§230 工房
研究棟自体は掘立小屋のような感じでそれぞれが独立しており、
その周囲の小路は綺麗に掃除や手入れが行き届いていた。
花壇があったり背の低い灌木で垣根が作られたりしていて、
外観だけ見ると労働環境はすこぶる良さそうだ。
・・・偏見かもしれないが、
研究者と言う人種はこのような物に興味を抱かないのでは無かろうか。
そもそも研究棟から外に出ている者がいない。
健康的な職場環境で伸び伸びやると言うよりは、
研究に没頭していて全然外へ出て来なさそうな雰囲気だ。
さっきのドワーフはまさにそれを具現していた。
こんな時代なのだ。
労働環境の改善が労働生産性を高めるだとか、
そのような思考には至らないのだろう。
先程言われた通り、4つ目の小屋の前に立ちドアを叩いた。
──ドンドンドン!
「ごめん下さい!」
・・・。
どうせまた出て来るまで時間が掛──。
「はーい、どちら様でしょうか」
出て来たのはこれまた耳が細く長く、
背はスラっと高い金髪の栄える長髪の女性が出て来た。
ええと、ドワ・・・エルフだろう。
ドワーフならこんなに背が高くはない。
鑑定だな。
・ペイルネッタ エルフ ♀ 26歳 細工師 Lv4
ほらやっぱり、エルフだ。
「まずはこの許可証を」
アララビ氏から貰った許可証を女性に見せ、自分の身分を明かした。
「トルキナからやって来た、ユウキと言う。
こちらの工房で作って貰いたい物があって訪ねさせて貰ったのだ」
「へー、お客さんなんて珍しいですね?どうぞ中へ」
案内されて中の様子を見ると、
溶解炉だと思しき場所では背の低い男・・・多分ドワーフが、
一心不乱に吹き竿と呼ばれる空気入れの棒を吹いて廻していた。
奥では割れた屑ガラスが塊りになっており、
危ない物はそこに集められているものの、
全体的にゴチャゴチャとして汚い部屋の印象である。
薪や炭で熱源を取るのだから、
煤が出て来て汚れるのは仕方無いにせよ、
もう少し片付けをしたらどうなのかと思う。
やはり自分は綺麗好きなので気になってしまう。
「ど、どうもっ・・・」
集中している様なので、なるべく邪魔をしないように挨拶をして置いた。
ガラス工房で研究か。
何を研究しているのだろう。
装飾の技法かな?
作業台の上にはガラスの表面に刻んだり模様を描いたりする、
専用の金属具が幾つか置かれていた。
焼きゴテ?・・・じゃないよな、流石に。
専用の名前があるのだろうが、そこら辺は素人なので全く判らない。
「それで、どういった物が必要なんですか?」
「ええと、こちらの工房にいるのはあそこの男性と貴方だけですかね?」
「他には所長がいますね。今は生産棟の方に出掛けてますけど」
「おい、ペー!上げるぞ、ピンサーだ」
「あ、はいっ」
ペー、と呼ばれたエルフの女性は器具を掴んで炉の方に向かって行った。
──パキッ。
安っぽい割りばしの折れるような音がして吹き竿から黄色い塊が外されると、
エルフの女性が器具を使って塊りを優しく挟んで作業台に乗せ、
2人で取り囲んで一心不乱に模様を入れて行く。
次第に塊は黄色から橙色、赤色となり、紫になり、
色々な色合いが混ざったマーブル模様となり、最後には青色となった。
その頃にはしっかりと無数の装飾が入っており、
綺麗な刻印を無数に散りばめたグラスが出来上がっていた。
装飾も多く、しっかりと作られたグラスは煌びやかで美しい。
多分あれを地球で買ったとしても数千、数万の値段が付くような代物だ。
手作業の1点物であればもっとかも知れない。
ドワ―フの男は、刻印が完成したグラスを炉の横にある石の窯へ入れた。
「おう、どうした?」
「あ、ああ、この工房で作って貰いたい物があって、やって来たのだ」
「ふーん?そうは言ってもこっちも暇じゃないんだがな。
と言うか何だ、お前はドワーフの言葉が解るのか」
ああ、これドワーフの言葉だったのか。
と言う事は言葉が通じているこのエルフも、
ドワーフ語を話している事になる。
「え、いや、その。まあ何とか」
「珍しいな?ドワーフ語が解かる人間は所長に次いで2人目だ」
「ええと、その所長と言うのは?」
「ああ、ここの建屋の所長だ。
何か俺たちに作らせたいみたいだが、まずは所長に話を通してくれ」
「ここで待たせて貰っても?」
「おう構わんぜ」
ドワーフの男は椅子に掛けてあった手拭いで顔を拭くと、
机に置かれたコップの水を一気に飲み干した。
この部屋は暑い。
ただでさえ蒸し暑い地域の癖に、直ぐ近くには高温を発する溶解炉がある。
窓は全開で風通しは良いものの、熱気・・・いや赤外線の輻射熱か?
