表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第丗章 道筋
256/394

§243 カモ

サンドラッドの商人ギルドはアレクスムの商人ギルドよりも賑わっていた。


そこは流石首都と言うだけある。

恐らく迷宮産のアイテムだけでは無く、

工芸品や細工品が主たる物なのだろう。


そういった物に囲まれていては買う側の目も肥えるだろうし、

物価は高くなる。

モンスターカードやスキル武器まで高くなっているかもしれない。

自分の頼んだアイテムは幾らになるのか、若干不安になってしまった。


入り口で声を掛けられた商人にイマールを呼んで欲しいと頼んだ。

奥の部屋を案内され、そこで待つように促される。

では彼もまたオークションに挑んでいる最中なのだろう。


そういえば、溜め込んだアイテムもそろそろ売却をしたい。

今日は纏めて売却をしておこうか。


待たされること数十分。

ようやくイマールがやって来た、8日ぶりだ。

こんな顔の男だったっけ?もう既に覚えていない。

覚えているのはエルフだった事位だ。


「お待たせしております。

 ご注文の・・・ええとモンスターカードでしたかね。

 まだ入手できておりませんのでもう暫く掛かります」


「ああ、ではもうそれは良い。

 自分はこの町を立つ事になったので取り下げてくれ。

 未入手ならば依頼料は返却して貰えるんだろうか?」

「えっ、あ、はい、そうですね。

 いや、もう暫く・・・いえ、明日、明日入手してみせますので、

 少しだけお待ち頂けませんでしょうかね」


「しかしもう宿は引き払ってしまったしな」

「明日この時間にお越し頂ければ必ず」


何故8日も掛けて入手できなかった物が明日に入手できるのだ?


意味が解らない。

この仲買人は怪しい。

少なくとも信頼はできそうもない。


頼むのは高額であるはずのモンスターカードである。

無理な買い付けをされて吹っ掛けられても敵わない。

引くべきだろう。


「いやしかしな、ここにはもう立ち寄れなくなるので取り下げて欲しい」

「ではご自宅にお届けしましょう。どちらにお住まいでしょうか」


この国の最高の旅亭を連絡先に指定したため、

懐具合が宜しい世間知らずなボンボンだと思われていたのだろう。

大商人であるには自分の年齢では若過ぎる。


おまけに初対面で無警戒にホイホイと依頼をして来る人物なのだから、

吹っ掛けられるチャンスとでも思ったのだろうか。

それならば此方もそのつもりで意地悪してやろうか。


「そうか、それなら助かる。

 ホドワと言う町に住んでいるのでそこへお願いしたい」

「はい、ホドワですね。

 入手できましたらそちらに使いを送らせて頂きます。

 詳しい住所などは」


「ホドワの外2区、13の2の1だ。頼むぞ」

「はい、初めてお聞きする町名ですが、お調べして必ずお届け致します」


ふぅん。

では来て貰おうか。

船で10日掛けてそこから銀貨7枚支払って頂いて。


・・・無理だろうな。

そもそもどこにある町なのかですら辿り着けないんじゃないかな?

依頼料の800ナールは捨て金で良いや。

どうせこの仲買人は信用できない。


「では頼んだ」

「はい、それではお待ち下さいませ!」


自分が引き上げると言ったから大慌てで用意するのだろう。

或いは既に用意してあるが、

吹っ掛ける段取りがまだ組まれていなかったのかもしれない。


どうせ仲買人同士の決め事だ。

我々一般人では正価での入手もできないし、

真面まともなオークションは成立しない。


サンドラッドの商人ギルドを立ち去り、続いてアレクスムへ向かった。


アレクスムの商人ギルドはもう何度も来ている。

勝手知ったるだ。

受付担当の仲買人からも顔を覚えられたようで、

そのまま商談室に案内された。


そして直ぐにジャミルがやって来た。


ジャミルは誠実だ。

これまで何度も高額な取引をして来たが、

大体はこちらの要望に応えてくれているし、

なるべく安く手に入れようと言う配慮もある。

そして親子揃って2馬力で依頼を回してくれるのは大変ありがたい。


先程の事をジャミルに愚痴ってみた。


「そりゃ怪しいな」


「だろう?だからちょっとこちらも意地悪をしてみた」

「へえ、どんなだ?

