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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第丗章 道筋
262/394

§249 順番

旅亭の昼メニューは焼き魚の切り身と長パン、野菜炒めであった。


この旅亭では昼食を受付まで取りに行くはずだ。

食事の準備はナズ、という事でナズは1人で出て行った。

しかし流石のナズでも9人分の食事は持てない。


てっきりワゴンを借りて乗せて来るのかと思っていたら、

リュックを持って行ったらしく、そこへぎゅうぎゅうに詰めて持って来た。

その後こちらの部屋に4つを置いた後、隣の部屋へ持って行った。


トラッサの旅亭とほぼ同水準の食事だ。

値段も同程度だし、サービスの質は変わらないのだろう。

ならば極端に悪い訳でも無く贅沢過ぎる事も無い。


肉ではなく魚と言うあたりがややヘルシーなのか?

それ以外は特に気になる事も無かった。

願ったり叶ったりで満足である。


なんて事は無い、全部混ぜればフィッシュバーガーだ。

ここはやっぱりチリソースだな。


昼食の包みを配り終えて隣の部屋から戻って来たナズに、

再びどちらの調味料が欲しいかどうか聞いて来るようお使いに出した。


ナズ、ジャーブ、ヴィー、エミー、ラティが自分と同じようにチリソース、

アナ、パニ、イルマは魚醤を所望した。

味の好みもそれぞれである。


「昼の食事が携帯できるなら、迷宮に行く時は楽そうだな」

「そのようです。直ぐ向かわれますか?」


「いや、いつでも魔法で移動できるんだ、今後も旅亭で食べよう。

 午後は・・・27層の途中からだったよな?」

「そうですね、まだ中間部屋までも辿り着けておりません。

 そこそこに広く、魔物も厄介です」


無理をしたい訳では無い。


ロックバードの効率の良い倒し方はそのうち見つかるだろう。

余り駆け足で進み過ぎても首を絞めるだけだ。

着実に覚える時間を取るべきだ。

普通の人間は1年2層なのだろう?


「無理せずゆっくり行こう。地図を取る事が目的なのだしな」

「そうでございましたね」


ヴィーがチリソースを掛け過ぎたのか、隣の部屋から悲鳴が零れて来た。

文字通り口から火を噴くのか、竜人族だし。

辛さに依って火力がアップ・・・なんて事は無いよな。



   ***



「それじゃあ午後は27層の続きを進めるぞ。いつも通りラティは地図を。

 パニとイルマは後方を警戒してくれ」

「「はいっ」」「分かりました」


「あ、その前にイルマはその眼帯をナズに預けろ」

「はい、・・・どうぞ」


「ナズ、これを頼む」

「あ、はい。合成ですね?」


火属性防御のためにトカゲとセットで使おうと思っていたコボルトを、

山羊のモンスターカードとセットで渡す。


ナズの手元には神籬ひもろぎの眼帯が出来上がった。

続いて芋虫のカードだ。

カードと一緒に強壮丸を渡し、飲ませてから作業をさせた。


 ・神籬の眼帯(知力2倍 身代わり)


「どうぞ、イルマさん」

「あの・・・モンスターカードと言うのは高級品なのでは?

 そのような物を3枚も──」


イルマが言い掛けた所をアナは再び掌を見せて会話を中断させる。


「ご主人様のお気持ちを理解なさい。

 私たちは大切にされています。有難く受けるべきです」

「か、かしこまりました」


やはりイルマは優しく諭すより、

序列で申し付けた方がスムーズに呑み込むのだろう。

そういう風に教育されて来たのだし、

根底にあるのはそれが命令かどうかなのだ。


イルマの雪解けの日はまだまだ遠い。


「アナ、人は?」

「そこそこにいます。

 前回探索した箇所への直接の移動はなさらない方が宜しいかと」


自分たちが最新層を攻略すると、入り口の探索者へラティが通達を行う。

26層を突破してまだ間もないはずだが、

それ程早く最新層に人が集まるのか。


やはりボスは避け、少しでも安全に稼ぎたい探索者が多いのだろう。

ボス部屋は孤立無援なのだし、下手を打つと逃げられない。

通路の方が安全に決まっている。


特に狙ったアイテムが無い限りは、

通路で戦っていれば生活そのものはできるのだし。


「よし、ではラティ頼むぞ」

「は、はいぃぃ!あのっ!」


「どうした?」

「ちっ、地図をやっ、宿に置いて来てしまいましたぁ・・・」


このアホーーーーーーーー!


