§264 登竜
午後の探索は30層中間部屋からである。
まだギリギリ、真剣に探索すれば1層1日圏内だ。
ロックバードの階層は骨が折れたが、
他のパーティも入って来ていたのでまだ何とかなった。
この階層の魔物は動きが遅く倒し易かったケープカープだった事もあり、
結果的に戦闘回数も少なく済み探索時間には余裕があった。
だがこの階層よりは広い事が確定しており、
ロックバードより大変であるだろうドライブドラゴンの階層は、
本腰を入れて対処せねばならないだろう。
ついでに言うと、そこに魔物の部屋は無い方が望ましい。
「ご主人様、モロクタウルスとケープカープ2匹です。
恐らく戦闘中に裏手からロックバードも2匹やって来るでしょう」
「解った、ラティとパニが後方で、ナズも後方の警戒だ。
前衛3人で前方3匹は取れるだろう?」
「「「はい」」」「あーい!」
とは言うものの、この場で待って居てもケープカープはやって来ない。
こちらから詰めなければならないので、
せめて目視の範囲までは迷宮の通路を前進する事になる。
黒光したケープカープの鱗が反射してキラッと見えた。
ギリギリ目視圏内だ。
アナはもう見えているのか、盾を構えながらジリジリ進む。
ヴィーは駆け出して行った。
「あっ、おいコラっ」
歩調を合わせないとまた囲まれるぞ?
直ぐにジャーブもアナもヴィーのフォローをするため駆け寄って行く。
ただ、ケープカープは魔法を多用して来る敵でもあるので、
ゆっくり近付いては魔法の砲撃を受けるのも事実。
何が正解かは判らないが、せめて歩調は合わせて欲しい。
後でヴィーは再教育だ。
主にアナとジャーブからだが。
あまり前後で離れ過ぎる訳にも行かない。
後方で警戒に当たるナズたちも前進させ、バックアタックに備えた。
アナの対峙するケープカープへ状態異常耐性ダウン。
続いてガンマ線バースト、バーンストーム、サンダーストーム、弓。
いつものコンビネーションだ。
問題はあるまい。
後から来るロックバードの対処として、
MP回復用に延命させる手も考えられるが、
相手は魔法を使用する頻度の高い厄介な敵。
モロクタウルス3匹ならそうしたかもしれないが、
敢えて残す必要は無い。
結局ロックバードがお目見えする前に全てを煙へ変え、
ロックバードは2戦目と分割された。
ヴィーが肝を2つ拾って持って来る。
既に幾つか肝がストックされてはいるが、
ロックバード1匹に当ててみたらどうだろう。
ドライブドラゴンの性能も気になる。
果たしてどの位強いのだろうか。
ミチオ君は1層のコボルトを変化させていた。
試しに戦ってみる位ならそれも有りだろう。
無理して面倒な魔物の階層を制する必要は無かったのだし、
難敵の階層は金を払えばスキップできる。
我々は地図を作成する上で、
ドライブドラゴンとの連戦は絶対に避けられない。
次か、その次には必ずお目見えする訳だ。
やってみよう、今。
2匹のロックバードをドライブドラゴンに変えて。
「ちょっとロックバードを変化させてみる。
次かその次の階層に出て来るドライブドラゴンが出て来るので、
ちょっと試しに戦ってみよう。
これを倒せないとなれば、探索を諦める必要がある」
「はい」「かしこまりました?」
「ええと、どういう事でしょうか?」
