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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第三章 仲間
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§027 簀巻き

「今度はグリーンキャタピラーがいそうな所を探してみてくれ」

「はい」


アナに指示を出す。

ナズはその後何度かコボルトと戦い、

1対1ならばもう既に敵では無くなった。


そもそも最弱らしいコボルトに苦戦するようであれば、

そんな者は完全に迷宮生活が向いてない。


いや、それ以上に成果があった。


槍の特性や間合いの詰め方、

連撃の仕方などを勝手に編み出している。

自分にあれができるかと言われたら、多分無理だろう。

今の自分は完全に武器の性能に頼ってしまっている。


「多分この曲がった先にいます、2匹いるようですね」


「じゃあ、1匹は自分が倒すから、アナは見学、ナズはもう1匹の相手を」

「「はい」」


曲がった先にはグリーンキャタピラーが1匹、

そしてコラーゲンコーラルが1匹いた。

グリーンキャタピラーの方が奥だ。


「ナズ、グリーンキャタピラーは口から糸を吐いて、

 こちらを動けなくする特殊な攻撃を仕掛けて来る。

 急いで間合いを詰めて、口を開いて威嚇してきたら横か後ろかに避けろ」


「え・・・、はい」


2人で駆け出す。

気後れしたのか、ナズは2歩位後方だ。


コラーゲンコーラルを擦れ違いざまに切り飛ばす。

その場で立ち止まって、後はナズの様子を見守った。


グリーンキャタピラーは虫にしては大型だが、

それでも体高は低い。

どうしても武器は上から下に振るのが基本となる。


槍の場合、上から振り下ろすまではいいのだが、

次の一手で下から上に振り上げるのはやりにくい。


剣と違ってヒットする場所は先端の小さい部分だけ、

そうなるとグリーンキャタピラーは体躯が小さ過ぎて、

振り上げ攻撃の場合は槍先を上手く当てる事が難しいのだ。

下段の攻撃をするならば左か右に大きく振って薙ぎ払う位しか無い。


最初の一撃がド真ん中への振り下ろしなら、

次の行動は詰んだと言っても良い。


ナズはそれをやってしまった。

真正面から頭を叩かれたグリーンキャタピラーが、

その後どうしようかと止まっているナズに向けて行動を始めている。


ナズが過ちに気付いたようだ。

グリーンキャタピラーから距離を空けた。

そして次の一手を考えたのか、前方へ飛び出した。


だが今はまずい。

足元にスキル詠唱の赤い模様が出ていた。


「ナズ、けろ!」


とっさに叫んだ。


次の一撃の事だけしか考えていなかったのか、

既にナズは前へ踏み込んでいた。


──ブピョァァァッ!


粘着した液体がキャタピラーの口元から吐・・・かれなかった。

吐き出された物は、全てナズに絡みついて液状から糸に変わる。

どういう仕組みだ。


「あ゛ぅ・・んーー!ぐっ・・・ふぅぅーん!」


簀巻すまき状態となり、手も足もグルグルにされたナズが喘ぐ。

キャタピラーが頭を大きく持ち上げてナズの腹部へ頭突きした。


「あ゛ぅ!」


これはまずい。


とっさに駆け寄って、転がっているナズの上をデュランダルが突き進む。

そのままグリーンキャタピラーの頭部を貫いた。

何とか次の一撃が来る前に間に合ったようだ。


グリーンキャタピラーが消えたと同時に、

ナズを縛っていた糸もスッと消えてしまった。

全く、どういう仕組みなんだ?