・・・まあ先に何層へ行くかを言わなかったのは自分が悪い。

イルマもそうだがラティは全部言わないとダメな子だった。

忘れていた。


午前中木彫りと複製の作業だったし、

地図を散らかしてしまったのだろう。

仕方無いか。


気持ちを落ち着かせるために一呼吸置いた。

ゲートを出して取って来させるとして、

ラティは別パーティだし分解再結集するにも手間取りそうだ。

同じように版画を作製していたジャーブなら場所が判るだろう。


「全くしょうがないな、ジャーブ取って来てくれ」

「分かりました」


ジャーブから地図を渡されたラティが、アナと共に探索を再開した。


「来ます、ロックバード3匹です。途中でシザーリザードも混じります」

「おっ、お願いしまぁす!」


ラティが後方に回り、前衛陣が駆け出す。


昨日の時点でイルマは神官の修業を成功させられなかった。

だがいずれは成功するだろうと仮定して、

これ以上僧侶として経験を積ませても無駄になるかも知れない。

魔法使いは自分抜きで戦う際に就ける予定であるので、

それならちょっとLvを稼がせてやるか。


どうせロックバードごときで緊急事態は起こり得ない。

時間が掛かって面倒なだけなのだ。


ロックバードと接触して直ぐにオーバードライブとサンダーストーム、

更にガンマ線バーストを使用し、

そしてロックバードがパニかアナに依って往なされるのを待つ。


パニは頻繁に攻撃されるようだ。

装備が剣1本であるから防御は薄いと判断されているのだろう。

そしてパニは剣で受ける事を失敗し、体で受け止めた。


「いっ!たっ」

「あっ、心安らまば平癒へいゆの・・・」


「待て、イルマッ!まだ良いっ」

「えっ?はっ、はい」


今使われたら手当てを発動できないとバレる。

その際は説明が面倒だ。

魔法使いに就かせていると知ったら、では使ってみますとか言いかねない。


直ぐにオーバードライブを掛けて、

パニに突き刺さっているロックバードへ向けて射掛ける。


木の矢は2本しっかりと刺さり、もう一度行けそうな気配だ。

至近距離まで近付いてパニの目の前で1本撃ちを2回、

パニには当たらないような方向から撃ち込んだ。


オーバードライブが解ける。

次の詠唱までは時間があるので、この隙にイルマのジョブを戻した。

やはり面倒なので魔法使い育成は安定している階層にしようか。


「イルマ、手当てを頼む」

「あ、は、はいっ。心安らまば──」


パニは体からロックバードを払うと、

持っていた両手剣でロックバードを叩き付けた。

叩き付けたと言っても、床までは落ちて行かない。


ロックバードはそのまま空中で体勢を整えると、

スルリと上昇して距離を置いた。


あぁ、撃ち込んだ矢の2本が折られているな。

この階層では魔法以外で矢が減って行きそうだ。

折角作った鉄の矢も、この階層では封印せざるを得ない。


今のが鉄の矢だったら300ナール捨てた事になっていた。

某ゲームでは金貨を直接敵にぶち当てるような、

金を湯水のように使うスキルを持つ職業があったりしたが、

正にそれでは無いだろうか。


あれはゲームであって仮想通貨だが、こちらは現実に金が減る。

あっと言う間に破産だ、恐ろしい。


木の矢なら30本で780ナール。

1本当たり20ナール強なので、

朝晩のパンを投げ当ててる程度だ。

こちらの方がまだ我慢できる。


MPを回復する手段のために130ナールも失っては、

まだ強壮丸の方が安いまである。

MPの回復手段を弓だけに頼る選択は、

対ロックバードに限って言えば間違いだった。

できるだけ幅広い選択肢を持っていたい。


イルマの装備も魔法使いになる事を見越して吸精を付けてやろう。

アナが麻痺させたら一方的に吸えるのだし、MPは大事だ。


2回目のオーバードライブを使用し、

魔法はガンマ線バーストとサンダーストームを使用した。

サンダーストーム2連射まで行うと次のオーバードライブが苦しい。


そして次の獲物を待つ。


──カィン!


