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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第冊章 実験
287/394

§274 血液

工房で作って貰ったアルコールランプ瓶は、

底部が平べったい形状で首は分厚く作られ、

芯を固定するキャップのような物も無いので、

突っ込んだ糸は瓶の縁に垂れ下がっている。


この状態で火を点けてみる。


着火はライターだ。

ヴィーを迎え入れられたお陰で煮炊きに使用する火種は困っておらず、

ライターはもう必要無い物かと思っていたが、

こうしてまだまだ使用する用途があった事に驚きだ。


糸の部分に点火すると、

よじって作った芯は酒を吸い上げて炎を上げた。

青とオレンジの、火力がある色だ。


炎は青い程高温であり、赤い程(すす)が出て温度も低い。

フローダルで購入した30年物の蒸留酒は、

アルコールランプの用途に耐えられるアルコール濃度を持っていたようだ。


プタンノラの魚骨酒も同じ位の代物だと思うが、

あちらは色んなエキスも混じっているので恐らく無理だろう。

実験中に生臭くなっても困る。


暫く放置してみて火が消えない事を確認し、満足感を得た。

しかしこれ、どうやって消そうか。

アルコールランプに付随する消火キャップが無い。


一応その用途の蓋は作って貰ったが、

上に被せる蓋であって口を覆うキャップでは無かった。


芯が外に垂れ下がっているので、

蓋を被せた所で思うように消火できないと思う。

芯を細めの金属部品で固定して直立させるべきであった。

無論そんな物は無いが。


と言うか、消火に向く道具が一切無い。

このまま放置して炎上し、旅亭が火事にでも成ったら絶対まずい。


ビーカーで良い?


恐る恐る上から被せると、一応は消火できた。

では次回からそれで。


結局は酸素の流入を止めれば消火できるので、

この形状であれば何でも良いのだろう。

別にそれがビーカーであっても困る事は無い。


アナは消火済みのアルコール壷を興味深そうに眺めていた。


「アナ、容器全体が熱くなってるから触るなよ」

「かっ、かしこまりました」


アルコール壷に今にも触れそうであったアナの手が、

「熱い」と言われたので急速に引っ込み、顔だけが近付く。

そして尻尾は大きくグラインドしていた。

解り易い子だ。


さて、では精製最後の工程を再開する。


炭と一緒にした溶媒をすために、

これに水を通して抽出するらしい。


え、?これまだ途中の工程?

