§205 所帯
自分を含め7人の所帯だ。
既にパーティはヴィー、エミー、ラティ、イルマ、クルアチが入っている。
今後全員で移動をする必要がある場合、一度には運び切れない。
パニが家に帰って来たら合計9人、自分を含めて10人だ。
やはりパニを冒険者として育てて置いて良かった。
一度ジャーブ、ヴィー、エミーを家に戻して解散させ、
再びラティ、イルマ、クルアチを加えて家に運んだ。
クルアチを混乱させないように冒険者としてゲートを開く。
彼女に関してはいずれ売る事となるかも知れないし、
今後どうなるかは解らない。
ジャーブは畑の手入れをしに行ったようだ。
エミーは竈門に火を入れて食事の準備を始め、
ヴィーはエミーの手伝いを始めていた。
「ヴィー、パンを買いに行って来い。今日は丸いのだ。
今日は9個買って来いよ?」
「はあい!」
エミーから金を受け取り、勢い良く出て行った。
「エミー、今日の昼食は自分がやろう」
(こく。)
アイテムボックスから豚バラ肉を取り出し、
キャベツっぽい葉物を軽く千切って作業台に置いた。
「あ、あの、ご主人様が料理をなさるのでしょうか?」
「xxxxxxxxxxxx!」
「ああ、お前たちは空いている椅子に座って待っていてくれ。
一応それぞれ場所は決まっているが、後で決め直すのでどこでも良い」
「えっ、あの、そういった事は・・・」
エミーは普段彼女自身が使っている椅子を引き、
姉のイルマを押し込むようにして腰を下ろさせた。
クルアチに対しても同様に、ジャーブの席へ押し込んだ。
ラティはパニの席に座る。
(どっ、どうも、こ、この家では奴隷でも、
へっ、平民のように扱って頂けるようなんです)
(ええっ!?それではあの、あなたも奴隷だったのですか?)
(そっ、そうです。まっ、まだ新入りなので、
かっ、勝手がわ、分からないんですが、
な、なんだか奴隷になる前よりいいい、良い暮らしをしています)
(そ・・・それでは・・・)
「xxxxxxxx?」
「xxxxxxxxxxxクルアチxxxxx」
「xxxxxxクルアチ?xxxx」
「xxxxxxxx」
「xxxxxxユウキxxxxxxxxxxxx」
「xxxxxxxxxxエマレットxxxx」
ヒソヒソ話が聞こえたが、だんだん意味の解らない言葉で話し出した。
主人に判らない会話は止めて頂きたい。
人名だけは判るが、話の内容がまるで理解できない。
と言うかイルマとクルアチの会話にラティが入って行けると言う事は、
これは人間語なのだろう。
やっぱり人間語覚えたいなあ。
まあそれもそうか。
ボルドレックは人間だったのだし、人間語で命令される事も多かろう。
命令が理解できなければ仕事は務まらない。
ボルドレック本人とはブラヒム語でやり取りしたはずなので、
彼はブラヒム語も話せるのだ。
ブラヒム語は他種族と話す時だけのツールのはずだ、本来ならば。
商売人だし、他種族の取引先もいる訳で。
だが、部下や使用人に対しては人間語なのだろう。
と言う事は、イルマは人間語とブラヒム語の両方が判ると言う事だ。
意外と賢い。
商館で教育されるのはブラヒム語だけだろうから、
人間語は独学で覚えたのだと推測される。
あ、いや、お屋敷メイドは教育が行き届いているそうだから、
屋敷向きと判断した時点で多言語教育をさせられるのかな?
