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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第丗章 道筋
254/394

§241 進言

今朝は久しぶりにぐっすり寝ていたため、

ナズから優しく揺さぶられて目が覚めた。

2人と朝の挨拶を交わした後はのんびりする時間だ。


今日はこの後朝の迷宮、引越し、そしてシュメールの商館に向かって、

ガラスシャーレの出荷の手続きをお願いしなければならない。


彫刻刀の使い方をジャーブとラティに説明して彫らせたいし、

カードを注文しっぱなしになっていた仲買人に、

どうなったか聞きに行かなければならない。


あれから8日だ。

忘れられているかこの国では入手が難しいのか、よく判らない。

ともかくこれまで連絡は無かった。


モンスターカードはジャミルにもお願いしている。

そちらは滞りなく入手済みだろうから、

合わせて受け取りに行かねばならない。

今日もやる事は沢山であった。


「ご主人様、おはようございます」

「おは・・・あいます」


次に起きて来るのはソファで寝ているイルマとエミー。

ジャーブ、パニ、ヴィーも続いて起きて来る。


「ラティさん、起きて下さい・・・朝ですよ、ラティさん」

「あふぁ・・・あにゃ・・・」


パニに揺さぶられてラティも目を覚ました。


家の改修が完了し、

ジャーブとエミー、パニとヴィーへ部屋を与える事になるとすると、

ラティはクルアチと一緒の部屋になる。


今からこの様子ではどうなる事やら。

クルアチが目覚めの良い奴である事を切に願うのみだ。


「みんな起きたな、今日はこの宿の最後の食事だ。

 勿論昼も頼んであるが、その後は普通の旅亭に変える予定だ。

 折角なので良く味わって食べてくれ」


「この様な贅沢なお食事をありがとうございました」

「ありがとうございます」

「俺はユウキ様に買って頂いてとても幸せです」

「お肉おいしかった!アレもっと食べたい!」


ヴィーが原木を指さしてはしゃぐ。

エミーもイルマも「ありがとうございます」と言って頭を下げた。


パニはベッドシーツを直しながらラティに退くよう急かす。

ラティは目を擦りながらヨロヨロしながら立ち上がった。

低血圧かな?