「わっ、私は、あの、どうすれば」
「イルマは僧侶に変えて置くので手当ての準備をして置け。
どんな攻撃を仕掛けて来るかは全く読めない」
「は、はいっ」
「良いか?魔物を変化させたらラティとパニは直ぐに引いて、
アナたちへ正面を譲り遊撃に加われ」
「はっ、はいぃぃ!」「わかりっ!ましたっ!」
丁度ラティが盾で止め、パニは剣で受け止めた。
オーバードライブを掛けて時間を引き延ばし、
ケープカープから得た肝を投げ付ける。
1つ目が当たり、ロックバードは煙に包まれる。
その隙にもう1匹に投げ付けてみたが、
こちらは当たった時点で肉片が消失して何の変化も起きなかった。
確かセリーは確率でと言っていた。
強い魔物はそれだけ変化する確率が低いと。
では失敗するとアイテムが消えて無くなる訳だ。
毒針もそのような仕様であったし、これは仕方無い。
だが1匹だけドライブドラゴンと言うのも練習にならないだろう。
アイテムボックスから更に3つ肝を取り出して、1つずつ投げてみた。
2個目、やはりロックバードの体へ吸い込まれるように消えて無くなる。
3個目、当たるとロックバードは中心部に向けて収縮し煙が広がる。
オーバードライブが切れた。
モコモコと煙が小さくなって再び広がり、結構なサイズに形作られた。
そこから長い胴体が段々と形作られて、ドライブドラゴンが出現した。
竜なんて初めて見たよ。
おとぎ話でも神話でもCGでも無い。
よくあるファンタジーに出て来る王道の生物、ドラゴン。
中国由来の龍ならば宝玉を掴んでいるらしいが、
この竜は何も持っていなかった。
蛇のように長い体とトカゲのようなしっかりとした腕、
爪は鋭く尖り、口には牙もあるが角は無い。
長めのオオサンショウウオに翼が生えているような感じだ。
──キシャァァァァッ!
2匹のドライブドラゴンは吠えたか威嚇したか、
何かしらの叫び声を上げて前衛陣に襲い掛かって来た。
既に前中列が交代している。
「あぎゃっ」
ヴィーの構えた大楯をスルリと避けて、
上から回り込んでヴィーの後頭部に噛み付いた。
突進のように見えたが突進では無いようだ。
ちゃんと考えて、そして避けて来る。
アナはその様子を見て悟ったのか、盾を外して誘うようだ。
突進を食らう直前に盾を構えるが、ドライブドラゴンはより賢かった。
やはりアナの盾をするりと躱して横からアナを引っ掻いた。
「クッ!」
「て、手当てッ!」
直ぐにイルマの手当てが入る。
ヴィーが齧られた際には使用せずに様子を見た辺り、
イルマも個人個人の耐久度や戦略を理解していると言う事か。
「に、にーちゃん、コレッ」
「任せて、ヴィー」
ヴィーは噛み付かれながらもそこで耐え、
ジャーブの剣が振り易い位置へ頭ごとドライブドラゴンを振った。
上から強力な一撃がドライブドラゴンに降り注ぎ、
そのまま地面へと叩き付けられる。
ヴィーも胴体を踏み付けて2人で袋叩きにしたようだ。
良かった。
あの2人は勝手に回復できるので、一先ずは安心だ。
アナを掠めて行ったドライブドラゴンの方は、
そのままナズと向かい合いお互いに睨み合っている。
アナが裏側から斬ろうとするが、
顔はこちらに向いているのに尻尾で遇われている。
コイツ、後ろにも目が付いているのか?
