§214 五度目
その後、外食に行っていた3人が戻って来た。
ラティが以前いたパーティの仲間のその後を聞くためだったらしく、
最初から飲食が目的では無かったようだ。
元パーティメンバーの実家がそこだと言う事であった。
とはいえ、飲食はキッチリして来たらしい。
昼食は入るのかどうかを聞いた所、
飲み物と口取りだけに留めたようで、お腹は減っているのだとか。
ガランとした殺風景な居間で、
全員が車座になって最後の食事を取った。
余り物を全てを使った料理なのでそこそこに量があり、
ラティは間食したためか直ぐに満腹だと言い出して残した。
それをヴィーが掻っ攫う。
ヴィーも満腹だと言って食卓は奇麗に片付いた。
折角作って貰った料理が残さず終わって本当に良かった。
と言うか、ラティは残すなよ。
作ったナズに失礼だろ、一番奴隷だぞ?
食事を残すってどうなの?奴隷的に。
ラティは一般市民感が抜けていないのだ。
そのうち何かやらかさないかとハラハラする。
その時はお仕置きだ。
と言ってもせいぜいチョップ位だが。
食事後は宿へ向かい、家財の移動を行う。
まずはナズに2つの鍵を見せ、部屋を案内して貰った。
部屋割は、自分、ナズ、アナ、イルマで1部屋。
もう1部屋はジャーブ、エミー、ヴィー、ラティだ。
4人部屋だけあって4人掛けの机と椅子が設置されており、
4人分の着替えが入る大きな収納ダンスもあった。
元は冒険者や探索者向けの宿だったのだろう。
部屋の壁や机には所々引っ掻いた跡や刃物で削った後が黒く残っており、
こんな所にも面影が残っていた。
ゲートを納屋に繋ぎ、パーティへ入れたメンバーに荷物を運ばせる。
お風呂セットや籠、水桶、水瓶、食器、調理道具、筆記具。
それからランタンを各部屋に置き、オリーブオイルを足した。
ランタンを購入した時は150個位有ったオリーブオイルのグミは、
もう残り僅かになっていた。
では取りに行こう。
その前にアイテムボックスは食料や日用品など、
収納したアイテムでギチギチになってしまっている。
エミーはもう喋れるので、食材は全てエミーに渡した。
今後は台所アイテム全てをエミーに管理して貰える。
圧迫していた食材アイテムが一気に解放され、心が軽くなった。
風呂道具や使わないランタン、
調味料が入った瓶などのガラクタを自分の部屋に運び込み、
衣装ダンスの下には自分のポーチを置いた。
この中には盗られると・・・いや、
見られては困る貴重品やオーパーツが含まれる。
エミーは迷宮へ連れて行かないので、その際は部屋を任せれば良いだろう。
留守番はこの部屋だけで済む。
残りの着替えや手拭いを運び、家は文字通り蛻の殻になった。
鍵も開け戸も開放して置いたので、後は大工が解体してくれるはずだ。
これで引っ越し自体は終わった。
しかし今日すべき事を全て終えたかと言えば、答えはノーだ。
エミーを部屋に残し、装備品を各自に配って迷宮へ向かった。
ヴィーのプレートメイルの着脱はラティがやる事になったようだ。
今日はナズとアナ以外の装備を更新する。
「ヴィー、この鉢巻を付けろ」
「うん?なにこれ?」
「頭を守る装備品だな。
おでこでギュッと巻くだけだから邪魔にならんだろ?」
「あ、うん。ナズ姉ちゃんみたいなのだと、
前がみえなくてこまるなーっておもってた」
「意外とこれ、見えるんですよ?ヴィーちゃん被ってみますか?」
「え、いや、いい、いい」
ヴィーがブンブン手を振って拒否しているのを見ると、
やはり顔を覆われるのは嫌なのだろう。
視界の問題よりも気分の問題だ。
自分も、タートルネックよりは胸元が開いているチョッキを選びたい。
「ラティはこれだ。サーベルと鉄の盾、カチューシャな」
「さ、サーベル!そそそんな良い物をああありがとうござございますぅ」
「カチューシャは竜革製なので、不意の一撃でも安心だ」
「へへーっ!」
ラティは何だかお代官様から褒美でも頂戴したかのように、
深々と頭を下げて受け取った。
皆の装備は引っ越し前に、
棚からラティのアイテムボックスに移動させたので、
ラティが各自に装備を配って回っていた。
更新分の装備がある者はラティから手渡される毎に、
装着を中断させて交換して行く。
ラティへ貸し与えていた鉄の剣が最後に返却され、
自分のアイテムボックスへ収める。
目視確認できないと何を装備しているか掴み難いのが厄介だ。
ざっとラティの装備を見ると、カチューシャ以外は鉄製だったので、
白銀素材が余っている事だしそのうちナズに作らせよう。
「イルマはこれだ。ほぼ一新だな。
盾はラティが持っていた木の盾を使ってくれ」
「ありがとう御座います。
ええと・・・この細い金属の棒は武器なのでしょうか?