パニの手元の剣から金属音が鳴る。


2度目はしっかり嘴を剣で受け止められたようだ。

直ぐにオーバードライブを掛けて狙って矢を撃ち込み、

アナの方も盾に当てていたのでそのまま狙った。


この僅かな時間に於いて計7本を当てる事ができて満足だ。

次のターン用のMPは十分確保できた。

ずっと俺のターンと言う訳には行かない所が本当に煩わしい。


奥の方にシザーリザードが見えた。

寄って来ずにその場で留まっているようだ。

そして・・・鋏を持ち上げている。

駄目だろう、あれは。


オーバードライブで駆け寄りながら弓を構える。


「間に合え!!」


叫んでも矢の弾速が早くなる訳では無い。

そもそも時間を捻じ曲げて発射しても、その矢の動きは変わらない。

オーバードライブを連続で使って駆け寄った方が早いまである。


ひとまず急いで1本を射出し、できる限り接近した。

結構な距離だった割には、しっかりとシザーリザードに当たる角度で矢は飛んで行ったが、

残念ながら奴の火魔法の方が早かった。


オーバードライブ中にも関わらず、

ポカポカと体周辺に熱源が迫った事を感じ取る。


ぐっ・・・、結構熱い。

2層下で対面したマザーリザードから湧き出たお供の魔法は、

かなり熱めに入れた風呂のようだった。


今回はシザーリザードなので雑魚だが、

2層上がったので魔力は多少上乗せされていると言った所。

同じ位の熱さを感じ、イルマは一心不乱に手当てを詠唱する。


ま、まあ、大した脅威は無い上に彼女も仕事が発生して満足だろう。


と言うかこの距離状況で同グループ判定か。

今後も別のグループが接近して来る事は十分有り得る訳で、

見える範囲だけに注意を向けるので無く、

この距離に居たらもう魔法が飛んで来るのだと警戒せねばならない。


グループと言う認識を改める良い切っ掛けになった。

迷宮は布石の連続だ。

ここで経験させて貰った事を良かったと思わねばならない。


シザーリザードは土魔法に弱いので、

この場で弓を連射しながらダートストームとサンダーウォールを唱える。

オーバードライブでガンマ線バーストも合わせた。

ロックバードでなければ魔法は撃ち放題なのだ。


君は補給ポイントなのだよ、

自分に出遭ってしまった事を後悔すると良い。


シザーリザードを倒し終わるとラティとアナが掛け寄って来た。


「大丈夫でしたでしょうか?」


「ん、ああ。こちらは問題無い。魔法が飛んで行ったが皆は大丈夫か?」

「は、はいっ。わっ私は魔法を受けていませんっ!」


そうだった。


ラティは別グループ扱いだ。

魔物は距離依存でグループ化されるのに対して、

我々人間はパーティ単位なので。


「この距離で狙って来るようなので、次からアナも警戒してみてくれ。

 今回は気付くのが遅かったので魔法の発動を許してしまった」

「はい。私もこの距離で認識されてしまう事は今回初めて知りましたので、

 次回は先にお伝え致します」


  *

  *

  *


ゆっくりだが着実に、

特にこの階層では慎重に足を進め、何とか中間部屋を越した。


「他のパーティたちはどうしているのだろう?