・・・いや、恐らく気配で察して牽制しているのだろう。
アナのように殺気を読み取っているのだ。
厄介な相手だぞ、これは。
カウンターをするか、相手の読みを上回る動きか、
アレより素早く動かなければこの魔物とは戦えない。
忍のジョブ特性に依って多少素早く動けているとは言え、
そんな補正はたかが知れている。
ロクサーヌのような天性に依る俊敏の才能が無ければ、
ドライブドラゴンのスピードを上回るのは難しい。
セリーはサンダーストームで戦えと言っていた。
全属性に耐性があるのだそうだ。
状態異常耐性ダウンを掛け、
ガンマ線バーストとサンダーストームを2回使用する。
ナズと向き合っているドライブドラゴンへ矢を放ってみた。
ドライブドラゴンはその体勢を変える事無く、
矢の射線上の部分だけ体を拗らせると、
いとも簡単に躱してみせた。
だめだ、これは。
完全に読まれている。
恐らく、今後どういう状態であっても矢はドラゴンに当てられない。
それこそ麻痺とか、固定されている状況でなければ。
と言う事はドライブドラゴンの階層では余程の事が無い限り、
MPの回復手段が限られる事になる。
そう・・・。
丁度あのジャーブとヴィーが抑え込んでいるような状況でもなければ。
い、頂いて置こうか。
折角だし。
今、全部の魔法を撃ち終わってMPが枯渇している訳だし。
ナズと睨み合っているドライブドラゴンを横目に、
ジャーブとヴィーが踏み付けているドライブドラゴンへ近寄って接射した。
そういえば、これはどうやったら「こう」なったんだっけ。
確かヴィーが噛まれて、それをジャーブが叩き落した。
カウンターか。
隙を突いたと言えなくも無い。
弓を撃ち込みながらサンダーストームでドライブドラコン1体を消した。
未だもう1匹はしつこくナズと睨み合いを続けている。
お互い、動いたらやられると言う極限の状態でピリピリしているのだろう。
にも拘わらず、アナの動きはいとも簡単に読まれている。
これまた一体どういう具合だろうか。
隠密行動ならばアナの方が得意では?
裏からもダメ、正面からも自分の弓は躱された。
恐らく横からでも無理なのだろうが、
どういった事かナズは互角の相手だと認定しているようだ。
武器リーチか?
或いはナズ自体のポテンシャルを読んでいるとか。
うーん・・・。
何を以てして「こう」なっているのかが解れば、
以後の階層で出て来た時に対処法を考えて行けるのだが。
一先ず弓は駄目らしいので、
一旦アイテムボックスにしまってデュランダルを取り出してみた。
経験値20倍は犠牲になったのだ。†
「アナ、左右から同時に行くぞ、自分は上段、アナは下段を狙ってくれ」
「はいっ」
自分が頭部を狙って逆袈裟斬りに斬って見る。
アナは同時に下部から胴へ掛け、逆袈裟斬りにサーベルを振った。
ドライブドラゴンが拗り、
自分の方が若干早かったのかドライブドラゴンは首だけを動かして避ける。
そしてアナの剣はヒットして当たり、
ドライブドラゴンは少しだけ宙を舞った。
何となく理解した。
ドライブドラゴンは1対1ならばロクサーヌ並みの回避を誇るが、
1対2では対処できない。
行けない事は無さそうだ。
1匹を取りながらもう1匹にちょっかいを出しつつ、それを迎撃すれば。
なんて面倒な。
ミチオ君達は・・・。
やっぱりロクサーヌが全部押さえた上でその後ろからなんだろうなあ。
「行けそうだ、2人同時に狙ってみろ」
「はいっ」「そういう事ですね、解りました」
「なるほど、流石ユウキ様です。もう対処法を見出してしまわれるとは」
「えーと、どういうコト?」
(1人で攻撃すると避けられてしまいますが、
同時に攻撃を仕掛けるか、
何かしている最中なら当てられると言う事らしいです、ヴィー様)
(ふ、ふーん・・・じゃあ、パニお願いしていー?)