エミーが干していた洗濯物を畳み、

ナズとイルマは木彫りで散らかした木クズを拾って掃除をし始めた。

荷物はパニが整理して片付ける。

持ち込んで使用していたランタンや食器、桶などだ。


ラティはアイテムボックスから各自の装備品を出し、

アナやジャーブと共に装備の手入れを始めた。


・・・皆勤勉だ、ヴィー以外。

と言ってもヴィーに任せられるような仕事が無いので仕方無いのか。

後で荷物持ちとして役に立って貰うのだし、それで十分だろう。

今日は全ての荷物を持って移動しなければならないので。


机の上を空けた辺りで給仕が朝食を持って来た。

ナズとエミーが受け取って並べて行く。


ソースが掛かったラム肉、しっかりと煮込まれたスープ、

サラダにパン、ヨーグルトまであった。

やはりこの旅亭の朝食は重い。

朝からしっかりした肉なんてなぁ。


眠そうにしていたラティはいつの間にか元気だし、

ジャーブもヴィーもガツガツ食べていた。

肉食系で羨ましい。



   ***



「では今日の朝は迷宮に行く。

 今日は昼を食べた後、直ぐこの旅亭を発つ事になる。

 早めに戻るのでナズは宜しく頼む」

「かしこまりました」


「その後は引っ越しだ。宜しく頼むぞ、パニ」

「はい、かしこまりました」


エミーを留守番させ、ダイダリ27層へ向かう。

先日、この階層の魔物は高速に動くのだとアナが言っていた。

と言う事ならば、後衛がバックアタックを受ける可能性は高い。


後衛・・・とは言うものの、

その実態は画板を抱えているため咄嗟の戦闘ができないラティと、

Lvこそあれ戦いには慣れていないパニ、

そして前衛には完全に不向きなイルマである。

特にイルマに至っては怪我をされると非常にまずい。


バックアタックの可能性を極限まで警戒して貰う必要がある。


「アナ、素早く動く敵が後ろから襲って来る可能性を考えて、

 後方の警戒は十二分に注意してくれ。

 特にイルマには怪我を負わせる訳に行かない」

「かしこまりました」

「それでしたら、私が後方の警戒を致します」


ナズが後衛を買って出た。

いや、お前は魔法を止める重要な役割が・・・、待てよ。


遠距離も含めて、魔物のスキル詠唱ならば自分が止める事は可能だ。

特に離れて見ている自分からは全体の魔物の詠唱状態がよく見える。

それに、アナもヴィーも既に詠唱中断武器を手にしている。


と言う事なら困る事は無いのか。

遊撃が1人分少なくなるのでアナの手数は少なくなるかもしれないが、

ここ最近のアナは機動力が上がっているような気もする。

そういえばジョブの性能に移動力の上昇効果があった。


アナのLvが上がるに随って、

パーティ全体が機敏に動けるように成って来たのかもしれない。

では任そうか。


「解った。しかしずっと後方警戒と言うのも勿体無いので、

 ナズは遊撃部隊として中衛に立ち、

 いつでも後衛として身を引ける状態にしてくれ。

 後方へ危険が差し迫るような状況になったらアナは指示を出してくれ」

「「はい」」


「それじゃあアナ、ラティ、頼むぞ」

「かしこまりました」「は、はいぃっ」


ラティが最初に指定したのは十字路を左、

そちらの方が奥行きは狭いのだろう。

そしてその方向に進めば魔物が近いのだとアナが説明した。

即座にラティは後方へ廻る。


その動きに合わせてジャーブとヴィーがアナへ寄って布陣を厚くする。

ナズは自分と前衛の中間、自分の後ろにはイルマ、ラティ、パニと続いた。


「ご主人様、前方に速い魔物が3匹。

 それからタルタートルが居ますが、恐らく接触はかなり後です」


まあそうだろうな。

亀ならば足は遅い。

速い魔物とセットのグループならば追い付くのはだいぶ後だ。


と言うか、魔物のグループってどういう認識なのだろう。

一定範囲内?

じゃあ高速で移動して離れてしまったらグループとして認識しないのか?


