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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第冊章 実験
306/394

§293 裂傷

「ねェ、ユウキ」


暫くの沈黙に思い耽っていると、イシャルメダは口を開いた。

リラックスできたのか、無言の沈黙に寂しくなったのか、

はたまた覚悟が決まったのか。


「何だ?」

「ココ、べつのクニイてタね。シュメルなの?ドラハなの?」


「ああ、そっちか。どちらでも無いな。

 少なくとも簡単にプタンノラへ戻れるような場所では無い。

 ここからイシャルメダが暮らしていた街に戻るには、

 冒険者に送って貰った街から船で10日、そこから更にまた冒険者だ」

「ええっ!?・・・も~ウソばカり」


イシャルメダはちょっとだけびっくりして笑った。

完全に信じられていない。

それも当然だ。

船には乗っていないし冒険者を乗り継ぐような移動もしていない。


彼女を国内の迷宮に送り、出て直ぐにここの町の旅亭に飛んだのだから。


「まあ信じてくれなくても良いが、実際本当に戻れないぞ。

 何か残して来た物が在ったりしたか?」

「え・・・あの、ホント・・・なの?」


「うん、ホントかどうかと言えば本当だ。

 こちらの国はあまり雨が降らなくってな?

 多少暮らし難くなるかもしれないが、

 必要な物があれば持って来るので遠慮せず言ってくれ」

「エト・・・・・・ソウ・・・なの。・・・ふーん」


また暫く沈黙があり、イシャルメダは顔を膝に埋めた。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・


「ねえ」


「うん?」

「このクニ、ナンていうクニなの?」


「トルキナだ。

 グルシアのサンドラッドと言う街から船に乗ると、

 その先はシルクスと言う街に着く。

 そのためグルシア内ではシルクスの国と言われているらしいが、

 実際はトルキナと言う国だ」

「そ、そう・・・ホントにちがうクニなんだ」


「この国では雨が少なく、穀物が少ない。

 魚も中々食べられないが、その代わり肉が安いみたいだ。

 肉は好きか?さっき食事に出たと思うが」

「う、ウン、よくワかんない。サカナはたべたコトあるけど、

 ニクはあまり・・・かえないシ」


基本はパンだけだからな。

そこは庶民であれば、肉も魚も関係無いのか。

魚を食べた事があったのは、売られる前の事だったのだろう。

それでも頻度は少なめ。

パン以外にちゃんとおかずが付くこの旅亭は意外と豪華な部類であった。


「ついさっき食べたと思うがどうだった?」

「ワルくは・・・ナイよ。でもタカいんでショ?だいじょブなの?

 ワタシかうおカネ、20万ナールもした・・・ユウキおかねもち?」


「大丈夫か大丈夫じゃないかと言ったら、余り大丈夫では無い。

 イシャルメダがこのまま働かないでこの旅亭に居続けられたら厳しいな」

「そ、ソう、ヤぱり、ワタシ・・・ここでおキャクトル?」


「そういう予定は無いぞ。そもそも病気持ちの娼婦だなんて宣伝できるか。

 イシャルメダが病気を治し、町民として生活してくれればそれで良い。

 別にお前と結婚をした訳でも無いのだし、お前は自由の身なんだ。

 税金を払えるだけの稼ぎがあれば1人で生活してくれても問題無いぞ」


今のは意地悪な言い方だ。


ちょっと考えれば、直ぐに無理だって解るだろう。

穴持けつもちがいなければ個人の娼婦は危険が伴う。

それが病気を持っているとなると、

逆恨みで殺される事だって大いに有り得る。


真っ当な仕事をするにしたって、

見知らぬ異国の地で直ぐに働ける口なんて無い。

少なくともブラヒム語が理解できなければ、

商売人として雇われる事だって難しい。


技能は?


