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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第卅章 外国
233/394

§220 悪徳

4人が寝られるベッドに、こちらは3人隣は4人。

今日もナズから揺さぶられて起こされた。


まだ皆眠っている。

ナズとキスをして、待ての牽制をしながらアナを優しく抱き締めた。

そうしないとこの猫忍族の娘は飛び掛かって来る。

雀を狙う猫のように。


「おはよう」

「おはようございます、ご主人様。

 凄いフカフカのベッドで、ぐっすり眠れました」

「ベッドで寝かせて頂くだけでも恐れ多いのですが、

 このような高級品まで使わせて頂き──」


「アー、アー、そういうのはもう良い。

 既にこういったベッドをウッツへ頼んであるから、

 今後はずっとこれだ」

「「ええっ!?本当ですかっ?」」


2人の驚いた声にパニが目を覚まし、

イルマも何事かとガバッと体を起こした。


「い、いや、パニもイルマも、まだ寝ていて良いからな?

 お前たちの朝の仕事は当分無い」

「も、申し訳ございませんでしたっ」

「い、いえ、折角起きましたので、このまま起きております。

 何かあれば私にお申し付け下さい」


昨日はグルシア公国内にある迷宮の場所を聞いた。

ダイダリと何とかブールの外れだと言っていたので、

まずはそこまで行って2つの迷宮に案内して貰う。


一度入りさえすれば何度でもそこに移動できるのは便利だ。

普通の探索者であればこうは行かない。

行ったら行ったっきり、補給が尽きるまでそこにいるのだろうか。

その辺りの事情は実際に行ってみれば判る事である。


迷宮に行く理由は、強壮剤の在庫が心許こころもと無かったからだ。

決闘で、船で、引っ越しで、大量に使用してしまった。

もう残りの陳皮チンピはアイテムボックス内に僅か数個である。

遠志オンジに至っては全て使用してしまったので在庫がゼロなのだ。


迷宮に行くだけならトラッサでも良いのだが、

パーティを組んで移動となるとここからの往復はMPの問題がある。

折角なので遠征がてら、こちらで集める方が都合も良い。

どうせ後30日はこちらにいなければならない。


まずはダイダリの冒険者ギルドへ。

受付で迷宮まで送れる冒険者を呼んで貰う。


「やあ、この辺りに迷宮があると聞いたのだが」

「ああ。まだ見つかって間も無いみたいで、続々と挑む者が集まってるぞ。

 現地まで銀貨3枚だ」


銀貨3枚、結構な距離だ。

少なくともアムルとトラッサ以上には離れている。

それでもここが一番近いと言うならば、この国も相当広い事になる。


チケットを渡してパーティに入れて貰った。


「宜しく頼む」

「それじゃあ行ってらっしゃい、頑張ってな」


冒険者に送られ、ダイダリの迷宮とやらの移動ポイントに出たようだ。


現地はやや泥濘ぬかるんでおり、

移動拠点となる立木や迷宮までの道や人が移動するであろう場所には、

木で作ったの子のような物を敷き仮道が作られていた。


後は見渡す限り湿地だ。

ラムサール条約で保護されるような、水棲生物のパラダイスである。


多少低木が混じっているが、もうずっと遠くまではっきり見渡せる。

これなら迷宮ができれば直ぐに判るだろう。

道らしい道も無いし、大型の生き物らしき影も無い。

陸上生物がいたら良く目立つ。


要するに見付け易いのだ、この国の迷宮は。


それから宿泊施設なのか?

モンゴルの遊牧民がかつて使っていたような仮設の丸テント、

パオのような物が設置されている。


チラチラと覗いてみると、

そこは宿屋であったり救護室(教会か?)であったり、

探索者ギルドの出張所もあった。

看板が掲げられているので判り易い。


これなら多少言葉が通じなくても、

何となく看板や雰囲気だけで生活できそうではある。


武具屋は無かったので、装備の更新をしたい場合は一旦町に戻るのだろう。

商品を陳列する必要があるし、仮設の店舗では大量にしまって置けない。

そもそも防犯上宜しくないので盗まれたら大変だ。


冒険者ギルドの出張所には掲示板も設置されていた。


町のギルド本部と連携して、依頼票をこちらに持って来るのかな?