魔物の別グループが接触して一塊になった場合、

それらを纏めて1グループとして数えるのは理解できる。

魔物の部屋などでひしめき合っていた際に、

全体魔法は全ての敵に効果を及ぼしていたからだ。


では速度の違う魔物がグループで出現したとして、

移動中にあまりにも離されてしまったとしたら、

分断と言う事も有りそうだ。

そう考えると速い魔物3匹と、

その後遅いタルタートル1匹と言う認識で良いかもしれない。


この階層は未踏破の階層であったため、ラティも出現する魔物を知らない。

そもそも知っていたとして、戦った事が無いはずだ。

ラティは20層までしか行った事が無いと言っていた。


「見えました。相手は鳥です!」


暗くって全く見えないが、アナはこの距離から鳥だと解かったようだ。

ならばロックバードだ。


「ロックバードだ。

 土魔法と詠唱する事なく石を吐いてぶつけて来る。

 速いらしいので翻弄されないように注意しろ。

 パニはなるべく剣で防いでイルマとラティを守れ」

「ハイッ!」


そんな事言っている間に相手は突撃して来た。

ジャーブが急襲を上手くカウンターで往なし、ヴィーは楯で初撃を防ぐ。

アナは盾を構えてロックバードが後方へ抜けて行かないように見張った。


ナズの動きを模倣しているのだろう。

そのナズもアナの横に立ち槍を振って、

後方へ移動しようとするロックバードの動きの邪魔をする。


「ンもー!このぉ!」


ヴィーが素早い動きのロックバードに翻弄されて何度も剣を空振っている。

自分はようやく魔法セットの切り替えが終わった。

何せ今回の相手は移動速度が速いため、準備時間が取れなかったのだ。


これまでセットしていたのは中級土魔法。

ロックバードには耐性属性となる。

加えてこいつには弱点が無い。


お供で出て来る可能性のあるタルタートルやシザーリザードは、

土魔法に弱点があるため同時に出て来られると面倒だ。

ただロックバードだけが速く動いて来ると言う事は、

無理して同時に戦おうとはせず、

分断させて別グループとして戦った方が賢いだろう。


混戦の可能性も考えて道化師のセットは雷魔法、

攻撃手段はサンダーストームの2連撃にした。

合わせてガンマ線バーストを発動する。

オーバードライブ中の魔法3連撃に合わせて矢を放つ。


が、残念な事に自分の弓ではロックバードを捉える事ができず、

2射とも外してしまった。

射出された計4本の矢が壁に当たって散らばる。


「くそっ、速いな!」


もう一度オーバードライブを掛けて弓で狙う。

飛んで行きそうな所を前もって射出してみたが、

ロックバードは空中で急旋回、急上昇、急下降をして全く動きが読めず、

こちらの攻撃を嘲笑っているようだった。


矢が当てられないと戦略的に厳しい。


連続でガンマ線バーストを撃てるだけのMPは無いし、

3連魔法を撃ち切って更に無駄打ちしたオーバードライブの後では、

もう一度オーバードライブしてのサンダーストームも厳しい。

2連射など以ての外だ。


何としても次の矢を当てなければ、それはMPの枯渇を意味する。

仮に次のオーバードライブで外すような事があれば、もう強壮丸だ。


オーバードライブ!


時間経過はゆっくりになったが、

ロックバードの動きは子供が軽く投げたボールのように速い。

これでは通常スピードなら捉える事が厳しい。

そもそも、MPの枯渇で頭がクラクラいて集中を乱す。


当たれッ!

2本をつがってできるだけ集中して2回放ったが、

その全てを外してしまった。


気が滅入る。


自分は元々弓の才能なんて持ち合わせていない。

そりゃあ幾ばくかの練習はしたが、

精々近距離では外さなくなった程度の腕前だ。


基本的に戦闘技術どころか運動センスなんて全く無いし向いていないのだ。

これまでボーナススキルやモンスターカードの力で全てを賄って来た。

限界だ。


い、いや、MPの枯渇だ、これは。

もう沢山だ。

MPに縛られて生きるのは。


無理そうだと考えた時点で強壮丸を飲んで魔法を使って行くべきなのだ。

現にもう既に魔法を再使用できる時間が来ているが、

手がお留守になってしまっている。


アイテムボックスから強壮丸を5粒。

3粒を呑み込んでオーバードライブを掛け、

ガンマ線バーストとサンダーストームの2連撃すると魔物は煙となった。

まだクラクラするので残りの2粒を呑み込む。


「アナ殿の言う通り素早い動きをする魔物ですね」

「アタイ当てられなかった・・・」


「何とか後方へ抜けるのは防ぎ切れましたが、

 これが2匹、3匹となると危ういかもしれません」

「後ろの警戒もありますし、どうしましょうね・・・」


「それよりも今回自分は真剣に弓を引いたが1度も当てられなかった。

 こちらの方が大いにマズい」

「どういう事でしょうか?」

「も、もしや・・・」


ナズは自分の意図する事が判らなかったようだが、アナは気付いた様だ。

ジャーブとヴィーは顔を見合わせている。


「自分が使用している魔法はかなりの消耗がある。

 これまで弓と合わせて使う事でMPを回復しながら使用していたのだが、

 それが全く当てられない」

「と言う事は、ご主人様が魔法を使う事は難しいと言う事でしょうか」

「俺は何とか当てられましたが、

 ユウキ様やヴィーが当てられないのは厳しいですね」

「また暫くは練習の時間をお取りしますか?」


練習か。


確かにこれまで困難があった際は初心へ立ち戻り、

ヴィーやジャーブにはその時間を設けて来た。

だが今回に至ってはスピードの問題だ。


全員がロクサーヌのような動体視力を持っていて、

更に機敏に動けるならともかく、ヴィーも自分も高々数十日の初心者だ。

恐らくあの様子ではナズだってロックバードには当てられないと思う。


練習と言ったって何をどう練習するのだ。

皿でも放り投げて貰ってクレー射撃でもするのか?