炉自体から7,8メートルは離れているのに顔がジリジリと焼ける。
「一応アララビ商会主、アララビ様からは許可を頂いているのだ。
所長さんが来たら改めて説明をするが、まずは図面を見て欲しい」
「図面だぁ?」
「これですか、へー・・・」
「食器・・・じゃねえよな。こんな物何に使うんだ?」
「錬金術で使用する。
精密に物を熱したり分離したり調合したりするのに必要なのだ」
「するってぇと、お前ェさんは錬金術師かい」
「いや、ただの探索者なんだが錬金の覚えもあると言った所かな」
「面白そうですね、これなんか直ぐにできませんか?ねえバラさん」
バラさんと呼ばれたドワーフは、
エルフの女性・・・ペイルネッタから受け取った図面を見て頷いた。
「どれ、こん位なら別に許可なんか貰わなくても直ぐできらあ」
こちらからでは何の図面を持って行ったかは判らない。
ドワーフの男がガラスの小さい原材料を摘まんで鉄の箱に入れ、
トングで掴んで炉の中に入れた。
あれはどう見てもスケールだ。
以前ボトルマーメイドからいくつか手に入れたが、
使用法が判らなくてウッツに聞いたのだった。
それからスケール以外にも何かを入れた気がする。
鑑定しても「粉」としか名前が出て来ない所を見ると、
あれは科学的に作られた別の何かなのだろう。
錬金術の工房もあるのだと思うし、
スケールだけでは綺麗なガラスに成らないのだと思う。
スケールを溶かして固めたら簡単にガラス製品を作れるのであれば、
貴重品たり得ないのだし、みんなやっている。
その原材料は・・・多分聞いても教えて貰えないのだろうな。
それこそが秘密の錬金技術であり、秘密の細工技術と言う訳だ。
自分は科学には疎く、その物質が何であるかは解りかねる。
しかしそういった方面へ長ける者ならば原材料を科学的に分析し、
あの謎の粉が何であるかを導き出す事もできたのかもしれない。
暫くすると、オレンジ色に輝く液体が鉄の箱を満たし、
バラさんと呼ばれた男が吹き竿で掻き混ぜて1つの塊に起こす。
あっと言う間に形成された物はガラスシャーレだった。
ペイルネッタが加工道具を駆使して器用に輪郭を整え、
熱せられて色が付いていたシャーレの色が透明になった辺りで、
それは炉の横にある石窯に入れられた。
「その窯は?」
「粗熱を取るための冷却釜だ。
ガラスってのはよう、急に冷ますと割れちまうんだ。
ゆっくり冷やしてやらなきゃならん。
女を口説くみてえにな。がっはっは」
先程突っ込まれた装飾が激しいグラスを取り出して、
今度は更にその横にある窯に入れた。
炉からは横に4つの釜が作られており、
順番に入れて行って冷まして行くのだろう。
一番離れた位置の窯から綺麗な取っ手付きのグラス、
ワイングラス?を取り出して机に置いた。