彼女は多少の料理ができるらしいが料理人では無い。

難しい料理ができるかどうかはまた別の話だが、

先程聞いた肉や魚料理をあまり食べて来なかった来歴を見ると、

難しい調理の仕事はやった事が無いように思う。


娼婦としても・・・引き取り手が付かなかった位には普通なのだろう。

それも、年齢的にタイムリミットが近い。

そもそも娼婦以上に日銭を稼げる技能があれば、

彼女が地に落ちる事は無かっただろうよ。


「・・・ムリ。ソんなの・・・ドしよ」


「1つは奴隷になる事だ。少なくとも税金は大幅に免除される」

「う・・・ウン・・・それはワカルよ、でも・・・」


娼婦上がりの奴隷。


ヒエラルキーは低かろう。

酷い事をされると解かっている。

娼婦の扱い以上に惨めな生活、愛すべき相手では無くただの慰み物だ。

ヒトでは無くモノに落ちる、それが奴隷なのだから。


「もう1つは病気を治して昔の生活に戻る事だ」

「ビョき・・・ワタシ・・・」


「それを解決できるかもしれない物が、そこにある」


机の上に置かれた平底フラスコ。

ガラスコックで栓がしてあり、中には少量の液体が入っている。


イシャルメダとこの宿を取ってから、

最初に机に置いたっきりずっとそこにあるガラス製の瓶。

プタンノラではこちらの国程ガラス製品が高い訳では無いので、

この位のシンプルな物であれば驚かないのだろう。


奇妙な形をしたガラスの瓶は重要では無く、

自分が示した答えとは、その中身だと言う事を想像するのは容易い。


「これ・・・ワタシに?」


「そうだ。娼婦の病を治せるかもしれない薬だ」

「かもシれない?」


「かもしれない。

 絶対に治せる保証は無い、治せたら儲け物だ。

 効くかどうか判らない上に、安全かどうかも判らない。

 直ちに死ぬような事は無いと思うが、

 熱が出たり苦しくなったりする事はあると思う」

「そ・・・ソう、・・・なの」


一応濃縮するために沸騰させているので、

カビ自体が体内に入って増殖する可能性は払拭できていると思う。


カビが体内へ侵入する病に付いては知識も何も無い。

恐ろしいぞと言う話はドキュメンタリー番組でも何度か見た覚えがある。

それらに対抗できるような薬は、流石に知識外だし作れっこ無い。

それが無いだけでも多少は安全なのか?