(かしこまりました、次回そうさせて頂きますね)
ジャーブは大振りにバスタードソードを振ると、
その動きに合わせてドライブドラゴンが拗り、
その隙にアナがサーベルを通して突く。
このコンビネーションでしっかりヒットしているようだ。
どういう訳かナズと向き合って微動だにしないので、
今回に限っては対処が楽だと言える。
しかし、何故この子たちは向き合っているのだろうか。
全く謎である。
「ナズ、動いてみろ」
「えっ、はい、では」
ナズが槍を振るうと、ドライブドラゴンは待っていましたとばかり、
体を拗らせてスルスルと槍を遡上してナズの手元まで巻き付き、
更にナズの手元に噛み付いた。
「きゃっ」
ナズが慌てて槍を放り投げて、手を払った。
ドライブドラゴンは噛み付いたままであるため、
その胴体ごとブンブンと振られる。
重たく・・・無いんだろうな。
ナズはドワーフだし、あの程度の重量ならば余裕なのだろう。
しっかり噛み付いたドライブドラゴンはナズの手から離れようとせず、
恐らく持続的にダメージが入っているのだろう。
イルマから手当の掛け声が入る。
ジャーブが大剣を胴体に叩き付けて切り離した。
更にヴィーが上から飛び乗って床に落とす。
再び安全な形で抑え込む事ができたようだ。
先程から動かなかったドライブドラゴンはこれを狙っていた訳だ。
と言う事は、迂闊にナズから手を出さない方が良い。
槍使いはドライブドラゴンと相性が悪い訳だ。
長物だから巻き付き易く、
巻き付いてしまわれたらもう対処のしようが無い。
剣ならそのまま叩き付ければ刃の部分で斬れたりするが、
槍は柄の部分では打つ程度で大したダメージにならないからな・・・。
ある意味デッドエンドな状態だ。
いきなり5,6匹同時に出逢って大混乱とならず、
練習の場を設けられて本当に良かったと思う。
対処法を学んだ上で迎撃するのと、
初見で試行錯誤するのでは心の余裕がまるで違う。
パーティが6人では無く8人連立って歩いている事に今は安堵した。
ドライブドラゴンは大きいため、どう頑張っても通路に2匹か3匹。
それ以上並んだ場合はドライブドラゴン自体避ける場所が無くなるだろう。
前3匹に対して6人が付く。
その上で自分が魔法を掛け、イルマが回復を担う。
ギリギリだ。
この運用で乗り切りたい。
我々はスーパー能力が無い凡人だ。
いや、ナズ以外は凡人だ。
迫る難関には知恵や物量で乗り切るしかないのだ。
程無くしてドライブドラゴンは消え、竜皮が手に入った。
竜皮は食べ物で、竜革は防具用だ。
ややこしい。
ただの皮も、ただの革も防具用なのに。
もしかしたら竜皮も防具に使用できたり、
ただの皮も頑張れば食べられたりは・・・しないか。
アイテムボックスから摘まみ上げた皮は、
どう見ても食べられた物では無かった。
竜肉はビーフジャーキーらしいし、
竜皮は鳥皮のような物だとミチオ君が言っていた。
だとするとさっき飛び回っていたドラゴンは鳥類だと言う事になる。
せめて爬虫類であって欲しかった。
落ちぶれた物だな、この世界のドラゴンは。
「それじゃ、先を急ごうか。
ドライブドラゴンの対処法も解ったし、次層以降出て来てももう安心だ」
「そうですね。私は特に気を付けなければいけませんね」
「ナズさんは私と組みましょう。
私が先に手を出しますので、その後にナズさんが割って入って下されば。
絡み付かれた場合は私に策があります」
「そうなのですか?では宜しくお願いしますね」
「はい、任せて下さい」
「では俺はヴィーとですかね?」
「いや、ヴィーはパニが良いだろう。ジャーブはラティと頼む。
ラティ、ドライブドラゴンが出る階層になったら、
ジャーブと組んで先に攻撃を仕掛けろ。
ラティは戦闘の運ばせ方が上手だし、
ジャーブなら存分にラティの作った隙を生かし切ってくれるはずだ」
「分かりました。宜しくお願いします、ラティ殿」
「はっ、はいぃ・・・あ、あ、あの、が、ガンバリマス・・・」
「ジャー、アタイはパニと?」
「その方が良いだろう。
お前たちは仲が良いし、連携力を生かせる。
何かあってもお互い打たれ強いからな」
