§248 高級品
アレクスムの商人ギルドには幾ばくかの人が集まり出していた。
アナの影を探す。
どうやら商談ルームにいるようだ。
パニも一緒だ。
勝手に入って大丈夫かな?
垂れ下がりカーテンを捲ると、ジャミルもいて3人だった。
「おお、ユウキか。
お前の所の使用人がいたのでこちらに呼ばせて貰っていたぞ。
今話を聞いていた所だ」
自分がテーブルに寄ると、
ジャミルは隣の椅子を回して誕生日席に置いた。
商談と言う雰囲気では無いな、これは。
「そうか、済まなかったな。
だいたいあちらのやり口が判ったので、もう放置で良いと思う」
「そうか、何をお願いしたのだ?」
「ウサギとコボルトだな。
掲示板を見て相場も調べず、
初対面で値段を指定しないで頼んだのが悪かった」
「まあ、そういうやり口の奴は多い。
大体モンスターカードなんて一見さんだからな、
大体ユウキはどこぞのお坊ちゃんかと思われる」
「そ、そうか?そんなに身なりが良さそうな格好はしていないが」
「まず若い、それから話し方や態度だ。
若い探索者なら我々仲買人にはもっと下手に来る」
「そ、そうか。もっと丁寧な口調の方が良いのか?」
「いや、別にどっちでも良いがな。
後は判断するとしたらそれと身だしなみかな。
若い探索者ならもうちょっと服装に拘らないと言うか、
鎧が普段着だったり服もボロかったりするな。
モンスターカードを買うって言うのはそういう連中だ。
或いは金持ちだな、これはもうパッと見て解る。
お抱えのドワーフがいるならもう間違い無い」
「要するに自分は若くてそれなりの言葉使いだから、
大商人の息子程度に思われた訳だ」
「そういう事だ、多少は注意しろよ。
スリや強盗に襲って下さいと言っているような物だからな」
「い、いやあ、アハハ、そうか」
思い当たる節が有り過ぎて何も言えなかった。
アレとかコレとかソレとか。
そういえばミチオ君も大所帯で歩く際は、
ロクサーヌがミリアにフォーメーションの注意をしていたっけ。
護衛をする際の立ち位置がどうのとセリーから説明を受けていた。
身代わりのミサンガがあるしオーバーホエルミング、
今はオーバードライブであるが、
それらのお陰で襲われても安全だと気を抜き過ぎていた感は否めない。
やはりジャーブを前に立たせて行動した方が良い?
もっと前から無警戒であったような気もしないでも無い。
荒野で寝泊まりだとか、無警戒に高額商品を見せて回るだとか。
ヤバっ、ちゃんと考えよう。
今更後の祭りである。
・・・いや、そうでは無いな。
身なりが悪ければ一見と思われて仲買人は吹っ掛けて来る。
身なりが良ければ金を持っていると思われて吹っ掛ける。
結局どのように振舞ったって吹っ掛けて来るんだ。
それは強盗する側にも言える。
安っぽそうに見えれば弱いカモだと思われるし、
お高く留まっていればやっぱりカモなのだ。
じゃあ何も問題無いな。
結局の所自然体で良かった。
「まあそんな訳で共謀されて高値で掴まされそうになっているが、
もう無視して放って置こうと思う」
「そのカードはもう不要なのか?こちらで注文を受けても良いぞ」
「じゃあコボルト3つだな。実はウサギを自分達で出してしまったのだ」
「へえ、やるじゃないか。ちゃんと迷宮に潜っているんだな」
「自分達で使うためだと言わなかったっけ?」
「そうだったっけ?
子飼いのドワーフに色々作らせて合成させていると聞いたんだが」
「自分達が使う物をだな、あれこれ試しているのだ。
丁度うちのドワーフが白銀の槍を作成してな。
それにウサギを付けようと思っていたのだ、
それが完成したら今使っているウサギの槍は売却しようと思っていてな」
「おっ、ではまた売却か」
「今は持って来ていないが、詠唱中断の鋼鉄の槍だ。
幾ら位になる?」
「詠唱中断か!いつもコボルトを付けているから流石と言うか、
これはとんでも無い額になるぞ。
鋼鉄の槍なら終盤まで使えるし、惜しいなあ。
騎士達が動く前だったなら」
「まあまあ、そうそう良い機会なんて巡り合わないだろう?