冒険者ギルドの出張係なのだろうか、

椅子へ座って呑気に飲み物をすすっていた。


驚く事に、こんな所でも最低限の生活を送れる拠点が作られていた。

探索者もギルドの連中も、みんなたくましい。


迷宮の前には探索者の案内人だ。

日避け用天幕の柱にもたれ掛かって欠伸をしていた。


「済まないが、現在の攻略階層は?」

「まだ見つかったばかりだから26層だよ」


「大体どの位で討伐されるものなのだ?」

「うーん、早けりゃ1半年もあれば無くなるんじゃないかね?」


「結構遅いな?」

「みんながみんな討伐できる強さじゃないからな。

 あまり早く討伐し過ぎても若いのが育たないから、

 本気で攻略しようと思ってる奴はのんびりよ。

 最終層が見付かってから、ようやく動く奴が殆どだ。

 皆死に急ぎたくないしな」


「良く解らんな?褒章が得られるのならば、皆急がないか?」

「どこが最後か判らんだろ?」


「ああ、そうだな」

「そうすると最後のボスで大量の武器が必要になるから、

 そのボスに合った最適な武器を発注する」


そうか。

迷宮最後のボスが武器を破壊して来る事は、

この国では広く知られているのか。


どこが最後か判らないのであれば、

そこで帰って来る者がいなくなって噂が広まり、初めて確定する。

その後、そのボスに合った武器を大量に買い込んで討伐を目指すのだろう。


「じゃあババの抜き合いだな?」

「あん?婆さんが何だって?」


「い、いや、何でも無い。

 最初にうっかり最終ボスと出会ってしまったら大損だな」

「大損どころか帰って来ないからもう良いんじゃないのか?

 だから本気でやるつもりが無ければ49層を過ぎたらゆっくりよ」


「な、なるほど。

 では、フライトラップが出る階層をお願いしたいんだが」


「フライトラップぅ?倒しても実りは少ないぞ?