この液体は捨てるらしい。

良く判らんな・・


使用した濾過装置を水洗いして、再びセットする。

洗う場所は当然迷宮だ。

ダンジョンウォークで入って来たと思ったら、

ウォーターウォールで洗い物をして去って行く探索者。

この工程を見られたらさぞかし疑問に思われるだろう。


幸いダイダリ30層の中間部屋なので、

ここはまだ探索が進んでおらず誰もいない。

安心して色々作業ができると言う訳だ。


結局の所溶媒を濾過しフィルター内の残った炭の中に、

目的のペニシリンが吸着しているのだと言う。

これを分離させるために最後の酢酸水だそうだ。


綿に沢山残った炭を取り出し、蟻酢酸と混ぜて掻き回す。

もう一手順濾過が増えたが、その後更に重曹水を混ぜるのだそうだ。


おい、文明が崩壊したら重曹なんて簡単に入手できる訳が無いぞ。

アレは工業的な化学物質では無かったのか。

幸いこちらの世界には100%純粋な重曹が手に入るが、

核戦争で世界が滅んでしまった後の世界では、

この手順書通りにペニシリンを抽出する事は難しそうだ。


コック付きビーカーに濾液が抽出され、

2つ目のビーカーには目的の物質であろう液体がしたたった。


・・・恐らく1ポットにも満たない。

これでは絶対足りない。

い、一応、やってみたと言う経験は大事だ。


このままアルコールランプで煮詰めて、

結晶が抽出されれば成功と言えるのだ。

フラスコ固定台に丸底フラスコをセットし、

アルコールランプで焙ってみた。


ペニシリンが正常に生成された場合、

濃縮を続けるとペニシリンが結晶として生成されるらしい。


らしいと言うのは、この本にはそう書いてあるだけで、

具体的な写真が載っていないのだ。

青カビやブルーチーズの写真は載っている。


つまりどういう事かと言うと、

この本の著者は実際に精製しておらず、

何かしらの資料を基に記載しているに過ぎない。


実際に作成した結果の著書であるならば、

結果の写真の1枚でも乗せるだろう。

冷温装置やアウトドアでのキャンプ方法などについては、

著者が実際に設置した写真を載せていた。


つまり、この方法で上手く行くかどうかの検証が行われていないか、

若しくは上手く行かずに失敗したのだろう。

或いはできあがった物を実際に使用してみたが上手く作用しなかったとか。


取り敢えず、著書に書いてある通りの手順で行ったので、

後は信じて待つ事にする。

アナもアルコールランプに熱せられて泡を吹くフラスコに、

興味が引き付けられたらしく真剣に見詰めていた。


・・・

・・・・・・

・・・・・・・・


焙る事5分。


溶けていた何かが結晶化して白濁した液体には、

目的であろう物質を抽出できたのだと理解できた。

但しこれがペニシリンかどうかは全く解らない。

と言うか、調べようも無い。


顕微鏡があって結晶の形を知っていれば、

判定ができるのかもしれない。

そんな知識は無い。

大体、勝手に製薬する事はどの国だって御法度だろう。

素人に判るような解説書なんてあるはずが無いのだ。


やはり、何かしら小動物で実験するしかないのだろうか。

そもそもこれがペニシリンだったとして、

どの位の量を投薬すれば良いのかと言う知識すら無い。

適当に打ち込んだ所で、

効き過ぎてショック死と言う事態が起きても困る。


そんな代物をいきなりエミーやイルマに打ち込む訳には行かない。

何かしら動物実験などを済ませてからにするべきだ。

梅毒を感染させてその動物が死なずに治癒したかを確認する方法・・・。


そもそも梅毒が人間以外のどの動物に感染するのかを知らない。

そしてその動物に対してペニシリンが有効であるかも知らない。

病原菌と言う物は生物に依って元々抵抗があって感染しないケースも多く、

薬も生物に依っては猛毒だったりする場合がある。