こちらも現在使用していて重要な武器なのだから、
需要が高まっていると言っても簡単に手放せないさ」
「そうだろうな。
鋼鉄の槍ならば24000ナールで武具屋で売っている。
これにカードを2枚追加するとなると、35万ナール前後だ」
「毎回思うんだが良くパッと出て来るな」
「ああ、計算方法があるんだ」
「へえ、どんな?」
「一般的にカードの成功率は1割に落ち着くと言われている。
10回やったら1回成功だ」
そうなのか、武具にスキルスロットの付く可能性がその位なのだろう。
スロット数が多い高級品ならば、
1/10の抽選が最大スロット数分行われるのだと思う。
確率の計算は・・・判らない。
数II-Bは地獄だった。
大学の受験では確率を捨てて他の問題に集中する事で突破した。
ただ成功率1/10の試行を5回をやって1つ成功する確率は、
5/10でも1/10の五乗でも無い事は知っている。
逆から計算するんだっけ?
はずれの確率が9/10で、5回掛ける。
(ゴソゴソ・・・カルク!)0.59、約6割か。
5スロット武器なら半分がスロット1になりそうだ。
いや待て、それだと大体1割に落ち付く前提がおかしくなるな。
スロット付き装備の抽選確率はもっと複雑な物なのだろう。
そもそも確率の求め方がこの計算式で合っているかどうかすら不明だし、
勉強したのは5年も前の事なのでもう記憶の彼方だ。
「では単純に10回試してみた値段がその値段か」
「そういう事だな。
その時の需要や人気不人気の武器と言う事もあるので、
計算通りに行かない事もある。
逆に特需があれば値段は跳ね上がる」
「まあ、替わりの武器が完成したらその時は頼もう」
「白銀の槍だっけ?そっちが成功したら、
前回出した神籬のタクト以来の大注目商品だな」
「と言うか、高過ぎると売れるのか?
また金持ちに取り次がないといけないんじゃ無いのか?」
「まあ家宝級だな。だが、1本あれば代々使える。
退役した騎士が息子に譲る事だってあるだろう。
魔法を止められる役目であるならば重宝されるから出世間違い無しだ」
「ああ、要するに投資か」
「そういう事だ。その家が代々繁栄するならば、
50万ナール出す者が居ても何らおかしく無い。
ただ、前回のタクトの様な物は流石に相手を選ぶ。
魔法を使えるのは貴族か大金持ち位だからな」
物凄く納得の行く説明を受けてジャミルと別れた。
結局サンドラッドの件は放置と言う事にして、
未入手のコボルトは3枚纏めてジャミルにお願いした。
「では2人もありがとう、帰ろうか」
「かしこまりました」
「はい、では移動魔法を出しますね」
「あ、パニ、振りだけで良い。どうせお前では届かない」
「あ、はい、そうでございましたね」
パニには詠唱の振りをさせて、自力でプタンノラの旅亭に戻った。
「お帰りなさいませ、ご主人様」
ナズが駆け寄って来た。
手には・・・だからその物騒な物を一旦置きなさいッ!
「ま、待て、待てッ、手ッ、手!」
そのまま飛び付いて来るかの勢いだったので慌てて制止する。
ホントに。
ナズの手には鉄の矢が束になって握り締められていた。
要するに成功はしたようだ。
ナズが矢を机に置いたのを確認して撫でてやった。
「成功したのか、良くやった」
「はい、こちらがお釣りです。
石綿は金貨1枚で14個買えまして、
全てを鉄の矢にしたのですが宜しかったでしょうか?」
え、たった14?
石綿、滅茶苦茶高い?
先程付けていたカルクが発動する。
10000÷14=714.3!
