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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第冊章 実験
291/394

§278 美酒

今日は1人で朝っぱらから酒を飲み、酔い潰れて寝てしまった。

結局起きたのは夕方に成ってからである。


パニが夕食だと言って起こしに来たので、一応体は起こした。

とは言えずっと寝ていたので口がカラカラ、胃はヌロヌロする。†

取り敢えずあちらの宿に向かいハーブティーを頂こうかと思っていたら、

水瓶はこっちにあってナズがコップへ注いで渡して来た。


・・・えーっと、そういえば昼に持って来ていたな。

昼食も持って来ていたよな・・・そういえば。

流石にこう蒸し暑い状態では痛んでしまって食べられないだろう。

勿体無い事をした。


酒の飲み過ぎはアカンと言う奴だ。

い、いや、たまにはこうしてぐうたらしたって良いじゃないか。

そういう結論に至っていたはずでは?


結局自分がやれる事はもう残っていないのだし、

地図は冊子が刷り上がるのを待つしかない。

与えた仕事に手を貸すとやれ主人の仕事では無いだのと言われるし、

そもそも手伝える場所も予備の道具すら無い。


モンスターカードが揃うまでは武具の強化もできない、

迷宮だって進められない。


薬だってカビの培養が進まないと再作成はできないのだし、

追加注文したガラス器具も2,3日は掛かるだろう。

何だったら家が完成しないと帰れないのだ、我々は。


できる事と言えば・・・観光・・・そうだ、観光しよう。


フローダルには観光船が出ていたと言う。

中央島を船に乗りながらぐるっと一周、

これは良い思い出となるだろうし話題になるだろう。

「商人」?なのだから、こういった話ができればいつか役に立つはずだ。


後は・・・そうだなあ。

シルクスの夜の町では踊り子が躍るだとか言う話もあったな。

船が到着する翌日の夜なのだっけ?

船がいつ到着するかは読めないので、

到着した日を聞いてその翌日と言う事になる。


ドラッハの鉱山とやらも覗いて見たい。

流石に無許可で入れてくれる事は無いだろうが、

見聞として知識は得て置きたい。


話を盛れば盛る程ルスラーンもイルハンも喜んでくれるだろう。

それでこそ商人として認められると言うものだ。

良かった、騎士団への入隊は無い。


ナズにこの地の歌を覚えさせて、

レパートリーを増やさせても面白いかもしれない。

何なら自分が知っている地球の歌も教えてみようか?


著作権とか利権とか、流石にこの世界までは及ばないだろう。

といっても現代の歌謡を教えた所で演奏が無ければ良くは聞こえない。

アカペラで歌って心地良いのは童謡や古い時代の歌ばかりだ。

何だ、結局著作権とか関係なかった。


そもそもブラヒム語の歌なんて珍しいんじゃないのか?

統一言語で生活する文化圏なんて無いだろうし、

そうなるとブラヒム語での文化は生まれない。


ラテン語だって太古では広くヨーロッパで読み書きされていたが、

扱えるのはちょっとしたインテリ層か、

必要とする者が必要としている範囲でしか扱えない。


そもそもが発音を想定していなかった言語なので、

表現される文化は書物以外に殆ど残っていない。

ラテン語で表現される歌なんて至極珍しい物なのだ。


ブラヒム語は一応発音ができるものの、扱いとしてはラテン語なのだろう。

イルマやパニに日本の歌を歌わせてみて、

適性があればナズと二人でコーラスさせても面白い。


魔物だってコーラスする奴がいるんだ。

こちらもコーラスで対抗だ。


・・・何に対抗するんだろうな。


金儲けか?

誰と対抗するだ?

酒場のリアナさんか?

あー、ダメダメ、無理無理。勝てっこない、あの人には。


のそのそとベッドから降りて伸びをした後、

待たせていたパニに一言謝ってプタンノラへ戻った。

既にジャーブ達の部屋では食事が始まっており、

自分が顔を見せると一応は挨拶を返された。


まあそうだよな、自分が帰って来ない可能性もあった訳だから、

アナ辺りが勝手に食べて置けと命じて置いたのだと思う。


エミーは待っていたようで、挨拶の替わりに頭が出て来た。

撫でられるの好きね?