要するにそこら辺の知識が無い自分では、

例え何かしらの成果物を作り上げた所で、

それが安全に作用する薬であるかどうか調べる事すらできないと言う訳だ。


何だそれ、詰んでるじゃないか。

やっぱり医学書を持って来なければならなかった。


・・・動物実験か。


この世界に管理された大人しい家畜なんている訳が無い。

牧場位はあるだろうが、それらは放牧でありほぼ野生の放し飼いだ。

感染させる時点で一苦労だろう。


大体どの動物が感染すると言うのだ。

そこら辺の知識も全く無い状態で、

ここから先何をどうすれば良いかを見い出せず思いこまぬいている。


・・・うーん。


魔物であるスローラビットは毒化する。

しかしスローラビットにペニシリンが効いた所で、

解毒作用があるかと言えば謎だ。


梅毒を与えただけで即座に毒化すると言う事は、

これは魔法的に毒化している。

魔法毒に対して実薬が有効であるとは思えないのだ。


とすると、実際の生物に感染させて投薬した結果、

長い間生き残っていると言う状況でなければ確認が出来無い事になる。


或いはもっとシンプルに、

その生物の血を使ってスローラビットが毒化したり、

しなくなったりを確認する方法があるかもしれない。


本来ならば直ちに判るような薬品や検査法が存在し、

顕微鏡や試薬に依って有効であるかを調べる事ができるのだろう。

このサバイバル教本には生成する事までしか書いておらず、

それが成功したかどうか確認する方法に付いては一切触れていなかった。


投げっ放しにも程がある。


やはり著者も確認をしなかったのだろう。

勝手に動物へ打ち込んだりしたら動物愛護者からクレームが来るだろうし、

人体実験をしたら何かの法に触れるはずだ。

それでか、このページだけ結果の写真が無いのは。


次のページには簡単に発電できる装置の作り方が詳しく書かれ、

実際に電球を光らせている様子が細かく記載されていた。


そんな物を詳しく描かれた所でこの世界にはまだ電球が無いし、

保護膜付き銅線や強力な磁石などはこの先数百年単位で存在しないだろう。

大体蓄電ができなければずっと発電装置を動かし続けなければならない。

それには動力が必要になるし、そもそも家電が無いので役には立たない。


その次のページも放射能からの防衛術と言った、

てんでこの世界には使えそうも無い知識ばかりであった。


・・・やはりダメ元でも良いので、

取り敢えずはスローラビットで実験を行ってみるしかあるまい。


「アナ、ここでの実験はここまでだ。次はエミーを連れて迷宮へ行く」

「あっ、はい。かしこまりました」


食い入るようにフラスコを眺めていたアナを現実世界へ引き摺り戻し、

プタンノラの旅亭へ戻り装備を身に付けさせた。


全員分の装備がラティのアイテムボックスに入っているので、

迷宮へ向かう際は必ずラティが必要になる。

そしてエミーだ。

検証にはエミーの血が必要になる。


あ、いや、イルマで良い。

負った傷は当人が治療できるし、意思疎通も容易だ。

ちゃんと返事が返って来るのは有り難い。


・・・だからボルドレックも不要になったのだろうなあ。

いや、病気もあるのか。

いずれにしてもこの姉妹は不幸である。

何としてでも救ってやりたい。


プタンノラの旅亭の部屋は相変わらずパピルスで埋まっていた。

自分が移動魔法で出て来る事を見越して、

壁掛けの絵の周囲だけは綺麗に片付けられていた。

偉いぞ、パニ。


「イルマ、手を止めて迷宮へ行く支度してくれ。これから実験を行う」

「はっ、かしこまりました」

「アタイはー?」


「魔物を倒しに行く訳では無いので後は良い。そのまま作業を続けてくれ」

「えー・・・」(ヴィー様っ!これもお仕事です)

       (わ、分かってるよぅ)