 仲買人を相手にして手玉に取る事は難しいと思うが」


「実はな、その仲買人がいたのはサンドラッドと言う国なのだが、

 ここから船で10日も掛かる」

「えっ?・・・ついさっきの話では無いのか?」


「そ、そうだ、ウチには優秀な冒険者が居てな、

 どういう訳かギリギリ飛べるのだ。

 普通は飛べない距離だが極限まで育てば行けるようだ」

「す・・・凄いな。やっぱりユウキは。

 鍛冶ができるドワーフの他に極限まで育った冒険者まで持っているのか」


それは自分です等と言える訳も無く。

全て所持する奴隷達にその能力を被せさせて頂こう。

パニが居てくれて良かった。


「ま、まあな」

「それで、どうしたんだ?」


「ああ。こちらが引こうとしたら、

 自宅に届けるので待ってくれと食い下がって来たので、

 ではホドワの自宅に届けてくれってな」

「鬼だな、アンタ・・・」


「まあ依頼料の800ナールは勿体無いがこれも良い勉強代だった」

「と言うかその距離を往復できるなら、

 俺にもその取引履歴を見せて欲しいな」


「うん?他人でも見せて貰えるのか?」

「競売での取引なら必ず貼り出しがある。

 掲示板を見るだけで、そいつが過去に何を買って売ったか直ぐ判るぜ。

 30日分残っているはずだから書き写して見せてくれれば」


「そ、そうなのか」


そうなのか。

読めないからいつもスルーしていたが、

確かにそういった履歴から判断して商談相手を選んだ方が、

トラブルと言うかぼったくられるような事は無いだろう。


初見で相場調査も行なわないで客引きに捕まった自分は、カモだったのだ。

それに連絡先は高級宿。

そこに宿泊するのだから金持ちの旅行人、つまり余所者ヨソモンだ。

吹っ掛けるには必要十分である。


くそう、やられた。

セリーが仲買人をまるで信用しなかった理由を身に染みて学習した。

そういった意味ではジャミルは良くやってくれている。


多少マージンを取ったとしても、

それを依頼人に気付かないよう上手い事やってくれるならそれで良い。

仲買人だって商売なのだし、儲けなければ食べて行けない。

自分のような世間知らずに見破られるようでは、

あの仲買人は程度が知れるな。


「では明日用意するらしいので、一緒に行ってみるか?」

「面白そうだな。

 でも俺までそんな長距離を飛ばしてしまって大丈夫なのか?」


「強壮剤をたくさん飲ますので平気だろう」

「ヒュー、流石ユウキだな。あ、それで今回入手した分だが」


ジャミルは4枚のカードを並べた。


鑑定で見た所、芋虫が3枚、それからヤギだ。


「スライムは待って欲しい。ちょっと今は高めの推移だ。

 本来はもう少し安く入手できるはずなんで、たぶん時期が悪い。

 コボルトはそっちとセットで良いだろ?」


「ああ、流石だな。ジャミルが担当で本当に助かる」

「こちらもユウキが沢山買ってくれて本当に助かっている。

 こんな良い取引相手を粗雑に扱うようなそっちの仲買人は節穴だな」


「はは、そう言われるとなんだか嬉しいな。

 それからこれらを売却したい」


かつてアナが使っていた、硬直のエストック。

それから決闘用に作らせ、結局一度も使わなかった焔のカトラス。

そしてついこの間拾った耐毒や妨害のスキルが付いた装備品だ。


妨害の銅剣、妨害の硬革鞭、防毒の銅籠手、防毒のブレスレット、

耐毒の木盾、榊のミサンガ・・・である。


「えっ、ちょ、これ全部スキル品かっ!?」


「ああ、そうだ。いろいろ試して色々できた。

 こういった物は纏めて出品した方が高く買ってくれるのだろう?」

「そうだが、流石ユウキ、よく分かってるな。

 ええと、ちょっと防具が混じるので鑑定ボックスに行って来る」


ジャミルは装備品を受け取ると自身のアイテムボックスに入れ席を外した。


ジャミルを向こうの商人ギルドに連れて行くとなるとパニが必要だ。

しかしパニではゲートを開けない。


パニが詠唱をした後、自分がゲートをこっそりと開く事になる。

パニに段取りを説明しておかなければな。

以前アナがトラッサの奴隷商ヨシフ君をパーティに入れた時のように。


「お待たせ、どれも凄いな。妨害と毒だな。