ついでにイルマ、アナ、ナズの順に撫でて、

パニも抱き寄せて撫でて置いた。


「パニ、ありがとうな」

「い、いえっ、とっ、当然の事ですのでっ」


パニも褒められ慣れていないのだろう。

ドギマギしていた。

あまり拘束するのも可愛そうなので、直ぐ離して食事に戻してやった。


「いた「「「いただきます」」」」


こんな状況でも合わせてくれる3人はとても可愛らしい。


エミーは恰好だけ真似て何も言わない。

言わなくても良いのだと説明した手前、

やらなくて良い事には手を出さない、それがエミーだ。

逆に面白みがあってそれはそれで良い。


「ご主人様は今日1日ずっと寝ておられたようでしたが、

 お加減は如何でしょうか?」


食事を始めて直ぐに、ナズが自分を気遣って来た。

心配りに癒される。

済まんな、ただの酔っぱらいで・・・。


「い、いや、酒に酔って寝てしまっただけだ。

 あー、今夜は多分寝付けないな・・・」

「そうでしたか、お加減が悪いようであればいつでも仰って下さいね」


加減は悪いどころかすこぶる快調である。

すっかり酔いも醒めた、目も覚めた。

何なら今から迷宮に行っても良い位だ。

もう直ぐ夜だが。


相変わらずあっさりした食事が、もたれた胃には優しい。

薄味の魚の煮付け・・・恐らく塩茹でなのだろうが、

パンを浸して食べると丁度良い粥になった。

あー、米があるからお茶漬け・・・、

いや朝用意した米粥を食べる用に用意して置けば良かったかもしれない。


もそもそと食事を食べ終えて各自のんびりする時間となった。

食事が下げられて湯桶に交換されるまでの間、

各自のベッドに戻って休むのだ。

自分たちが食事を取っている部屋は女子部屋としたので、

ヴィー、エミー、ラティの3人が戻って来た。


自分は・・・どうしようか。

どうせ夜は寝付けない。

このまま夜の街に繰り出してこちらの酒場を当たっても良いし、

何ならホドワの酒場に行ったり、

シルクスの夜のダンスとやらがあるかどうかを偵察しに行っても良い。


色々考えた挙句、まずはシルクスに向かってみた。

フィールドウォークでシルクスの冒険者ギルドを指定する。


「ちょっとだけ出掛けて来る。直ぐ戻る」

「あ、はい?行ってらっしゃいませ」

「お1人では危ないでしょう、私もお供致します」


「いや、冒険者ギルドへ立ち寄るだけだ。本当に直ぐ戻って来る」

「かしこまりました」

「行ってらっしゃいませ」


冒険者ギルドの受付はまだ残っている。

一応は夜とされる5時・・・日本で言うと7時半になるまでは、

どのギルドにも受付が立っているようだ。


まだ日はギリギリ夕焼けが残っているので、6時半頃かと思われる。

これで松明に火が灯り、完全に暗くなった頃合いで皆が撤収する。

酒場が賑わうのもその位からだ。


「済まないが、船はどうだ?」

「どうだ・・・と仰いますと?」


「船が入った翌日に踊子の舞台があるんだろう?」

「ああ、ベリーメリーですか。

 今日丁度船が入ったばかりなので明日ですかね?」


「ベリーメリーと言うのか。どこで行っているか聞いても?」

「ここを出て真っ直ぐ、北城門の方に出て向って頂ければ、

 左手に大きな劇場が見えますので、そこになりますね。

 その裏道が娼館になっていますので・・・えへへ。

 気に入った踊り子を捕まえて連れ込んでも大丈夫ですよ。

 旦那は冒険者みたいだからモテモテでしょう」


「そ、そうか、ありがとう。明日だな。

 そうじゃない日の劇場はどうなってるんだ?」

「昼間は楽師が歌を歌ったり、寸劇があったりですかね?