「頑張っているようだな?」

「あの後ご主人様がお出になられてから、7層と8層を終わらせました。

 これから9層の地図を作製する予定です」


「そうか、イルマがいなくなるが3人でも続きができそうかな?」

「アタイ下にならべるだけだし」

「わた・・・お掃除・・・とお買い・・・です」

「みっ、皆さんの分も含め、僕1人でも頑張ります」


「じゃあ、パニ任せたぞ」

「かしこまりました」


ナズとジャーブとラティは隣の部屋で木彫りを進めているはずなので、

帰って来たらねぎらってやろう。

アナとイルマの2人を連れて、ダイダリの迷宮へと飛んだ。


「アナ、スローラビットは──」

「ダイダリの迷宮でしたら9層でございます。

 8層がコボルト、7層がチープシープですので、脅威はありません」


そう言ってダンジョンウォークを唱え出した。

おっと、まだ探索者に戻していない。

詠唱の途中で変更したらどうなるのだろうか。


・・・駄目だな。


「ご主人様、申し訳ありません。早過ぎましたでしょうか」


「済まない、詠唱の途中では無理みたいだ。

 探索者となってから改めて詠唱する必要があるのだろう」

「かしこまりました。次は指示があるまで待つように致します」


再び詠唱を行ったアナは、ゲートを開いて自分達を9層に案内した。

エントランスルームからアナは先行して、スローラビットを探す。

ここまで自分は何も命令していない。


イルマのみを連れて来た事に加え、

先程作っていた物が2人のための薬だと言う事は解っている。

そのための実験をしに来たのだから当然魔物はスローラビットだ。


やはりアナは聡明だ。

ただしそれを他の者に求めてしまうのは酷だ。

ここまでの人材はそうそう居ないのでは無かろうか。


「居ました、スローラビットが2匹です。コボルトも混じります」


「コボルトは魔法で始末する。できれば1匹を無効化させてくれ。

 倒してしまったら残った1匹は押さえ付けて生け捕りだ」

「かしこまりました」

「あ・・・あの、申し訳ありませんが、その、私は・・・」


「イルマは大丈夫だ。まずは見て置いてくれ」

「は・・・はい。申し訳ありません」


アナがスローラビットへ駆け出す前に状態異常耐性ダウンを掛け、

コボルトにはバーンボールを当て即刻退場して頂く。


今回は石化が発動したようだ。

更にもう1匹を盾で壁に押し当て、身動きが取れない状態にした。


「アナ、そのままお願いする」

「承知しております」


一旦シュメールの旅亭にゲートを開け、

先程熱して濃縮した液体の入るフラスコを持って戻って来た。

ついでにビーカーもだ。


「さて、イルマ。以前も行った病気の検査を覚えているな?」

「は、はい。血を注げば宜しいのですね?」


「そうだ、これを使ってくれ」

「かしこまりました」


イルマに木の矢1本を手渡し、彼女は受け取るとそれを腕に刺した。


「くっ・・・」


だから、何故全力・・・。


血が付着すれば要件は満たすのだから、ちょっと刺せば良いだろう。

何処までも真面目なのだろうな。

融通が利かないと言うか、自己犠牲心が溢れ過ぎていて、

見ていてちょっと不安になる。


「イ、イルマ、血が付きさえすれば良いのだから、

 もう少し手加減して良いぞ。お前自身の体も大事にしてくれ」

「も、申し訳ありません・・・」


イルマは血が流れ出る状態のままスローラビットに向かって行ったので

慌ててジョブを変更して手当てを使用した。

先にイルマ自ら手当てをしてから向かう事を想像したが、

そこまでは回らないのだろう。


やはりアナのように何でも求めては駄目だ。

イルマはアナと被って見える事が多いから、つい期待をしてしまう。


「あっ、申し訳ございません。自分で手当てをすべきでした」


「いや、良い。大丈夫だ。この位は何の苦でも無いのでな。

 ほら、それより」

「は、はい」


石化したスローラビットが、ここから更に毒化するかと言えば・・・。

したようだ。


2重の状態異常が掛かる事に依って、

先の状態異常が上書きされて解除されると言った事も無く、

これは固まったまま毒にもなっているようだ。


ええと・・・これ、

先に石化の治療をしないと液体を飲ませられなく無いか?

そもそも魔物がこちらの与える薬を飲んでくれるかも不明だが。


僧侶の上位ジョブに状態異常治癒とか無いのかな・・・。

そこら辺は良く知らない。


そこまで育った僧侶が多数いれば話に出て来るのだろうが、

僧侶は非力な女性がパートナーを助けるためのジョブらしいので、

ある程度年を取ると家庭に入るのだろうか?

或いは子育てで離脱とか?


そういえば他のジョブだって上級職に就いている者が少ない訳だし、

ずっと僧侶のままで迷宮を回っているのかもしれない。

明確に冒険者と言う目標がある探索者とは違って、

僧侶に就けば安泰ではあるのだし、

それ以上を目指す人がいない説も有り得る。

知られていない可能性もあるだろう。


固まったスローラビットの口を開こうと頑張ってみたが、

口が開くような状態には至らなかった。

そりゃま石化だし、そうなんだろうけどさ。


ではソフトシェルだ。

こちらは少し硬めのグミ状になっており、

口に押し込んでぶちゅッと潰して液体を含ませるようだ。


そうだよな。

丸薬だったら飲み込めないのだから回復させられない。


暫くすると効果が表れたのか、

スローラビットの色が薄緑色に変わり再び動き始めた。

この状態で成果物の液体をまぶして梅毒を治療させてみたい。


但し相手は魔物、こちらの言う事なんて聞いてくれないし、

押さえ付けて飲ませるのは困難だろう。

・・・そう、普通ならば。


ジョブを設定し直して、英雄と博徒を交換する。


  ──オーバーホエルミング!オーバードライブ!