ではなぜクルアチはブラヒム語を理解できないのか。
「イルマ、クルアチは何故ブラヒム語を理解できないのだ?」
「はい、xxxxxxxxxxxxxクルアチ」
「xxxxxxxxxxxxxxxxx」
「奴隷に落とされた日の翌日に買われたのだそうです。
商館で教育を受けた事は無いそうです」
「それでは仕事にならないだろう?」
「xxxxxxxxxxxxxx」
「xxxxxxxxxxxxxxxxxxx」
「彼女の仕事は屋敷の掃除と調理の補佐でした。
これまで難しい仕事を命令された事は無いと言っております」
「そうか、掃除か。ではうちでも掃除を頼む。
調理はナズもいるので、今の所必要は無いだろう。
それからクルアチは商館に通わせて言葉を覚えて貰うから、
そう言って置いてくれ」
「よ、宜しいのでしょうか・・・」
「良いから伝えてくれ」
「xxxxxxxxxxxxxxx。
xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」
「xxx!xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx・・・」
「一生懸命働きますとの事です。
商館での教育はどのような物か解らないので不安だと言っております」
「お前も商館で教育を受けたのだろう?同じ事だ」
「か、かしこまりました。
xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」
「xxxxxxx。xxxxxxxxxx」
「がんばります、と答えております」
話をしながら肉をミンチに切り終え、
グチャグチャになった所へ塩とスパイスを振った。
小麦粉を少量混ぜ、玉葱もミンチにして混ぜた。
後は手で捏ねてハンバーグ状にする。
フライパンにオリーブオイルを引き、
ピクルスっぽい漬物と一緒に焼く。
焦げた肉の匂いが何とも食欲をそそった。
もう昼からは大分時間が経っている。
腹ペコ過ぎるのだ。
ハンバーガーとは言わず、もうこのまま齧り付きたい。
エミーが仕入れたケチャップは大いに役立った。
今からスープは用意できないが、
唐黍粉はあるので解いてコーンスープにした。
牛乳、唐黍粉、スパイス、コボルトスクロース、コボルトソルト。
9人分のハンバーガーの具が完成した。
だがヴィーがパンを買って来なければ挟めない。
「ただいまー!」
ヴィーの買って来た丸パンが机の上に乗せられる。
「ヴィー、こっちだ。ここに寄こせ」
「うん?食べないの?」
「食べるが、今日は工夫する」
「くふう?ってなに?」
「いつもより旨くなる。そこで見てろ」
ヴィーからパンを受け取り、真ん中へ切れ込みを入れて半分にする。
ケチャップを両面に塗り、みじん切りにして炒めたキャベツ、
パティ、トマト、ピクルス、アンチョビペーストをちょっと乗せ、
最後にパンで蓋をした。
ユウキバーガーのでき上がりだ。
エミーはスープを装うつもりなのか鍋に手を回した。
「まだナズ達が帰っていないからな、帰って来てからにしよう」
(こく。)
ヴィーの目が充血している。
我慢が限界に達しているのが判る。
早く食べたいのは理解できるが、
流石にヴィー1人だけ許可をする訳にも行かない。
腹は減っているだろうから、何か食べさせないと暴れそうだ。
豚バラ肉を1枚取り出して、軽く焙ってヴィーの皿に置いてやった。
ハンバーグを焼いた肉汁とスパイスが絡んで、
ただ焙り焼きしただけでも十分美味そうではある。
「い、いいの!?」
「良いから大人しく待ちなさい」
「・・・やっぱりガマンする」
あら。
ちょっとは大人になったのか?
彼女だけ贔屓にされる事へ抵抗感を覚えた事は成長だ。
彼女も着実に大人になっている。
パニの食事を強奪しなくなれば大した物だ。
(あ、あの、この子はユウキ様の何なのでしょう?)
(おっ、同じく、どっ、奴隷みたいなんですが、
うちでは多分いっ、一番の強権です)
(ですが、一番奴隷はアナさんだと・・・)
(アッ、アナさんとナズさんはとっとってもお優しいので、何とも・・・)
「xxxxxxxxxxx」
「xxxxxxx」
「xxxxxxxxxxxxxxx」
まーた解らない会話を始めた・・・。
とは言え喋るなと言うのも可哀想だし、
座って待っていろと命じた手前大人しくしているのも難しいか。
そもそもこの状況で自分が料理している事自体おかしいのだし、
イルマの疑念も尤もだ。
「只今帰りました」
「どなたか、手が空いていれば宜しくお願いします」
ナズとアナが帰って来た。
ナズは机を背中に担いでいる。
アナは椅子1脚、ジャーブも1脚だ。
途中までアナが2脚持って来たのだと思う。
アナと合流する前は、多分ナズが3つ・・・。
どうやって持って来たんだ?