1つ715ナール前後。
うわあ・・・、これは運用が大変そうだ。
魔法で折れたりしない事を願う。
「幾つできたか解るか?」
「はい、石綿3つと鉄2つで30本できましたので、120本です」
ならば石綿が2つ余っている事になる。
それも勿体無いので、もう1つ買って来て貰って150本にしよう。
「じゃあ後でまたもう1つ石綿を買って来てくれ」
「いえそれが、それで売り切れだそうで。
次にいつ入荷するかどうかも未定との事です」
ええ・・・何だそりゃ。
よっぽど深層階の出土で、
そこまで迷宮が育っていないと入手不可能って事なのか?
せめて最短で何層から出るか詳しく聞きたかったが、
買い取りカウンターの職員は一般人のようだし、
各地の迷宮でどの魔物が何層に出て来るかは詳しく知らないのだろうなあ。
石綿2個は暫く倉庫の肥やしになりそうだ。
「それじゃナズ、アナ、パニ、折角だからこのまま迷宮に行ってみよう。
鉄の矢の性能を試したい」
「かしこまりました、装備を貰って参ります」
「あ、はい、僕もですね」
3人がラティに装備を出して貰うため隣の部屋へ向かい、
自分は作成された鉄の矢の束をアイテムボックスに収めた。
木の矢と比べて矢羽根はツンツンと尖り、
矢羽根部分が接触しても結構な斬撃を期待できそうな感じだ。
掠っただけでも裂傷を負いかねない。
木の矢より1つ(?)ランク上の鉄の矢が、
中々お目に掛かれないような魔物のドロップ品であると言う事は、
やはりバランスが崩壊している。
木の矢ですら駆け出し冒険者では逆立ちしたって手に入らない材料だ。
大体、ロックバードは強過ぎだ。
早いし遠距離攻撃を持っているし、賢い。
おまけに魔法も使って来るし弱点も無い。
ついでに言えば弓との相性が悪過ぎる。
それを5匹倒して初めて一番低級である所の木の矢が製作できる。
こう言った下級の材料は序盤で集められると言うのが定番だろうが、
やはりこの世界の神様は設定を間違えたと言わざるを得ない。
で?鉄の矢が?
少なくとも66層以降である事は間違い無い。
ベテラン以上で無いと入手できないのだ。
弓が迷宮で使われるはず無かろう。
「お待たせしました、いつでも向かえます」
「わ、私はちょっと待って下さい」
ナズが重そうな鎧を頑張って被っている。
小っちゃい子がブカブカの装備を着るのは何とも可愛らしい。
装着した時点で装備は体格に合せて縮んでフィットする。
このサイズ感は付ける瞬間だけだ。
パニはチェインメイルとダマスカスの兜だ。
兜は物々しいがチェインメイルの方はやや大人し目で、
アンバランス感がかなりある。
見た目で揃えてやるのはまだまだ先になりそうだ。
そういえば、装備の見た目は気にしない世界観なのだっけ?