問題は、残留する毒素の方だ。

薬自体が少量であるので、

梅毒菌に抵抗しうるだけの量が確保されずに効かない可能性は解る。

となると毒素が残っていた場合でも少量なので、

それほど重篤な反応は見られないであろう・・・と言う希望的憶測だ。


プラスかマイナスかと言えばプラスに振れる方が高いとは思うが、

初心者が作った試作品なのだから安全も何も担保できない。

そこは嘘を吐いたり効能を偽るべきでは無いだろう。


「どうだ?可能性に賭けてみるのは。病気が治れば自由に生きられるのだぞ」

「・・・・・・そ、ソう」


自由・・・とは言え、彼女の生きる糧を与えてやらなければならない。


自分はイシャルメダと結婚するつもりが無い。

奴隷になる選択をしたのであれば別だが、

無理強いは良くないし彼女もそれは恐れている。


今は自由人であればこその対応をしているが、

奴隷の主人であるユウキは彼女に取って未知なる物だ。


非処女であれば客を取らせたり、気に入らなければ迷宮に捨てたりと、

世の主人は厳しい申し付けをする者が大半なのだから、

そりゃ警戒をするだろう。


彼女の最適解は、病気を治して町娘として再び明るい世界に戻る事だ。

それが・・・一度は体を裂かなければならない事と、

今説明した通り苦しみが伴うと言う事の2点を、

彼女が受け入れられるかどうかに懸かっている。


「ワタシ・・・ホカにほうほうナイね。

 ドレイなるか、このクスリたメすか。そうジャないとシぬか」


理解はできていたようだ。


後は・・・彼女の決意だな。

絶望して心中を狙って来るような事は・・・無きにしも有らずか。

共依存タイプは何を為出しでかすか判った物では無いので、

一応警戒は怠らないようにして置こう。


「ハーブティー、要るか?」

「う、ウン・・・」


「取って来る」

「ウン」


空になった水瓶を手に取り、壁掛けにゲートを開いてプタンノラに飛ぶ。


新たに設置した「夕日と山」の麻布の壁掛けのお陰で、

この部屋から直接あちらに移動ができるようになった。

この壁掛けはここを引き払った後、納戸行きとなるのだろう。


壁掛け麻布、やっぱり便利だな。

絨毯では持ち運びに厳しいし、そもそも折り畳めない。

吊るし具だって結構な頑丈な物でなければ折れてしまうだろうし、

サンドラッドの街に宿泊して本当に良かった。

あの旅亭に宿泊していなければこの発見は無かっただろうし。


プタンノラの旅亭では既に皆就寝済みであった。


明かりは落とされ、窓からは街路の篝火かがりびが差し込んでいる。

そのおかげでギリギリ部屋の様子が解る程度だ。


机にはハーブティが入っていると思われる水瓶が置いてあったので、

トラッサに持って行っていた空の水瓶と交換した。

また明日イルマが新しく入れてくれるのだろう。


エミーが静かに寝息を立てていたので、額に手を置くと熱は引いていた。

ひと安心してトラッサに帰る。


──ヴォンッ。


戻って来ると、イシャルメダは椅子に座っていた。


「喉が渇いていたか?ちょっと待ってくれ、今注ぐ」

「ううん、そうジャナイの」


良く判らないが、コップにハーブティーを注ぐと彼女は直ぐに空にした。


うンめか?

そうけ。

ほれ、呑め呑め。


2杯目はコップ中央辺りまで飲み干し、そこでイシャルメダは机に戻した。


「ねえ・・・・・・、コワいけど・・・ワタシ、ホカにできるコトナイ」


「うん」

「ヤて・・・ミる」


「そうか」


2人の目線は机の中央に置かれた透明の液体に集まった。


イシャルメダの覚悟が決まった。

では説明だ。


「これは自分が書物で知り得た知識の元、

 試行錯誤して得られた最初の薬だ。

 その書物に依ると確かに薬はできるようだが、

 自分は実際に試した事が無い。

 だから効くかどうか不明だし、安全かどうかも不明なのだ」

「そ、ソウ・・・ダメだタら?」


「新しく作り直す。駄目でも何度も挑戦し、絶対に薬は完成させたい」

「ダメならわたしシんじゃう・・・」


「直ぐに死ぬ事は無いさ。精々熱が出る位だろう。

 それよりも、このクスリを体に入れる際に何度も体を切る必要がある。

 そちらの覚悟は良いだろうか」

「う・・・ウン。な、ナおしてくれるんダよね?」


「ああ、勿論だ。

 痛いのは一瞬で、後は薬の作用に因っては痛んだり熱が出たり、

 もしかしたら苦しくなったりするかもしれない」

「ズとイショイてくれるよね?」


「当然だ。放置して出掛けたりはしない。

 自分でもどうなるか判らないのだ。具合が悪くなっても看病はする」

「テ・・・にぎてほシい」


「わ・・・解った。苦しくなったり熱が出たらそうしよう」


ええっと、29歳だったよな?


意外と乙女?

幾つになっても女性は女の子なのか。

ラティも然り、もっと女性扱いしてやるべきだった。

自分にしてみれば10歳も上、

30に近いのだから立派な大人として彼女を見ていた。


20代も30代も、思考はあまり変わらないのだろうか。

自分が30に成ってみなければ判らない事ではあるが、

ラティにずっと感じていた違和感の正体はこれなのだ。


彼女は・・・そうか、恋愛経験が無くずっと少女のままだった。

恋愛小説を読んでいたと言っていたが・・・、

やっぱり腐女子系じゃねーか。


解った、ラティのご褒美はパートナーだ。

気の弱そうなショタ君を付けるので可愛がってくれ。

あ、パニはヴィーのだからな。

そうするとボクっ子が2人に成ってしまうな?

いや待てよ、意外とダンディな方が好みだったりするのか?