慌てて全員が手を貸す。
「2人ともご苦労、運んで貰って良かったんだぞ?」
「い、いえ、お食事の際に、これだけは必要かと思いまして」
ナズは居間にドカっと机を下ろすと、
自分の席から一番遠い場所へ横付けにした。
高さは微妙に違っているが長さは大体丁度良い2人用の机で、
そのまま食卓の机が向こう側へ左右2人分増えた感じとなった。
「ナズ、でかした。丁度良い机だ。素晴らしい」
「ありがとうございます。ベッドと棚、箪笥、
それからもう1つの机は持って来て貰う事になっています」
アナとジャーブは広がった机に椅子をセットした。
背負ったリュックから皿をお椀、ナイフ、スプーンを取り出す。
「布は大き目の物を1つ纏めて買いましたので、
後でジャーブに切って貰う事と致します」
「お、おお。それも素晴らしいな。ご苦労だった。
食事を作ったので早速食べよう」
「かしこまりました。ご主人様のお料理は楽しみです」
「あ、あの、俺の椅子が・・・」
「おお、そうだった。全員立ってくれ。席を変える」
今座っている場所は、
ラティ、イルマ、クルアチには臨時で座らせただけに過ぎない。
位置を変更し、ついでに序列も改める良い機会だ。
「では新しく加わった2人もいるし、座る場所と序列の再確認を行う。
入浴の順番も含めてだ」
「「「かしこまりました」」」「何かかわるの?」
(ぺこり。)「はっ、はいぃぃ・・・」
「あ、あの」「xxxx?」
全員が立ったのを見て、遅れてクルアチも立った。
言葉が解らないのは仕方無い。空気を読んだ事を評価した。
「ではまず、ナズとアナ、自分の左と右だ。お前達は1番だ」
「はい」「ありがとうございます」
2人がいつもの場所に座る。
「2番はいないので、3番。イルマ、お前だ。
自分の反対側、一番向こうに座ってくれ・・・そう、そこだ」
「えっ?、いや、あの、それでは・・・」
エミーが立ち上がり、イルマを押す。
一番遠いが、自分の対面はイルマの席になった。
「4番、ジャーブだ。ナズの隣だ」
「分かりました。今と変わりませんね」
「6番、エミーだ。ジャーブの隣だ。
ジャーブにも台所にも近い方が良いだろう」
(ぺこり。)
「えっ、いや、あの、俺はその・・・」
エミーはチラッとジャーブを見詰める。
2人は見詰め合って、ジャーブは押し黙った。
勝手にやってくれ。
「5番、ヴィーだ。エミーの反対側。7番のパニと隣だ」
「はーい」
「8番クルアチ、エミーの隣。イルマ頼む」
「は、はい。xxxxxxxxxxxxxエマレット」
「xxxxxxxxx」
「9番ラティだ。一番奥だ、以上」
「はっ、はいっ」
ナズ ジャ エミ クル
ユ| ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄ ̄| ̄ ̄|イ
ウ|________|__|ル
アナ パニ ヴィ ラテ
「続いて風呂の順番を決める」
「あ、あの・・・」
「どうしたジャーブ?」
「い、いえ、ラティ殿の方が先にユウキ様の下に来たのでは?」
「ああ、順番か。
ラティは奴隷として教育されてないので、知識や作法は一番無知だろう。
一応迷宮には連れて行くが、ラティに戦って貰う予定は無い」
「え?それは何故でしょう。
ラティ殿は自分より迷宮の深部に入っていましたし、十分強いのでは?」
ジャーブは強さこそヒエラルキーだと思っているようだ。
確かに?
