§277 目標
──アナさんから桶と手拭いを用意するようにと言われ、
呼ばれるままにゲートをくぐった先は、
主人の寝泊まりされる方の旅亭だった。
***
建て替えのために外国の宿を取ると聞いた際には、
もっと簡素な宿に押し込まれるかと思っていたが、
最初の港町も、次に泊まった物凄い豪華な宿も、
主人の財を表す上級な宿であり、
そこに私達は同じ待遇で宿泊させて頂いた。
主人の・・・お屋敷と言う程には広くない一軒家ではあったが、
そこでも私達のためにベッドが用意され、
湯浴みもさせて頂いた。
初めて入る私にエマレットは石鹸の使い方や、
湯の入り方などを教えてくれた。
私達は病気を持っているから、湯に浸かるのは最後なのだと。
その後掃除をせよとも承った。
エマレットはもうずっとこんな生活をしていたようだ。
あの小さな家を見た時はもう少し雑多な扱いを受けるのかと思ったが、
仕事として命令されたのは浴室の掃除程度で、
私は本当にする事が無かった。
私たち奴隷は行う仕事が無くなれば売りに出される。
私も元いた屋敷ではボルドレックの子息の世話を任されていたが、
恐らく騎士になられたり独り立ちされたらそこでお役目を終えて、
売られる所だったのだろう。
だからなのか、私は自爆玉を飲ませられそうになったが、
身代わりのミサンガとやらは巻かれずに置かれた。
イェーラには用意されていたのに、だ。
結果的に捨て置かれる予定だった私を、この主人に救って頂けた。
そこまでは良い。
仕事を見付けて何かしなくてはと焦る私に対し、
この主人は私に対し仕事をしないよう求めておられる。
おかしな主人だ。
お妾はナズさんとアナさんのお2人。
そこはかつての主と同じだが、私もそこに入れられる予定なのだとか。
それが私に与えられた仕事であるのは理解したが、
病気を持っていると判明したため夜伽を務める事すらできない。
妹との蟠りを無くせとは仰られたが、
エマレット自身は私を恨んでいるような事も無かったし、
主人からも本人からもそう聞いた。
結局は私1人が思い悩んでいただけだったようだ。
***
ナズさんは主人がお残しになった食事を、
アナさんはお飲みになられるであろう水瓶を持っていたので、
私の行く先は主人が寝泊まりされる旅亭である、
そこまでは理解できた。
さぞかし豪華な旅亭に宿泊されているのかと思ったが、
お部屋と言えば2人部屋で普通の・・・と言っては何だが、
富豪の宿泊されるようなお部屋では無く、
私達が寝泊まりしている宿と殆ど変わり無かった。
主人は普段から私達を平民として扱っておられ、
同等の待遇を与えて下さっている。
いや、主人1人だけで贅沢な暮らしをしようとなさらないのだ。
やっぱりおかしな主人だ。
そして、ナズさんは事もあろうか持って来た食器を床へ置いた。
床に食事を置くと言うのは奴隷の食事を意味する。
普通そんな事をしようものなら、たちまち酷い叱責を受けるだろう。
それに対してアナさんは何も言わないし、
ついでに言うとアナさんも持って来た水瓶を床へ置いた。
机の上を片付けてそこに置くべきでは無いのだろうか。
何やら机一杯に道具が置かれており白い布を被せらているが、
お2人方がここで寝泊まりをされているのであれば、
勝手は知っているのだから、
片付けてお食事だけでもそこに置くべきではと思った。
そのままナズさんとアナさんは主人と何かを喋って、
一緒になってベッドへ伏した。
やはり床へ食器を置いた事に対して何も言われていない様子だ。
わ・・・私は持って来た桶を・・・そうだ。
主人は体調が優れない様子だったので、
これはお顔を冷やすための物だ。