優勝トロフィーを思わせる、豪華な装飾が行き届いたグラスだ。
これもやはりウン万円しそうな逸品である。
「これは凄いな、自分の国では見た事が無い」
「だろう?この街でだって、ここまでの物は金持ちでなきゃな。
隣の国では貴族の御用達って話だ。俺にゃ関係の無い話だが」
「そういう生活に憧れたりしないのか?」
「馬鹿言え、そんな面倒臭くて辛気臭ぇトコに行くなんてまっぴら御免だ。
俺ァここでガラスを捏ねてた方が楽しいんだよ。
煩く言って来る奴もいねぇし飯は旨いし酒は飲み放題だし、
こんな天国他には無ぇよ」
「そ、そうか」
ガラス職人は根っからの職人であった。
こちらのエルフの女性も同じくして、
加工や装飾が大好きでここにいるのだろう。
随分と野暮な質問をしてしまった。
自分だって貴族や金持ちの生活と比較されたとして、
そのような生活が良いかと問われたら2つ返事でノーだ。
まず食事が合わない事がここ数日で骨身に沁みた。
詰まらない見栄の張り合いだってお断りしたい。
そうこうしている間にも、
バラさんはシャーレのガラス蓋を作り上げて木の台に置き、
布で覆うと木槌で叩き延ばして縁を纏め上げ、
平坦にする加工が終わると予熱炉に放り込んだ。
手際が良い。
惚れ惚れする動きであった。
「これは何だ?」
「遠心分離機と言って、グルグル回して液体を分離する道具だ。
そのために、液体を入れる部分はガラスでなければならない」
「どうしてだ?」
「中の物が見えなかったら分離できたかどうか判らないじゃないか」
「液体を分離だと?」
「そうそう、例えば水と油は混ぜてもいつかは2つに戻るだろう?」
「そうだな」「そうですねぇ」
「牛乳はどうだ?」
「うーん、酪なら分離するが牛乳はしないんじゃねぇか?」
「長い間放置してたら腐っちゃいますネ」
「それを強制的に分離させる事を可能にするのがこの道具だ」
「なっ、そんな事ができるのか?」
「でも、何でそんな事できるなんて知ってるんですか?
図面もかなり正確ですし元々どこかに売っている物なら、
わざわざ作らないでそちらに頼めば良いのでは?」
す、鋭い。
流石は技術師。
奴隷たちにするような屁理屈では胡麻化し切れないと思う。
これ程の精密な図面があるなら、もう存在してしかるべきだろう。
「そ、それが、どこにも無いのだ。自分がゆ、夢で思い付いたのでな」
「それにしては沢山ですねえ・・・。
これ何かも、もう用途が最初から決まっているような形状です」
ピペットやガラス管が刺さる加熱用の三角フラスコの図面を見て、
ペイルネッタは訝しそうに聞いて来た。
「用途を限定すると、結局そういう形が最適になるのだ」
「これはちょっと難しいなぁ、まず細いガラスの管だろ?