一般市民が順当に階層を進んで行けば、
Lv的なヒエラルキーはそうなる。
だが自分に取ってLvは何の指標にもならない。
何なら序列上位に全く迷宮で戦わない料理人エミーがいるし、
殆ど見ていただけのパニはもう冒険者に成れる。
ラティに求める事は迷宮の地図作成だ。
技能は確かに良いものだが、必要が無いと言えば無い。
あったら便利グッズだ。
それよりイルマを育てたいと思っていた。
こちらは冷静沈着でベースの能力が高そうではある。
クルアチとは話してみなければ判らないが、
会話できるようになるまでは時間が掛かりそうだ。
ヴィーとはブラヒム語で無くても会話できていた点で大違いである。
「迎えた順や強さは序列と関係無い。
それならば、ジャーブ。多分お前が一番強いぞ。
剣技だけなら自分より遥かに強いので、お前が主人で良い」
「えっ、いや、そんな事は無いでしょう!」
「それに、イルマは苦労して手に入れたのだ。
折角なので自分の横に侍らせたい」
「は、はい。それはそうですが」
「なあ?イルマ」
「え、あの、いえ、
他のお方を差し置いて私が上の立場では申し訳ありません」
「気にするな、うちではどうせ順番なんて関係無い」
「そうですよ、イルマさん。ご一緒にご主人様をお助けしましょう」
「一般的な家とは違いここではかなり自由ですので、
序列に拘らず仲良く致しましょう、イルマ」
「え、はい。あの、本当に宜しいので?」
「ご主人様がそう仰るならそれで良いのです」
「何度もお尋ねになるのは逆に失礼かと」
一番奴隷の圧力で押し切って貰う。
ナズもアナも話が早くて助かる。
ナズの方は多分天然だが。
「何番だろうが、兎に角ヴィーには気を付けてくれ」
「えっアタイ?」
「こいつは他人の飯を奪う強敵だ。自分の食事は死守するように」
「またそれー!アタイとらないよ!さっきもちゃんとガマンしたし!」
「え・・・・・・」
「そういう訳で、食事をしながら他の事を話そう」
そう切り出すとエミーはスープを配り始めた。
ナズも自分が用意して置いたハンバーガーを皿に乗せて配る。
「今日のお料理はこちらですか。
以前ナズさんが作った挟みパンのようですが、
こちらはかなり大きめですね」
「中の肉からとても良い匂いがします。
さっき畑作業中にも匂って来て、腹が鳴っていました」
「お~いしそ~ですぅ~」
「さっきのおニクもまぜていーい?」
「ああ、好きにしろ」
ヴィーだけが真ん中に追加のバラ肉を挟み、
ユウキベーコンバーガーへとバージョンアップした。
「それでは、「「「「いただきます」」」」「あっ、いただきますっ」
「あ、はい、え?あの・・・」「xxxxxxx?」
「気にするな、皆勝手にやっている。合わせたければ勝手にしてくれ」
「はあ・・・。
xxxxxxxxxxxxx」
「xxxxxxxxxx!?」
「xxxxxxxxxxxxxxxイタダキマス」
「イタマキュラス?」
味は・・・ハンバーガーそのものだ。
どう変化を付けた所で、こういう並びにしたら何でもそうなる。
雑でも普通に美味い。
それがファストフード、ハンバーガーだ。
半分位を齧った所で風呂の順番を指定する。
「あー、それで風呂なんだが。自分の次はジャーブとパニ、
次いでヴィーとラティとクルアチ、最後にイルマとエミーだ。
ラティはクルアチに入り方を教えてやれ。
イルマもエミーに教わってくれ。掃除は2人に任す」
「「はい」」「分かりました」「はーい」(こく。)「は、はいっ!」
「ええと、あの、風呂とは・・」
「この家にもお風呂があるのですよ?
以前住んでいたお屋敷にはありませんでしたか?」
「ナズさん、お風呂は本来貴族の物ですので、
たとえ富豪であっても中々お入りになれる方はいらっしゃいません」
「そ、そうなのですね、済みません」
「ええと、そのお風呂がこの家に?」
「そうだ。面倒なのでそういう話は・・・。
ラティ、人間語でクルアチにも伝えて置いてくれ」
「はっ、はいぃ!」
後でどうせ入る事になるから、わざわざ見せなくても良いだろう。
まだ昼過ぎだ。
今から入れるにも早過ぎるし。
ハンバーガーを食べ終え、満腹になった腹を擦る。
大体パン1つで1食分なのだ。
そこに1人1枚分の豚バラ肉と野菜炒めがあれば十分な量だ。
食べ易かったのでペロッと入ってしまったが、満腹感は相当だ。
いつもならば食べたら迷宮だが、
今日はこんな日だったのだし、
お腹もはちきれそうで今から過酷な戦闘もちょっと気が引ける。
午後はどうしようかなぁ。
まずはホドワの商館に行ってクルアチを教育して貰う手続きだな。
それから・・・。
・・・そうだ。
イルマもクルアチも、他人のお手付きになった奴隷だ。
当然そういう事を要求されていたはずだ。
エミーの件もある。
調べなくてはならない。
もしイルマもクルアチも病気であったのならば、
風呂はヴィー達と一緒にできないし、治療をしてやらなければならない。
クルアチはともかく、