アナさんからは何も説明を受けなかったが、
見て理解しろと仰られている。
本来私達は命令を受けなければ勝手な行動をする事が許されない。
主人から直接介抱せよと申し付けられない限りは、
お世話係であるナズさんかアナさんのお役目だ。
私は3番なのだから、
命令を受けていなければお世話をしてはならないのだ。
勝手に世話をしたとなれば、
上位奴隷であるナズさんやアナさんへ楯突く事を意味する。
私の方が気が利きますよ、と先輩方を出し抜く事になるからだ。
・・・主人だけで無く、
ナズさんやアナさんまでもが私を同格に扱おうとされている。
私をお世話係としてお認めになって頂けるようだ。
直ぐに理解したので、桶を持って水を貰いに旅亭の受付へ向かった。
受付で主人の具合が悪いのだと言って桶を見せると、
旅亭の裏口にある井戸へ案内され、
そこで自由に汲んでも良いと説明を受けた。
主人が宿泊されているお部屋は普通のお部屋であったが、
この旅亭はそこそこ高級な旅亭なのでは無いだろうか。
通りすがった厨房は広く、対応した受付の男性も装いが整っていた。
玄関正面から見えた町の広場は噴水が上がっており、城壁も見えた。
整備された町の1等地・・・、
いや、ここは王城の真正面であったようだ。
そんな宿へお泊まりになられながら、食事は私達と一緒。
お部屋も豪勢ではない。
しかしお金を惜しんで質を落としているようにも思えない。
お食事の内容からすれば良い物をお食べになられているとは思う。
それに私達が迎えられるまで7人もの奴隷を抱えておられたのだから、
やはりお金持ちでいらっしゃる事は間違い無いのだろう。
今こうして宿で寝泊まりされておられるのは、
家屋の建て替えのためである訳でそこは疑いようが無い。
敢えてこのように質素な生活をされておられるのだ。
何もかもが常識外れな主人だ。
水桶を抱えて部屋に戻る。
まだ主人は寝ておられなかったが、
手拭いを絞って額へ掛けると私を労って頂き、
そのままスッと眠りに入られた。
する事が無くなった私は空いているベッドに腰掛けて3人を見守った。
「お休みになりましたかね?」
「ええ、暫くはこのままでしょう。
お酒を嗜まれているようですので、夕食まで起きないかもしれません」
2人は主人を寝付かせると離れて机に移動し椅子へ腰掛けられた。
私たち奴隷が椅子に座るのは本来御法度なのだが、
この主人の元では椅子に座らないと白い目で見られる。
一番下位のラティさんにだけは枷を付けられているし、
扱いも粗略に見えるが、
それでも彼女を椅子に座らせておられるし、ベッドも用意されている。
何だったら仕事が無ければ朝もわざわざ起こさなれいし、
皆も放置されて居られる。
朝は主人の部屋の前で整列し、
目覚めの挨拶を一同声を合わせて行っていたあの頃が懐かしい。
それにお出掛けをされたとしても、
主人自体が移動魔法をお使いになられる上に、
いつの間にか家のどこかへ直接帰って来られるのだ。
従ってこの主人の下ではお出迎えすら無いのだから、
私は本当にする事が無い。
「イルマはこちらのお部屋は初めてでしたね?」
アナさんから声が掛けられた。
何かしら注意点があるのだろうか。
このベッド、勝手に座っては拙かったのだろうか。
直ぐに立って返事をした。
「は、はい。済みません、失礼しました」
「大丈夫ですよ?そのまま座っていてくれて。
それよりもこれ、気になっちゃいますよね?見たくないですか?」
ナズさんは私に向かってそう言うと、
覆っていたの布をバサッと捲って広げた。
「こっ・・・これは・・・?」
机の上には透明なガラスの食器が並んでいた。
でも食器・・・と言って良いのだろうか?
