆっくり過ごすのがお前の仕事だ」

「もうし・・けあり・・・せん」


エミーはベッドの袂に座ったままペコッとお辞儀をした。


「ユウキ、いパいドレイいるのネ。9にん・・・ダけ?

 あのコはビョきじゃなインでショ?」


「ああ、アナは自分の一番奴隷だ。戦闘も優秀でな?

 いつも自分を助けて貰っている。

 とても優しい心を持った娘なのでな、

 何かあれば相談にも乗ってくれるだろう」

「ソか・・・ふぅん」


イシャルメダをナズやアナとは対面させたくは無かったが、

本人が奴隷を希望するのであればいずれは避けられないだろう。

同じ猫人族同士、先に顔合わせできた事は何の巡り合わせか判らないが、

結果的に良かったのかもしれない。


これがナズであれば、

ロリコン!犯罪者!鬼畜!等と罵詈雑言を浴びせられていただろうよ。


あっ・・・この世界にロリコンは無いな。

ロリータと言う言葉すら無いはずだ。

アレは小説に出て来るただの人名だ。


そもそもこの世界、15で成人じゃないか。

大きいのが好きか、小さいのが好きかと言う違い位しかない。

良かった、セーフだ。


勝手に自分を納得して聞かせると、アナがトレイを2つ持って戻って来た。


「ではエミー、食べなさい。そちらのかたも、どうぞ」

「はい、・・・ありが・・・ございます」


「あっ、ワタシね、イシャルメダよ」

「イシャルメダ、さんですね。よろしくおねがいします」


食器トレイを2つ机に回し、アナはハーブティーをコップに注いだ。


自分達の分はプタンノラなので、ここで食べる必要は無い。

と言うか、あちらの分を配膳せねば。


「アナ、我々はあちらだ。一旦向こうに戻って食べよう」

「かしこまりました、皆の分もご用意させて頂きます」

「えっ?ユウキ、イちゃう?」


「ちょっと今日は色々あってな?

 食事後はまたアナを戻すので、何かあればその時言ってやってくれ」

「そ、そう・・・ユウキ、イソガシね?」

「すぐにもどりますので、

 イシャルメダさまはそのままめしあがってください。

 何かあればエミー、頼みましたよ?」

「はい・・・行ってらっしゃいませ」


プタンノラの旅亭で夕食を受け取り、アナはワゴンを転がして戻って来た。


その際に、ジャーブは1ページ丸々文字がびっしり埋まった木版を見せ、

頑張りましたと得意げに胸を張った。


「凄いな、やってみるもんだな?」

「はい!これまでの作業が段階的に難しく、

 細かくなって来た事が良かったのだと思います!

 上手くできているかどうかは分かりませんが、

 後でインクを乗せて貰いたいと思います」


「あー、残念ながらその作業ができる者はみんな出払っている。

 明日以降だな」

「どっ、どっ、どっどうかさされたんですかっ!?」


銅貨には刺されていないしどうにもなっていない。

救助活動のボランティア中だ。

別に隠すような事でも無いので掻い摘んで説明をした。


「らっ、落盤ですかっ!」


「よくある事らしく、人命に関わる事も無いらしいので手伝わさせている」

「そうなのですね、流石はナズ殿です」

「ヴィ、ヴィー様もちっ、小さいけれどおおお強そうなので凄いですっ」


「あーナズは・・・うん。

 酒を飲んだら酔っぱらってしまって、今は寝ているのだ」

「「ええええっ!?」」


まあ、そうなるよな。



   ***



アナは2人の食事の手配を終わらせると、

ジャーブに食事後はワゴンを戻して置くようお願いしていた。


我々は隣の部屋で急いで食事を終わらせ、アナをトラッサへ送る。

自分は食器のトレイ1つをシュメールの旅亭へ持ち込んだ。


相変わらずフニャフニャになったナズはまだ寝ており、

ドワーフ殺しの破壊力を思い知らされる事となったのである。


テーブルの上に乗ったガラクタを一部片付け、

食器のトレイを置いて少しだけみ出るように布を掛ける。

こうして置けばナズが目覚めた際に食事を用意してあると気付けるだろう。


ついでに15個になったシャーレを覗いてみると、

以前程では無いが順調にカビは広がっており、一定の成果は垣間見えた。


期間が半分でも手が3倍になれば、実質プラスである。

抽出作業は大変になるだろうが、恐らく前回と同じ分を確保できるだろう。


明日はまたアナにグルんグルんして貰わなければならない。

それも前回の3倍の量を・・・。

アナばかりで申し訳無いな。


投薬はまだたったの2回、それも数日で梅毒が治るとは思えない。

効いているかどうかさえも解らない。

従ってこの作業は当分続く。

この平底に作ったフラスコ一杯にしてもまだまだ足りないのだと思う。


・・・イルマにも覚えさせるか?