装備品が鎮具破具でも、装備は性能だけが重要視される。
みんな金が無いからな・・・。
騎士位にならないと見た目での評価は無さそうだ。
「お待たせしました」
向かった先はダイダリ22層、メインの魔物はハットバット。
魔法も火魔法以外に弱点があり、弓の耐久性が試せそうだ。
そしてここのボスには弓が刺さらなかった。
「アナ、ボス部屋はどうだ?」
「残念ながら道中に人が居ます。直接飛ばない方が無難でしょう」
「ではボス部屋まで徒歩だな」
「はい、あの、地図はお持ちですか?」
「あ、そうか。覚えていないのだな?」
「申し訳ありません。
ラティと共に行動する事で、
今後は地図に頼られるのかと思い・・・」
「あ、ああ、大丈夫だ、それで良い。アナの負担が減っているなら十分だ。
ちょっとラティに言って22層の地図を持って来る」
「申し訳ありません」
「謝る必要は無いぞ────ただいま」
「相変わらずお早いですね」
「木簡で管理させているのが良かった。束ごと持って来た」
現在、一番地図の作成枚数が多いのがダイダリだ。
木簡の3つを開け、束が多い物を持って来ただけだ。
22層以外はポーチにしまえば良いだろう。
「で、済まないが読めないのでな・・・」
「あ、・・・はい。こちらですね」
アナはパピルスの束から1枚抜くと、それを手に取って返却して来た。
「もう良いのか?」
「はい、ボス部屋までの道順を覚えれば後は不要ですので」
「それもそうか。では返して来る────ただいま」
「・・・で、では参ります」
出て来たのはハットバットとケトルマーメイドだ。
土魔法が有用であるので即座に道化師のスキルを入れ替える。
サンダーストームとダートストームを唱え、
状態異常耐性ダウンを3体の魔物に掛けて行く。
パニは剣を振ってハットバットを相手にしていた。
オーバードライブを掛けて集中し、ハットバットに2本を当てる。
これで準備はできた。
「パニ、厳しいなら言えよ」
「た、多分、大丈夫ですっ!」
2ターン目の魔法が詠唱可能になるまでを待つ。
その間にナズがハットバットを絡めて叩き落とし、パニに譲った。
「パニちゃん、こちらをお願いしますね」
「は、はいっ!」
と言う事はナズが矢の刺さったハットバットを相手するのか。
勢い余って倒し切らないように注意して欲しい。
「ナズ、そいつは実験に使うので往なすだけにして置いてくれ」
「かしこっ、まりましたっ」
返事は素晴らしいが、今まさに叩き落した所であった。
コウモリの羽部分を踏み付けて捕えている。
言わなければそのまま虐待が始まっていたのだ。
セーフ・・・。
2ターン目の魔法を使用する。
ダートストームやアクアストームで矢が折れない事は解かっている。
恐らくはバーンストームでも燃えないだろう。
鉄と石綿だし。
と言う事で、ウインドストームを使ってみた。
風刃が巻き起こって3匹の魔物に向かって放たれる。
──ヒョォォォォ・・・。
矢が風に靡いて風切り音が響く。
撓っているように見えるが、折れる気配は無さそうだ。
では念のため次はバーンストームで。
ウインドストームが終わるとハットバットは煙となって消えてしまった。
では残ったケトルマーメイドに射掛けてみる。
空を漂う赤い魚体にしっかりと鉄の矢は刺さり、
そんな事は気にもせずに人魚は空中を泳いでいた。
ま・・・まあそうだろうな。
飛行系の魔物は浮力を羽ばたきで生み出しているかもしれないが、
魚の魔物は空中を直接泳ぐ。
魔力がそのまま浮力に変換されている感じだ。
ではバーンストームだ。
──ゴォォォッ・・・。
魔物1匹に対してかなり勿体無い使い方だが、
ボール系の魔法では避けられても面倒だ。
確実に当てて行くには全体魔法の方が良い。
バーンストームのエフェクトは中級魔法の中では一番派手であり、
炎上中はどうなっているのか判らなくなるが、
効果時間が終わり魔物の全貌が再び確認できるようになると、
ケトルマーメイドの腹にはしっかりと鉄の矢が残っていた。
これは良い。
鉄の矢であれば魔法で失わなくて済む。
120本もあれば何とかなるだろう。
・・・待てよ?
