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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第十章 結実
197/394

§185 胃薬

ナズのお化粧直し?が済んだようなので、探索の再開をする。

中間部屋はその直ぐ目と鼻の先であった。


部屋に入るなり、別の探索者パーティがゲートを開いてやって来る。

ボス戦の周回をしているのだろうか?

その位にはドロップ品に旨みがあるのだろう。


「ボスは解るか?」

「済みません、俺は分かりません」


この階層の魔物は蛙だと言っていたジャーブも、

詳しい事は解からないようだ。

ブラック(でいいよもう)フロッグのボスは、やっぱり何とかフロッグだ。

うろ覚えで何とも言えない。

ここらあたりの魔物の名前は覚え難過ぎる。


フリックだかフロックだかフリスクだか知らないが、

痛恨の一撃を持っている事だけは憶えている。

後程ブリーフィングで注意をしよう。


それよりも全員に破魔鏡を掛けて置く事が大事だ。

ジョブ設定で取得ジョブ一覧の下の方にある細工師を探す。

取得ジョブは取得した順に掲載されるので、細工師は当然一番下にある。


┌─────┐

│ジョブ設定│

└─────┘

  ┌───────────┬────┐

  │フジモト・ユウキ 人間│男 21│

  └───────────┴────┘

┌設定ジョブ──┬───────┐

│1st  Lv│2nd  Lv│

│ 探索者 56│ 遊び人 53│

└┬──────┴┬──────┴┐

 │3rd  Lv│4th  Lv│

 │ 英 雄 50│ 魔道士 32│

 └┳━━━━━━┻┳──────┴┐

  ┃5th  Lv┃6th┌─ジョブ┬┐    

  ┃ 防具商 35┃ -未|△村人 |+|

  ┗┳━━━━━━┻┬─ | 英雄 ││

   │7th    │  | 戦士 ││

   │ -未開放- │  | 剣士 ││

   └───────┘  | 商人 ││

              └─▼──┴┘

┌村人─────────────┐

│スキル  -なし-      │

│効 果  体力微上昇     │

└───────────────┘


  ・

  ・

  ・


┌─ジ▲ブ┬┐

| 神官 ||

| 博徒 ||

| 細工師││

| 冒険者|+|

| 魔道士||

└──▼─┴┘


・・・・・・あれ?


細工師より更に下の方へ項目が増えているべく、

スクロールバーにはまだ余裕がある。


スクロールバーをもっと下の方に動かすように念じてその先を調べる。


┌─ジ▲ブ┬┐

| 冒険者||

| 魔道士||

| 目利き││

| 勇者 ||

| 道化師|+|

└────┴┘


来たな!目利き!そして勇者も取れている。

更に道化師と言うジョブもある。

これは何だろうか?