 妨害の方が6つ無いのは勿体無い気もするが、

 防毒が3つとは中々良い」

「だろう?」


迷宮では通路に広がる魔物の関係から、

一度に対峙するのは3人か4人が精一杯だ。

上手く立ち回る事ができる前衛であれば、3つもあれば十分である。


その場合は詠唱妨害の武器があれば、

後列に押しやられた魔物がスキルを使ってもある程度止められる。

全体魔法は防げないが、発射されるような糸や毒攻撃などは、

詠唱を遅延させる事で安全に弾道から退避できるからだ。


拾ったのはダイダリの迷宮24層。

迷宮の下層を渡り歩いて来たパーティの持ち物であった。

それなりに考えられた構成のパーティだったにも係わらず、

彼らはサイクロプス相手に散った。


ある程度装備が整ったパーティでも、

油断すれば迷宮に食われてしまうのがこの世界の条理だ。

ミチオ君はとても慎重に迷宮を進めていた。

自分もそれに倣っている。


多少危ない橋も渡ってはいるものの、

勝算9割9分以上は見積もっている。

油断は大敵なのだ。


「これはもう纏めて出した方が良いな。

 それこそ深部に行きたい探索者が、

 パーティ全員分纏めて一式として買ってくれると思う」


「ではそういう感じで宜しく」

「ああ、これは幾らの値段が付くか楽しみだ」


「それでは明日の昼頃にこちらに来れば良いか?」

「ん?あーっと、そうだな、例の件か。

 物が動く前に知っておく必要があるから、

 出品時間が判ればいつでも迎えに来てくれ」


「解かった、明日の朝張り出しを確認して出品時間前に迎えに来る」

「それじゃあ、また明日な」


と言ってみたものの、自分は文字が読めない。

やはりパニ頼みだ。

ドロップ品や数字だけでも良いので、いい加減文字を教えて貰おう。


少なくともオークションの張り出しが判る位で無いと、

今後もぼったくられる可能性が高い。

帰ったらアナに頼んでみようか。


自分はそのまま徒歩で買取カウンターへ向かった。


食材、装備品の主材料、日用品等を差っ引いて、

3割アップ状態で28644ナールであった。

ダイダリの迷宮を攻略し始めてからの約10日分だ。

1日当たり2800ナールならば、自分は良くやっている。

少なくとも採算は合っているのだ。


暫くは自炊ができない事からも、

食材を売ってしまおうかと考えてはみたものの、

よくよく考えてみれば探索者と勇者合わせて、

優に5千以上のアイテムがストックできる。


無理して売る必要は無い。

また取りに行くのも面倒だし、このまま持っておく事にした。


続いて装備品の売却だ。

拾い物やナズの修練の為に作った物などを含めて売却する。


アレクスムの武具屋は何度か高級品を買った事があるため、

店員は自分の顔を見るなりミスリルメッシュスカートを持って来た。

ミスリルジャケットに対を成すような、スカート状の防具だ。


確かにスコットランド民族衣装では男性でもスカート状の衣装を着るし、

足先まですっぽりと金属製で覆わないスカートは戦場で動き易いのだろう。

しかし残念な事にスロットは付いていなかった。


そんな物もあるのかと言う知識は得たので、

どうせならナズに作らせてスロットを狙った方が良い。

アナの装備の交換候補ができた。


いや待てよ・・・これは腰から足までの防具だから、

現状の装備に被せて着せても干渉しないかも知れない。

では補強が必要になった際には、

防御力アップの為にはスロット無しでも良いだろう。


ただ、やはりここで買う必要は無い。

容赦無く断って、持ち込んだ装備品の売却だけに留めた。


「おおっ、これは沢山ですね・・・。

 これだけの装備品ですと、どなたか迷宮で亡くなられましたかな」

「それもあるし、自分たちの装備の更新分も含まれる」


「左様ですか。中々の装備品も含まれていますので、

 お客様は良い品をお持ちのようです。

 ちょっと鑑定に時間が掛かりますのでお待ち下さい」


店員は奥に一度引っ込むと、奥さんだろうか女性の武器商人を連れて来た。

こういった総合武具店は武器も防具も扱う事になるため、

家族でその役割を分担させた方が良い。

他人へ頼むとそれだけ手数料が掛かるようになる。