 やっぱり追い付かれて混戦になっているのかな?」

「そのようです。

 この階層では6人が前後3人ずつで戦い、

 後衛でもしっかりと対処しないと厳しいようです」


それはつまり僧侶だから非戦闘職だからと、

後衛が暢気のんきに構えている訳には行かないと言う意味だ。


6人全員が魔物と対峙する力を持つパーティだけが、

ロックバードの階層を制する事ができるのだろう。

この階層で狩りをできるのは、もうだいぶエリートと言う事になる。


羽毛の買取価格が1つ40ナール。

ここで戦うとあっと言う間に5,6匹から囲まれる。

10回も戦闘をこなせば2000ナール。

なるほど、良い旅亭に泊まれそうだ。


自分達は8人構成の2部隊パーティだが、

そのうちラティとイルマの2人は中央で守られる布陣なので、

結局前後で挟まれたら3人と3人にならざるを得ない。


いざとなったらラティも画版を置いて、

前線で戦って貰わねばならないかも知れない。


まあラティは大丈夫か。

そもそも20層までの経験があるようだし。

戦歴で言えばジャーブを超える。


「じゃあ時間までもう少し進めようか」

「かしこまりました」「は、はいっ。こっ、今度はこちらですっ」



   ***



やはりロックバードは素早く迷宮内を飛び回るので、

直ぐに次の魔物のグループとエンカウントしてしまう。

中々探索が捗らない上に倒すのも厄介で、本当に骨が折れた。


「ど、どうだ、半分位は埋まったか?」

「そう・・・ですね。もうボス部屋の位置は大体把握できましたが、

 枝道を含めるとまだまだでしょう」


アナがラティの地図を覗き込んで答えた。

その間にも、ラティは今見える範囲の通路を書き足して行く。

ラティの目付きは真剣そのもので、いつもの卑屈な感じでは無い。

彼女は筆を執ると輝くのだ。


・・・やっぱり腐女子臭いんだよな。


「ナズ、時間は?」

「ええと、まだもう少しあるかと思います。

 エミーちゃんが準備をしてくれるでしょうから、

 多少押しても問題無いかと思います。

 切り良く最後まで地図をお取りになられますよね?」


「よし、ではそういうつもりで残りを埋めよう」

「「「かしこまりました」」」「ほーい」「はっ、はいっ!」


こうして人気ひとけが少なくなった迷宮の探索を押し進め、

ナズがもう限界だと言い出す前に何とかボス部屋までを埋められた。

その先にもまだまだ通路は続いていたが、

ラティは感じ取った空間の奥行から、通路を書き足して地図を完成させた。


「アナ、助かった。今日はここで終わりにしよう。明日は朝からボス戦だ」

「かしこまりました」


ゲートを開き、アナ達を送る。


「やっとおわりかー」

 「お疲れ様です、ヴィーちゃん。

  きっとエミーちゃんが食事の用意をして待っていますよ」

  「ヴィーはお腹が減ったかい?」

   「うん、もうペコペコー」

    「足りないようでしたら、私の分を少し差し上げましょうか」

     「えっ!イイの?」

      「私は直接戦いませんので、それほど動いておりません」

       「そっか、やった!」


「それじゃあラティもご苦労だった。パニ、復路も宜しくな」

 「は、はいぃぃ、ありがとうございますぅ」

  「かしこまりました・・・ラティさん、ラティさん?」

   「なっ、何でしょう!?」

    「ラティさんがダンジョンウォークを使って下さらないと、

     僕たちは帰れませんよ?」

     「そそそ、そうでした、失礼しましたぁっ。入り組み惑う──」


ワイワイしながら迷宮を切り上げた。


イルマはヴィーにおかずを分ける約束をしたようだ。

3番のイルマが5番のヴィーに施しを与える事は、

これまでイルマの常識の中では無かった事だろう。

イルマ自身のあり方について認識を変え始めているようだ。


自分が出したゲートは旅亭の自分達の部屋に通じる。

ジャーブ、ヴィーは隣の部屋へ向かって行った。

4人だけになった部屋でイルマを呼び寄せ、

先程のやり取りをねぎらった。



   ***



今夜のメニューは白身魚のフライである。

フライと言っても衣は付いておらず、

小麦粉がまぶされて焦んがり焼き揚げされている物だ。


そ・・・ソースかな?無いよな、作るか、今度。

勿論魚醤でも良いな。

タルタル・・・いやマヨネーズでも良いが、

流石にこの旅亭ではそれを用意できない。


魚醤ならあちらも欲しいと言うだろう。

少し小皿に取ってやって、

あちらの部屋にも届けてやるようナズへお願いした。


「それでしたら私が。ヴィー様にもお約束しましたので」


イルマが小皿2つを持って部屋から出て行った。


「「ご主人様」」


ナズとアナが鋭い顔をしてにじり寄る。


「解っている。イルマも少し自分の元での生活に慣れたのだろう。

 あの姉妹が伸び伸びやってくれるようになれば理想的だな」

「ご主人様はどなたにでもお優しいのですね・・・」


「そんな事は無いぞ?知らない奴には冷淡だし、

 牙を向ける奴にはとことんまでやらせて貰うからな」

「は、はぁ・・・」


面倒臭がり屋なので面倒になりそうな事はしたくないのだが、

それ以前に博愛主義なので面倒事を作りたくないだけなのだ。


それにしてもアナは良く見ている。

ジャーブとエミーの件も解っているのだろうか。


「アナ、ジャーブとエミーの事は解かるか?」

「ええと?はい。ある程度には」


「アナから見て2人はどうだ?」

「単に同族としてだけでは無く、

 それ以上にお互いを思いやっている節があります。

 ジャーブの方は隠し通すのが下手なのか直ぐに判りますが、

 エミーの方はほんの少しジャーブのおかずを多く入れたり、

 ハーブティーは多めに入れたりしています」

「そうなのですかっ!気付きませんでした」


こ、細かっ!