 薬学ギルド員でないと薬草は作れないし、

 持ち込んでも作って貰える訳では無いからな?」


「自分はその辺りの敵でやっとなのだ。楽に修業を積みたい」

「ハハーン、レベルだけあって剣術に自信が無いのか。

 いるんだよなあ、そういう奴。それで1人なのか。

 大怪我する前に程々にして置けよ?」


「ゥオッホン。良いから宜しく頼む」

「わ、分かったよ、フライトラップなら17層だ。

 出る敵はフライトラップ、ピッグホッグ、サラセニアだ。

 稀にトロールも出て来るが、本当に稀だからな?肉しか売れんぞ」


「ああ、宜しく。銀貨17枚?」

「お、おう・・・そうか。まあ、頑張ってくれ?」


探索者の男に金を払い、無事フライトラップの階層に案内された。

そのまま直ぐ横の壁へ向かってワープで宿の壁掛けに戻って来た。


既に朝食は用意されており、皆ちゃんと起きて待っていたようだ。


「やあ、遅くなって済まない。早速食べようか」

「いいえ、滅相もありません」

「ご主人様をお待ちするのは当然の事ですので」


「俺たちの事はお構い無く!」

「うーっ、うーっ!」


よく見るとヴィーの両手が椅子の後ろに組み敷かれて、

ジャーブとパニに依って押さえ付けられている。

済まないな、2人とも。


「よし、では頂きます!」

「あ、っはい。いただきます」

「お先に失礼致します!」(こくっ。)「えっ?あの・・・」


ヴィーは挨拶をせず、ジャーブの手が解かれた瞬間にかぶり付いた。

我慢の限界だろう。

朝から肉料理、薄切りのロースト肉にカットされた柔らかそうなパン、

新鮮な生野菜にソースが掛かっている。

さしずめドレッシングだ。

この世界にもこうして食べる文化があったのかと今更に感心した。


うーん・・・庶民向きでは無くて、やはり貴族の美食と言う事なのだろう。

あるにはあるけれど、広まっていない。

だから文化「小」なのだ。


ポーチを置いて手拭いで手と顔を拭き、

ようやくソファに腰を落とした。

アナとナズ、イルマだけは自分が着席するまでは手を付けなかった。

律儀だなあ。

そういう所がこの3人は可愛い。


テーブルの方は皆黙々と食べているのか、戦場になっている。

パンは1人1つでは無く、

真ん中のバゲットボックスから幾らでも取れるスタイルなので、

早速ヴィーは両手で持って交互に食べ始めた。

宜しくない・・・。


「おいヴィー、パンは1回で1つだ。食べ終わってから次を取れ」

「あっ、あいっ!」

(ほらヴィー様、やはり怒られました。次はいけませんよ)

(へーい・・・)