┌─ジ▲ブ┬┐

| 冒険者||

| 魔道師||

| 目利き││

| 勇者 ||

|△道化師|+|

└────┴┘

┌道化師─────────────────┐

│スキル 効果設定 スキル設定 空き 空き│

│効 果 空き 空き           │

└────────────────────┘


選択してみると、スキルと効果のスロットが2つ空いたジョブであった。


これはまさしく遊び人の上位ジョブ。

どの道も究めずに限られたスキルしか扱えないような半端者では無く、

特定の道を幾つも究めそのスキルを同時に使用する事で、

相手を惑わし自らの正体すらいつわる、まさに道化に相応しい。


目利きと勇者を取得した事で、中上位ジョブの規定数に達したのだろう。

これは大きく戦力の足しになる。


勇者の持つ知力大上昇を2つ付ければ、勇者と合わせて3倍だ。

そして武器に付けた知力2倍が重なり、

聖銀性の武器による威力底上げも加算される。

そしてオーバードライブに依ってダメージ自体の底上げも期待できる。


控えめに言って最強では?†


足が、手が、未知なる力を得てしまった事に対する畏怖に依り震える。

ミチオ君も今頃はこの域へ達しているに違いない。

帝国解放会への正式入会が先か、最終兵器ミチオ君が先か。


順当に行けば入会が先で、神格化が後だろう。

そしてどこかの迷宮を制して貴族だな。

ロクサーヌを解放して娶るか、人間の女性を娶るかしていると思われる。


独身貴族って訳にも行かないし、

従者全員が奴隷と言うのも体面が悪そうだからな。

しかし序列の関係でひと悶着ありそうではある。

・・・考えたくないな。


英雄と勇者をまず交換した。

英雄が無くなる事で知力中上昇のステータスボーナスは無くなり、

一時いっときは魔法の威力が落ちるだろう。


しかしそれも勇者がLv20になる辺りでその差は逆転し、

知力大上昇の方が勝るようになる。

それは魔法使いと魔道士の威力差から見ての推察だ。

なぁに、オーバードライブがその差分を埋めてくれるだろうよ。


そして遊び人と道化師を交換する。

セット効果は勿論、知力大上昇2つだ。

1つ目の知力大上昇をセットし、2つ目の・・・おや?


勇者の項目がグレーアウトされて選択できなくなっている。

一度に選べる職業は1種だけか・・・。

それでは同属性の中級魔法2つと言う訳には行かないようだ。


仕方あるまい、英雄の中にある知力中上昇を選択した。


と言う事は、最強となる為にはこの英雄のジョブがネックとなる。

勇者も道化師もLv99となったと仮定すると、

英雄がLv50ではそこが足を引っ張るのだ。


もっと上位のジョブには知力大上昇を持つジョブもあるかもしれないが、

現状知る限りはそれしかないのだからこれを目指す必要がある。


スキルの方はどうしようか。

魔道士の魔法を2つ選べないのだとすると、

使い勝手の良い別ジョブのスキルと言う事になる。


手当てか全体手当て、メッキ、破魔鏡辺りが候補に挙がる。

現状では回復魔法は欲しいが余り育っていない。

防御力の上がるメッキはと言うと、

ベースの錬金術師を全く育てていないので効果は雀の涙だろう。


となると、現時点で有効活用するには破魔鏡しかない事になる。

どうせ全員に掛けようと思っていた所だ。

掛けてしまえば引っ込められるスキルではあるので、

運用面で言えばやはり手当てを取って置きたい所でもある。


が、これも今道化師へセットするよりはジョブとして取った方が良い。


いい加減回復ジョブを育てるべきだろう。

しかしそれは現在Lv19まで育てて来た僧侶では無い。

こちらではMPの最大値は上がるものの、知力上昇は見込めないからだ。


神官であるならばMP小上昇に加えて知力微上昇も得られる。

僧侶だと魔法への恩恵がMP微上昇しか無いので、

ダメージへのボーナスだけを考えたら神官に軍配が上がる。


精神にボーナスが無い所や、

全体回復と言う事で僧侶より回復の威力は劣るのだろう。

だがそんな事はLvさえ上げてしまえば幾らでも覆せる。

自分は無詠唱なのだし、充分な回復量が得られるまで連続使用するだけだ。

今後の運用を考えると神官を上げて行った方が良さそうである。


そして目利きだ。


 ・目利き

  効果 体力中上昇 知力中上昇 精神小上昇

  スキル アイテム鑑定 カルク アイテムボックス操作

      レアアイテムドロップ率アップ


武器商人や防具商人の上位らしく、その主たるスキルは揃っている。

このアイテム鑑定と言うのが、

武器防具に加えてその他のアイテム名を鑑定可能なスキルなのだろう。

そして・・・最後のスキルに生唾を飲み込んだ。


探索者の派生ジョブである料理人にはレア食材ドロップ率アップがあった。

こちらは商人の派生ジョブである。

効果的にはほぼ同等・・・、

いやそこまでの道が遠いだけあって鑑定やカルクのオマケはあるが、

機能的にはほぼ相対関係にあると思って良いだろう。


これがあれば貴重品の収集が捗るのでは?