イルマは長男の世話用として専属で付けられた奴隷であったはずだ。
早急に調べた方が良いだろう。
デリケートな話でもあるし、個別に呼ぶか。
「食事が済んだらナズとアナ、イルマとクルアチは自分の部屋に来てくれ。
その他は迷宮に行く準備を」
「「「はい」」」「あーい」「はっ、はいっ」
「ええと、かしこまりました、xxxxxxxx」「xxxxx・・・ハイ」
***
アナと2人で自分の部屋で待つ。
「2人を呼んで何をお話しになるのでしょう?」
「病気の確認だ」
「病気?」
「エミーは病気だった。次男坊がナズに殺されてから発覚したが、
もっと前から病気だったのでは無いかと思ってな」
「と仰いますと?」
「例えばボルドレック自身が病気を持っていた場合だ。
そうなると、イルマもクルアチも可能性が高い。
知らずに生活すると、これは拙い事になるので調べる」
「ナズさんを呼ぶ理由は?」
「そういう繊細な話題をするのだ。
一番奴隷であるお前たちはしっかり話を共有した方が良い」
「なるほど、かしこまりました」
食事を終えた2人がナズに連れられてやって来た。
「ご主人様、お連れしましたが」
「うん、ナズもアナも座って良いからな」
2人を自分の横にある椅子へ座らせる。
そういえば、ここに3人で座るのは初めてのような気がする。
大体2人に用がある時はそのままベッドへ押し倒していたので。
真面目な話だってベッドの上でだ。
今のようなシチュエーションは当初想像していなかった。
結果的に役立ちそうなので良かったが。
「まず最初に、イルマ。お前は処女では無いな?」
「はい。アイザック様とボルドレック様のお相手として伽を務めました」
「どの位だ?」
「アイザック様はそれなりに、ボルドレック様とは2回だけです」
「少ないな」
「ええと、私が演技をしなかったからだと」
「演技?」
「あの、1番奴隷のシャリア様はその、演技がとてもお上手で。
ボルドレック様の劣情を煽るのがお得意でしたが、
私の方はどうもそういった事が・・・」
「気持ち良くないの?」
「そう・・・ですね。アイザック様と比べましたら全然・・・」
下手って事だよ。
ボルドレック、残念な奴。
あの屋敷のヒエラルキーは、
如何にしてボルドレックをその気にさせるかが全てなのだなあ。
従業員もそういう胡麻擦りが上手な物を取り立てているから
あのような不始末に繋がったのだ。
微妙な気分になった。
「まあともかく、一応お前には病気の検査を行わせて貰う。
この家の者に染っても困るので」
「えっあ、はい。かしこまりました」
「それから、クルアチにも、処女であるか聞いてくれ」
「かしこまりました。xxxxxxxxxxx?」
「xxxx。xxxxxxxxxx、xxxxxxxxxx」
「これまでそういった経験は無く、伽を務めた事も無いそうです。
彼女はそういった目的の奴隷では無いのだと思います」
確かに、クルアチは美形かと言ったらそうでは無い。
イルマまでは確かに美形だ。
最後に残った髪の長い奴隷と、爆ぜた奴隷はかなりの美人だった。
イルマは美人では無いが、美形だ。
そしてエミーも可愛らしい。
クルアチには失礼だが、容姿だけで言えばラティとドッコイドッコイだ。
なぜ彼女があの屋敷に選ばれたのか不明である。
そこには必ず理由があるだろうが、イルマはそれを知らなさそうだった。
「ではクルアチは一応安全なようなので、イルマだけを検査する」
「かしこまりました。xxxxxxxxx」
「xxxxxxxxxxx?」
「xxxxxxxx」
「xxxx」
「ところで、どのようにして行うのでしょうか?」
「うん、ちょっと迷宮に行って血を貰うだけだ。
直ぐ終わるから安心してくれ。エミーも既にやった」
「めっ・・・迷宮ですか・・・。
私もクルアチも、これまで魔物と戦った事は無いのですが」
「戦う必要なんて無いぞ?行って帰って来るだけだ。
ちょっとだけ痛いが気にするな」
「は・・はあ・・・。xxxxxxxxxxx」
「xxxxxxxxx!?」
「xxxxxxxx」
「xxxxxx」
イルマは恐れ戦き、クルアチは悲しそうな顔をする。
別に迷宮へ差し出す訳では無いから安心して欲しいのだが。
と言うか、検査をしないのであればクルアチを連れて行く必要は無い。
まあ、イルマを安心させるためにも・・・そういう時は、エミーだな。
「おーい!エミー!直ぐ来てくれ!」
──バタン。タタタ・・・
エミーは言われた通り走って来た。
良い子だ。
ヨシヨシした。
「以前お前の病気を検査したな?」
(こくり。)
「お前の姉にもやらせたいのだが、怖がっているので付いて来てくれ」
(こくり。)
エミーはイルマとクルアチの手を引いた。
「いや、クルアチは経験が無いそうなので今回調べる必要は無い」
エミーはクルアチの手を離し、クルアチは安堵しているようであった。
「じゃあナズ、アナ、宜しく。盾と武器だけで良いんじゃないかな?