やはりこれでは魔物を倒す事は難しいように思うのですが」
「その武器はタクトと言う。
自分も以前使っていたが、破壊力抜群の凄い装備だ。
殴る武器では無いからイルマは絶対に前へ出るな。
魔法使いなら以前渡したワンドと比べて威力が倍位になる」
「ば、倍・・・ですか。
申し訳ございません。私は武具に疎く、価値を知りませんでした」
「気にするな。イルマの手当ての威力が上がれば皆が助かる。
教会の司祭と同じ位の治癒力が得られれば皆安心だろう?」
「そうですね、イルマさん、お願いします」
「私達も無敵ではありません。
これまで私達は何度も窮地を経験して来ました。
僧侶であるイルマには期待をしています」
「俺はこの剣があるので大丈夫です!他の方の治療を優先して下さい!」
ジャーブがバスタードソードをぐるっと回して自慢した。
「アタイはあんまりイタく感じないみたいだから後でもいーよー」
「そ、そうなのですね・・・」
ヴィーは自分の頑丈さをアピールしたようだが、
最大HPが他人より多いだけで、ダメージは等しいはずだ。
割合で言えば他人よりは少ないのだろうが、数値が変わる訳では無い。
「今回の目標はオリーブオイルだ。
ランプに武器の手入れ、食材としてもこれまで沢山使って来たので、
今日は100個位集めたい」
「「「はいっ」」」「はーい」「わわわわかりましたっ」「頑張ります」
とは言え既に25層を経験した自分達からしてみれば、
11層のナイーブオリーブなど全く敵では無い。
パーティを2分割してアナとラティと自分、
ナズとヴィーとジャーブとイルマで探索させた。
パーティ編成的にはジャーブとヴィー、ラティだ。
自分のパーティには転職したてのナズとアナ、そしてイルマがいる。
結局の所ベテラン勢のLvでは経験値を期待できないので、
どんな編成であっても大して違いは無い。
転職したてのナズとアナだけは経験値が入るので、ブーストさせたかった。
*
*
*
探索中はアナの忖度があってか別動隊と顔を合わせる事も無く、
自分が魔法で魔物を一掃するのでラティは地図を取るだけであった。
オリーブオイルのグミはアイテムボックス3枠目に入ろうとする。
自分の探索者は62Lvなので、125個目だ。
今日の目標はクリアした。
「アナ、十分集まったのでナズと合流して帰ろう」
「かしこまりました。ナズさんたちはあちらですね」
「はわー・・・よ、良く分かりますねぇ・・・」
「ずっとナズさんの気配を追っていますので」
流石である。
大分前から忍者かと思ったが、本当に猫忍と成ってしまった。
今回アナは攻撃をしなかったので、
例の暗殺撃とか言うスキルはお目見えしていない。
どうせ低Lvでは確率も低いだろうし、現段階では期待していない。
ジョブのLvがダウンした事で、
状態異常を起こせる確率も多少ダウンしているはずだ。
自分が転職して得た反射鏡の経験則からも、
上級職の真価を発揮するにはLv25を超えてからだと推測される。
ナズと会うまでに2グループを倒し、
オリーブオイルのグミは129個集めて合流した。
「あっ、ご主人様。そろそろお夕食の時刻かと思いまして、
私達も探しておりました」
「同じ階層にいるのにずっと会えませんでしたが、もしやアナ殿が?」
「はい。みなさんを避けるように探索しておりましたが、
ご主人様が帰還すると仰いましたので、ナズさんを探しました」
アイテムボックスがあるナズから今回得られたオリーブオイルを預かる。
うーん1,2,3,・・・34個か、まずまずだな。
「アナ姉ちゃんやっぱりスゴいね!」
「そ、そうでしょうか・・・」
「そうですとも!アナ殿にはいつも助けられています!」