・・・うーん、そこはラティ自身に選ばせようか。

難しいんだよな・・・ラティの本心を聞くのが。

当分は先になりそうだ。


「ワタシ、ヤてミる」


イシャルメダの覚悟は決まった。

副作用もちゃんと説明した上で同意も得た。

もう少し時間が掛かるかと思ったが、

ここに連れて来た事で彼女を更に追い込み、

結論を急がせる事ができたのだろう。


プタンノラの宿に別室を取っていたのだとすると、

彼女は昔の伝手を頼って逃亡したかもしれない。

船で向かうしかない別の国だと説明した事は、

結果的に彼女へプレッシャーを掛ける事になったのだと思う。


「直ぐに実験をしても?」

「エっと・・・ドウするの?」


「迷宮に行き、腕を切り開いてこの薬を掛ける。

 その後傷口を塞いで手当てを施す」

「う・・・うん。キたトコナオる?」


「治る治る。それは前も言ったように、ちょっと痛いだけだ。

 問題はその後だ」

「わ、ワかた」


副作用よりも切られる事自体の方が恐怖と言った感じだ。

本当に怖いのは副作用の方なのにな。

これも全て、現代医学とは程遠い世界なのだから仕方無いか。


カンテラを手に持ち、トラッサの迷宮横にある大木へ飛ぶ。

覚悟を決めたイシャルメダもしっかりと付いて来た。


「そのまま中に入ってくれ」

「う、ウン」


深夜の迷宮だ。

周りに誰もいないし、静かで物寂しい。

ランタンを持っているのは自分なので、

自分が迷宮に入ってしまうと辺り一帯は闇だ。


怖がって逃げたりされても困るし、

つまずいて転ばれても申し訳無いので一応手を取り一緒に入った。


1層のエントランスルーム。

迷宮内は深夜にも関わらず何故だか近辺だけは視界良好で、

相変わらず遠くの方は暗くて見えない。

ランタンを掲げても、遠くまで光は届かないようだ。


ここは物理的な現象とは異なる不思議な法則が働く世界、

迷宮と呼ばれる魔物の作り出した亜空間なのだから。


ボーナス武器1のマサムネを取り出す。


流石にこのまま切ったら一撃で殺してしまうなんて事は・・・。

Lv65の探索者だ。Lv30の勇者だ。Lv42の神官なのだ。

駄目だ。

そもそも武器のスキルであるクリティカルが出たら絶対まずい。


ボーナス武器2のグラム・・・これもだめだ。対人強化が付いている。

ボーナス武器3のソラス・・・クラウソラスかな?

やっぱり駄目だ、MP吸収が付いてしまっている。

Lv1のイシャルメダをこれで攻撃したら、MP枯渇の絶望で自殺するぞ?


あーもう。


帯刀にしようかと思っていたオリハルコン製の武器を取り出した。

これの攻撃力もどうかと思うが、他に妥当な武器を所持していないのだ。

これよりは弱いであろう白銀の槍や聖槍は長過ぎて扱いに困る。


夜だし武器屋もやっていない。

ナズやラティを叩き起こすのも申し訳無い。

どうしようもない。


ボーナスアクセサリである看護の指輪に再びお世話になる。

これを身に着ければ絶対に安全だと言ってイシャルメダの指に嵌め、

ついでに自分のミスリルジャケットも着せた。


ついでにジョブも変更だ。


セカンドジョブとは言えLv65の探索者が入っているのは拙い。

コイツを解除するにはアイテムを一度全部出す必要があって大変だ。

特に大量に貯め込んだ白身などは通路を塞ぐ程の山盛りになってしまった。


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 僧侶 Lv19

  設定:僧侶(19)


  アルマス 竜革のブーツ(空き) 身代わりのミサンガ(身代)


 ・BP117(余り80pt)

   キャラクター再設定   1pt   ボーナスアクセサリ5 31pt

   パーティー項目解除   1pt   詠唱省略        3pt

   パーティージョブ設定  1pt


よしっ、これでかなりダメージを抑える事ができるだろう。

裂いたら薬を流し込み、直ぐさま手当てをする。

シミュレーションは完璧だ。


・・・肝心の薬を置いて来ちゃったよ。

そういう所やぞ!


「す、済まない、イシャルメダ。

 肝心の薬を持って来るのを忘れたので、ちょっとだけ待って居てくれ。

 ここは魔物が来ないので、動かなければ絶対安全だ」

「えっ、そっ、ソうナの?ハヤくもドてキてね?」


ボーナスポイントを弄り過ぎてフラットな状態になってしまっているため、

道化師を再セットするのも面倒だ。

仕方無いのでボーナス魔法のワープも付け足す。


迷宮から外に出ると真っ暗で、ランタンは迷宮内に置きっ放しだ。

これではどこが目印の大木だか判った物では無い。


だからそういう所やぞ!!