トラッサでも店構えは2つに分かれていたが、夫婦で武具屋を営んでいた。

ホドワでは老婆と女性の店員だ。

恐らく旦那は別の商売をしているか迷宮に行くのだろう。


蛙の子は蛙、親兄弟家族で商売した方が有利に決まっている。

そういえばジャミルも親子二代、

トラッサの商館のシラー一家もそうであった。


親の商売を継ぎたくなければ探索者に成るしかない。

いや商売の跡を継ぐにしたって、

一度は迷宮に入って探索者のLvを上げないと、

多くの職業では転職が許されないのだ。

その探索者への転職だって、ある程度才能が無ければ許可は下されない。


この世界は弱肉強食。

能が無ければ簡単に足切りが行われる。

そういった意味に於いては、セリーの父親は残念であった。

恐らくは、最初の探索者になる所で躓いたのだろう。


仕方無く身売りしなければならなかったセリーは、

その時父に何を思ったのだろうか。


「お待たせしました。31点の合計で86880ナールですが、

 一度にこれだけの量をお持ち頂きましたので、

 112944ナールへと増額させて頂きます。特別ですよ?」


正価の売却で86880ナールか。


かなりの儲けになった。

全滅したパーティには申し訳無いが、

弱そうなパーティの後を尾けたくなる輩の気持ちは理解できる。


ただこのような高級装備はベテラン探索者達の物だったので、

その後を追うならばそれなりの練度を要求されるだろうし、

そもそもベテラン勢は滅多に全滅などしたりしない。

無謀な探索者どもは低層で消えて行くのだ。


ともすればそういった輩に遭う可能性は今後殆ど無くなり、

迷宮で擦れ違う者たちは紳士的な上位ランカーと言う事になる。

勿論意地の張り合いや扇動などはあるかも知れないが。


・・・思えば遠くに来たものだ。

金貨と銀貨をアイテムボックスへ収め、満足して宿へ戻った。



   ***



旅亭に戻って来たものの、

自室にも隣の部屋にも誰もおらずもぬけからであった。


それもそうだ。

遊びに行っても良いと言った手前、

揃って行動するように言った手前。


錬金研究棟へ顔を出すに当たり、

この町でも何か手土産を見繕って行こうかと考えたが、

それはまたの機会となってしまった。

どうせ何度も向かう事になるのだから手土産は毎回でなくとも良いだろう。


但しアララビ商会で出荷手続きをお願いするに当たり、

こちらは手ぶらと言う訳にも行くまい。

幸いな事にこの町特産である酒は高級品だと聞いた。


なあに、珍品で気を引こうとかそういう訳では無いのだ。

ほんの挨拶代わりの品であれば極上品でなくとも許されるだろう。

既に場所は聞いているので、酒屋に向かった。


中央通りまで歩いて噴水を見て右、そこから3軒目だと言っていたな。


酒以外にも食品を多数扱っているようで、

店先にも箱詰めされた食料品が並んでいた。

アナは値段を聞いて来ると言っていたが、

もう用件を済ませた後だろうか、姿を見掛ける事は無かった。


結局の所自分で買い付けに来てしまった訳で。

アナに頼んだ仕事は徒労に終わる事になってしまうが、

そこはまあご愛敬だ。


「ここで酒を売っていると聞いたのだがー!」


店番は奥の方にいたのか、店頭では見掛けなかった。

大声で店主を呼ぶ。

高級品だと聞いたので、流石にそこら辺へ並べて置いては無いだろう。


「はいよー・・・何だね?」


「自分は遠方からやって来て、この町の宿で暫く世話になっている。

 そこの旅亭員に依ると、ここでは珍しい酒を売っていると聞いたのだ。

 是非見せて貰いたい」

「おぉ、今日は旅行者が多いな。

 さっきも団体がやって来て酒の値段を聞いて行った」


じゃあアナ達だ。

もう既に用件は終わらせ、買い物や観光にいそしんでいるのだろう。


「ああ、その者達は自分の連れだ」


「そうかい、買う気に成ったんか。

 値段だけ聞いてビビッて逃げ帰っちまったかと思ってたぞ」

「いや、値段だけ聞いておいてくれと自分が頼んだのでな。

 ちょっと合流できずに話を聞けていないのだ」


「うん?よく判らんが、買ってくれるなら歓迎だ。

 欲しいのは魚骨酒だろう?