当然セットだ。

もう永続的にセットでも良いかもしれない。

いや、それでは貴重品が落ちない魔物相手には勿体無いな・・・。

一先ずは育てるためにセットして置いて、その後は狙いたい時にセットで。


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv56

  設定:探索者(56)魔道士(32)勇者(1)目利き(1)

     道化師:中火魔法・破魔鏡/知力中・知力大(1)神官(1)


  取得:村人(5)英雄(50)戦士(30)剣士(34)商人(30)

     色魔(1)奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)

     暗殺者(42)武器商人(30)防具商人(35)農夫(1)

     薬草採取士(30)錬金術師(1)料理人(18)村長(1)

     盗賊(30)魔法使い(50)僧侶(19)遊び人(53)

     博徒(35)細工師(50)冒険者(1)機工師(1)


 ・BP154

   鑑定          1pt   6thジョブ     31pt

   キャラクター再設定   1pt   MP回復速度×3    3pt

   パーティー項目解除   1pt   詠唱省略        3pt

   パーティライゼーション 1pt   メテオクラッシュ    1pt

   獲得経験値上昇×20 63pt   ガンマ線バースト    1pt

   必要経験値減少/10 31pt   ワープ         1pt

   結晶化促進×16   15pt   知力          1pt


色々惜しいポイント配分であるが、今はこれが限界だ。


6thジョブと経験値400倍は、

ボーナスポイントが158以上無いと無理である。

かといって現状で限界まで振ろうと思うと28ポイントも余るので、

その残りを効率良く配置するのは多分これが最適だ。


ジョブを切り替えた事に依り火力も落ちるだろうから、

手数が足りないと感じるならメテオクラッシュも併せて使用したら良い。

MP増強に貢献していたジョブを変更したため、

枯渇する事を考えるとなるべくしたくは無いが。


深部へ進む事で探索者Lvがもっと上がれば、

このポイント配分の悩みからは解放されるだろう。


贅沢な悩みでもある。

この世界の住民はポイントの配分すら行えないのだ。

全て配分0でスタートせざるを得ない。


何故ボーナススキルにパーティキャラクター再設定が無いのだろうか。

その場合はミチオ君の冒険奇譚も破茶滅茶な展開になっていたのだろうな。

ルティナがメテオクラッシュしてMP枯渇からのどんよりモードか。


  ──くっ・・・殺せっ!†


・・・色々妄想が捗ってしまう。


「ねー、まだぁー?」


「お、おお!そうだな、済まなかったな」


痺れを切らしたヴィーから催促を受けたので探索を再開した。


「ご主人様、ご無理をなさってはいませんか?