それをこのガラスのコップに突き刺した状態で穴が開いていて、
尚且つ口を閉じなきゃならねえのか」
「これも難しいですね、口が閉じたガラスコップの底面に栓が」
「でもまあ、何だ。
これらが普通の用途に使われる物じゃねぇって事はよく解った。
お前さんの頭の中はきっと迷宮だ。
俺たちには量り知れん物が詰まってる」
「誉め言葉として受け取って置く」
「何を作りたいのかはもう決まってるんだろ?」
「そ、そうですよ。
これだけの物を作っておしまいでは無くて、
決まった何かを作るために必要なんですよね?」
やはり技術者の追及は厳しい。
言い逃れは多分できない。
有耶無耶と言うのも信用に係わる。
研究棟なんて所にいるのだから、この2人は好奇心の塊だ。
「うーん、ここだけの話にして置いて貰えないか?」
「ああ、構わんぜ。そもそもここは機密の塊だ。
お前さんのような部外者が本来やって来られる所じゃねぇ。
秘密はお互いサマって訳だ」
「仲間が病気なのだ」
「病気ってぇ事は・・・薬か」
「ええっ!?」
「怪我や毒ならギルドの薬で治るようだが、
それでは対処できない病なのだ。何とか救ってやりたい」
「お前さんは、その作り方を知っているんだな。
お前・・・何者だ?この時代の人間じゃあねぇだろ」
「ええっ!み、未来人ですか!」
おっと、曲解されて未来から来た男のような扱いになってしまったぞ。
別の星から・・・とか別の世界から・・・、
と言う発想には至らない辺りがやはり古代。
異世界物語が世に出回っている現代日本とはまた発想が違って宜しい。
現に日本だって、ほんの数年前は不思議な人物を未来人呼ばわりしていた。
NASAなんかは本気でタイムマシンを研究していたしな。
数十世紀後にはこの世界でも産業革命やら細菌の発見、
人権や刑法なんかが整備されるのだろうか。
元々刑罰がスキルやジョブと深く結びついている世界だ。
法律が熟すのは難しいのかもしれない。
医療だって病気を克服しようと言う方向には向かずに、
医療者を増やすために僧侶を強化しようとなる方向性だって考えられる。
「未来人では無いが、あれこれ考えている間にその境地に至ったのだ。
道具も夢か幻か、モヤモヤしている内に霧の中から突然浮かび上がった」
「お、おう・・・」
「ふぅん?」
そういう事にして!
地球だってイマジネーションを起こすような天才達は皆そう口にしていた。
・・・待てよ、彼らが異世界人や未来人では無い証拠が無い。
彼らも夢や研究の境地から導き出したのでは無く、
別の世界から持ち込んだ知識だったのかもしれない。
本当に無から作り上げた偉人に対しては大変失礼であるが、
中にはそういったトラベラーが混じっていてもおかしくは無いだろう。
検証は不可能で、謎は深まるばかりだ。
そうこうしている内に所長とやらが工房に現れた。
工房の所長はウィーバと言う名らしい。
こちらが丁寧に挨拶をすると、あちらも丁寧に返して頂いた。
イチから説明をやり直して、図面を持って来たと告げた。
「・・・と言う訳でこちらの工房を紹介して頂いたのですが、
何とかお願いできませんでしょうか?」
「いいよ?」
軽ッ!
いいの!?それでッ?
ドキドキしていたが、頂いた返事は即答であった。
もう1つ位ハードルを要求されると思ったが拍子抜けだ。
しかし、難色を示さず2つ返事で許可を頂いた事は素直に嬉しい。
きっとこの所長も技術者魂を持っており、
珍しい物や難しい事に対する好奇心が強いのだろう。
「それで、どんな物を作るんだっけ?」
「あ、はい。用意した図面があちらに」
「おっ、済まんな。これですぜ、所長」
「うーん、どれも凄く丁寧な設計図だ。何かを見て描いたのかね?」
先程ドワーフの男性に持って行かれたパピルスを指さして知らせると、
所長はパピルスをぺらぺらと捲って唸った。
「い、いいえ、想像で描きました。
もっ、勿論、何度も描き直して最終的にそうなったのですが」
本当は中高生の時に見た理科室にあった物を思い出しながら描きました。
「そうか、どれも実物が既にあるような存在感だ。
用途も限定されているのだろう」
「きょ、恐縮です」