「食事が終わったら迷宮だ。

 この国の迷宮を教えて貰って来たので、そこに向かう。

 と言ってもアイテムの補給なので、気楽に行こう。17層だ」

「「かしこまりました」」「分りました」「おっ久しぶりだ!」

「ええと、僕もですか?」「私もですよね?」

「ききき緊張しますね、あっ、新しい迷宮はっ」



   ***



パーティを1部と2部に分割させる。


メインである自分のパーティには、

ナズ、アナ、ジャーブ、パニ、イルマを加える。

サブパーティにはヴィー、ラティだ。


ただしこの構成では一度に迷宮へ移動ができないので、

まずはヴィー、パニ、ラティを連れて先程の移動ポイントへ。

一旦ラティには17層を覚えて貰うために迷宮へ突入する。

パニには立木を覚えて貰ってパーティを解散し、自分だけ戻って来た。


残りのメンバーを迎え入れて再び移動する。

フィールドウォークならば殆どMPを消費した感じがしない。


ラティに第2パーティを作らせ、ヴィーを加えさせた。

これで準備完了だ。


実働的には全員で移動するが、ヴィーとラティだけ経験が入らない。

ラティは急いで育てる必要が無いし、

ヴィーは上級職への解放条件がまだ良く解っていない。


ジャーブは騎士が50Lvを越えており、

何らかの条件を満たしたのだろう、聖騎士に就ける事が出来た。

依って経験値的に実りがある低Lv組と、

実りが少ない高Lv組に分けた形だ。


ラティはアイテムボックスの事もあるので、

暇を見て少しずつ育ててやれば良いと思う。


「ではアナ、探してくれ」

「かしこまりました、この階層はあまり人が居ません。

 ボス部屋までは時間が掛かるかと思います」


「大丈夫だ、ラティと相談しながら進めてくれ

 なるべく多くの魔物を倒したい」

「かしこまりました、探索と攻略、両方を目指して進みます」


やはり実りが少ないと言うだけあって人は少ないらしい。


確かに極稀にスズとたまに豚バラ肉では、

ここで寝泊まりが必要な駆け出し探索者には厳しいだろう。

1つ下の豚バラばかりを狙うか、

ここを飛ばして次へ行きたくなるのは想像できる。


我々と違って彼らには生活が掛かっているのだ。


我々の探索は、戦闘もへったくれも無かった。

こんな事ならアナとラティだけ連れて来て、

後はパーティに入れるだけの状態で良かったかもしれない。


途中からジャーブとヴィーはパニとイルマを連れて、

別部隊として逆方向に進んで行った。

暇だったらしい。

そういえば、ヴィーは久しぶりの迷宮に喜んでいた。



   ***



「そろそろお昼ですよ?」


ナズからお声が掛かり、午前中の探索を中断した。


ジャーブを探して合流し、迷宮から直接旅亭へ。

ラティとヴィーはパニを加えた後一旦外に出て、

パニのフィールドウォークに依って旅亭へ戻って来た。


アナとラティの力を使ってボス部屋へ一直線に向かい、

アニマルトラップを半日掛けて倒した結果、

陳皮チンピはアイテムボックス1枠を埋める事ができた。

と言っても魔法で一掃しただけである。


ジャーブからもアイテムを回収し、

豚バラ12枚と附子ブシ7個、遠志オンジ20個を受け取った。

これで強壮丸の在庫はかなり安心できる数となった。


今回、壁掛け布を用いてパニのフィールドウォークを使用させた事で、

改めて気付いた事があった。


自分のパーティだけで移動するのであれば壁掛け布を用いる必要は無いが、

同時に複数名を移動させるとなるとやはりパニは居た方が良い。

面倒事は最初の1回だけで済む。


そしてこの部屋に掛け布を設置した事で、

ここにいる9人のうちの誰かが冒険者であって、

移動魔法を使用して帰って来たと言う口実が成り立つ事に気付いた。


トラッサの旅亭に宿泊した際は、ワープで部屋to迷宮を行うと、

「彼らは外に出ずに何をしているのだろう」

と言った不信感を抱かれないかと不安に思ったが、

冒険者であれば移動用の携帯布を持っている者がいたっておかしくは無い。


冒険者が居れば最初から部屋から出なくても変では無かったのだ。


その冒険者と言えば、当然パニだ。

何も無い部屋にワープで帰って来るのとは訳が違う。


やってみて気付く、この世界の条理。

行ってみて感じる、この世界の広さ。


始めはただミチオ君に憧れて、

別世界でのんびり暮らしたいと思っただけであったが、

この2ヶ月で色々な経験をした結果、

もっとこの世界を知りたいと思うようになって来た。


勿論厳しい戦闘や決闘、荒野での野宿はもうノーサンキューであるが。


その後は部屋で皆とダラダラしているだけであったが、

扉がノックされると4名の給仕が次々に昼食を持って来た。

昼食にも関わらず、シルクスで出た夕食と同じ位の豪華さである。


昨夜の夕食では鳥の丸焼きが1匹出て来て目の前で切り分けられたし、

どうなってるんだこの旅亭は。


そんな贅沢、日本にいた時ですら経験した事が無い。

昼から分厚いステーキなんて、・・・う、旨い。

10日もこれか・・・。

贅沢は敵だと言って置きながらこの体たらく。


皆、絶対勘違いしたと思う。

ユウキ=フジモトは金持ちであると。

いや確かにあぶく銭で小金持ちと並ぶ位の貯金を得てしまったが、

毎日贅沢をするとなると話が違うぞ。


ホドワの自宅へ戻った際に、食事に付いて文句が出ない事を祈る。



   ***



食事後は自由時間とした。


乗船する際パニには金貨4枚を渡していたので、

全員分の当面の小遣いだと言って共有させた。

各々(おのおの)昨日見付けた珍しい物を狙ってパニの下へ集まった。


皆揃って買い物に行く事で話が纏まったらしい。

必ず鍵を掛けてから出て行くように言って置いた。


自分は掛け布からシュメルディハナイの冒険者ギルドへ飛ぶ。


今から自分は、自分にしかできない事をする。

今日は行ける所まで行ってみようと思っていたのだ。

午前中の迷宮探索は単純にMP回復薬の在庫が心許こころもと無く、

安心したかっただけに過ぎない。


強壮丸や強壮剤が、或いはその材料が、

アイテムボックスにぎっしり詰まっているだけで心が落ち着くのだ。


これでは危ない薬をやっている人みたいだが、

実際MPが切れると本当に精神までおかしくなるので、

回復薬の量は多ければ多いほど良い。


補充の目処が立ち、こうして在庫が潤沢である事は、

精神的安らぎを得るに十分足り得るのだ。


いやだから、益々危ない薬をやってる人の言い訳のようだが、

そうじゃない、そうじゃないんだ。


言い訳がましく否定しながら、初心を思い出す。


ここまでやって来た理由・・・。

エミーの治療薬を作成するために、ガラス器具を買い付ける。

その為にはシュメールへ行かなければならない。


シュメールに付いて、冒険者ギルドの飛ばし人に聞いた。


このシュメルディハナイと言う街の由来はもうそのまま、

シュメールに近いからその名が冠されたようだ。

シュメールの近く、だからシュメルディハナイ。


ディハナイは近いって事?