 先程身体を整えさせて頂いた私が言うのもおこがましいのですが、

 お気分が優れないようでしたら一旦ご休憩なさっては如何でしょう?」


ナズに心配されてしまった。


いや、ステータス調整に戸惑っていただけなのだ。

気分が悪くて震えているのでは無く、これは武者震いだ。

時間が掛かってしまったのは妄想込みだからだ。


「いや、そういうんじゃないんだ。

 ちょっとしなければいけない事が一杯あってだな・・・」

「えー、ずっとカベ見てただけじゃん!」


「ヴィー、ユウキ様にはユウキ様のお考えがあるんだ。

 邪魔をしてはいけないよ」

「ふーん?」

「ご安心下さい。

 遅れた分を取り返すべく、即座にボス部屋へとご案内可能です」


そうだ、今までほうけて(いや失礼だな、設定だ設定)いた分、

先行のパーティはボス部屋に到達したのだろう。

その道中の魔物は蹴散らされた後で、ボス部屋のルートは開拓されている。

そう思えば中間部屋で休憩を取った事も、別に悪い事では無かった。


「だろうな、先程の先行パーティが既にボス部屋に到着したのだろう?」

「はい、もう既にボスと戦っておりますので、

 どうせ待つのであればどこで待っても同じ事でした」


「流石はユウキ様です。そこまで読んでいらっしゃったのですね」

「そうなのですね。私のために休憩を長く取って頂いて申し訳ありません」

「そ、そーなのか。ゴメンなさい、ご主人サマ」


な、何だか勝手に良いように取られてしまった。


これ調子付くと絶対ボロが出る奴だ、知ってる。

否定もしないし肯定もしなければ、

後で追及されても困る事にはならないだろう。



   ***



ボス部屋までのルートは迷う事も無く、一直線であった。

勿論魔物も出て来ない、蹴散らされた後だし。


ボス戦前にちょっと切り替えたばかりの職Lvを上げて置きたかったが、

結局やる事は変わらないのだ。

何だったら魔法無しでもこのパーティなら余裕で勝てる。


あ、しまった。

道化師Lv1では知力上昇の効果は期待できないな・・・。


ま、まあ良い。

ボーナス魔法と、魔道士の通常魔法の2コンボで仕留める。

今の自分にはそれしか有効手段が無いのだから。


ボスの待機部屋に入ると、扉が開かれた。


先行のパーティは効率良く周回して掲示板報酬を狙うハンターなのだろう。

ボスとお供、3匹の戦いでは時間など取らないと言う事だ。

煙が巻かれてボスが姿を現す。


今のうちに鑑定をして置く。

名前が解らないままだと指示をするにも困る。


         ・フロックフロッグ Lv25

 ・ブラックフロッグ Lv25     ・ブラックフロッグ Lv25


「こいつはフロックフロッグと言うらしい。

 通常攻撃が、稀に強力な一撃へ化けるので注意してくれ。

 盾で受け切れないような事があるかもしれないから、

 ジャーブと誰か2人で行ってくれ」


「では私が」「宜しくお願いします、アナ殿」


ボスであるフロックフロッグは、

サイズこそブラックフロッグと大差は無いが、

違いがあるとすれば皮膚病のようなイボが複数ある事と、色がグレーだ。


イボが集まってボコボコに見えるから、集合体フロックなのだろう。


動きも機敏で、機動力は大幅に上がっている。

迷宮の通路よりもボス部屋の天井が高いせいなのか、

通路で出遭ったブラックフロッグよりは高く飛び、速く動くのだ。


そのため大きくジャンプして3人を下敷きに・・・等と言う事は無かった。

前方へジャンプしながらの突進は健在だ。

そして舌を伸ばした攻撃が素早く、長く、そして重くなったようだ。

舌自体も3つ又に割れていて、攻撃できる左右角も増している。


手で引っ掻いて来る攻撃は仕掛けて来ないようなので、そこは安心した。


それにしても速い。

ラピッドラビット程では無いが、

あの巨体からどうやってこのスピードが生まれるのか。

やはり2人を向かわせて良かった。


ボスのフロックフロッグも魔法攻撃を持っているが、

その際は詠唱マークが出るので、これは気にしなくとも良いだろう。


アナが率先してフロックフロッグを取った事で、

雑魚2匹は必然的にナズとヴィーとなった。

2人は2手に分かれて左右へ散る。


お供は2匹とも蛙だった。

先程ボスを鑑定した時に、

雑魚の名前はブラックフロッグだと言う事も解った。

今更かよと言う突っ込みはナシだ。

これまで知る必要が無かった。


2種とも水魔法が恐ろしいが、なあに。そこは自分が止める。

早速ガンマ線バーストを詠唱し、バーンストームを重ねた。

MP回復のためにオーバーホエル・・・あれ?


オーバーホエルミング!オーバーホエルミング!オーバーホエルミング!