そうは行かないかな?一応鎧も持って来ようか」
「「かしこまりました」」
4人をパーティに入れ、
フィールドウォークを詠唱する振りをして壁からトラッサの迷宮へ飛んだ。
∽今日の戯言(2021/12/13)
何だか一気に大所帯ですね。
・異世界57日目(13時半頃)
ナズ・アナ52日目、ジャ46日目、ヴィ39日目、エミ32日目
パニ22日目、ラテ4日目、イル・クル1日目
サンドラッド到着まで4日
~蛇足のコーナー~ (2023/09/14 12:00追記)
クルアチ:勝手に話をしても大丈夫なのですか?
イルマ ;え、ええと、多分大丈夫なんだと思います。あ、彼女はクルアチです
ラティ :クククルアチさんっていうんですね?よ、よ、よろしくお願いします
クルアチ:ええと、奥様・・・ではないのですよね
イルマ ;ここに居られる方々は皆ユウキ様の奴隷なのだそうです
ラティ :え、えーっと、エエエ、エマレットさんのお姉さんでしたっけ
イルマ :(はい、)クルアチが何故ブラヒム語を話せないのかと聞かれています
クルアチ:私は奴隷となった翌日からお屋敷で働く事になりました
イルマ :言葉が通じず仕事で困らなかったかと聞いておられます
クルアチ:私は特に難しい仕事を任されていた訳ではありませんでしたので・・・
ユウキ :(良いから伝えてくれ)
イルマ :ここでのあなたの仕事は家の掃除との事です。
それから、今後は商館へ通い勉強をせよと仰せです
クルアチ:頑張ります!ええと、勉強という事ですが私でも理解できる物なのでしょうか・・・
ユウキ :(お前も商館で教育を受けたのだろう?同じ事だ)
イルマ :(か、かしこまりました。)
主に商館では作法と言葉を教えて頂けます
クルアチ:承知致しました。頑張って参ります
ラティ :(アッ、アナさんとナズさんはとっとってもお優しいので、何とも・・・)
クルアチ:ええと、どういう事でしょうか
ラティ :え、え、えっとですねえ
イルマ :この子も奴隷なのだそうです
ユウキ :(8番クルアチ、エミーの隣。イルマ頼む)
イルマ :(は、はい。)今後はエマレットの隣の席へ座れとの事です
クルアチ:かしこまりました
ユウキ :(気にするな、皆勝手にやっている。合わせたければ勝手にしてくれ)
イルマ :(はあ・・・。)
食事を始める前の作法があるようです
クルアチ:私たちもしなくて大丈夫ですか!?
イルマ :皆勝手にご主人様の真似をされているだけとの事です。イタダキマス」
クルアチ:イタマキュラス?
ユウキ :(食事が済んだらナズとアナ、イルマとクルアチは自分の部屋に来てくれ。
その他は迷宮に行く準備を)
他一同 :(はい あーい はっ、はいっ)
イルマ :(ええと、かしこまりました、)後で主人の部屋に行くようにと。
クルアチ:かしこまり・・・、(ハイ)
ユウキ :(それから、クルアチにも、処女であるか聞いてくれ)
イルマ :(かしこまりました。)これまで男性と夜を共にされた事はありますか?
クルアチ:どういう事でしょう。お夜伽の仕事でしたら、私が呼ばれた事はありませんでした
ユウキ :(ではクルアチは一応安全なようなので、イルマだけを検査する)
イルマ :(かしこまりました。)あなたは検査をしなくても良いそうです
クルアチ:検査とはどう言う事でしょう?
イルマ :性の病を患っているかです
クルアチ:理解しました
ユウキ :(戦う必要なんて無いぞ?行って帰って来るだけだ。
ちょっとだけ痛いが気にするな)
イルマ :(は・・はあ・・・。)これから私たちは迷宮へ連れて行かれるようです。
クルアチ:めっ、迷宮ですか!?
イルマ :痛みを伴うようです
クルアチ:そ、そんな・・・