 割と金持ちの夫人が見えますので昼夜問わず忙しいですよ、あそこは」


ほう・・・一応は大衆文化的な存在ではあるのか、劇場は。


むさ苦しい男共のためだけのエッチなショー小屋では無く、

元々はちゃんとした劇場の様だ。

ベリー・・・と言う位なのだから、

ベリーダンス的な物が行われていそうだ。

ここは中央アジアっぽい文化圏だったと思う。


ちょっと期待してしまうではないか。

見た事無かったし、是非見たい。

妖艶な女性の妖艶なダンス、興味は津々だ。

但しナズとアナとイルマを連れて来る必要がある。


1人で勝手に楽しんで来ました、では不信感が募るだろう。

黙って置けば良いとは思うが、勘の鋭いアナがいる手前隠し事も難しい。

奴隷を相手に心配するような事では無いかもしれない。

欲を言えば、嫉妬する位には感じて欲しいと言う願望の表れなのだ。


ははは、金で買った女性に情を求めているだなんてナンセンスだ。

彼女たちは自分を信頼してくれているが、それは主従関係なのだよ。

ハァ・・・。


さっきまでエロパワー全開だったはずが、

途端に微妙な気分で消沈してしまった。

ひとまず建物だけでも眺めて帰ろうと、言われたままに道を進んだ。


シルクスの倉庫街はもう本日の役目を終えていて、

今はただひっそりと放置された空の木箱が、

寂し気な雰囲気で満たされていた。


劇場・・・と言われた建物も、

今日はもう公演の予定が無いためか明かりも落とされており、

過度に装飾されているであろう窓枠や扉などは、

さながらトリアのゴーストタウンに放置されたギルドハウスを思わせた。


これが明日には照明の松明で一杯になり、

煌びやかに飾りが施され、荒っぽい海の男共で一杯になるのだ。

それが終わった後はこの裏手にあるらしい娼館もごった返すのだろう。


ちょっと興味があったので裏手へ回って娼館の様子も覗きに行く。

もっ、勿論入る予定は無いぞ。

この後は美人と可憐な2人からの奉仕が待っているのだから。

わざわざ病気のリスクを冒してまで行くような所では無い。


まだ日が落ちたばかりと言う事もあってか、娼館の方も静かであった。

手招きしている女性を袖に、酒場も見て回る。

前回ここで酒を頼んだ際はスリがいたようであるが、

あの盗賊はもう捕まったのだろうか?


まだまだのさぼっているとして、

今の自分であれば簡単に捕まえる事ができそうだ。

何せこちらにはタイムストップ(仮名)があるのだ。


安全安心に社会へ貢献できる。

素晴らしい!

・・・って思っている時こそ何の事件も無い訳で。

世の中ままならない。


と言うか目立って変な事になりたくも無いので、

手柄をなすり付ける相手がいなければこの手は使用できない。

ぐるっとシルクスの街並みを見て、冒険者ギルドから宿に戻った。


じゃあ今日はプタンノラの酒場だな。

ベリーダンスは明日のお楽しみと言う事で。


──ヴォン!


「お帰りなさいませ」「いかがでしたでしょうか」

「あっ、お帰りなさいませ」


イルマとエミーはそそくさと立ち上がって整列をした。

ナズとアナはベッドに腰掛けながらこちらを見ただけである。

この差が屋敷の奴隷とそうで無い奴隷の違いなのだろう。


自分を出迎えてくれた事に気分を良くしたので、

エミーとイルマだけを撫でた。


「ああ、ちょっとシルクスの様子を見に行っていた。

 ナズが話に聞いたダンスとやらは明日行われるそうなので、

 みんなで見に行こう」

「わあ、本当ですか?楽しみですね」

「私共が付いて行っても大丈夫なのでしょうか。

 客は皆男性・・・とりわけ力仕事の荒っぽい男性が多いかと思われます」


「言い寄られたってアナなら負けないだろう?

 それに吹っ掛けられても自分が守ってやる。

 枷は付けていないのだから、アナはどうみてもただの自分の連れ合いだ」

「それは頼もしい限りです」


「それはそうと、今日はこの街の酒場に出向いてみようかと思う。

 こちらの一品料理も気になるし、雰囲気も知りたい。

 何なら、流しの者が要ればナズが新しく歌を覚えても良いだろう。

 逆にナズが歌っても良い」

「あっ、それでしたら賑わっている酒場をご案内致しますね」

「では私もお供致します」


「イルマ、隣の部屋で酒場へ行きたい者が居るかどうか聞いて来てくれ」

「はっ、伺って参ります」


エミーに視線を合わせたが、首を振って返事をした。

今日は行かないらしい。

別に酒が好きだとかそういう感じでは無いようだ。


やはりホドワの酒場に付いて来たのは、

純粋にナズの歌っている様子が気になっただけなのだろうか。

先輩奴隷がどう過ごしているのか知りたい、或いは歌そのものに興味が?

そういえばナズの歌を聞いてイルマの事を偲んでいた。


イルマも歌を歌えるのか?