良く解らないが、水を入れたり何かを貯めて置く物であれば食器だ。
流石にこれでお食事をするとは思えないので、
何をする物なのかは全然分からない。
以前木箱を私たちの宿泊する方の旅亭に運ばれた際は、
薄く平べったい皿に変色したパンを入れておられた気がする。
あの時と同じ器があったが、今の中身は赤黒い液体だった。
あのまま放置するとこの状態になるのだろうか、良く分からない。
先刻迷宮で持たされたガラスの瓶も置いてあった。
あんな丸い底でどうやって机に置くのだろうと思っていたが、
専用の固定具があるようで、丸く作られた金具の上に鎮座していた。
以前私の血を入れたガラスのコップも置いてある。
確か、私の血を付けた矢をこの透明で綺麗な器に取っていた。
その時この器が赤く染まっていた事は憶えているが、
今は全て綺麗に洗われた後のようだ。
これらが主人の言う、薬を作られる道具なのだろうか。
「これらは、あなた達姉妹の病気を治療するための薬を作られる道具です」
「これ・・・全てが、ですか・・・」
「はい、ご主人様は昨日1日掛けて、極僅かな薬を作られました。
昨日実験のためイルマも迷宮へ向かいましたよね?」
「え、ええ。あれは・・・何をなされたのでしょう。
私の血を受けたウサギは毒になったので、
まだ私の病気が直った訳では無いのですよね?」
「恐らく、薬が有効であるかどうかの試験だったのでしょう。
私が押さえていた2匹目は毒になりませんでした。
矢に薬を塗されていたのを見ませんでしたか?」
「ええと、あの最後に持たされた2つの瓶の中身は薬だったのですか?」
「恐らく、そのようです。
液体に浸したあなたの血は、スローラビットを毒には変えませんでした。
ご主人様がお作りになった薬は、確かに有効であるようです。
私には良く判りませんが、
ご主人様がお仰るにはまだまだ完成では無いそうです。
これからまた別の実験を行う事と思われますので、
その時はまたイルマに助力を求められるでしょう」
「は、はい。私で良ければ、いつでもお手伝致します・・・が、
その・・・本当にお薬ができたのでしょうか・・・。
エマレットの病は治りますか?」
「信じて待ちましょう?私達のご主人様じゃないですか。
イルマさんが信じないで、他に誰が信じるのでしょう?」
「ご主人様は約束を違えません。
以前にも言わせて頂きましたが、あなたはご主人様に選ばれたのです」
そう・・・なのか。
私は選ばれた。
エマレットも。
このお2人も。
私達はこの主人の元、奴隷と言う身分は変わらないが、
奴隷とは思えない程贅沢に生活をさせて頂いている。
望めば与えて下さる、それがこの主人なのか。
ナズさんとアナさんが神のようだと慕う理由も良く分かった。
いや、本当に神様であるのかもしれない。
多くの神話では、人間や亜人の振りをして困った者達を救われた。
悪魔や魔物の振りをして賊輩を懲らしめた。
そういえば主人が決闘の場に連れて来た決闘奴隷は、
魔物の姿を模倣した仮面を被っていた。
神の国に戻り、魔物の格好をした別の神を連れて来たのかもしれない。
でなければ、自爆玉を受けたはずの戦士が生きていられるはずも無い。
最後は奴隷商に引き取られて帰って行ったようだけれど、
あらかじめ結託していたのかもしれない。
よくよく考えてみれば、あの決闘試合は色々とおかしな所が多かった。
主人が借りて来たであろう戦闘奴隷はたった1人であったはずだ。
ボルドレックが権力を振るって集めた5人もの精鋭に、
たった1人の闘奴で適う訳が無いのだ。
あの戦闘奴隷は・・・戦いの神だったのだろう。
騒ぎにならないように、あのような形で演技なさったのだ。
主人も、あの戦闘奴隷も、連れて帰った奴隷商も。
「かしこまりました。私もご主人様に選ばれたなりに、
期待に沿えるよう頑張ります」
「そうですね、それが一番だと思います。
だからイルマさんも、もう少し力を抜きましょうね?」
「イルマ、あなたは役に立てていないと嘆いているようでしたが、
それは大きな間違いです。
迷宮では小さな事で綻び、それは死を意味します。
ご主人様が神であっても、失敗して死ぬのは私達です。
それをご主人様は望んでおられません。
あなたの持つスキルである手当は、とても大事な役目を持っています。
魔法で戦うのはご主人様お1人で十分ですので、
あなたは皆の安全を第一に考えなさい。
先陣を切って戦うのが妹であったならば、あなたはどうしますか?」
エマレット・・・。
私の妹が迷宮で先陣を・・・。
そんな事は恐ろしくて考えられない。
もし仮にそう主人から命令されたのならば、
一番良い装備をお貸しして欲しいと願うだろう。
何だったら、私が代わりに前へ出ますと進言するかもしれない。