「宜しくお願いします、ヴィー様」
「ふーん?じゃあアタイが先にヤ゛るね?」
「かしこまりました、精一杯助力致します」
対ドライブドラゴン用の布陣が決まったが、
まだまだ出て来る魔物はケープカープである。
*
*
*
その後も何度かケープカープやノンレムゴーレム、
稀にモロクタウルスなどと戦闘を繰り返し、
ナズから夕食のお達しが来る前までにはボス部屋に辿り着いた。
と言うより、ドライブドラゴンに苦戦しただけで後は何でも無かった。
「ボスに行く時間はあるか?」
「はい、まだまだ時間はあるようです」
「では時間まで何度か回ろう。
以前余裕だと思ってマザーリザードは1度しか相手にしなかった結果、
前回とんでも無い事になったからな。
慣れて置く事は大切だ。深層に行った時の練習にもなる」
「「かしこまりました」」「分かりました」「あいっ!」
「はい、私は僧侶で宜しいのでしょうか」
「イルマは僧侶だ。我々に取って初見の敵であり未知の敵だ。
何があるか判らないので、万全の態勢で向き合いたい」
「かしこまりました」
──ゴゴゴゴゴ・・・
中央付近を踏みしめると、ボス部屋の扉が開く。
迷宮も我々の突入を待っていてくれているようであった。
我々が失敗する事を期待しているのだろうが、
そんな事を起こす訳には行かない。
「行くぞっ」「「「「「はいっ」」」」」
駆け出した先には煙が巻かれる。
初登頂のボス部屋なのだ。
我々の先に入った者などいるはずが無い。
いや、攻略報告をせずにどんどん先へ進んだパーティが居れば、
そういう事もあるかもしれないが。
現実的に考えれば攻略報酬を受け取って日銭へ変える方が普通だ。
金持ちの道楽で迷宮に入る訳では無く、稼ぎに来ている訳なので。
そういう事なのだから、やはりボス部屋は我々が一番乗りなのだ。
煙が巻かれ、2匹のお供は大きく形作られる。
この大きさ感で言えばノンレムゴーレムだろう。
早速相性の良いナズとヴィーが取りに向かった。
中央はジャーブとアナだ。
出て来たカーブカープはミチオ君の言った通り変な魚であった。
胴体がぐるっと曲がり尻尾の先と頭は同じ方向を向いている。
浮いているから動けるものの、あれは水中ならどうするんだ?
そんな生物は存在しないので突っ込んでは駄目か?
魔法的に生きているのだろうから、
食物連鎖や捕食方法など、現実的に考えるのは無意味だった。
気が付くとカーブカープは、
回転などせずその形状のままアナに向かって腹からタックルを仕掛けた。
もはや泳ぐ事すら無く、あれは空飛ぶ円盤だ。
盤では無いが、さながらUFOだ。
確認してしまったが。
アナが盾で止め、ジャーブがそこを叩き斬る。
ジャーブの剣はカーブカープの頭部と尾びれに挟まれ、
剣に纏わり付いて止められてしまった。
真剣白刃取り?
とりあえず頭部への攻撃は挟み込まれて回避されてしまうようだ。
良く解らないままオーバードライブを掛けて、サンダーストームを唱える。
お供がノンレムゴーレムなので、
お互いもっと引き付けて貰ってからアクアウォールを出したい。
「ナズ、ヴィー!
2匹を寄せて壁魔法が当たる場所まで引っ張って来てくれ」
「はいっ!」「あいっ!」
これでよし。
後はノンレムゴーレムに向けて矢を放ち、
もう一度オーバードライブからのガンマ線バーストだ。
ジャーブも白刃取りされた剣先を奪い返し、
剣の腹で叩き付ける戦法に切り替えたようだ。
これならば鈍器的なダメージが通り、白刃取りの危険は無い。
ジャーブなりに考えたようで感心した。
相変わらずアナは防戦一方だ。
手を出してくれた方が早く終わるのだが、
斬り掛かればまた剣先を取られかねないので、
これしか方法が無いのだろう。
今の所100%回避している様子なので、これはこれで良いのか。
ナズとヴィーの移動が完了したようだ。
ノンレムゴーレムは横に並び、
これならばアクアウォールが2匹に当たりそうである。
だがちょっと待って欲しい。
魔法を出すならオーバードライブ後に出したい。
タイミングがズレてしまうのも何だし、
後7秒程そのままで我慢して頂けると。
「マダー?」
ヴィーが催促して来た。
まだだよ!