彼女自身にも必要な物であるので、意欲も増すだろう。

それも全て、ドラッハの救護活動が終わってからの話であるが。


寝ているナズの頭を撫でてドラッハの鉱山へと向かった。



   ***



ドラッハ鉱山の落盤事故はかなり大掛かりな物だったらしく、

夜通しの作業があると思われる事からも、

騎士たちは周囲の明り取りのために篝火かがりびの準備をしていた。


教会から派遣された者たちなのだろうか?

およそ肉体労働に向かないような細身の女性と、

どう見ても神官の格好をした・・・あれがアルバか、初めて見たぞ。

4名の団体が騎士と話をしている所であった。


イルマは・・・ここからでも直ぐ見て解る位置にいるようだ。

詰所の向こうの建屋の中で、下に向けて手を伸ばしていた。

恐らく怪我人の治療中だろう。


そういえばMPは大丈夫なのだろうか?


「済まないがっ!」

「おお、どうした?今は緊急事態中であるので手短に」


「先程自分の奴隷を救護に派遣させた者だ。

 直ぐそこで回復を施している女に回復薬を渡してやりたい」

「ああ、その事なら大丈夫だ。必要な量は我々で用意している」


そりゃそうだ。

MPが切れたらそこで休んで置けだなんて、

悠長な事を言っている場合では無いだろう。


「そっ、そうか。それならば安心した」

「うむ。他に何かあるか?」


「どの位で終わりそうかな?食事を取らせてやりたいのだが」

「食事に関しては既に支給している、安心されよ。

 どの位で終わるかに付いては何とも言えん。

 かなり大きく崩落したらしく、

 1367番坑道から1370番坑道までえぐれてしまったそうだ」


えぐっ・・・。

恐っ。


「そ、そうなのか」


何トカ番とか言われても部外者にはさっぱり解らない。

長さも大きさも深さも。

ヴィーとパニらしい人影が豆粒になっている事からも、

相当深いんだろうと言う事は理解した。


ヴィー達も良くやってる。

豆粒になってもチョコチョコ動いているのは恐らくヴィーだろう。


「ちなみに以前崩落した際はどの位の規模で何日位掛ったのだ?」

「32日前の崩落では1367番坑道の入り口が崩れただけだったのだ。

 確か・・・半日程度だったよな?」

「ああ、その位だ。今回は落盤と言うより崩落なので、

 救助だけで2,3日は掛かるかもしれんな」


「そんなに埋まってしまって大丈夫なのか?」

「一応中に入る際には薬を渡しているし、

 そのための防具を装備しているでな。

 流石に5日も取り残されたら水分不足で駄目だろうが」


そんなに平気なのか。

じゃあ良いのか。


「ちなみに休憩などは?」

「交代で休憩は出るだろうが、それがいつであるかは我々には分らん。

 急用が無いのであれば、もう暫く助力を頼みたい所なのだが、

 引き上げを希望か?」


「い、いや、既に中へった奴隷もいるので今更だ。

 こういった救援に送るのは初めての事なので、聞いて置きたかったのだ」

「そうか。あるじであるお前には申し訳無いがもう暫く助力を願う。

 一段落付くまでは宿で休んでいてはどうだ?

 ここの宿は勿論、街の宿でも事故処理が終われば知らせは出るだろう」

「食事や労働時間は緊急事態とは言えちゃんと管理しているので、

 例え誰の奴隷であっても一般鉱夫と同量分は支給される。

 あるじであるお前に心配を掛けるような事は無いので安心されよ」


そうなの?

食事も休憩もあるなら良いのか。

薬も支給されるみたいだし、不自由は無さそうだ。


「解った、では戻って休ませて貰う事にする」


2人の守衛に礼を言ってシュメールへ戻る。


それにしても異世界の薬事情は凄い。

支給品の薬品は滋養剤・・・いや滋養丸なんだろうが、

顔と体さえ守って置けば後は薬の力で生存できるのか。


そんな事では医療の進化と言う意味では期待できないと思うのだが、

逆に言うとこの世界の死に至る原因がHPの減少、

或いは病魔に蝕まれる事で体力自体が低下した結果、

と言う事がはっきりした。


地球に於いても実はそうだったのかもしれないが、

HPと言う概念は無いのだし測る事すらできない。

それに回復する手段だって無い訳で、検証は不可能だ。


こちらの世界と地球世界の2つが融合したのであれば、

どんな病気だってどんな怪我だって克服できるのだろう。

一方通行だし限られた人物しか移動できないので、

実際はそれすら叶わない訳であるが。


──ヴォンッ!