勘でワープのゲートを出し、旅亭に戻ると部屋も真っ暗であった。


だから(略)


はぁ・・・もう何やってるんだか。

大人しく一旦迷宮に戻ってランタンを持って来るべきだったよ。

手探りで机を探して、手探りでフラスコを入手し、

そしてまた手探りで壁に向かい迷宮へ戻った。


今度は外に出ないで直接エントランスだ。

その位には学習する。


「ユウキ、おカエり?」


失態ばかりで焦って体が火照ほてる。

冷んやり涼しい迷宮のお陰で幾ばくか気は楽だが、

イシャルメダはそんな事など知らぬままに自分を出迎えた。


せめて彼女の前だけでも、失態など犯さない完璧な男であり続けたい。

アレもコレも上手く行かないぞと、

あたふたとしているさまを見せてしまったら信頼を損ないかねない。


「ああ、では行くぞ?腕を出してくれ」

「う、ウン」


イシャルメダは左手を差し出し、

痛みに耐えるために歯を食いしばって目をギュッと瞑った。


あー・・・オーバースキル掛けてやるべき?

でもなあ、英雄のジョブはLv50を超えているし、

一撃死が怖いんだよなあ。

悪いけど、ちょっとだけ我慢してね?


ミスリルジャケットの袖を捲り、アルマスで軽めに切り付ける。

イシャルメダの腕には綺麗な亀裂が入り、

ぱっくりと割れて血が溢れ出た。


血液自体を触らないように注意し、

傷口を剣先で開いて広げ、そこに薬を垂らす。

本来ならば一滴たりとも無駄にはしたく無いが、

その一滴を垂らすまでの時間分だけ彼女には苦痛を強いる事になる。


無理はせず、数滴は無駄にして手当てを施した。

傷口は綺麗に塞がり血は止まったようだ。

それに薬液が押し出されて出て来てしまったり、

滲み出て来るような事も無かった。


後は血液を洗わねばならない。

このまま触って自分が感染しても困る。

ウォーターウォール・・・Lv50なんだよな・・・。


ジョブ設定で細工師をセットして破魔鏡を掛ける。

次に道化師をセットし、そのスキルに初級水魔法をセットした。

道化師はLv36なので、

ボトルネック効果で威力は魔法使いLv36になるだろう。

ついでに知力上昇のジョブ効果も解除した。


イシャルメダの目の前で魔法を使う事になるが、もう今更だろう。

手当ても使ったし、詠唱無しでフィールドウォークもした。

彼女が迷宮に関しては知識が乏しい事を祈るのみだ。


「ほら、イシャルメダ。手を洗って血を流して」

「あ、もうイイの?ナオてるの?これ」


イシャルメダがウォーターウォールに手を入れている間中、

ずっと手当てを施した。

さもなくば捻じ切れている事だろうよ。


多少は痛いとは思うが、

それでも彼女は水壁の中で血を落として綺麗にしたようだ。

後は・・・アルコール消毒も必要かな?


「では戻ろうか」

「うん」


「鎧を脱いで、後指輪も」

「え・・・あ、ウン・・・これも?」


鎧はすんなり返してくれたが、指輪は返す際に躊躇いがあったようだ。


この世界でも指輪を送る行為には意味があったりするのだろうか?