「わわ、私も凄いおチカラだと思いますっ」
そういうのは宿に戻ってからやって頂きたく。
通路の真ん中でやるものでは無いと思う。
ゲートを開いてアナとイルマを押し込んだ。
そしてあちらのパーティの分解を待っているんだが・・・。
やっぱり言わなきゃダメか、ラティは。
「ラティ、早くパーティを解散してくれ」
「えっ、あっ、すすすすんみましぇぇぇぇん!」
全員がゲートの向こうに消え、宿へ戻した。
今後パーティ人数以上に迷宮へ行く事が多くなりそうなので、
この動きは早くラティも覚えて欲しい。
いやそうじゃないよ、察しろよ。
もう28だろう。
大丈夫かこのポンコツは。
他の主人ならば多分折檻されている所だぞ。
戻ったのは宿の自室であるので、皆整列して待っていた。
各自の部屋で自由にしろと伝え解散する。
自分は折角なのでこの部屋から見える景色を堪能しようと思う。
さっきから開かれた窓の向こうが気になっていたのだ。
4階のこの部屋からは見晴らしが良く、港の方までハッキリ見える。
窓は自分達が出て行ってからエミーが開けていたようで、
入って来る涼しげな風と潮の香りが、
これまでに無い新鮮さを感じさせられた。
日は既に落ち掛けているが、左右に続く水平線へ太陽の光が反射し、
停泊する船の帆に掛かる影の濃淡とも相まって、
ここだけみればテーマパークのようである。
美しい港街の情景を前に、後でちょっと夕暮れの町を散策したいと思った。
窓の景色を楽しんでいると、給仕とナズが料理を運んで来た。
ナズが気を利かせてフロントまで伝えに行ったらしい。
給仕が2人分、ナズが6人分の食事トレイを抱えて、
自分達の部屋にお盆2枚を置いた後、隣の部屋に持って行った。
凄過ぎない?
話には聞いていたけど、お盆6枚だよ?
それだけ見ても多分、腕力めちゃくちゃあると思うよ?
自分ならば両腕に2枚乗せられたら30秒も持たないと思う。
ナズが非力なドワーフ?
渡る世間は嘘ばかりである。†
食事は肉料理にパンとスープ。
トラッサの旅亭よりも豪華で、肉も柔らかく美味しかった。
ここではそれだけの代金を払っているし、
トラッサは旅亭と言っても探索者の町ではあった。
4人で料理の品評をし、イルマも感激していた。
隣の部屋からはラティの叫び声が聞こえる。
上級旅亭の料理に興奮するのは判るが、ちょっと恥ずかし過ぎる。
28だぞ?あの女。
ほんとに・・・。
貰い手が云々と嘆いていた原因は多分これだろう。
食事を終えると配膳係がお湯の桶を持って来て、お盆を持ち帰って行った。
お湯は2人で2桶ずつ、帰りはお盆を2つずつ持ち帰って行く。
それが普通だ、6つも持てるナズがおかしい。
体はいつもの通りアナに拭いて貰う。
ナズはイルマを拭いた。
イルマはアナより少し背が低く、エミーよりかは高い。
引き締まっているイルマの体はそれなりに起伏があって美しかった。
流石、庭仕事をしていただけはある。
ジロジロ見るのも可哀想ではあるが、
彼女は自分の奴隷なのだし、興味はある。
可愛いし、見たいものは見たい。
そもそも病気でなければ最初から自分の部屋に迎え入れる予定であった。
自分だってもっちりしたイルマの犬耳をパフパフしたい。
ズルいぞ、ミチオ君。
イルマは非処女と知っていたし、
彼女は隠すような事をしなかったが、
こちらの視線には気付いた事だろう。
食い入るように見た訳では無いが、
やはりこの主人も体が目的なのかとは思ったに違いない。
ちょっとだけです。
7割はエミーのためです、ホントです。
残りの2割は6人目のパーティ枠として考えていました。
10割にならないだろ?