ゴーレムの集まる部屋では120本有ってもギリギリであった。
とすれば、もう少し在庫はあった方が良い。
尽きたら木の矢か。
石綿が確保できるまではそうせざるを得まい。
それに鉄の矢が弾かれずに硬い魔物にも突き刺さるのであれば、
戦闘終了まで回収ができない事を意味する。
それは今から検証するとして、
誰かが乱暴に武器で叩き付けたり、
魔物が転倒したりして破損する事だってあるだろう。
木の矢ではもう何度もヴィーとパニに折られてしまった。
戦闘中に矢を損壊しないように魔物だけを叩けとか、
そう云った注文を付ける事は無茶だ。
やはり矢は失う物と考えて運用した方が良い。
失くす事も考えて、やはり200本はあった方が良いのかもしれない。
続いて水魔法であるアクアストームを掛けてみる。
特に見た目上の変化も無かったのでサンダーストームを重ねた。
やはり鉄の矢は魔法では破壊されず、
最後のサンダーストームに依ってケトルマーメイドは煙となった。
アナとパニが魔物から落下したアイテムと共に、
鉄の矢を回収して持って来た。
「ご主人様、どうぞ」
「綺麗な矢でございますね?以前とは違う・・・」
「ああ、さっきナズに作って貰った鉄の矢だな。
今までの木の矢では火魔法や風魔法で破損していたが、
どうやら鉄の矢はしっかり残るようだ」
「そのための実験でございましたか」
「そうなのですね?」
「ボスのパットバットには矢が刺さらなかったのを覚えているか?」
「ええと、そうでしたっけ?」
「はい、覚えております。ご主人様の矢が有効で無かった魔物は、
私が覚えている限りでは他にトータルタートル、シルバーサイクロプス、
そしてレムゴーレムですね」
「今後迷宮の深部へ行くに従って、
木の矢では刺さらない魔物が増えて来るように思う。
その際は鉄の矢を使って行くつもりだ。
しかし効かない訳では無いようだ。
刺さらないと言うだけで、ダメージはあるのだと思う」
「そうなのですね?」
「ああ、一部の魔物がやって来る斬撃で我々が負傷を伴うように、
矢は刺されば負傷を与えているのだと思う。
刺さらなければただのダメージなのだ」
「なるほど、そう言われてみればそうなのかもしれません」
「これで硬い魔物にも負傷ダメージが通ってくれれば良いのだがな」
「その為の実験なのですね?
現在先頭集団はボス部屋に入っております。
移動されるのでしたら好機かと」
「良し。雑魚での実験はもうこれ以上する必要も無いし、
このままボス部屋に行こう」
ゲートを出し、22層のボス部屋に飛ぶ。
先頭グループが交戦中なだけあって、流石に扉までは開かなかった。
22層なのでお供は1匹。
何が出てもナズが取ってくれるだろうし、ボスはアナが止めてくれる。
「パニはナズとお供に当たって見てくれ。
先程の動きはなかなか良かったぞ」
「はいっ、頑張って見ます」
「少しは勇ましくなったな?パニ」
「そ、そんな事ありません、先程から震えが止まりません」
そうなのかと思ってパニの肩に手を置いてみると、
小刻みにブルブルと振動が伝わって来た。
パニも必死だったのか。
「今までラティ達と迷宮に行った時はどうだったのだ?」
「ええっと、ヴィー様が率先して前を取って下さり、
僕は横から囲みましたので安心して戦えました」
「そうか、正面はやはり怖いか」
「もっ、申し訳ありません、恥ずかしながら」
「確かに、盾も無く剣1本で正面を任せるのは厳しかったかな?」
「い、いえっ、僕も戦えるようにならなくてはラティさんを守れません」
「うん?ラティ?」
「は、はい。
あの、ユウキ様は以前、後方で地図を描くラティさんを守るようにと」
「そうか、そんな事も言ったような言って無いような・・・。
ともかくそれは正しい認識だ。だが無茶はするなよ?