当然そんな事は許されないだろうし、
武の覚えも無い私が前へ出た所で役に立てる訳も無い。
そうしたら・・・私はエマレットが怪我をしても良いように、
一生懸命手当てを施すしかない。
・・・主人に取って見ればエマレットも、
他の戦闘奴隷の方達も同じなのだ。
私がエマレットを大事にするように、
主人は分け隔て無く皆を大事にしておられる。
戦闘時の采配は隙が無いよう綿密に組まれていると思う。
何か問題があれば直ぐに対応して見せる。
元々全員がとてもお強いのかと思っていたが、
主人以外はそうでも無いようだ。
悪く言えば・・・そう、普通の戦闘奴隷。
ボルドレックの屋敷にいたバラブダ様よりは弱いか同じか、
はたまたちょっと強いか、多分その位でしか無い。
ついこの前の竜との戦いでは大苦戦をしていたようで、
皆は主人が魔法を撃ち終えるまで何とか耐えていただけだった。
私が魔法使いとして頑張った所で、
やはり彼らと同じ・・・役に立たないのだ。
魔物の進攻を留めて置く、それに必要なのは・・・そうか、治療師だ。
私の役目が、今ようやく理解できた。
主人の采配はやはり何も間違っておられない。
与えられた仕事を全うする事が、主人への最大の奉仕であったのだ。
役に立っていなかったと思っていた過去の自分を恥じた。
それは主人の命に盾突く行為だったと理解した。
役に立たない事こそが、私の仕事・・・。
「申し訳ありません、私が間違っておりました。
今後は僧侶として仕事を全うしたいと思います」
「ご主人様はイルマに、魔法使いと言う選択もお与えになりました。
そこはご主人様の判断で切り替えるかと思いますので、
その時に与えられた最善を尽くしなさい」
「実を言うとですね・・・」
そしてアナさんが私を諭した後に、
少し間を置いてナズさんが口を開いた。
「私も同じように悩んだ事があったのです。
鍛冶師の仕事、迷宮での戦闘、お料理に夜のお相手、
ご主人様はその時その時で私たちに求める事が変わります。
僧侶さんとして迷宮で私達を助けてくれるのは迷宮だけのお仕事です。
家では・・・みんなと仲良く、
夜は私達と一緒にご主人様を癒して差し上げましょうね」
「そう・・・なのですか、分かりました。
仕事は1つでは無く、その都度替わると言う事ですね?」
「はい、多くの奴隷は命じられた仕事をこなす事が良しとされますが、
ご主人様はジョブをご自由にお変えになる事ができるお方です。
私たちに求める仕事もその都度変えておられるのだと思います」
「迷宮で戦う事が本来の仕事であるはずのジャーブさんが板を彫ったり、
ご主人様をお運びするお仕事のパニちゃんが複写したりですね」
そういえば、迷宮で戦うはずの戦闘奴隷である皆が、
それぞれ別の仕事を与えられて地図を作っていた。
本来ならばそういった仕事ができる別の奴隷を買って来るはずだ。
主人はそれを一旦全員にやらせてみて、
できる者とできない者を分けた上で今の割り振りを決められた。
仕事ができない奴隷ならば、本来は商館に売却される。
主人の場合は仕事を交換するのだ。
何から何まで、主人は規格外だ。
「そう・・・ですか。色々勉強になりました。ありがとう御座います」
「イルマは私達と同じ、ご主人様に選ばれた特別な1人です。
今後こちらに人を増やす事は暫く無いと思われますので、
一緒にご主人様をお助けしましょう。
あなたはあなたなりに、考えた最善を尽くせば良いだけです」
「あっ、でも怪我をしたり自分を犠牲にしようとしてはいけませんよ?
そういう事には酷く嫌悪されるご主人様ですので、
辛い事があれば直ぐに言って下さいね?」
「は、はあ・・・、ご主人様の事を何でもお分かりなのですね」
「だって、「ご主人様ですから」」
お2人は顔を合わせてクスクスと笑い合っていた。
種族も年齢も違う2人が、主人の話で笑い合っている。
羨ましい。
2人はとても幸せそうだった。
ここに私も入れて頂ける・・・。
早くこのお2人に追い付きたい。
そう思ったが、無理をしても多分怒られる。
恐らく自然な形でこの輪に入って行く事を、
主人も先輩のお2人も求めておられるのだ。
ナズさんは元々柔らかい性格のようで、
表情が直ぐ顔に出るお方だ。
基本的にお優しく明るい性格でいらっしゃるため、
主人はとても可愛がっておられるように思われた。
対してアナさんは、表情が硬く滅多な事では顔色をお変えに成らない。
何を考えているか全く分からないが、
改めて考えるとその行動は皆を思いやっての事ばかりで、
無理強いをしたり失敗した事を叱責したりはしない。
戦術面でも優れているようで、戦闘中は皆アナさんの指示に従った。
主人の信頼も厚いようで、
何か有れば直ぐにアナさんへ任せておいでだ。
多くを指示されていないにも関わらずアナさんの処置は的確で、