「大丈夫か?」

「は、はい。衝撃はありましたが、・・・それ程痛くありませんでした。

 ご主人様に頂いた防具のおかげです」


「そうか、それなら良い」

「危なかったですね、ナズさん」


「とまあ、あいつは糸に気をつけなければならん。

 他にも、触ったら毒になる奴とかいるから気をつけろ」

「あの・・・」


「どうした?」

「ご主人様は魔物が何をして来るのかお判りだったようなのですが、

 どうやって判断すれば良いのでしょう?」


「多くの場合、魔物はスキルを使う前に足元に赤い魔法陣が出る。

 先程はナズが前にいたために確認し難かったが、

 距離を離した際にちらっと見えた」

「魔法陣・・・?」


「そうだ。赤い、この位のごちゃごちゃした模様が出るはずなので、

 見えたら気を付けろ」

「見えたら避けるしか無いのですか?」


「止める方法も勿論ある」

「それなら──」


「まだ無理だ、そういう武器がいる。それは高い」

「妨害のスキルが付いた武器ですね」


流石アナ、経験者語る。迷宮の知識は豊富だ。


「そうだ、ウサギのモンスターカードがあれば今直ぐにでも作れるが、

 いずれにしても高価だ。アナ、ウサギは何層だ?」

「ええと、スローラビットですと9階層と聞いております。

 私は行った事がありませんので聞いた話となりますが」


「9層か・・・」

「ではそこで魔物を倒せば──」


「9層ともなると魔物は一度に4匹が出現するのだ。

 ナズとアナが、それぞれ2匹相手にできる位にならないと狩りは難しい」


聞きかじった知識で説明しているのはこちらも同じだ。


もしかしたら国や地域が違えば、

迷宮のルールも少し変わるかもしれない。

ミチオ君たちのルールでは、が前提だ。


ちらっとアナの方を見たが、

頷いてくれたのでこれは正解なのだろう。


「と言う訳だから、注意しながら倒す。

 魔物のスキルが見えたら、直ぐ回避行動を取る事。良いな?」

「はい」


「先程のように攻撃を当てる事だけに気を取られ過ぎると、

 引き返せなくなってしまう事もある。

 間合いや連続攻撃は更に注意をしろ」

「はい」


迷宮では少しの判断ミスで命を落とすのだ。

先程の失敗は良い経験になっただろう。


そもそも当初ホワイトキャタピラーに巻かれて貰おうと思っていたのだし、

この後の階層で危険な攻撃を受けさせる訳にも行かない。

ここで魔物のスキルを受ける事は最後のチャンスでもあった。


結果オーライと言うか、そうなるように仕向けたと言うか、

兎に角、自分の目論見は成功したと言えよう。


でも、自分が巻かれてしまったらどうすれば良いのか良く判らない。

手持ちの武器で何とか引きちぎって行く?

武器を持つ手が動かなくなるほど巻かれたら?