時空が歪まない。


手に汗が現れ、頭の先から熱くなる。

まずったか。

何かやってしまったか。


オーバーホエルミング無しでも一応矢の射出はできる。

狙いを付けて通常発射を試みた。


矢はフロックフロッグ目掛けて飛び、

同時に射出された2発ともが顔面へ突き刺さった。


ほっ、弓は正常だ。


但し蛙たちは大きくジャンプする傾向から、

オーバーホエルミングで狙わなければ外してしまう可能性は高い。


待て、まだ焦るような時間ではない。†

形勢的には全く有利なのだ。

ゆっくり考えろ・・・先程自分は何をした?


新たなジョブを得て、ジョブを交換してスキルを交換して・・・ええと、


勇者だ!

オーバーホエルミングではない!

使うべきスキルはオーバードライブだった。


そしてオーバードライブ中に魔法を使用すれば良かったと後悔をする。

勿体無さと焦燥感から汗が引かない。

2ターン目の魔法を詠唱する際、オーバードライブを使用させて貰った。


オーバードライブ!ガンマ線バースト!バーンストームッ!


威力の上昇量はLv1なので微々たる物だろう。

時空が歪んで見えるので、今のうちに追加のMP回復射撃を行った。

いやもう、これ全部同時にやるべきだ。


オーバーホエルミングからオーバードライブになった結果忙しくなった。

ヒラから課長に昇格した事で、余計なタスクが増えたサラリーマンだ。

責任だけ増えて報酬が変わらないどころか下がるなんて事はよして欲しい。


結局ボスを仕留めるまでは13ターン掛かった。

勇者Lvが低過ぎてオーバードライブの威力上昇は全く期待できない事と、

バーンストーム1枚と言う事が戦力を大幅に削ったのだろう。


ガンマ線バーストは連発するとMPの枯渇が酷く、

毎ターンは使用できなかった。

射撃で賄えるMP回復量も併せて再計算せねばならない。

多分オーバードライブのMP消費量がエグイのだろう。


Lvは・・・1戦闘で勇者が3。

低っ!


目利きと道化師は共に5であった。

取得効率に200倍を掛けてもこれだ。

先が思いやられる。


それよりボスのアイテムは何であろうか。

周回が必要になる程には大層なアイテムなのだろう。

小さくてよく見えないので近寄って確認する。


ペッパーのような粒状の何かが、ボスの位置していた場所に転がっていた。

一度に3粒出たようなので、香辛料の1つなのだろうか。

鑑定・・・っと。


 ・山椒


山椒って、あのサンショウ?


サンショウ・・・蛙から?

オオサンショウウオ?両生類だし。


大体、山椒なんて鰻に掛ける位しか知らないぞ。

この世界にも鰻の蒲焼があるのか?

それだけのためのドロップ品とは思えない。


落とす物が山椒なのだから、あのイボは山椒の塊だったのか?

蛙のように見えたが、実はオオサンショウウオなのだろう。


だからなのか、手を使った攻撃をして来なかった。

魚から蛙に成り掛け・・・わば進化の途中であり、

手が未発達で使えないのだ。


・・・と、言うのが今勝手に解釈した持論である。


「山椒って何に使うんだ?」

「胃腸薬ですね、料理では風味付けに使ったりします」

「冒険者ギルドの掲示板ではお決まりの依頼品ですね、

 こいつから出るんですか・・・俺は初めて知りました」


山椒を薬にするらしいので、ガマの油ならぬガマの山椒だ。

それも胃薬なのか。

民間療法的な使用方法にびっくりだ。

マジックアイテムだし、本当に効くのだとは思うが。

それならばある程度の価値はあるのだろう。


そういえば以前掲示板の依頼を見た時には胃腸薬の依頼があった。

それがこれなのだとすると、

結構狩り易いし良い収入源足り得るのは理解できる。


「では少し周回するか」

「これでまた、お料理が捗りそうですねっ!」

「かしこまりました」「はい」「やったーたべものだー」


食べ物と言っても調味料なのだが、それで良いのか?