飛んで行く方向を予想して射った所で、ロックバードはその先を行った。


いくら動体視力が良くっても、

いくら弓の腕前に自信があっても、

相手にそれを上回る機動力と賢さがあれば糠に釘である。


「練習してどうにかなるような相手では無いよな・・・。

 それよりも遅い動きの魔物と混ぜて戦い、

 MPを補給しながら戦った方が良いかもしれない。

 ロックバードが後ろに行きさえしなければ、

 ヴィーやナズが武器を当てて行く必要は無い」


「なるほど、確かにそうですね」

「では、次はなるべく他の魔物と一緒にいる状態で接触するように、

 歩調を調整してみます」


できるの?そんな事。

あちらさんが高速で向かって来るんじゃあ難しいと思うんだが・・・。

吻合路を使うのかな?


首を傾げながら、先行するアナに合わせて移動する。


「ご主人様、ロックバード4匹とタルタートルです。

 ロックバードは後15秒程で合流します」


そ、そういう事か。

先程見付けたタルタートルの前で待っておいて、

コイツで回復しろって事だ。


「で、ではロックバードが交戦圏内に入るまでヴィーは守りに徹してくれ」

「あいっ」


ターゲットが向くように、ヴィーは1人で突撃して行く。

そして大楯を構えてタルタートルの突撃や噛み付きを防いでいた。

そしてロックバードが目視圏内に入る。


──オーバードライブ!ガンマ線バースト!