「それで、このガラス容器の下の方に付いている構造物なのだが」
「はい。器に液体を留めて置いて、少しずつ抜き取りを行うための栓ですね」
「栓?ガラスに?」
「はい、水に濡れても平気である程度柔らかい物が必要なのですが」
「うーん・・・そんな物は流石に無いぞ。
紙や布では染み出てしまうし、
木で作った物を押し込んだら割れてしまいそうだ」
「コルク、と言う物はございませんでしょうか?」
「ポル?い、いや、聞いた事無いなあ。それはどんな物なのかね」
「い、いえ、せ、栓の名前ですかね」
コルク自体は地球の歴史では相当古代から使用されていたはずだが、
ミチオ君が帝国解放会の宴席で下賜された酒や炭酸には、
コルクの描写は無かった。
「コルクみたい」とは述べていたが、
「みたい」だと表現していた訳なのでそれは別物なのだ。
シラーにウイスキーを差し出した際もコルクに驚かれていた。
あちらにも、こちらにも無い。
シュメールやフローダルではどうだろうか。
・・・シュメール産の酒瓶がトラッサでも出回っているのだとすると、
コルクとして使っている素材があれば当然知られる事だろう。
やはり無いのだと思う。
地中海性気候で育つコルクの木は、
ミチオ君達のいるガイウス帝国がその生育環境には適しているはずだが、
広く利用されていない当たり未発見であるか種として存在しないか、
或いは自生するエリアが違うのだろう。
亜熱帯の気候であれば、例えばサンドラッドにはゴムの木がありそうだが、
そもそも論として製品であるゴムは歴史的に浅い。
ゴム紐が未だ存在しない世界なのだし、
そもそも日用品にゴムなんて見た事が無い。
そういえばこれまで瓶に封入された液体を買った覚えも無かった。
一体こちらではどのように栓をしているのだろうか。
ゴム栓やコルク栓は難しそうだ。
とすると、これもやはりガラスで栓を作るしか無い。
栓と言うよりガラスコックだ。
書く物を借りて、コックをデザインしてみた。
ガラスパイプの途中にコックを落とす壷状の穴を空ける。
そしてガラスコックの真ん中に穴を通す。
コックを捻るとコック内の穴とパイプが開通して液体が通る。
ただしこれはコックを落とした状態で、
コック内の穴とパイプの開放部が正確に一致しなければならない。
コック自体もぴちっと嵌り込んで簡単に外れない位の圧着性が求められる。
要するに、非常に精度の高い技術力が要求されるのだ。
「できるかな?」
「ふむ、瞬時にこのような物を描けるのであれば、
やはり貴殿は只者ではありませんな」
「うぉぉい!お前、簡単に描きやがったがこれを作るのはえらい事だぞ」
「栓自体も難しそうですし、それに開通させる穴の位置も・・・」
「お前たち、どう思う?」
「そもそもこの細い管をどうやって作ったら良いか判らんな」
「細長い鋼線を先に作って後からガラスを巻き付けて、
冷えたら鋼線を引っ張ったらどうでしょう?」
「おお、そりゃ良い、じゃあまずはその鋼線からだな。
あっちに作って貰うしか無ェよな」
「このグルグル回す機構物もガラスでは無理だと思うので、
あちらですかねえ」
あちら、とはどちらだろう。
確かにガラス細工だけでは用意した図面の全てを作る事はできない。
金属部品も必要だ。
それらをお願いする工房が「あちら」なのだろう。
困ったな、立ち入りを許可されているのはここの工房だけだ。
プロジェクトとしてはガラス細工に金属細工、
2つの要素が必要となるので別々に許可を貰わねばならない。
「じゃあ私があちらにお願いしてみよう。
まず細い鋼線と、それからこのヘンテコな機構物、
それとガラスの細い壷を立てる台だな?」
「へ、へい。お願いします、所長」
「おねがいしまーッす!」
この所長が「あちら」とやらに話を付けてくれるらしい。
どこまで協力的なのだろうか。
初対面である自分に対しての温情に頭が下がった。
「じゃあそういう訳だから、図面は私が預からせて貰っても良いかな?」
「え、ええ、どうぞ。元々お渡しするつもりで持って来ましたので」
「それではお前たちは残りの器やコップの方を色々試行錯誤してみたまえ」
「はいよっ」「分かりましたぁー」
結局、コックの付いたフラスコ1つ、ビーカーを2つ、