・・・興味が湧いたので次はイルマにも歌わせてみようか。


イルマがジャーブを連れて帰って来た。

後はお留守番らしい。


「では行くぞ、パーティに入ってくれ」

「「かしこまりました」」「分かりました」

「ええっ?私もだったのですか?」


「い、いや、行きたくなければ別に良いぞ。

 済まないな、てっきりイルマも行く流れかと」

「い、いえ、エマレットもお連れになられないようでございますし、

 私もここでお帰りをお待ちしております」


3人を加えて外に出る。

ナズが場所を知っていると言うので、そのまま先導を任せた。


元酒場の娘だっただけあって、

場所こそ違えど酒場は気になるのだろうか。

やはりと言うか夜でも賑わう繁華街と言うのは、

街の中心部からちょっと入った道の場所に存在していた。


すっかり暗くなったプタンノラの街並みは、

大通りと繁華街1本だけが明るく灯されており、

後は民家からの零れた明かりだけが頼りであった。


「こちらです。ここが一番大きな酒場らしいですよ?」


「へえ、いつの間にそんな事聞いて来たんだ?」

「はい、最初にお暇を出された際に、

 お酒を売っている場所を聞かれましたので、

 他にどのようなお酒があるのかを聞きまして、

 その商店主からここを教えて頂けました」


「そうか、では例の魚骨酒もここに納められているかもしれないな」

「ユウキ様のお買い求めになった例の高級酒ですね・・・」


「なんだ、ジャーブは気になるのか。では折角だし1杯頼んで行け」

「い、いえっ、そのような高級品は、俺には合うかどうか・・・」


「どうせ1杯当たりの単価はそれ程高くない。

 こういった場所へ来たらその土地の名産を飲み食いせずにどうする。

 ここに来た思い出話を語る際に、

 旅亭でパンを齧ってましたとでも言うのか?」

「いっ、いえ・・・そういう事では無いのですが・・・その、

 旅亭では豪華なお食事を頂きましたと、胸を張って語れると思います」


ああ、まあ、そうだね。

トラッサやホドワでは高級とされる魚をたらふく食べているし、

一流ホテル顔負けの豪華な食事をサンドラッドで食べたよね。

そういう事じゃ無いんだよ!


ジャーブに言っても通じなさそうなので諦めた。


ナズに先導されるがまま店へ入り、案内されるがままに席へ着く。

注文品は魚骨酒3つにオーレズで作った酒を1つ。

お勧めの焼き物料理にそれとは別で珍味を1つ注文した。

何が出て来るかは楽しみだ。


「この街の酒場も賑わっているのだな」

「街の中心は漁港のようですし、

 やはり海で働く方が多いからでは無いでしょうか」


「でも酒場に来られる者はそれなりに裕福で無いとな。

 漁師は儲かるのかな?」


「おまちどーさん!魚骨酒3つとアラネ。料理はちょっと待ってネ。

 これお通しね、お代は取らないヨ!」


店員が酒と摘みの入った小皿を人数分持って来た。

この酒場はエマーロが給仕を行っているようだ。


客はパッと見た所様々な種族がいるようなので、

人間語とブラヒム語、少なくとも3種の言語を扱える人物なのだろう。

何気に凄い事だ。


種族が入り混じる大都市では、客の種族もバラバラになる。

どれか1つの種族語しか扱えないとなると、

その種族としか商売ができないので、当然の事ながら儲けは減る。


儲けようと思ったらブラヒム語だ。

或いはブラヒム語が話せない者も来るだろうから、

最低数種類の言語を扱えなければ大規模に商売はできないのだ。


この町一番の酒場、ともなると当然やり手の金儲けに聡い種族。

・・・エマーロかっ!

やり手なのはリアナさんだけでは無かった。


納得した所で酒に手を付ける。


「それじゃ、新天地で初めての酒場でカンパーイ」

「か、かんぱいですっ」「カンパイ、ですね」「かんぱいです!」


おおっ!

これだよこれ。

そう来なくっちゃ。

酒精が強い酒なので一気に杯を空ける訳には行かないが、

自分の音頭と共に皆それぞれがコップを口へ運んで酒を含んだ。


「は、初めて揃った。こう、何だか感極まる物がある」

「も、勿論ですよ?」

「二度も間違ったりは致しません」

「心得ておりますッ!」


じんわりと嬉しさが込み上げて来て、ホロリと目に涙が溜まった。

と言うかそれだけでは無くて、

このアラとか言っていた酒も相当に酒精が強い。


米の酒だと言っていたが、ピリッと辛い日本酒とは違い、

甘酒のような甘みが口に広がる。


と言ってもシャオリンチュウのように添加された甘味では無く、

麹が作った優しい味わいの甘味だ。

色合いも透き通った透明では無くやや白く濁っている。

どぶろくよりはしっかりとした辛みがあるものの、清酒よりは甘い。


飲み易い酒である事は間違い無かった。

これが練り酒?