 カメに入った酒なら2千ナール。

 ガラスのビンならビン代入れて5千ナール。

 飲んだ後のビンは300ナールで買い取るからな」


ここでも容器の再利用が行われている。

やはりガラスビンは貴重品だしそうなるのか。


「手土産にしたいのでカメの小さい奴で良い」

「手土産品なら、ちょっと値は張るが大きなビンもあるぞ。

 こちらは骨自体が封入されていて、透けて見えるので喜ばれる」


「と言うと、他の物は酒だけか」

「ああ、そうだ・・・これが普通のビン・・・で、

 こっちが大瓶おおビンだ」


確かに、5千ナールの物は液体だけ入っており薄茶色。

大瓶の方は褐色に濁った液体の中に魚の骨が丸ごとふよふよ浮いており、

見た目にもこれが魚骨酒だと判る。


インパクトがあるのは明らかにこちらだ。

見映がまるで違う。


これを見せられたら酒だけと言う選択肢は無くなってしまう。

相手は大商人で大金持ちなので、

骨酒をお持ちしましたと言ってそれが酒だけだと却って悪印象だ。


これは大瓶おおビン以外の選択肢が無い。


「では大瓶おおビンをひと・・・いや5つ」


リアナさんの旦那は珍しい酒を集めるのが趣味だと言っていた。

酒場で出して貰っても良いだろう。

気に入ってくれれば自分が直販もできる。


1つはルスラーン。

今後も何かと世話になる事があるかもしれない。

次に要求された時用だ。


もう1つはイルハン。

ルスラーンだけに渡すとまた何か言われなけない。


後は何か大きな取引がある際に見せて行っても良いだろう。

ヴィーとクルアチを教育してくれたホドワの商館に送っても良いと思う。

何だかんだで世話になっているし。


「5つもか、凄いねエ。9万ナールに成っちまうけど良いのかい?

 ま、こんなに買ってくれるならちょっとお負けしても良いけどな」


きゅ・・・。

一瓶あたり1万8千ナールか。

3割引きが効いても2万7千ナール引きで6万3千ナール。

1瓶当りで言っても12600ナール


ここでも貴重な酒の値段は大概だ。

フローダルで買った酒もその位した。

金持ちの道楽って奴ぁ・・・。


「一杯買ってくれるのは嬉しいが、1人で持って行けるのかね?」


「おお、そうだ。確かに。

 申し訳無いが4つは旅亭に届けて貰えないか?」

「ああ、構わんぞ、どこだ?」


「そこの道を入って右側にある奴だ」

「はいよ、夕暮れ猫のたまり場亭ね」


何なんだ、そのネーミングは。

直訳するからそうなるのか?

しかし野菜や魚は現地語名であった。

じゃあブラヒム語でもそういう名前なのか。


・・・いや無理やりブラヒム語にするからそうなるのだろう。


「ちなみに、人間語では何と言うんだ?」

「はぁ?人間なら人間族語話せるだろう?」


「いやそれがな、生まれが特殊でちょっと解らないのだ。教えてくれ」

「ふぅん?ベインハルバイン・ハトルだぜ」


ベイン?ハル?バイン?ハトル?


何だか大層な名前で確かに恰好良い。

ブラヒム語と言うか日本語に無理やり直すと、

夕暮れ猫のたまり場とかダサい感じになってしまう訳だ。


「よく解かった。人間語の方がカッコ良いな」

「そうか?何も変わらないが・・・まあ良いや、そこに4つだな」


食料品店の店主に金貨6枚と銀貨30枚を渡し、1つを抱えて店を後にした。


・・・何も変わらないか。

確かにこの世界の人間に取ってみれば、

発音こそ違うものの同じ事を言っているに過ぎない。


シャベルとスコップと土掻きで、

どれがカッコ良いかと言われても困るだろう。

外国語、と言うなればカッコ良いが、

この世界に於いては種族で共通であって世間にありふれている。

珍しくも何とも無い。


やはり異世界、異文化、不思議な感覚の嵐だ。

自分に理解ができないからと言って珍しがっていると、

逆に怪しく思われるだろう。

慣れて行くしかないのだ。

そこは郷に入って素直に従う日本人である。


酒瓶を抱えてシュメールの城門側の旅亭に・・・。

駄目じゃん。

パニがいないと冒険者は自分と言う事になってしまう。


あー、もう。

そういう所が面倒臭いのだ。

この世界。


仕方あるまい、部屋で彼らの帰りを待った。


  *

  *

  *


ベッドへ腰を下ろす前にベッド3つを繋ぎ合わせ、

いつぞやトラッサの宿でやったように3人で寝られる状態にした。


あの時はもう1つのベッドを使用しないと思ったので、

部屋の隅に置いたままであった。

結局それはジャーブが使用した。


今回使用するのはイルマだ。


彼女は手元に置くと決めた。

(・・・だって可愛いし。)