ディは接続語でハナイが近く?

現地語は良く解らない。


シュメールは、ここサンドラッドとは別の国らしい。

通行料・・・と言うか通行税は無いようだ。


新しい国に飛ぶのだから地理は押さえて置いた方が良い。

その国から来た、いやその国を知っているのだと、

初対面のナズやアナにはそう説明した。


行ってみて驚いた素振りを見せると言い訳が付かないし、

何かしら聞かれて答えられないのはまずい。


シュメールの属する国は3国で成り立っており、

シュメール・ドラッハ・フローダル、

これら3か国の連合王国として成り立っているとの事だ。


では、その3か国全てを回って置きたい。

無知では困る。


シュメールは職人の国らしいので、色々制限があっても困る。

例えばペルマスクのようにインテリジェンスカードのチェックがあるとか、

移動魔法が使えない前提だとか。


受付で紹介して貰った冒険者にシュメールへ送って欲しいと告げた。

銀貨6枚を要求されたが、チケットで支払いを行う。


渡すと彼はニヤニヤしていた。

気味が悪い。

何やら企みを感じたような気がする。


送られた後パーティは直ぐに解散される。

冒険者の男は付いて来なかった。

行って来い、責任は取らない、と言う無言の圧力だ。

以前トリアに送って貰った時のような。


その時は冒険者が気を使って制止をしてくれたが、

ここはまるで罠に嵌めるかの如くの態度だった。

そのままこちらの冒険者にドラッハへ送ってくれと頼んだ。


「いやぁ、済みませんねえ。

 ここからはシュメルディハナイへしか飛ばせない決まりなんで」


・・・ん?


「ではこの国の者は困るだろう?」

「いいえ?この国の住民ならばココには用が無いんで」


「そんな訳あるか、ここは職人の町なのだから商人だって来るだろう」

「いいえ?

 この国の商人であれば皆冒険者を雇っているはずなので、

 益々ココには用が無いですなぁ」


そういう事かっ。


ここは事情を知らない外国商人をめるトラップギルドだった。

ここに連れて来られ、金を払って送り返される。

再び金を払わないと他の国には行けない。

払い損だ。


そしてそれは、

外国商人ではこの国の職人と直接取引ができない事を意味する。

二重にぼったくっている訳だ。

阿漕アコギな真似を。


だがこちらは冒険者のジョブを持っているし、何だったらワープで帰れる。

元々3ヶ国を回るつもりだったので、

こんな悪徳商売をするギルドには用が無い。

自分でゲートを開いてシュメルディハナイに戻った。


そしてあの男だ。

ニヤニヤしている。

くそっ、こいつへ2回も金を払うのは癪に障る。

元々別の国にも行く予定だったので本来は損した訳では無いのだろうが、

悪徳商売をしており、

自分を嵌めようとした奴には1ナール足りとも払いたくない。


しかしここで頼まないと、

恐らく他の冒険者ギルドからだって飛ばせないのだろう。

そういう取り決めだ。

あちらの国とこちらの国で。


怒りを抑えてドラッハに飛ばして貰った。

やはり一瞬でパーティを解除される。

三重にイラっとした。


この国ならば関係が無いだろう!