言うな。
イルマに手を出さないでいる手前、ナズやアナとも暫くはお預けだ。
例に依って3つのベッドを合体させてキングサイズとし、
いつもと同じ環境を作り上げた。
イルマは1人、隅の方のベッドだ。
多少罪悪感もあるが、こればかりは仕方無い。
イルマだって病気である事を自覚したので、
体を差し出すようなマネはしないだろうし、今はこれで良い。
この場でナズやアナと盛り上がらない事が彼女への配慮である。
「さて、まだ寝るには早いと思う。
ちょっと街を散策したいが皆はどうする?」
「私はお借りした本の残り3ページを写してしまいたいと思います」
「では私はご主人様の護衛に」
「わ、私は・・・何もお役に立てないかと思いますので、
ここでご主人様のお帰りをお待ちしております」
「別に良いのに・・・」
「お、お守りできる程、私は力がありません。
それに夜間は外出した事が無く、不安です」
ああそう。
それは仕方無いな。
無理強いも良くない。
来いと言った訳では無く、どうするかと聞いただけだ。
恐らくイルマは日中の明るい時間、屋敷の庭しか出た事が無い。
いきなり夜間、目的も無くブラ付くと言うのはハードルが高いのだろう。
そう考えるとエミーは意外と度胸がある。
ナズの歌の日には毎回付いて来たし、迷宮にも黙って付いて来た。
この姉妹は似ているようで性格が真反対であり、
加えて見掛けと芯の強さが逆転している。
続いて隣の部屋で同じ事を聞く。
「と言う訳で、この町の酒場に行こうと思うがお前たちはどうする?」
「お、俺もお願いします!」
「ヤッター!辛いのあるかな?」
「わわわ、私は遠慮してお、おきます」
「アレは無いと思うぞ。ジュースもあるかどうか判らん」
「えー、じゃあどうしようかな・・・」
「ヴィー、知らない食べ物があるかもしれないよ」
「おおーっ」
ジャーブが変な事を吹き込んだので向かうのは4名となった。
一応パーティを編成して置く。
「では行って来るが、先に寝ていて良いからな」
「は、はいぃ、いってらっしゃいませぇ」
***
夜の町のどこが賑わっているかは直ぐに判る。
人の流れ、通行人がどこへ向かうのかを見れば一目瞭然だ。
人が多く集まる所に、人を多く集める要素がある。
それは歓楽街であり、この世界であれば酒場か娼館だ。
幸い異性には不自由していないので、用があるとすれば酒場である。
そしてこういう場合、酒場は大抵娼館の直ぐ傍にある。
目的が近しいからだ。
酒場自体が連れ込みホテル宜しくそういった機能を備える場合もあるし、
酒場のねーちゃん自体がそもそも娼婦だったりする場合もある。
ホドワの酒場、リアナさんの所のような、
酒と食事1本でやってる所の方が珍しいのだ。
あの女将さんのジョブは旅亭だった。
今でもギルド員なのかそうでないのかは判らないが、
真っ当な商売を行っていたからこそ、ナズは娼婦へ落ちずに済んだのだ。
そこは本当に感謝である。
立ちんぼの客引きが目立つ場所に紅一点、いや光1点。
人が吸い込まれて行く店があった。
3人を連れてお邪魔する。
リアナさんの店程では無いがそれなりに広い酒場は、
概ね半分の席が埋まっていた。
自分達は入り口近くの6人位が座れそうな長机を使用させて貰う事にする。
直ぐさま店員が注文を聞きに来た。
「自分はミード。それからこの店のお勧めの肉料理を1つ。
お前たちは?」
「でっ、では俺もミードで」「私はカクテルを、甘目でお願いします」
「おさけじゃないやつあるー?」
「それでしたら果汁に牛乳とギーを入れたカクテルがお勧めです」
「ではそれで」
店員が厨房に戻って行く。
所々に空席が残ってはいるものの大声で話す男共の所為なのか、
酒場自体は賑わっているように見えた。
「リアナさんの店よりは狭いのに、意外と客が少ないな」
「そうですね、あちらの酒場はナズさんがいるからでは無いでしょうか」