「もうちょっと待ってくれ、次の魔法と同時に出すっ」
「ハーイ」
カーブカープが再びジャーブの剣に憑り付き、
そのまま魔法を詠唱し始めた。
ジャーブは剣先を取り戻そうと、ブンブンと大降りに振る。
「待て、ジャーブ!振るなッ!アナに刺して貰って魔法を止めろ!」
「えっ?あっ、はい!」「頂きますッ」
危なかった。
そのまま強く振ってすっぽ抜けたりしたら、
詠唱中断への対処が更に難しくなっていた所だった。
そのまま2人は先程の作業を続ける。
自分もそろそろ魔法のクールタイムが終了したはずだ。
オーバードライブを掛け、まずはガンマ線バースト。
次はノンレムゴーレムに矢を撃ち込んでアクアウォール。
最後にサンダーストームだ。
ノンレムゴーレムは恐らく次ターンの魔法で倒せるだろうから、
今のうちにMPを回復させねば。
ナズとヴィー2人の間から両方のノンレムゴーレムへ向けて、
それぞれ4本ずつ矢を放った。
これでMPは十分だろう。
残りはカーブカープとなる。
と言うか33層先にあれが沢山出て来た場合、
やはり剣先に取り付いたり変な動きで体当たりを噛まして来る訳だ。
先程やったドライブドラゴンに共通するものを感じる。
1人では対処が難しい。
今後は別の魔物と対峙している仲間との連携が試される。
その際、手伝う側は自分の向かい合っている敵を対処しながら、
仲間のサポートをせねばならない。
そういう難易度であり、そういう布石なのだろう。
階層的にドライブドラゴンが先となった場合は、学ぶ機会はかなり厳しい。
逆にこちらのカーブカープで学習できれば、
ドライブドラゴンへの対処も想定内に入って来る訳だ。
どちらもチュートリアル的な強さでは無い。
瞬時に見極められなければ直ぐ死が待っている位の強力な魔物である。
ドライブドラゴンは耐久力と機動力が、
カーブカープはその魔法が恐ろしいのだとセリーは言っていた。
先程ドライブドラゴンに対し閃きがあったのは偶然の産物であったが、
それを求めて来るのだ。
この世界の迷宮と言う強敵は。
次ターンの魔法で想定通りノンレムゴーレムが消え、
その2つ次のターンでカーブカープも消えた。
ノンレムゴーレムからは岩が出落ちると判っているが、
カーブカープは何だコレ。
死骸か?
どう見ても魚の骨が残されている。
肝に寄生虫に魚の骨。
鯉は碌でも無い物しか落とさないな。
そういえば、食べられるアイテムは59層だともセリーが言っていた。
クーラタルならば、だ。
この迷宮ではケープカープが30層なのだから、
33を足すと63層だ。
63層まで潜らなければ、鯉の身の部分には有り付けない訳だ。
気の長い話である。
それ以外のパーツはここにある訳だな?