クラッ・・・。


先程の使用分が回復しきれていないのだ。

弓でタルタートルを射抜いてMPを回復させる。

6発が当たって満足だ。

動かない的など的では・・・良くもそんな事が言えたもんだが。


もう一度オーバードライブを掛けて今度はサンダーストームを放つ。

ヴィーがタルタートルを取る事になるので、

残る4匹のロックバードは必然的にナズ、アナ、ジャーブが取る事になる。


ジャーブは余裕の2匹相手だ。

アナもナズも1匹を追い回すのに精いっぱいである。

ロックバードのうち1匹はヴィーを狙おうとしているようだが、

ジャーブが急襲するタイミングを計って切り落とす。

加えてジャーブ本人に迫るもう1匹を、

受け流すかそのまま食らって耐えている。


ジャーブの口から防御のスキル詠唱が聞こえた。


素晴らしい。

耐えて味方を守り自己回復する、騎士の正しい運用がなされているようだ。


Lvアップを狙うよりも安全面を考慮した方が良いかと思い、

神官から暗殺者へ変更した。

こうすればサンダーストームで麻痺してくれる可能性も上がるだろう。


状態異常耐性ダウンを併用して用いるので、

1戦闘毎に博徒と付け替える手間が発生する事が難点だ。

残念な事にセットジョブを増やすだけのボーナスポイントは捻出できない。


アナの作戦は功を奏し、

MPが枯渇する事無く2ターン目の魔法を撃ち切った。

無属性魔法で戦ったので魔物は全て同時に煙へと変わる。


「ふむ、今回はMPの枯渇は無かった。

 こういう状態なら何とかなりそうだ」


「ありがとうございます。

 しかし他の種の魔物を混在させる事ができない場合もありますので、

 その場合は如何致しましょうか」


「いや、そこはなるべくで良い。回復薬が無い訳では無いのだ。

 この層に限ってはなるべく出し惜しみ無く使って行くので、

 アナも魔物の調整はできるだけで良い」

「かしこまりました」

「何とかなりそうですね」


「あっ、あのっ!」


後ろで先程からの成り行きを見守っていたイルマが声を上げる。


「どうしたイルマ」

「わ、私も魔法を使用して援護するのは如何でしょうか!」


イルマもこの状況を何とかしようと考えてくれたのだろう。

しかし今の状態で魔法を使われてもLv1、

大したダメージは期待できない。

暫く戦えば経験値倍増ボーナスのお陰でLv20位にはなるだろうが、

それでも自分のMP効率を向上させるには至らないだろう。


イルマ自身のMP量の問題もある。

イルマが魔法を使用できるのが2戦に1度のペース程度であれば、

もうやってもやらなくても同じだ。

もう少しぐっとLvを上げてやってから運用をさせようと思っていた。


「気持ちは有り難いが、今の段階でイルマの魔法は役に立たん。

 後方を警戒する事と手当をしっかりしてくれ。

 現状に於いてはその方が助かる」

「は、はい・・・」


シュンとしたイルマを見るのは忍びない。

自分のために何とか恩を返そうと努力をしている結果だ。


何度も手当てをして助けて貰ってはいるが、

イルマにしてみれば切った張ったの前衛と比べて、

当人は働けていないと言う焦りがあるのだろう。


そうは言ってもLv1の魔法を使用され、

無駄な事を大げさに褒めると言うのも信頼を裏切る行為だ。

もしその事に気付かれたら、関係回復には相当苦労をするだろう。


「あ、あの・・・」


更に後方にいたパニが口を開いた。


「どうした、パニ」

「い、いえ、何でもありません・・・」


「そうだな、パニには言っていなかった。

 もし何かに気付いたとして、その事を言わないのは罪だ。

 提案を採用するかは自分が決めるが、

 選択肢を出す事は褒められる事であって咎めたりしない。

 気が付いた事があれば遠慮なく言ってくれ」


「は、はい。あの、先程の鳥の魔物が嘴で突いて攻撃して来た際に、

 当たると暫く動かなくなるようなのです」


「そうなの?」

「ええっと、そうかもしれませんね。

 俺は何度か直撃を受けていますが、

 その時は確かに逃げられる事無く剣を当てられました」


アナを見るが、アナは首を振った。


「そもそも私は一度も往なせておりません」


ヴィーを見る。


「あ、そー言えばタテにタイ当たりして来たトキブッとばしちゃったケド、

 その時ブッたたいておけば良かった?」


ヴィーのこれまでの運用として、その動きは確かに正しい。


大型で破壊力がある魔物の一撃を往なすためには、

インパクトの時点で押し返さないと体を持ってかれてしまう。

軽めのロックバードでそれをやった場合、弾き飛ばしてしまうのだろう。


「なるほど、受けて反撃か。では狙ってみようか。

 そこを狙って弓を入れるので、矢が突然刺さっても怖がるなよ?」

「はいっ」「分りました」「あいっ」


ナズまで元気良く返事したが、お前は盾を持っていないだろう。


「でっ、では僕も前に出てロックバードを往なしたいと思います」


今の流れで、パニが前線に出ると言い出した。

確かに装備やLv的には全然足りているが、どうなのか。

攻撃を当てようとしなければ、身を守るだけだ。

確かにやり易いと言えばやり易い。


「解った、やってみろ。

 ナズはパニの位置で警戒だ。

 ロックバードが出て来ない場合はいつも通り遊撃をしてくれ」

「「はいっ」」


再びラティが前に出て、アナと順路を相談する。


行き止まりを確認して戻る際に、再びロックバードの群れと遭遇した。

今度はロックバード4匹。


他にMPを補給できそうな鈍間のろまな魔物はいない。

復路なので当然だ、動きの速いロックバードだけが回遊して来たのだから。


前衛にジャーブ、ヴィー、アナが並び、パニがその後ろに付く。

ナズは下がってラティの護衛に専念する。


ジャーブが1匹を斬り払ってパニに送った。

吹き飛ばされたにも係わらず、

空中で体勢を立て直したロックバードがパニを目掛けて突撃する。


パニはキチンと剣で受け止めた。

白銀の両手剣は剣身こそジャーブのバスタードソードより細いが、

それでも身を守れる位には太さがある。


嘴で突っ込んだ状態のまま往なされてしまったロックバードは、

そのままの状態で羽ばたいて止まっているようだ。


なるほど、顔面パンチを受ければ人間だって確かにひるむ。

嘴がガツンと当たれば脳震盪を起こす位の衝撃は伝わるはずだ。

それで暫く停止するのかもしれない。


オーバードライブをして矢を1本ずつ2回に分けて発射した。


2本撃ちはちょっと無理だ。

近距離過ぎてこの距離で正確に当てる練習をした事が無い。

パニに刺さって万が一毒になっても困る。


──トスットスッ。


ロックバードは2本目が刺さるか刺さらないかの時間で再び動き出し、

2本の矢が刺さったまま回遊を続ける。


確かに自分の矢は当たった。


感心している場合などでは無い。