「女将さんの料理も美味しいですからね」
「美味しいと言っても、お前はタコスしか食べた事が無いだろう」
「そういえばそうでしたっけ!」
しかもそれは自分が持ち込んだ料理である。
女将さんの料理のセンスが良いとは言え、
他のメニューを食べた事も無い奴が言えたセリフでは無い。
確かにお勧めであったラムのチーズ焼きは美味しかったが。
ミードは直ぐに用意された。
ヴィーのジュースはまだ来ない。
果物を絞る手間分だけ時間が掛かるのは仕方無いだろう。
先に飲むのも可哀想なのでちょっとだけ待ってやると、
アナのカクテルと共に4つのグラスがテーブルへ並べられた。
「そいじゃ、かんぱーい」「あっ」「えっ?」「ほえ?」
な、何だよ。
パーティ2回やった時に見てたじゃないかよ。
完全に浮いたよ、これは。
寂しいな。
バツの悪そうな2人と無理解な1人を無視して半分まで飲み干した。
「ぶはっ」
「も、申し訳ありません、次は必ず」
「お、俺も初めてでしたので、次は合わせるように致します」
「何それ?アタイもやったほうがいイイ?」
「い、いや、別に無理して合わせてくれなくても良い・・・」
「いえ、そういう訳にも」
「済みません、未だに至らない事ばかりで!」
「もー、そーゆーのさきに言ってよー」
「あーっ!」
ワイワイ盛り上がり始めたその時に、
会計を済ませて出て行った客が悲鳴を上げた。
いや、悲鳴と言っても命の危険があったような逼迫した声では無い。
何かに驚いた様子だ。
首だけ入り口の方に動かすが、アナはもう直ぐに動いていた。
緊急事態だろう。
「ヴィーッ、お前も行け!」
「えっ?あ、あいっ」
アナ1人では不安があったので、素早いヴィーにも後を追うよう言った。
ジャーブはコップを片手に固まったまま、目をパチパチさせていた。
知ってる。
ジャーブはとっさの事にめっぽう弱い。
「スリか何かだろう」
「そ、そうなんですね、結構物騒ですね」
「大商人がウロウロする港街だからな、金目の物は目に付くのだろう」
「なる・・・ほど・・・。あの、ユウキ様は追わなくても良いのですか?」
「そうは言っても、自分には関係無いしなあ。
アナは賊の動きが判っていて勘も鋭いし、
ヴィーはすばしっこい上に元は同じ類だ。
あの2人以上に最適な者がいるとは思えん」
「そ、そうですね・・・」
店にいた者達が野次馬根性で表へ出て行く様子を見ながら、
自分はチビチビとミードを含んだ。
「この状況でも落ち着いておられるユウキ様は凄いとしか・・・」
「だから自分にできる事は何も無いんだって」
店員がスパイスの利いた肉料理を運んできた。
焦げた香辛料と油の匂いが食を唆る。
「おっ、来たゾ。食べよう」
「は、はぁ・・・」
4つに切り分けて、食べ易いサイズにカットしてやった。
一切れを口へ運ぶとピリピリとした辛さに酒が進む。
驚く程旨いと言う事も無くこれはただのステーキなのだが、
酒の肴にするには十分であった。
まあでも、次回は同じ物を頼まない。
別のメニューも試そうかな?そんな感じである。
2杯目の酒を頼んでチビチビやっているとアナが帰って来た。
「申し訳ありません、見失いました」
「アタイもみつけられなかった」
「お帰り、無茶しなくて何よりだ。
肉が冷めてしまったが、お前たちの分があるから食べてくれ」
「ありがとうございます、頂きます」
「わーい、にくだー」
「それで、どんな奴だったか?」
「ええ、男性から何かを掠め取って行った者は青年の男性で、
それなりに身のこなしが上手く、追うには困難と判断しました」
「かべの間をのぼってったんだ」
「私も真似て登ってみたのですが、上がった時には既に気配が無く、
身を隠す場所を多く知っているようでした。
深追いは危険だと判断して戻って来た次第です」
「アタイは家のうしろにはしって回ったんだけど、いなかったんだ」
「そうか、2人の尾行を撒くのは大した腕前だな」