シャーレと蓋を5セット、ピペットを1つ、
そして加熱用フラスコを1つを注文した。
遠心分離器に使うためのシリンダーは8つ、
それらを立てるシリンダーケージは鉄製になるので「あちら」らしい。
遠心分離機のような複雑な機構物も「あちら」だ。
「でまあ、どの位でできそうかな?」
「知るかッ!こっちが聞きてぇよ!」
「まずはやってみないとですねー」
それもそうか。
存在しない物を作らせるのだから、何事も試行錯誤だ。
ズルしてここまでやって来た自分とは違って、彼らは一般人だ。
そもそもジョブLvが高いからと言って、
魔法的な手法で作り出す訳では無い。
「で、では数日置きに様子を見に来るので、後は宜しくお願いしたい」
「おう、分かった。次は手ぶらで来るんじゃねえぞ」
「あたしは甘い物が良いですねぇ」
差し入れを要求された。
技術者と言えども彼らは研究者も兼ねている。
頭を使えば糖分も必要とするのだろう。
散乱しているゴミの中で、乱暴に丸めたパピルスの屑が多い理由はこれだ。
彼らにはもぐもぐタイムが必要なのだ。†
それならばクレープでもと思ったが、
作ろうにも台所が無いので買って来た物で済ます他に無い。
どこで何が売っているのかなんて知る由も無い。
ミチオ君は帝都の露店でカルメ焼きを入手していたが、
そういった簡単に買えるスィーツを探して持って来るべきだろう。
あっ、良い事を思い付いた。
「では次回は持って来るので宜しく」
「酒でも良いからなー?」「楽しみにしてますよー」
所長は出て行ったきりだが、
ここに居ても熱いだけだし、自分ができる事も無いので早々にお暇した。
小屋から出ると外の空気が冷んやりと感じて気持ちが良い。
しかしながら吹く風に心地良さを感じたのはほんの数分の事であり、
帰りの道中を半分程行った頃には湧き出た汗が冷やされてクシャミをした。
∽今日の戯言(2022/01/05)
原作主人公との差異を出すために弓を取る事にしたユウキ君ですが、
弓の表現って実は結構難しいんですよね。
基本はこれ。
「弓で(矢を)射る」
「弓で(矢を)放つ」
文章なんて書くのは初めての経験ですし、
そもそも弓になんて詳しくありません。
ですので思ったように文章を書いて行くと、
かなりの部分で間違った表現が発生してしまいました。
私のよくやる間違いワースト
×弓を放つ
○矢を放つ
私のよくやる間違いセカンド
○:弓を引く
×:弓を射る、撃つ
この他にも
○:的に中る(あたる)
×:的に当たる(あたる)
※「ダメージとして」当たるとか、接触するかどうかなど、
命中の意味では無い使用法ならば当たるでも可?らしい
○:弓が強い・弱い ← 弓を引く強さ(弓力)を話すときはこちら
×:弓が重い・軽い ← 弓自体の重量を話すときはこちら
といったミスがありがちだそうです。
このような表現は誤りだと知り、
150話前後書いた所で遡って修正をしました。
その後は十分理解し気を付けた上で執筆したのですが、
改めて見返してみれば出るわ出るわ、間違いが。
なまじ私などより沢山の小説を読まれている皆様の事です。
私は「異世界迷宮で奴隷ハーレムを」の原作以外で、
ネット小説を見るのは初めてでした。
それも漫画版(それも6巻の発売頃)から作品を知った人間ですので、
原作が頻繁に更新されていた頃を知りません。
そもそもが活字嫌いの人間ですし、
自分が書いた文章を見返すのも苦痛です。
そんな知識の浅い人間が描いている文章ですので、
表現の綻びは作品の質に影響し、
一気に詰まらない小説になってしまうでしょう。
「ああ、この作者、浅いなあ。分かってねえなあ」
あるあるだと思います。
頑張って修正しましたがまだ直っていない箇所があれば、
どしどし誤字報告をお願い致します。
稀に感想で誤字を指摘される方がいらっしゃいますが、
「~なのでは?」と言われましてもどこだか判りませんので、
何卒誤字報告の方でお願い致します。
調べやすいですし、修正しやすいです。
それは感想などでは無いっ!
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