チケットを使用しているので実際に金を払った訳では無い。

しかしたとえ無料チケットであろうとも、

このシュメルディハナイとシュメールで取り決められたセコイ協定に、

もう2度と関わりたくない気持ちが湧き上がった。


対抗心が芽生え、ドラッハからフローダルへ飛ばして貰う事にした。

ギルドで飛ばし人を呼んで貰いフローダルを指定し、銀貨6枚を支払う。

結局の所、貰ったチケットを使用できないので実質的には損だ。

だが心情を優先した。


取り敢えずこれで3か国制覇だ。


フローダルは自然が豊かに溢れる町らしく、

大通りを外れるともう叢、その向こうには森林が広がっていた。

草木が多いならば食べ物や水には困らないはずだ。


町は道が緩くカーブしており、

どこまで行っても同じように左周りのカーブである事から、

この町は何かの円周上に作られているのだろうと推察される。

中心は城か何かか?と思ったら王宮自体は右手側に現れた。


2階建ての佇まいで巨大に作ってあるが、要塞感はまるで無い。

平和な国の緩く優しい国王、そんなイメージが持たれた。

いや、何も知らないんだけどさ。


ではこの円状の道路に囲まれた中央は何であるのか、と言う疑問が湧く。

巨大な城なんかであれば良く目立つが、

中央方向には目立った建物が見られない。


小道を挟んで再び円周道が広がる。

直線でそのまま中心部には行けないようで、

レンガを積んだようにジグザグと歩かされた。


何故だろう?

そこには必ず理由がある。


そして5つ目の円周道を曲がると、

そこには大きな湖と、その向こうに島が見えた。


そうか、ここは巨大な湖を中心とした街だったのだ。

中央に見える島は、人工的に作り出したとしては巨大過ぎる。

元々在ったのだろう。


と言う事は、ここは地理学的に言うとカルデラなのだろうか。

阿蘇山や鹿児島湾のような地理構造が、

この円周道を物語っている。


中央の島にも行ってみたいが、あちらには住居のような物が無かった。

本来ならばここで通行人に聞けば良いのだろうが、

生憎あいにく人間語が判らない。


獣人はこれまで見掛けておらず、その代わりにエルフが多かった。

元々はエルフの集落だったのだろうか?

彼らは自然を大切にする。

中の島が神聖な場所だとしたら、

おいそれと観光には立ち入らせて貰えなさそうだ。


結局の所、中央の島を守るようにこの国の外周が形成されていた。

疑問が解消されて、元来た道を戻りながら街並み観光を楽しんだ。


ええと、元の道は何本目だったっけ。

4本目位の外周路に戻って来たが、

どこも似たような感じなので今一理解が及ばない。

迷子、とするのはちょっと言い過ぎだが、似たような風景に脳は混乱した。


間口が大きく開かれている建物を見付けたので、

あれが冒険者ギルドなのだろう。

そういえばここから出発した際、建物や周囲を確認せずに出てしまった。

反対側を振り返ると、そういえばこんな感じだったなと思い出す。


「済まない、この国は初めてなのだ。色々教えて欲しい」

「商人の方ですか?」


「そう・・・だな。何か買い付けに来た訳では無いが、

 色々珍しい風景なので詳しく知りたいんだ。湖や島の事なども」

「そうですか。

 湖では観光船が出ていますので、島が気になる方は皆乗られますね」


「あの島には行けないのか?」

「あそこに立ち入れるのは農民ギルドに登録された方のみで、

 中央島は全て農地です。

 魔物や野獣も湖があるので入って来ないため、

 高級食材を作っているのですよ。

 そのため中央島へ上がる事に関しては厳しく制限があります。

 外国の方ですと、まず無理でしょうね」


へ、へー。そうなのか。

勝手に上がった所を見付かったら厳しく処罰されかねない。

観光船とやらで見るに留めるか。


「特産品は?」

「麦などの穀物や、中央島で取れた高級果実、後は酒なども」


酒っ!


そういえばルスラーンから頼まれていた。

買って帰らなければ身持ちが危うい。

入隊的な意味で。


  ──酒1つ買って来れない商人なんか辞めろ、うちの隊に来い!