結果的に主人の思った理想の形となって仕事を終える。
愛される存在のナズさん。
頼られる存在のアナさん。
私は主人から何を求められてここにいるのだろうか。
ただのお妾だけではここに居られるはずが無い。
私が選ばれたそこには、必ず求められている何かがあるはずなのだ。
私自身が早くそこに気付かなければ、
主人にもこのお2人にも失望されるだろう。
私には何ができるのだろうか。
何を求められているのだろうか。
僧侶の仕事は迷宮だけと、先程聞いた。
庭仕事はジャーブさんと言う戦士の男性がやっていたらしく、
私にはその仕事の全てを与えられる訳では無いようだ。
家の掃除・・・は大層な仕事では無い。
私が頑張ったらエマレットの仕事は減ってしまう。
そもそも私達が迷宮へ行っている間に終わらせてしまうだろう。
・・・主人が私に言った事を思い出して行く。
私に求められた最初の1番目。
エマレットやクルアチとの蟠りを無くすようにと、
迎えられたその日に仰せ付かった。
それがすべき事?・・・の始めの一歩。
だとすれば、私は他の先輩方と信頼関係を築く事が次の仕事だろう。
私は3番奴隷と言う立場を頂いたが、命令するような環境には無い。
そもそもこの主人の元では、皆自由奔放で好きなように生活している。
主人もそれをお止めにならない。
一番奴隷であるはずのナズさんやアナさんは、
傍若無人に振舞うヴィーと言う女の子を野放しにされている。
3番という立場を以てしてもあの子を止める事はできないのだと思う。
調子の悪そうなラティさんを無理やり起こす事も無く、
皆起こさないよう配慮していた。
例えエマレットの返事が小さく聞こえ辛くても、
寄り添って内容を理解しようと汲んでいる。
この主人の下で、私はどう振る舞えば良いのだろう。
何を求められているのだろう。
そして、皆にはどう思われているのだろうか。
エマレットと同様に病気を患っている私は、
皆からすれば汚らわしい存在であるはずだ、本来ならば。
そのエマレットは既にこの家の一員として認められており、
主人からも丁寧な扱いを受けている。
周りの皆からもだ。
対して私は・・・。
皆から距離を取られていると感じる事がある。
迎えられて日が浅いというのもあるだろう。
元お屋敷奴隷という事で煙たがられているのかもしれない。
1番奴隷のお2人が私を立てて下さっているお陰で、
何とか私の居場所を頂けているのが現状だ。
この主人の下で、序列は機能していない。
寧ろ逆に、皆の仲が良過ぎて驚かされる事の方が多い。
もしかして・・・。
私の仕事はまずそこからなのではないだろうか。
この場へ打ち解けるように努力するだけでは無く、
他の皆に受け入れて貰える事を優先すべきなのでは。
真逆だ。
元主人と。
かつて仕えていた家と。
私の方針は決まった。
全員に受け入れて貰えるまで、私は努力する。
まずは・・・、
一番話し易そうなラティさんから始めてみよう。
彼女は私が初めて主人に迎えられたその日、
戸惑う私に積極的に話し掛け、そして色々な事を教えてくれた。
ところが迎え入れられて直ぐの私に、
主人からは3番の立場を与えられてしまった。
そしてラティさんは最下位であった。
その事で、私は自分から壁を作ってしまっていたのだと思う。
ラティさんと仲良くなれる折角の機会を、
私は自ら放棄してしまっていたのだ。
ラティさんは序列が低いから低姿勢、では無いようだ。
ついこの間まで一般市民だという彼女は、
元々あんな感じだったらしい。
そんな彼女は普段の言動とは裏腹に、
何故だか主人や先輩方からの信頼は厚い。
そんなラティさんと話し合える関係性を構築できれば、
きっと他の誰とだって自信を持って付き合っていけるはずだ。
いつの間にかお2人は席を立っていて、主人の袂で眠っていた。
私はガラスの美しい道具を壊さないようにそっと移動させた後、
食器を乗せて捲られっぱなしだった布も綺麗に掛け直した。
「お休みなさいませ、ご主人様、ナズさん、アナさん」
∽今日の戯言(2022/04/13)
ストーリーを読み返すと、
表現が雑だった所を加筆したくなったり、
展開を換えたくなる事が多々あります。
一発書きでそのまま公開されている方は凄いですね?
自分などは幼稚で拙い表現ばかりで、
後々読み返したら気持ち悪い箇所が何度も出て来てしまいます。
のののの言葉やでででで言葉。
勿論最初から気を付けてますけどね、
何故かそう成っている個所を見付けて自己嫌悪です。
公開前に最低10回は読み返すのですが、それでも誤字が多い!
もうお前、執筆降りろ!やめて帰れ!
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