ドラッハ鉱山端れの飛べそうな木の袂からシュメールの旅亭に戻って来た。

もういい加減ナズを起こそうか、そろそろ夜である。


ナズが酒を飲んだのは午前中だったはずなので、

もう9時間(・・・こちらの世界では5異時間だな)も眠れば十分だろう。


「ナズ、・・・ナズっ。おーい」


髪の毛に手を絡ませながら肩をポンポンと叩くが起きなかった。


「う・・・う・・・ご主人様・・・ですかぁ・・・」


やや強引に揺さぶると重怠い声を出しながら、ナズはこちらに顔を向けた。


「ああ、もう夜だ。夕食をそこに置いてあるので食べて置け」

「もう・・・申し訳ありませんッ!・・・・・・うッ」


ガバっと起き上がったが、眩暈に襲われたらしく頭を手で押さえる。


「ほら、無理はしなくて良いが夕食は食べて置かなければな?」

「申し訳ありませんでした。

 あのような強いお酒を飲んだのは初めてでしたので・・・その」


「良いから。飲めと言って飲ませたのは自分だ。

 アナから聞いたんだがアレはドワーフ殺しだって言うじゃないか。

 他のドワーフもやられてしまう位に強い酒だったのだ」

「そう・・・ですか。あれがドワーフ殺しだったのですね?」


「本当かどうかは解らんが、そうじゃないかと言う話だ」

「そのような貴重な物を頂き、

 しかもその後倒れてしまったようで、何から何まで申し訳──」


かしこまるナズの弁明をキスで止め、

そのままベッドへ押し倒すようにして覆い被さった。

いや、正確にはキスをしようとしたらナズが手を自分の首に回して導いた。


絡ませ合った口の中はまだまだアルコール感が残っていたが、

ナズの口調や雰囲気は平常に戻っていたので、

薄い酒を飲んだ程度位には酔いが覚めていたのだろう。


それでも平常時いつものナズとは考えられない程大胆で強引に、

自分の舌を探し回って吸い付いた。

当然そんなに激しく求められると元気になる事もある訳で。



   ***



「アナとの順番が逆になってしまったな」

「も、申し訳ありません・・・」


未だ服を身に着けていないナズは、

薄い掛け布団を纏ってモジモジと身をよじった。


「ナっ、ナズは・・・」


しおらしく愛おしいナズに、

今こそ聞くべきかと緊張しながら声を振り絞る。

いや、無性に言いたくて堪らなくなった。


「・・・はい?」


いつもは顔を向けて会話をするのだが、

今この時ばかりは目を合わせずの問い掛けに

ナズは戸惑った様子で返事を返した。


「ナズは、自由になったとしたらどうしたい?」

「・・・ええっと?」


「ナズは・・・酒場で歌って生活をしていた時に、

 どんな未来があったのだと思う?」

「そ・・・それは・・・」


一仕事終えた後のシュメールの宿はもうすっかり暗く、

ギリギリお互いの輪郭が見える位には闇が迫っていた。


いつの間にか廊下はランタンの光が灯されていて、

ドアのほんの僅かな隙間から一筋の光が見えた。

自分達の部屋も明かりを灯けた方が良いのではないかと、

余計な事を今になって考える。


しかしそれもこの時点では難しい。

自分の問い掛けに対してナズの答えを待つ間は、

お互いに金縛りにあったように動けなくなっていた。


「あっ、あの・・・」


返事すらできない。

ナズの回答を聞くまでは。

相槌を打つ事すら躊躇ためらわれた。

回答を求められているナズは、観念して答えた。


「私は・・・その、歌いながら客の誰かと結婚して、

 そのままお店を手伝う店員になるのかと思っておりました」


「そうか・・・。今でもそう思うか?」

「ええと、今はご主人様の・・・・・・奴隷です・・・ので」


「いや、自由になれたらどうしたいか聞いている」

「な、何か私は間違ったでしょうかっ!