くわばらくわばら。


「酒は外国人の商人でも?」

「はい、ここからずっと先に行くと王宮がありますが、

 そこから更に同じだけ行った所に酒蔵がありますので、

 是非買い付けて行って下さい。

 この国自慢の酒が流行れば我々に取っても喜ばしい事です」


物流が盛んになれば、冒険者が必要となる。

特に酒など、割れ易い物を扱うには何日も荷馬車では困る。

高級酒ならば尚更だ。

風が吹けば桶屋が儲かるし、酒が売れれば冒険者が儲かるのだ。


「解った、ありがとう。それからこの国の迷宮はどうなのだ?」

「迷宮ですか?」


「討伐したら怒られたり、逆に報酬が貰えたり、

 国に依ってまちまちなのだが・・・」

「そういう事ですか、エリオン連合の3国では討伐報酬が得られますよ。

 ただしドラッハの街中央にある迷宮だけは別です。

 職業訓練も兼ねているので、33層までしか許可されておりません」


「と言うと?」

「迷宮が全て討伐されてしまうと職に就く事が困難になりますので、

 ドラッハは街の真ん中に迷宮ができた事もあって保護されております。

 荒野にあるより町にあった方が駆け出しの方が鍛錬し易いですからね」


「それは解るが、職業訓練って?」

「ええと?ドラッハに付いても説明しましょうか?」


「あ、ああ。頼む。トルキナから来たばかりで、右も左も判らないのだ」

「トルキナ!随分遠くから来られましたね。

 銀貨18枚払って更に船で10日とか。

 良くここまでお越し下さいました。

 その様子だとシュメールでは洗礼を受けましたでしょう?」


「ああ、旅費をぼったくられたぞ。

 ああ言うのは却って良くないと思うんだが」

「それだけ外国の商人に来て欲しくは無いと言う事なのですよ。

 フローダルはそんな事ありませんので、

 ぜひ国に帰られましたらフローダルの農産物の宣伝を!」


売り込みが激しい。


トラッサやホドワではこの国の名前を聞かなかったので、

知名度的には低いのだろう。

全てシュメールに持って行かれている。


酒に自信があるのならばもっと前面へ押し出して・・・。

そうか、入れ物を作るのはシュメールだからシュメール(ビン)

シュメール産になってしまう訳だ。


「それでドラッハなのだが・・・」

「おお、そうでしたね。ドラッハは鉱山の町です。

 そこで取られた天然の鉱石がシュメールに運ばれて、

 職人たちの手に依って加工されます。

 鉱夫が多いので、その職業訓練のために迷宮が必要となる訳です」


「と言うと?」

「鉱山に入れるのは体が頑丈な種族やジョブでなければ」


「そうだな」

「製品を運ぶには冒険者でないと」


「確かに」

「貴重な鉱石を運ぶには荷馬車となりますので護衛が必要です」


「それもそうか」

「落盤事故もありますので、手当てができる者も必要です」


「なるほど」

「そういう訳ですので、ドラッハの迷宮だけは保護されております」


「納得した、でも他の迷宮は?」

「見付けたら討伐して頂いて結構ですよ。

 まあ、商人さんの出る幕では無いでしょうけどね。

 見付けた報告をするだけでも金貨1枚頂けるので、

 あちこちウロウロしている自警団も多いです」


「そんなにか」

「ちなみに、今フローダル国内では5か所をご案内出来ます。

 迷宮周りには仮設の宿や店舗が作られておりますので、

 そちらで探索者相手の商売をなさっても面白いかもしれませんね?」


なるほど。


何も無い場所に迷宮ができた場合、

駆け出し探索者では移動や補給に困る。

トラッサやホドワのように迷宮を保護し、

そこへ町を作らないのであれば補給はどうするのだと言う話になる。


従って探索者相手に商売を行う商人達は、

しっかりした店を作るのでは無くって仮設店舗なのだ。

移動テントや移動販売店。

迷宮と共に移動する探索者が相手の商売ならば、

迷宮の動向と共に店自体も移動させなければならない。


そこで細工師たちが登場する。

組み立て式の仮設店舗を用意する事で、

迷宮へ挑み易い環境を用意できるわけだ。

良く出来ている。


サンドラッドは陸続きだし交流も深い。

ダイダリにあった仮設の店舗や仮設の宿は、

恐らくシュメールの技術で作られたのだろう。


「良く解った、ありがとう」

「はい、それではー」


では今後ドラッハへ行く際には、その迷宮を移動の拠点にしよう。

町中にあるとか言っていたので、直ぐに見つかるはずだ。


冒険者ギルドの外にあった大木を利用させて貰って、

フィールドウォークでドラッハの冒険者ギルドへ戻る。


「済まないが、ここの街にあると言う迷宮の場所を教えてくれないか?」

「えっ?・・・ええと、先程の方ですかね?