骨に肝。
ああ、鰭に鰓に目が無いか。
・デミリン
鑑定したら骨とは出なかった。
何だコレは。
「ええと、これが何だか解る者はいるか?」
「ええと・・・生ゴミでしょうか?」
「煮出せばスープになるのでしょうか?」
「カイガラみたいに食べるヤツか?」
「あー、ヴィーの好きな貝殻はボレーと言う。覚えて置け、ボレーだ」
「ぼれー?」
「そうそう。足りなくなったらパニに言えよ?」
「あーい」
「ええと、ユウキ様。
ひょっとしてデミリンでは無いでしょうか?」
「おお、そうだ。ジャーブはこれが何か知っているのか?」
「はい。畑に撒くと虫が湧かないため、
腐らせた肥料などを用いる場合に多く使いますね」
「と言う事は、これは殺虫剤のような物か?」
「そのように使うはずです。1つが中々に高価ですが、
桶1杯分の堆肥をそれ1つで安全な肥料にできますので重宝しますね」
「と言う事は冒険者ギルドにも買取依頼があったりする?」
「ええと、たぶんそうかと思います。
俺の実家では特定の方から分けて貰っていたみたいですが、詳しい事は」
なるほど、寄生ワームが肥料ならば、こちらは防虫剤だ。
どちらも日用品、主に農作業へ特化したアイテムであると言える。
迷宮からは色んな日用品が産出されるのだなあ。
流石は資源が豊富と設定された世界である。
その後も、ナズが夕食を指示するまでカーブカープを周回し、
殺虫剤は7個集める事ができた。
使い道?
無いよね、たぶん。
自宅の畑に撒くにはやり過ぎだと思う。
寄生ワームは使うかもしれないが。
イルマに見せたら寄生ワームは知っていると答えられたが、
デミリンと言う名称のどう見ても魚の骨は首を傾げていた。
これを使うのは大規模農場なんだよ、きっと。
∽今日のステータス(2022/03/25)
・フジモト・ユウキ 人間 男 21歳 探索者 Lv65
設定:探索者(65)魔道士(39)勇者(30)
道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(36)
神官(40)博徒(36)
・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 隻眼 Lv25 1st
・アナンタ 猫人族 ♀ 20歳 忍 Lv25 1st
・ジャーブ 狼人族 ♂ 28歳 聖騎士 Lv23 1st
・ヴィクトラ 竜人族 ♀ 12歳 竜騎士 Lv49 1st
・エマレット 狼人族 ♀ 19歳 料理人 Lv40 OFF
・パニ 竜人族 ♂ 15歳 冒険者 Lv14 2nd
・ラティ 人間 女 28歳 探索者 Lv43 2nd
・イルマ 狼人族 ♀ 21歳 魔法使いLv31 1st
・クルアチ 兎人族 ♀ 18歳 村人 Lv1 OFF
↓
・フジモト・ユウキ 人間 男 21歳 探索者 Lv65
設定:探索者(65)魔道士(39)勇者(30)
道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(36)
神官(42)博徒(37)
・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 隻眼 Lv26 1st
・アナンタ 猫人族 ♀ 20歳 忍 Lv26 1st
・ジャーブ 狼人族 ♂ 28歳 聖騎士 Lv24 1st
・ヴィクトラ 竜人族 ♀ 12歳 竜騎士 Lv49 1st
・エマレット 狼人族 ♀ 19歳 料理人 Lv40 OFF
・パニ 竜人族 ♂ 15歳 冒険者 Lv14 2nd
・ラティ 人間 女 28歳 探索者 Lv43 2nd
・イルマ 狼人族 ♀ 21歳 魔法使いLv32 1st
・クルアチ 兎人族 ♀ 18歳 村人 Lv1 OFF
・収得品
羽毛 × 18 バラ × 31
岩 × 54 寄生ワーム × 78
肝 × 69 デミリン × 7
竜皮 × 2
・異世界77日目(13時頃)
ナズ・アナ72日目、ジャ66日目、ヴィ59日目、エミ52日目
パニ45日目、ラテ24日目、イル・クル21日目
プタン旅亭宿泊7/20日目 シュメ旅亭宿泊7/20日目
・ダイダリの迷宮
27 ロックバード / ファイヤーバード
28 モロクタウルス / ボスタウルス
29 ノンレムゴーレム / レムゴーレム
30 ケープカープ / カーブカープ