 申し訳ありません!今朝の事でしたらこの通りお詫び致しますので、

 どうかお見捨てにならないで下さいませんか!」


余りにも早口で喋ったので止める間もなかった。

そしてベッドから降りて床に・・・伏すのはめさせる。


「そうじゃないんだ。見捨てるとかそういう訳では無くって・・・」


ナズの顔を見ると涙が零れていた。


自由。


奴隷が求める物では無いのだろうか。

ナズはその後の人生が保障されている隻眼だ。

自分の元から離れて行っても生活はできる。

何だったら王宮に怒鳴り込んで行っても保護して貰える位の人材なのだ。


それが・・・自分の元から離れたく無いと、

そう懇願された。


「ナズ、自分の妻になって欲しい」

「えっ、えっ・・・・・・」


伏せようとした時に捕まえていた肩を緩めてやると、

ナズはヘナヘナと床にへたり込んだ。


余りにも部屋が暗くなり過ぎたので、

ランタンを手に取って廊下の灯を拝借し、ベッドの袂に置く。

へたり込んだままのナズが自分を目で追っていたのは解るが、

戻って来るまでは何も言わず、少しも動かなかった。


ナズを起き上がらせてベッドに座らせ、自分もその横に座った。


「あ、あの・・・」


「うん」

「ご、ご冗談です・・・よね?」


「いや、ナズも、アナも。

 2人とも手放したくは無いが2人とも自由にしてやりたい。

 ずっと・・・・・・そう考えていた」


再び沈黙が訪れる。

やはり難しいのか。

拒否をされたら・・・奴隷であるので解放は無い。

そのまま、このまま、変わらず自分の世話を続けて貰うだけだ。


ナズはもう自分の元から離れる事は無いのだろうと言う、

不思議な自信があった。

ナズ自身がさっきそう懇願したからだ。


拒否をしたい理由があるとすれば、

畏れ多いだとか、申し訳無いだとか。

或いはアナの事を考え、待遇に差を作って欲しくは無いといった所だろう。

その線は先に潰させて頂いた。


「あ、あのっ!」


「どうした?」

「ア、アナさんにも・・・このようなお話を?」


「いや、ナズが先だ。アナは・・・そういう機会が無かった。

 なんて言うか、先程のナズのキスが・・・その、

 とても愛おしくなってしまって・・・・・」

「そっ・・・」


一言何かを言い掛けて、ナズは溜め息を吐いた。


「そうなのですね」


ナズは手元のシーツをぎゅっと握り、体をこちらに凭れ掛ける。


「私は今のままで十分幸せです。

 ご主人様がお望みでしたら何でも致します。でも・・・」


少しの間が開く。

たった数秒であってもこの無言の時間はこたえる。

言葉を詰まらせたナズの、その先を早く聞きたくてたまらなかった。


「でも?ナン──」

     「アナさん!・・・アナ・・・さんが何と返事をされるのか、

 ・・・私には解りません。


 できれば・・・。


 赦されるのでしたら私はこのままずっとアナさんと共に、

 ご主人様のお傍でお仕えさせて頂きたいのです」


「解っている」

「でしたら!」


「勿論アナとも一緒になりたいと考えている」

「ええ・・・と?」


「ナズとアナ、2人と結婚をしたいのだ」

「え、えっと、そ・・・その、2人同時に結婚ってできるのでしょうか?」


「ああ、一応その事は聞いてある。大丈夫だ」

「そ、そうなのですね・・・あっ、あの!」


「まだあるのか?」

「ええとその、アナさんに!この事をアナさんにっ!

 是非直ぐにお知らせ下さいっ!

 私だけこのようなお話を聞く訳には参りませんので!」


その言葉にちょっとウルっと来てしまって、

肩を寄せて来たナズをきつく抱き締めた。


何処までも2人仲良くしようとしている事が窺える。

いつまでも2人で居たいと言う願いが垣間見える。

ナズは今のこの環境で幸せだったのだ。

自分は余計な事をしてしまったのかと急に心苦しくなった。


単純に自分の欲求を通しただけの形である。


ナズは自分の伴侶になりたいと望んでいた訳では無く、

今のままずっと一緒にいたいと願っただけだったのだ。

ニアリイコール(≒)ではあるが、カングルアント(≡)では無い。


「判った、ではこちらに連れて来るのでその前に服を着て置いてくれ」

「かっ、かしこまりました」


急そ急そと服を着始めたナズを横目に、自分は1人トラッサへと向かった。

∽今日のステータス(2022/05/11)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv27 酩酊

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv27 看病

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv49 救護中

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 冒険者 Lv16 救護中

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 僧侶  Lv33 救護中

 ・イシャルメダ   猫人族  ♀ 29歳 探索者 Lv3  療養中  


 ・異世界87日目(17時頃)

   ナズ・アナ82日目、ジャ76日目、ヴィ69日目、エミ62日目

   パニ55日目、ラテ34日目、イル・クル31日目

   プタン旅亭宿泊17/20日目 シュメ旅亭宿泊17/20日目

   トラッサ旅亭宿泊5/6日目

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