視界は2重にうごめもやで包まれ、

ほぼ停止した状態の兎が空中に留まっている。

跳ねた直後だったのだろう。


すかさず近寄り、矢を引き抜いて液体を傷口に垂らした。

染み入る事を期待して、別の矢で傷口をえぐって置く。

後は危険が及ばないように距離を取って離れるだけだ。


 ──時間が戻る。


何かを押し込められたスローラビットは藻掻き苦しんだように見えたが、

直ぐに体勢を立て直すとこちらへ向って跳ねて来た。

先程の恨みを返そうとしているのだろうか。

治療してやったんだがな。


見た所色には変化が無い。

やはり魔物にペニシリンは効かないのか、

或いは作成した液体そのものが失敗作であったのか。

治療できたが魔法的に掛かっている毒状態は治療できないのか。


謎は深まるばかりだ。

そうこうしているうちにスローラビットは力尽きだ。


アナの剣に依るダメージも入っているので、

残りのHPは少なかったに違い無い。

ではもう1匹だ。


こういう実験を1つ1つ繰り返して行く事が大事なのだ。

今のは梅毒に感染して毒化したスローラビットが、

作成した液体で治癒できるかどうかのテストであった。


次は先程作った溶液内に、

本当にペニシリンが抽出できていたかどうかのテストだ。


再びイルマに矢を渡す。


「イルマ、次は刺したら自分に渡してくれ」

「えっ?・・・あ、はい。かしこまりました」


再びイルマが腕に矢を突き刺す。

今度は教えたように先程より加減をしたようだ。

別にイルマを傷め付けたい訳では無いのでそれで良い。


血液を安全に抜ける注射針があれば、

一定量抜いて保管して置いたりできるのだろうが、

注射針なんて物は存在しないし作れっこない。

図面を引いた所で、誰が作れると言うのだ。

細いガラス管ですらやっとだったんだぞ?


それに、素人では安全に感染した血液を扱えない。

保管だって無理だろう、真空パックだって無いのだ。

取り扱い不備で自分が感染してしまったら洒落にもならない。


結局イルマにはその都度血を流して貰う必要がある。

申し訳無いが協力をして貰いたい。

当人の為ではあるのだし。


血液が付いた先端部分に成果物である液体を数滴掛ける。

勿論、勿体無いので別のビーカーで受けて、

その中で矢尻を満遍無く液体に浸した。


2つのガラス容器はイルマに持って貰い、

ゆっくりとスローラビットに近寄る。


  ──オーバードライブ!オーバーホエルミング!


うっ、うるさいな、良いんだよ。

安全マージンの為だ。


壁とアナの盾に嵌り込んでいるスローラビットへ向けて矢を突き刺した。

さて結果は・・・。


毒化・・・する訳が無いじゃない。

まだオーバースキルの効果時間中だ。

幾ら何でも、それ程速く感染が回るはず無かろう。


  ──時の流れが再び元に戻る・・・。


イルマは手当ての詠唱を行い、その傷を癒したようだ。

垂れてしまった血液はウォーターウォールで洗い流せば宜しかろう。

ま、後でだ。


・・・まだかな。

・・・・・・まだだな。

・・・・・・・・・感染しない?


しないっぽいぞ、これは。

このフラスコ内に貯まった液体は、

一応ペニシリンらしき物質が生成されているのは間違い無いようだ。

ビーカーの中で混ぜ合わせた事に依って、

梅毒菌は滅菌され、ただのイルマの血だけになったらしい。


後は果たしてこれが人間にも有効な成分であり、

他に毒素的な物が残っていないかどうかだ。

それから仮に成功していたとして、実際どの位投与すれば良いのだろうか。


常識的に考えれば注射で与えるべきだろうが、

先程結論付けたようにそんな物は無いし作れっこない。


ペニシリンは飲んでも効果があるのか?

そのせいで内臓に障害が出ても困る。

その辺りが無知過ぎるので、これは迂闊にやってみるべきでは無い。

そもそも論、取り敢えずやってみるかと言えるような量を確保できない。


ともすれば注射と似た状況を作るとして、

直接腕や足を切り裂いて液体を垂らし、

手当てで強引に傷を塞ぐと言った荒業位しか想像できない。


良いのか、それで?

消毒も注射器もメスも無い異世界では病院を開けそうも無い。

∽今日のステータス(2022/04/12)


 ・異世界79日目(15時頃)

   ナズ・アナ74日目、ジャ68日目、ヴィ61日目、エミ54日目

   パニ47日目、ラテ26日目、イル・クル23日目

   プタン旅亭宿泊9/20日目 シュメ旅亭宿泊9/20日目



 ・収得品

  ウサギの皮     × 2

  コボルトソルト   × 1



 ・ダイダリの迷宮

  7 チープシープ     /  ビープシープ     

  8 コボルト       /  コボルトケンプファー 

  9 スローラビット    /  ラピッドラビット

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