みんな怪我が無いのが一番だ」
「はい、承知しております」
パニが安心して戦えるにはやはりスキル武器が必要だ。
現在パニが持つ白銀の剣はナズが作成したスロット無しの残念品。
幸いレシピは判明しているし、白銀の余りもある。
空きスロット付きの白銀の剣を作成し、
HP吸収を付けてやれば多少無茶をしながらも安心して戦えるだろう。
となると、壷式食虫植物か。
ジャミルにお願いしようか。
パニの方向性は決まった。
ヴィーとセットでジャーブのように前を任せられるように。
いや、殿を任せられるようにだな。
──ゴゴゴゴゴゥン。
扉が開き、自分たちの順番が来た事を告げる。
前を行くパーティは無事始末したようだ。
「では行くぞ!」
「「「はいっ」」」
アナが中央へ向けて駆けて行く。
ナズとパニは小さく煙が集まる左翼へ。
自分もある程度近寄って状態異常耐性ダウンを2匹に掛け、
オーバードライブ、サンダーストームとダートストームで2連射する。
お供はハットバット。
ならばナズの独擅場だ。
槍柄で絡み付けて叩き落したら、後は安全にパニと囲むだろう。
アナの動きに注目しながら弓を構えてタイミング良く射った。
オーバードライブ中に2本を番ったので、
手元から離れた矢はゆっくりとパットバットに向けて飛んで行く。
オーバー効果時間が切れ、矢はパットバットにしっかりと突き刺さった。
パットバットはハットバットよりもより空中をトリッキーに動き回るため、
アナも中々手を出せないでいる。
盾を外して隙を作り、急襲を待っているようだ。
そのパットバットも一筋縄ではいかない。
ある程度知能を持つ魔物であるため、
フラフラしてそのタイミングを中々掴ませない。
2ターン目のオーバードライブ、サンダーストーム、ダートストームだ。
そして矢を番って2射2回を放つ。
そこでパットバットはアナに急襲を掛ける。
上手にアナは盾で凌ぎ、そのチャンスで4回突いた。
オーバースキル中はアナの動きが手に取るように見える。
矢は3発が刺さり、1発は掠めて飛んで行った。
「ご主人様、毒ですッ!」
やっぱり黒くて全然違いが判らないが、毒が入ったらしい。
Lv的にはもう余裕な相手なので、今更毒が入った所で嬉しさは薄い。
状態異常ダウンを掛けた手前、5発も当たれば1回は毒になるって事だ。
やはりと言うか、お供を魔法で消してしまった訳で、
手が空いたナズが槍をぶん投げてパットバットを墜落させた。
アナが盾で押さえ付けて3人の蛸殴りが始まる。
「あっ、矢ッ!矢は大事に!邪魔なら引き抜いてッ!」
「そうさせて頂きます!」
「か、かしこまりましたぁー」
ナズは槍なので突く攻撃だ。
矢への損傷は殆ど無い。
アナもサーベルなので、どちらかと言うと突く方が優れている。
矢への損傷は限り無く少ない。
パニは両手剣なので、力任せに振り回す武器だ。
こちらが一番心配だったのだが、
パニが剣を振るう前にアナが矢を引き抜いてこちらに放り投げた。
良かった。
間に合った。
やはり失っても良いやと思えるのは木の矢だ。
鉄の矢は1本が高過ぎる。
ええと鉄と石綿だっけ?
650ナールと715ナール(仮)だ。
それが3個ずつで30本だから、1本あたり65+72ナール。
1本が137ナール。
タコスより高い。
今の所木の矢のストックは十分足りているので、
火魔法か風魔法を使用しなければならないと前以て判る場合にだけ、
鉄の矢を出すようにして行こう。
矢は高級品なのだ。
・・・絶対間違ってるよ、この設定。
∽今日のステータス(2022/02/27)
・繰越金額 (白金貨30枚・利用券2枚)
金貨 35枚 銀貨115枚 銅貨168枚
ナズにお使い 金貨1枚
依頼品 (1200й)
依頼料 1200
お使い釣銭 (480й)
石綿 680 × 14 9520
金貨- 1枚 銀貨- 8枚 銅貨+80枚
------------------------
計 金貨 33枚 銀貨107枚 銅貨248枚
・収得品
コウモリの羽 × 4 コウモリの牙 × 1
・異世界72日目(朝)
ナズ・アナ67日目、ジャ61日目、ヴィ54日目、エミ47日目
パニ40日目、ラテ19日目、イル・クル16日目
プタン旅亭宿泊2/20日目 シュメ旅亭宿泊2/20日目
・ダイダリの迷宮
21 ケトルマーメイド / ボトルマーメイド
22 ハットバット / パットバット