ソロならその先は死だろう。

パーティメンバーに切って貰うか、

敵が倒れるのを待つしかない。


考えたらゾッとした。


「さ、さぁ、魔物の怖さも解った所で次に行くぞ」

「あっ、はい、ボスならこちら、魔物はあちらです」


「じゃあ、もう1回位ナズに経験して貰ってボスに行こう」

「はい」

「こ、今度は頑張ります」


残念ながらキャタピラーは出なかった。

1層の魔物だし、そうそう沢山は出ないだろう。

コボルトとコーラルの2匹だ。


コラーゲンコーラルは固いので練習相手にぴったりだ。

コボルトを撫で斬りにして後はナズに任せてみた。


ナズが槍で突くとコーラルは跳ねて間合いを詰めながら頭を振り回す。

突きながら後退して距離を取るのでその攻撃は当たらない。

着地の足元を槍の太刀打ちで払う。

バランスを崩したコーラルの頭部を2段突きする。


本当にこの娘は戦闘初心者なのだろうか。

一手一手、確実に上手くなっている。


ドワーフにしては力が無かったと言われていたようだが、

この様子であればそれも覆す位に、

閃きと才覚に依って自力で鍛冶師に成れたのでは無いだろうか。


17,8回・・・或いはもう少し多かったか、

槍の攻撃がヒットした頃にコラーゲンコーラルは煙となった。


「やるじゃないか、かなり見込みがあるぞ」

「あっ、ありがとうございますっ」

「ナズさん凄いです。槍の人ってこんな風に戦うんですね?」


「いえ・・・、私のは何となくやっているだけなので、

 参考にならないかと思います」

「それでも十分戦えているのだから、凄いですよ」


いや、確実に凄い。

凡人は何となく無双三段突きとか、二段突きとかしない。

そのうちトルネードスピアとか編み出しそうな勢いである。


「・・・よ、良し、それじゃボスに行くぞ」

「「はい」」


「ボスとは言っても所詮はコボルトだ。

 多分ナズでも余裕で倒せるが、面倒なので、サッサと終わらせる。

 さっきの連中にも悪いしな」

「はい」


「ボスまでに2つのグループがいるようです」


「ナズの経験は十分そうだし、後は自分がやる」

「はい」


行き掛けにコボルト2匹、それからコボルトとコーラルの、

2つのグループを煙に変えた。


適当に近寄って斬り落とすだけだ。

何の運動にもならない。


「ここがボスの待機部屋です」

「そうか、誰もいなさそうだな」


キャラクター設定画面を確認すると、

また1ポイント余りが出ていたのでこれ幸いと詠唱短縮に振った。


ラッシュと唱える必要はあるが、一言で済むのは大きい。

これで安心してボス戦もこなせるようになった。


準備ができたので待機部屋の中央に進む。

直ぐに扉が開いたので誰も戦っていないようだ。


煙が集まりコボルトケンプファーが中央で待ち構える。


コボルトは短いナイフを持っていただけだが、

こちらは当たるとかなりヤバそうな大剣を持っている。

当たったらどうなるのか。


謎の物理法則が働く世界だ。

一撃で死なない限り、強烈に痛いが真っ二つなんて事は無いのだろう。

どちらにせよ痛いのは嫌なので受けたくない。


ちょっとあの剣のサイズを見ると腰が引けてしまう。

少なくとも地球の物理法則でなら、

あれは剣の重みだけで相当な破壊力がある。


デュランダルを握る両手の力を絞り、間合いを詰める。

厄介な遠距離攻撃は無いのだから慎重に。


コボルトケンプファーもひたひたと歩いて間合いを詰める。

大剣を振り被った。


・・・・・・遅い。

ビビって間合いを離したが、そんな事も気にせず振り落としてくる。

・・・・・・アホだ。


振り下ろした剣を持ち上げようとしているケンプファーの横を抜け、

きびすを返して左に大きく振って胴に当てる。


「ラッシュッ!」

「グェ・・・グェ」


コボルトケンプファーが重たい一撃を受けて苦鳴を漏らす。


こちらに向けて振り下ろしてくる大剣を、更に右へ飛んで避ける。

避けゲーのLv1だろう。

フェイントも無いし、動きも判り易い。


相手の振り被りの際にも余裕がある。

この経験をじっくり糧にさせて貰おう。


「ラッシュ!」


再びデュランダルを左に振って胴を打って払う。

次の一手まで間があると思ったので、

そのまま右上に向けて逆袈裟斬りしてみた。


「グギャャャ・・・」


大剣が横から迫って来る。

しまった、腕に当たるッ。


──ガィィン!


アナが盾でなした。

流石ベテランだ、良く見ている。

3年の経験は重い。


自分なんてまだ5日も戦闘していない。

先程は欲を掻いた、その結果が命を縮めるのだ。


また嫌な汗だ。

舐めて掛かって、大して運動した訳でも無いのにシャツが張り付く。

上からしか攻撃が来ないなんて事は無いのだ。

最初も次も、上下の大振りだったので完全に油断していた。

どの方向から剣を振られても対処できるように気を付けるべきであった。


「済まないっ」

「いえ」


そう言いながら、

もう一度ラッシュを当てるとコボルトケンプファーは煙となった。


「ふー、ちょっと油断した。助かった」

「この位でしたら」


そう言ってアナは頭を下げた。

いや、頭を下げるのはこちらだと思うが・・・?


「ご主人様、アナさん流石です。凄かったです!」


うん、知ってる。

このナズは何でもそういうと思う。


「よし、さっさと次行くぞ、連中が待ってるかもしれん」

「「はい」」


コボルトケンプファーのドロップはコボルトスクロースだ。

沢山集めて置いて、美味しいデザートを作るんだと、妄想した。

∽今日のステータス(2021/07/28)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人  Lv19

  設定:商人(19)英雄(10)戦士(18)探索者(18)

     剣士(4)

  取得:村人(5)色魔(1)


 ・BP117

   キャラクター再設定   1pt   5thジョブ     15pt

   獲得経験値上昇×10 31pt   武器6        63pt

   必要経験値減少/3   7pt


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv3

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 戦士  Lv12


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 商人  Lv20

  設定:商人(20)英雄(10)戦士(19)探索者(19)

     剣士(7)

  取得:村人(5)色魔(1)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv6

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 戦士  Lv13



 ・異世界8日目

   ナズ・アナ3日目、トラッサの市まで3日、宿泊5日目



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  2 コラーゲンコーラル  /  コラージュコーラル

  3 コボルト       /  コボルトケンプファー

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― 新着の感想 ―
[気になる点] >「やるじゃないか、かなり”見込みがいい”ぞ」 初めて拝読した時から少しすわりの悪さといいますか違和感を持っていました。”筋(すじ)がいい”はどうだろうと思いつきました。 しかし、「…
[一言] コボルトケンプファーはweb版だと言及ないけど、書籍版だとコボルトフラワーがドロップ品だったような?
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