「申し訳ありません・・・」「ゴメンナサイ・・・」
「いや、別にお前たちが謝る事は無い。
人助けに失敗しただけで何も咎められる事は無いぞ。
それより走って来て疲れただろう?もう1杯飲むか?」
「は、はい。そうさせて頂きます」
「えっイイの!?」
どこの誰とも判らない者のために尽くそうとしたアナは立派だ。
それにヴィーも真面目に手伝ったようだ。
褒められこそすれ非難される事は無い。
と言うかアナは自分だけのために働いていると思ったが、
これはどういった事だろうか。
そちらの方が気になった。
「アナはなぜ賊を追ったんだ?自分達には関係が無い事だろう」
「ご主人様はこれまで3度も盗賊を退治されました。
今回もお役に立てれば、ご主人様の名を立てられるかと考えました」
3度ではなく4度だな。
アナはアムルで最初に襲って来た盗賊たちの件を知らない。
アナの知る限りで盗賊を始末したのは、
アムルの商人とその連れの冒険者、
ジャーブを襲った迷宮のハンター共、そしてヴィーとカリムだ。
しかし、そうか。
やはりその延長は自分のためであった。
アナを危険な目に合わせてまで名を立てたくは無いし、
逆に自分は静かな暮らしをしたいのだが、アナは向上心が有り過ぎだ。
自分の最終目標をしっかり伝えた方が良いかもしれない。
ここらでゴールだと言ってしまうと逆に幻滅されたりするかもしれない。
難しい問題だ。
「あまり無茶はしないでくれ。名声よりもお前たちの方が大事だ」
「かしこまりました」「はーい」
これで良い。
変な事を言い出して酒が不味くなっても困る。
アナとヴィーを労いつつ、さり気無く牽制した。
∽今日のステータス(2021/12/23)
・フジモト・ユウキ 人間 男 21歳 探索者 Lv62
設定:探索者(62)魔道士(34)勇者(20)神官(26)
道化師:下雷魔法・破魔鏡/知力中・知力大(29)
・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 隻眼 Lv1
・アナンタ 猫人族 ♀ 20歳 忍 Lv1
・ジャーブ 狼人族 ♂ 28歳 騎士 Lv52
・ヴィクトラ 竜人族 ♀ 12歳 竜騎士 Lv48
・エマレット 狼人族 ♀ 19歳 料理人 Lv32
・パニ 竜人族 ♂ 15歳 探索者 Lv50
・ラティ 人間 女 28歳 探索者 Lv39
・イルマ 狼人族 ♀ 21歳 僧侶 Lv3
・クルアチ 兎人族 ♀ 18歳 村人 Lv1
↓
・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 隻眼 Lv4 1st
・アナンタ 猫人族 ♀ 20歳 忍 Lv4 1st
・ジャーブ 狼人族 ♂ 28歳 騎士 Lv52 2nd
・ヴィクトラ 竜人族 ♀ 12歳 竜騎士 Lv48 2nd
・エマレット 狼人族 ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF
・パニ 竜人族 ♂ 15歳 探索者 Lv50 OFF
・ラティ 人間 女 28歳 探索者 Lv39 2nd
・イルマ 狼人族 ♀ 21歳 僧侶 Lv9 1st
・クルアチ 兎人族 ♀ 18歳 村人 Lv1 OFF
・繰越金額 (白金貨30枚)
金貨 36枚 銀貨 57枚 銅貨 47枚
酒代 (520й)
肉料理 100
ミード ×5 250
カクテル ×2 100
ジュース ×2 70
銀貨- 5枚 銅貨-20枚
------------------------
計 金貨 36枚 銀貨 52枚 銅貨 27枚
・異世界59日目(昼)
ナズ・アナ54日目、ジャ48日目、ヴィ41日目、エミ34日目
パニ24日目、ラテ6日目、イル・クル3日目
サンドラッド到着まで2日、シルクスの旅亭1/2泊目