姑かよ!


・・・。

でもまあ、奴隷に取って食事は唯一の報酬だ。

そこをちょっと贔屓ひいきしているのだろう。


ジャーブは体のサイズも大きいし本来ならば沢山食べる方だと思う。

遠慮しているのだとすれば、エミーが贔屓してトントンって所だ。


「まあ、アレは仲良くやってくれれば良いと思っている。

 病気の方が解決したらエミーはジャーブにやると話してあるのでな」

「やはりそうでしたか。ある日を境に2人は急接近したので、

 そのような話をご主人様がなさったのでは無いかと思っておりました」

「ええっ!?そうなんですか!」


あー、ニブい子がいたよ・・・。

ナズは天然か。


「もう1つの組み合わせはどうだ?」

「ええ!?ヴィーちゃんの方もですか!?」


「あれ?ナズには言って無かったっけ?」

「私は何も聞いておりませんよっ!?

 アナさんだけ知っておられるのはズルいですっ」


「おっ、す、済まん、ナズ。

 既に共有されているかと思っていたがその話はしていなかったのだな?」

「もっ、申し訳ありません、ナズさん。

 私はてっきり、その話はご主人様から直接されているものだとばかり」


「まあそんな訳で、

 あの2人は元々(つが)いにするつもりでパニを身請けした」

「そうなのですね?」


「ヴィーの言葉が片言だしな、同じ竜人族なら色々教え易いだろう」

「そうですね。

 最近はヴィーちゃんも難しい言葉を言えるようになって来ましたし、

 パニちゃんが色々教えているのは良く見ます」

「パニは元々温和な性格のようですし、

 ヴィーにはピッタリな相手では無いでしょうか」


「そうだな、2人からもそう見えているのなら上出来だ。

 問題はヴィーの気持ち次第だな」

「そちらの方は問題ありません。

 ヴィー自身はパニに信頼を寄せておりますが、

 まだその気持ちの理解が追い付いていないだけのようです」


「まだ12歳だしな」

「そうですね」

「そうですよね、ヴィーちゃんはまだ未成年ですものね・・・」


色恋の話になった事だし、イルマの事もついでに言って置こう。

どさくさに紛れて置け作戦である。


「それよりイルマの事だが」

「はい、私は理解しているつもりです」

「覚悟はできております」


「あ、あれ?そういう話は既に共有されているのか?」

「勿論です。私たちの大事な仕事ですので」

「先に順番をお決め頂けるとありがたいのですが」


くっ・・・。

2人の想いが真剣過ぎる。

何でこんな申し訳無い気持ちにならなければいけないんだ。


もう1人愛人増やして良い?

覚悟はできているので、今のうちに順番を決めて下さい。

要約するとそういう事だ。


自分が駄目過ぎる。

覚悟できていますとか真正面から言われると、

2人には情が移り過ぎていて、今更無碍に扱えない。


「うーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーーん」


物凄く頭を捻りながら考えだした答えがこれだ。


「風呂は3人で。後はいつも通りだ」

「ええっ?」

「ご主人様がそれで宜しければ私達は従いますが、

 本当にそれでご納得されているとは思えません」


何だかもう、私達は覚悟ができているのに手を出さないの?良いの?

って言われているようだ。

あ、いや、でもなぁ・・・。


ずっと手を出さないでいられるかと言うと、確約はできない。

寧ろ奴隷相手に約束する必要は無いんだと思う。

しかし自分は2人に対してこの世界での標準的な奴隷の扱いをしていない。


「い、いや、ど、どうかな、イルマの気持ちもあるしな」

「ご主人様が私達をどう扱おうが、ご主人様の自由です」

「お風呂には一緒に入られるのに、

 その後のお勤めが無ければ不安になるかもしれません」


う・・・まあ、そ、そうだよな。

矜持を守ってやらなければならないと言う事か。

中途半端に手を出すなよって言う。


──コンコン。


「戻りました。・・・お食事が進んでおられない様子ですが、

 お口に合わなかったのでしょうか?」


「い、いや、そういう事じゃ無いんだ。ちょっとな」

「イルマはどう思われますか」

「イルマさんは何番目が良いでしょうか。今はその話をしておりました」

「ええと、良く分かりませんが、私は3番なのでは?」


えェーーーーーッ!