魔法を使う事を失念していた。


オーバードライブ状態でガンマ線バーストとサンダーストームを連射する。

いつもならばこの後はMPを回復させるターンだが、

じっくりパーティ全体を見回して好機を探る。


続いてジャーブにロックバードが急襲した。

ジャーブはかわす事無く直接体に受ける。

そして受けた後に剣で切り払った。


ジャーブでは駄目だ。

撃ち込んだらジャーブまで射抜いてしまう。

耐性があるので毒化する事は無いが、

MP吸収と詠唱中断に依ってジャーブの精神へ支障が出たら大問題だ。


ヴィーも盾が大き過ぎて、往なした後で狙うには邪魔過ぎる。

そもそもヴィーが動き回るのでこれまたヴィーごと射抜きかねない。

とすると、狙えるのはパニかアナと言う事になる。


一応前線としては安定している様なので、

もうこのまま自分もカウンター待ちに徹するしかない。

アナは盾を外してお得意の誘い受けをしているようだ。


だが残念ながらロックバードは口から石を吐き出し、

それが結構な速さでアナの顔面に直撃した。


「ぐっ」

「手当てッ!」


イルマの的確なサポートが入る。

やはり魔法使いをここで試さなくて正解だった。

この戦術では怪我を伴う。


アナがひるんだ隙にロックバードは急襲し、

アナの胸に嘴がヒットした。


やはりそのまま動かない。

アナがサーベルを振り上げて叩き斬ろうとする。

しまった、チャンスだった。


オーバードライブを掛ける。

アナの剣の動きへ割り込むように速射した矢が間に合って、

矢の1本が突き刺さった状態のロックバードははたき落とされた。


そのまま床には叩き付けられず、空中で急反転して距離を空ける。

MPは矢1本分しか回復していない。

いや、オーバードライブを掛けたのだからチャラだ。


せめて3本位当てないと次の魔法運用には厳しい。

だが、タイミングと誰を狙ったら良いのかは理解できた。


強壮丸3つを飲み込んでオーバードライブを掛け、

ガンマ線バーストとサンダーストーム1回を放って再び待機した。


──カィン!


金属音がしたので、またパニが剣身で受けたようだ。

これは頂きだ。


オーバードライブで速射を放つ。

目の前の距離なので集中する必要が無い。

既に矢が2本刺さっていたロックバードは追加で3本目が刺さり、

それが羽の動きを制限するらしく、浮力を失って墜落した。


パニがそれをガシガシと叩く。

矢はボキボキと音を立てて折れた。

あ・・・あーあ。

言っとかないとな。


MPを節約してノーマルのサンダーストームを唱えると、

4体のロックバードは煙となった。


ロックバードの攻略法はパニの観察眼に依って発見され、

無事27層も問題無く攻略ができそうだ。


・・・しかしこりゃ相当に時間が掛かるな。

∽今日のステータス(2022/02/17)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv63

  設定:探索者(63)魔道士(37)勇者(26)神官(37)

     道化師:中土魔法・荒野移動/知力中・知力大(34)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv19 1st

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv18 1st

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 聖騎士 Lv18 1st

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv48 1st

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv39 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 冒険者 Lv14 2nd

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv43 2nd

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 僧侶  Lv32 1st

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 村人  Lv1  OFF


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv63

  設定:探索者(63)魔道士(37)勇者(27)神官(37)

     道化師:中土魔法・荒野移動/知力中・知力大(35)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv19 1st

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv19 1st

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 聖騎士 Lv19 1st

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv48 1st

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv39 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 冒険者 Lv14 2nd

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv43 2nd

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 僧侶  Lv32 1st

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 村人  Lv1  OFF



 ・収得品

   ハサミ      ×  6   革        ×  2

   鼈甲       × 14   羽毛       × 29



 ・異世界71日目(朝)

   ナズ・アナ66日目、ジャ60日目、ヴィ53日目、エミ46日目

   パニ39日目、ラテ18日目、イル・クル15日目

   サンドラの旅亭出発の日 プタンノラの旅亭宿泊1/20日目



 ・ダイダリの迷宮

  25 シザーリザード    /  マザーリザード

  26 タルタートル     /  トータルタートル

  27 ロックバード     /  ファイヤーバード

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