残念ながらそういう用途の指輪では無いので、

用が済んだら返して頂きたい。

それは貴重な31ボーナスポイントなのですよ。


今度はランタンを持っているので、迷宮外に出たら大木から旅亭へ。

先にイシャルメダだけを旅亭に送り、

自分はシュメールの旅亭に置いておいたバンディールの壷を持って戻った。


旅亭から貸し出された清拭用の手拭いに、

持って来たバンディールを浸して彼女の腕を拭く。


「これ・・・おサケ?・・・イヤッ、おサケきらいっ!」


「飲むための物では無い。これはさっきの血を綺麗にするための薬だ」

「ソなの?これ・・・くすりナの?」


「ああ、飲むための酒では無くって体を綺麗にする薬だ。

 そのままでは悪化してしまうのでな?」


消毒・・・と言う概念が多分無い。

傷口は手当てに依って瞬時に治せるので、化膿する事が無いからだ。


直ぐに治せない者は傷口が腐って亡くなる。

死因が負傷ダメージに因る物なのか、病原菌に因る物なのか、

彼らには区別できないのだ。

だからこそ治療師が持て囃され、僧侶や神官の地位が確立している訳だ。


アルコールで病原菌を抑えられる、などと言う話は説明しても無駄だろう。

そもそも説明できるだけの詳しい知識を持ち合わせていないのだから、

自分はただ概念で語るだけに成ってしまう。


それでは信頼を得られない。

コーラで洗えば妊娠しないと言っているようなもので、

そこに確固たる説得力は無いのだ。


ひとまずイシャルメダに薬を投与する事には成功したので、

後は彼女の容態を見守るだけだ。


「この後に痛みや熱が出てもいけない。

 イシャルメダはゆっくり寝て休んでくれ」

「う、うん。このままトオくにイかないでね?」


「遠くも何も、薬がちゃんと効いたか確認するまではどこにも行かない」

「そっ、そのアトも・・・ズとイてほシい」


「どうだろうな?それにはまずはゆっくり休んで、

 薬が効くかどうか見てからでないと」

「う、ウン・・・じゃ、じゃあ、ネるね?」


「ああ、おやすみ」

「おやすみナサイ」


手を握った状態でゴソゴソと動いていたイシャルメダであったが、

暫くすると寝息を立てて眠りに落ちたようだ。

今後発熱があった場合にも備えて、ある程度の対処する用意が必要だろう。


額を冷やすための手拭いや水桶ならばここにあるので、

一先ずはそれを活用するとして、

ハーブティはこちら用に別途作って置いて欲しい。

それは明日の朝ナズに伝えるとして、後は・・・自分の寝具かな?


そういえば寝る時に便利な麻布を買って置いたのだった。

何と言う奇遇。

まさか旅亭で床へ敷いて使用する事になるだなんて思わなかった。


早速自宅の納屋から2枚を持って来た。

1枚は敷布団、1枚は掛布団。

イシャルメダが眠るベッドの傍に敷いて、自分も体を休める事にした。


ランタンはじきに油が切れてそのまま消えるだろう。


久しぶりのトルキナの夜は少し冷え、

騒ぎが収まった深夜の旅亭は、

そこが酒場であった事など無かったかのように静まり返っていた。


そして20ナールケチってダブルベッドにした事を後悔し、

次の更新時にはシングル2つの部屋にして貰おうと心に誓ったのであった。

∽今日のステータス(2022/04/27)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv65

  設定:探索者(65)魔道士(39)勇者(30)

     道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(36)

     神官(42)博徒(37)


 ・BP163

   キャラクター再設定   1pt   詠唱省略        3pt

   獲得経験値上昇×20 63pt   メテオクラッシュ    1pt

   必要経験値減少/20 63pt   ワープ         1pt

   6thジョブ     31pt


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 僧侶  Lv19

  設定:僧侶(19)


  アルマス 竜革のブーツ(空き) 身代わりのミサンガ(身代)


 ・BP118(余り80)

   キャラクター再設定   1pt   ボーナスアクセサリ5 31pt

   パーティー項目解除   1pt   詠唱省略        3pt

   ジョブ設定       1pt


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv65

  設定:探索者(65)僧侶(19)

     道化師:初水魔法・荒野移動/空き 空き


  竜革のブーツ(空き) 身代わりのミサンガ(身代)


 ・BP164(余り154)

   キャラクター再設定   1pt   3rdジョブ      3pt

   パーティー項目解除   1pt   詠唱省略        3pt

   ジョブ設定       1pt   ワープ         1pt



 ・異世界84日目(未明)

   ナズ・アナ79日目、ジャ73日目、ヴィ66日目、エミ59日目

   パニ52日目、ラテ31日目、イル・クル28日目

   プタン旅亭宿泊14/20日目 シュメ旅亭宿泊14/20日目

   トラッサ旅亭宿泊2/3日目

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