いきなりイルマに振るのか!

できるだけはぐらかしていたのに。


「ご主人様はイルマにも夜を申し付けるおつもりです。

 現在の所、夜は私が1番でナズさんが2番です。

 イルマは何番目が良いでしょうか?この際ですので今決めましょう」

「今までは、朝は私が1番でアナさんが2番目です。

 私は何番目でも構いませんが、寝る位置はご主人様の左にさせて下さい」

「え、ええっ!?」


「い、いや、そういう話じゃ無くてだな。

 おっ、おい、2人共、何を言い出すんだ」

「いいえ、これは私たちの大事な問題ですのでこの場で決めさせて下さい」

「お食事の準備もありますし、何番目か決めて頂くのは大事な事ですので」

「ええ、と・・・その、私はそもそも病気があるのでは?」


「病気の件はご主人様が何とかするはずですので、

 今はその先の事を話しています」

「イルマさんがご病気を克服されたら、

 イルマさんはご主人様と同室で夜を過ごす事になりますので、

 ご希望の順番を教えて下さいっ」


あー、もうめちゃくちゃだよ。†


どうなってるんだ。

まったく主従関係が機能していない上に、序列も仕事をしていない。


その後もナズとアナがぎゃいぎゃい言い合って、

結局お風呂はイルマ、夜はアナ、朝はナズが1番と言う順番で決着した。

なんてこった。


自分は「イルマの事だが」しか言っていない。

いや、勿論そういう話を切り出そうかと思っていたのだから、

この結果で満足するべきなのだろう。

だが、その過程がおかしい。


居た堪れない気持ちのまま、ボソボソと魚の揚げ焼きを口に運んだ。


「じゃ、じゃあお休み」

「お休みなさいませ、ご主人様」

「イルマもおやすみなさい」

「イルマさんまた明日ですっ」


自分だけが微妙な気分のまま、シュメールの宿屋へ3人で向かう。

しかしその後にアナから猛攻を受けて奮い立たされると、

結局やる事はしっかりやる優柔不断な男に成り下がってしまった。


はぁ・・・人間のサガって奴は。


じゃあもう開き直るしかないのか。

公認ハーレムだ。

うちは3人体制だ。

うっかり色魔を付けて3x2とかしたら全員冷たくなるのでやらないが。


・・・待てよ?

全員既に死後解放だから、朝冷たくなっているのは自分1人だ。


い・・・嫌だよ!

∽今日のステータス(2022/03/01)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv63

  設定:探索者(63)魔道士(38)勇者(27)神官(38)

     道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(35)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv20 1st

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv20 1st

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 聖騎士 Lv19 1st

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv48 1st

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv39 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 冒険者 Lv14 2nd

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv43 2nd

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 僧侶  Lv32 1st

   タクト(-)木の盾(-)竜革のカチューシャ(-)

   耐熱のチェインメイル(炎耐性 空き)

   竜革のミトン(-)竜革のブーツ(-)

   眼帯(++)

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 村人  Lv1  OFF


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv63

  設定:探索者(63)魔道士(38)勇者(27)神官(38)

     道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(35)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv21 1st

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv20 1st

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 聖騎士 Lv19 1st

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv48 1st

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv39 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 冒険者 Lv14 2nd

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv43 2nd

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 僧侶  Lv32 1st

   タクト(-)木の盾(-)竜革のカチューシャ(-)

   耐熱のチェインメイル(炎耐性 空き)

   竜革のミトン(-)竜革のブーツ(-)

   神籬の眼帯(知力2倍 身代わり)

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 村人  Lv1  OFF



 ・収得品

   ハサミ      ×  3   革        ×  1

   羽毛       × 24   鼈甲       ×  8



 ・異世界72日目(昼)

   ナズ・アナ67日目、ジャ61日目、ヴィ54日目、エミ47日目

   パニ40日目、ラテ19日目、イル・クル16日目

   プタン旅亭宿泊2/20日目 シュメ旅亭宿泊2/20日目



 ・ダイダリの迷宮

  25 シザーリザード    /  マザーリザード

  26 タルタートル     /  トータルタートル

  27 ロックバード     /  ファイヤーバード

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