と言う訳で、ベッドはくっ付けない代わりに隣接だ。

これからは直ぐ傍でお仕えして頂きたい。


ガタガタとベッドを動かしていると、旅亭員が荷物を運んで来た。


「おや?お客様、大きなベッドの方が宜しかったですかね?」

「何だ、そういう部屋があるのか?」


「ええと今のようにくっ付けられた3つ分程ではありませんが、

 2つ分程の2人で寝られるベッドのお部屋なら」


つまりダブルが2つの部屋がある訳だ。

ペアのカップル用なのかな?

夫婦2組の探索者だっているだろう。

夫婦3組の探索者だっているかもしれない。


「うーん、これで丁度良いからこれで良いや」

「そうですか、出る際には戻して下さいね」


「ああ、それは解っている」

「こちら、お客様が注文なさった商品が届けられてますので、

 確認して下さい」


旅亭員は2人で来ており、

酒瓶を2瓶を置くと残りの2瓶を取りに戻って行った。

そして合計4本が運び込まれ、

部屋は自宅から持って来た荷物と相まってモノで溢れ返った。


魚骨酒4本だ。

1つは自分が持って来たので5つ並んでいる。

少し隣の部屋に運ぶか。


このまま置いておいても土産物ばかりで困るし、

何ならフローダルで買った酒樽もある。

どうせパニが帰って来ないとシュメールの城門の中には入れないのだ。


魚骨酒1つを抱えてホドワの冒険者ギルドへ飛び、

そこからリアナさんの酒場へ向かった。

∽今日のステータス(2022/02/22)


 ・繰越金額 (白金貨30枚・利用券2枚)

     金貨 12枚 銀貨 47枚 銅貨  5枚


  アイテム売却    (22034→28644й)

   リーフ      ×  1      80

   蜜蝋       ×  7     210

   毒針       ×113     565

   シェルパウダー  ×177    4779

   膠灰:コウカイ  ×100    3000

   苦汁:ニガリ   ×  1      80

   コウモリの羽   ×123    4305

   ニカワ      ×  1      30

   コーラルゼラチン × 34     340

   絹の糸      ×  1      15

   羊毛       × 38     380

   鑄        × 50    1500

   スケール     ×  1      70

   ウサギの毛皮   × 40     400

   スパイダーシルク ×  7     280

   鼈甲       × 80    6000


  装備品売却    (116630→151619й)

  (ナズの成果物)

   木刀       × 3      450

   木の盾      × 1      125

   ワンド      × 1      200

   竜革の帽子    × 1     2500

   エストック    × 1     4000

   鋼鉄の槍     × 1     8000

   鋼鉄の鉢金    × 1     4500

   鋼鉄のステッキ  × 1     3000

   鋼鉄のスタッフ  × 1     3250

   ソーソード    × 1     4500


  (落とし物)

   カトラス     × 1     1200

   鉄の剣      × 1     1000

   銅のステッキ   × 1      400

   ファルシオン   × 1     5000

   銅の盾      × 1      750

   硬革のカチューシャ× 1      500

   鉄の鉢がね    × 1      875

   鉄の兜      × 1     1625

   チェインメイル  × 2     5000

   硬革の鎧     × 1     1375

   鉄の鎧      × 1     1800

   竜革の鎧     × 1     3000

   革のグローブ   × 1       30

   革のミトン    × 1       20

   硬革の籠手    × 1     1625

   鉄の籠手     × 3     4500

   皮の靴      × 1       30

   銅のグリーブ   × 1     1250

   革のブーツ    × 1     1750

   硬革のブーツ   × 1     1875

   鉄のグリーブ   × 3    52500


  酒購入       (90000→63000й)

   魚骨酒(大瓶)  × 5    90000


     金貨+23枚 銀貨+131枚 銅貨+163枚

  ------------------------

  計  金貨 35枚 銀貨178枚 銅貨168枚



 ・異世界71日目(昼過ぎ)

   ナズ・アナ66日目、ジャ60日目、ヴィ53日目、エミ46日目

   パニ39日目、ラテ18日目、イル・クル15日目

   プタンノラの旅亭宿泊1/20日目

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

↑ページトップへ