いや、でもアラとか言っていたな。

練り酒ならそう言うだろう。

それをもう少し発酵させたものなのだろうか?


こういうのはやはり店員だ。


「おーい、済まないが」

「へーい、チョイとお待ちを・・・・・・・・・」


奥の席に給仕を終えたさっきの店員を呼んでみた。


「何でございましょ?」


「この酒は練り酒とか言う物とは違うのか?」

「おー、良くご存じで。

 そこから2度3度強めるとコレになりますネ」


「そうなのか、どこで買える?」

「お気に入られましたかネ?噴水近くの商店で売ってますので是非ネ」


「魚骨酒もそこだな?」

「これまた良くご存じで。あの店なら大概揃いますネ」


「xxxxxxxxxxx!」

「あ、お客さんたちの料理できたみたいだから今出しますネ」


給仕は自分達が頼んだお勧め料理と珍味を取りに行った。

出されたものは海藻の漬物と魚の干物だ。

魚骨酒もそうだが、強烈な生臭さがテーブルに広がる。


「こ、これは・・・中々香ばしい臭いが致しますね・・・」

「ええ、とても美味しそうで、食欲を誘います」

「そ、そうですか・・・お、俺はこちらの海藻にして置きます」


ナズは遠慮がちに、アナは満足気に、ジャーブは引き気味に、

出て来た干物を評価した。

猫人族、やはり魚なら何でも好物説だ。

対して狼人族はやっぱり匂いに敏感なようだ。

単純に慣れていないだけかもしれない。


これよりも更に強烈な臭いを発する魚室くさやとか持ち出したら、

ジャーブの鼻は潰れてしまうのでは無いだろうか。

そんな意地悪な事はしないが。


「一応、これはこういう物で、味もそこそこに旨いのだぞ?

 無理はしなくて良いが」

「は、はあ・・・」

「では私がお先に頂いても?」


「ああ、良いぞ、食え食え」


ナイフ2本で乱暴に魚の身を崩してアナへ切り分けてやった。

ナズも恐る恐るナイフに突き刺す。

自分も欠片を口に含んでみたが、

濃厚なアミノ酸と程良い塩気が酒を加速させる。


魚醤は掛かっていないが、風味豊かな塩気に大満足だ。

匂いさえ除けばである。


「これは・・・とても美味しいです!このような物を頂けて私は幸せです」

「本当ですね、匂いだけではこの美味しさは判らないと思います。

 流石はご主人様です。このような物まで知っておられるのですね?」


「ああ、自分の国ではもっと強烈に匂う魚もあったが、

 流石にそれは自分もダメだ。

 これはそれ程まででは無いので食べ易くて良いな。

 お勧めの一品なだけはある」

「そ・・そうなのですか・・・で、では俺もひと口・・・クッ」


ジャーブがしかめっ面でそのひと欠片を口に入れ、咀嚼する。

口に入れてしまえば臭みは消えるのだ。

後は濃厚な味わいが待っている。


魚骨酒の匂いはそれ以下なので、

もうこの干物があれば全く気にならない状態であり、

ただの味付きの酒に成り下がる。


それに気付いたジャーブは、ごくごくと音を鳴らして酒を喉へ通した。

ナズも続き、アナはチビチビと行く。

自分はこのまったりと甘いアラの風味を楽しんだ。

∽今日のステータス(2022/04/14)


 ・繰越金額 (白金貨29枚・利用券2枚)

     金貨 74枚 銀貨  9枚 銅貨  7枚


  酒場代               (385й)

   魚骨酒  ×3           240

   アラ                 45

   干物の炙り              80

   海苔の漬物              20


            銀貨- 4枚 銅貨+15枚

  ------------------------

  計  金貨 74枚 銀貨  5枚 銅貨 22枚



 ・異世界80日目(夕方)

   ナズ・アナ75日目、ジャ69日目、ヴィ62日目、エミ55日目

   パニ48日目、ラテ27日目、イル・クル24日目

   プタン旅亭宿泊10/20日目 シュメ旅亭宿泊10/20日目

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