 表に出れば直ぐ分かりますが・・・」


「えっ、そうなの?」


職業訓練用の迷宮とやらは、ギルド建屋を出て直ぐ目の前にあった。

先程ここへ来た際は直ぐにフローダルへ向かってしまったので、

この建物から1歩も出ていなかったのだ。


確かに33層までの攻略と言う事もあって、

装備品が心許こころもと無い駆け出し探索者達が、

入り口付近をウロウロしていた。


入場に関して制約がある訳でも無く、探索者たちは頻繁に出入りしている。

周りには篝火かがりびを焚く鉄製の台も設置されており、

きっとここは夜でも人の往来があるのだろう。


冒険者ギルドがある位なのだから、ここはドラッハの中心部。


ざっと見て回ってみたが、

冒険者ギルドから見て対角線上にあるのが探索者ギルドだ。

その横は酒場付きの旅亭、食堂、雑貨店、

その横は荷馬車から何か商品を運び入れているが、何の店かは判らない。


この迷宮の周りをぐるっと取り囲むように施設が作られていた。

間口が開かれている建物は酒場と旅亭、食堂の他に2棟。

あれらは何であろうか。


そのうちこちらの「安め」の旅亭に拠点を移動させて、

ゆっくり聞いてみても良いかもしれない。


ドラッハの迷宮1層に入って、そこからサンドラッドの宿に戻った。

∽今日のステータス(2021/12/26)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv62

  設定:探索者(62)魔道士(34)勇者(20)神官(26)

     道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(29)


 ・BP160

   キャラクター再設定   1pt   5thジョブ     15pt

   パーティー項目解除   1pt   MP回復速度×3    7pt

   パーティージョブ設定  1pt   詠唱省略        3pt

   獲得経験値上昇×20 63pt   メテオクラッシュ    1pt

   必要経験値減少/20 63pt   ガンマ線バースト    1pt

   結晶化促進×4     3pt   ワープ         1pt


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv4  1st

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv4  1st

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv52 1st

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv48 2nd

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 冒険者 Lv1  1st

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv39 2nd

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 僧侶  Lv9  1st

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 村人  Lv1  OFF


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv62

  設定:探索者(62)魔道士(34)勇者(20)神官(26)

     道化師:下雷魔法・荒野移動/知力中・知力大(29)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 隻眼  Lv8  1st

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 忍   Lv7  1st

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 聖騎士 Lv6  1st

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv48 2nd

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 冒険者 Lv8  1st

 ・ラティ      人間   女 28歳 探索者 Lv39 2nd

 ・イルマ      狼人族  ♀ 21歳 僧侶  Lv13 1st

 ・クルアチ     兎人族  ♀ 18歳 村人  Lv1  OFF



 ・繰越金額 (白金貨30枚・利用券6枚)

     金貨 31枚 銀貨  3枚 銅貨 87枚


   移動費              (600й)

    ダイダリ     →迷宮    利用券1枚

    シュメルディハナイ→シュメール 利用券1枚

    シュメルディハナイ→ドラッハ  利用券1枚

    ドラッハ     →フローダル  銀貨6枚


   迷宮案内費           (1700й)

    17層             銀貨17枚


     金貨- 1枚 銀貨+77枚

  ------------------------

  計  金貨 30枚 銀貨 80枚 銅貨 87枚

                   利用券 3枚



 ・収得品

   遠志   ×136   陳皮   × 62

   豚バラ肉 × 56   附子   × 11

   鑄    ×  3



 ・収得品ジャーブ

   豚バラ  × 12   附子   ×  7

   遠志   × 20



 ・異世界62日目(朝)

   ナズ・アナ57日目、ジャ51日目、ヴィ44日目、エミ37日目

   パニ27日目、ラテ9日目、イル・クル6日目

   サンドラの旅亭宿泊2/10日目



 ・ダイダリの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  15 サラセニア      /  ネペンテス

  16 ピッグホッグ     /  ピックホッグ

  17 フライトラップ    /  アニマルトラップ

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