食が捗るのであればヴィーは何でも良いのかもしれない。

多少色気付いて来たかと思ったが、やはりヴィーはヴィーだった。


後続、いや先行していたパーティはそれなりに討伐速度が早く、

ボスの待機部屋で待ったとしても数分、

道中で魔物に出遭えば、その戦闘時間で追い付かなくなる位であった。

それだけ自分たちの殲滅速度が遅くなったのだとも言える。


十数回倒し終わった所で、ナズから帰宅の提案があった。


「ご主人様、今日は早めに上がられてはどうでしょうか」

「お、もうそんな時間か」


「食事の用意をするには少々早めですが、

 今日はご準備があるでしょうから・・・」

「それもそうだ。ではアナは一旦ボルドレック邸へ」

「かしこまりました、行って参ります」


ゲートをボルドレック邸宅横の見付かり難い場所へ開く。

アナがゲートの向こうへ行って直ぐに帰って来た。


「ご主人様、これを」


「おっ、手紙か」

「いえ、直接手渡されました」


「待たせていたのかな?悪い事をしたな」

「そういう雰囲気では無かったようです。

 たまたま鉢合わせした感じで、イルマさんも驚いておられました」


「そうか、何にせよ直前の情報が得られて何よりだ。みんな、戻るぞ」

「「はい」」「分かりました」「はーい」


迷宮の位置付けはどういう状態なのだろうか。


トラッサの迷宮入口がある地点を移動の起点としているのだとしたら、

移動距離はトラッサとホドワの自宅間程度の距離になる。


これまで極端に息苦しくなるような辛さは無かったので、

恐らくは異次元から移動しているのでは無く、

殆どトラッサの街からの移動魔法に近いのだろう。


自宅から航海中のパニの現在地までが近いのか、

トラッサからの方が近いのかは不明だ。

ただ、アレクスムからは十分減ったと感じる位に消費した。


以前シルクスへ向かって3人で飛んだ時にも相当消耗したと感じたので、

現実的に考えればホドワもトラッサも内陸部にあり、

海上へ移動するならばシルクスの方が距離的に有利なのだろう。


自宅から船に移動するのが困難と感じたならば、

その時はシルクスを経由するしかあるまい。


まずは一旦自宅に帰り、そこから船室へ飛んでみた。


・・・・・・。


ガツっと減ったような感じは無い。

ただ、多分もう1回は厳しい。

トラッサから自宅まで5人分の輸送をしてからでも、

まだ何とかMPに余裕はあるようだ。


「パニ、パニ。起きてるか?」

「は、はい。大丈夫です。

 夜の交代の時間が来るまでは起きていようと思っておりました」


「そうか、水は?」

「はい、既に半分程頂きました」


2日目で半分か。

ワープが成功しなかったら全然足りなかったかもしれない。

ペットボトルは1つしかないので、

本来ならちゃんと考えて水を持って来るべきであった。

まあワープ不能の状態であったならば自分で水を出していたのだが。


「よし、新しい物に入れ替えてやるから貸せ」

「はい、宜しくお願い致します」


「食事は?」

「僕は殆ど動きませんので朝と晩だけで十分です。

 今日はこの後に頂こうかと思っておりました」


「では最初の20個で足りるな?」

「そうですね」


「ではちょっと待ってろ」


ゲートを繋いで自宅に戻り、

エミーにお願いして水を抜き、ハーブティーを入れた。

そして直ぐに船室へ戻る。


うっ・・・。


減った。

枯渇間際だと判る位にはMPを消耗した。

トラッサとホドワの5人輸送後に、海上と自宅2往復は危険だ。

強壮剤を口に入れてやる気を取り戻す。


パニにペットボトルを渡し、リュックへ戻させた。


「それではいつもと同じように、外をぶら付いてから帰る。

 次は明日の昼だ。何かあったらその時に」

「かしこまりました」


外に出るとやや日差しは強く、

この船は西に向かって進んでいるのだろうと言う事が解かった。

自宅から見て相当西側なのだろう。


ホドワではもう日が傾き掛けている感じであったが、

ここではまだ体感で3時位だ。

遠くの方まで空は澄み渡り、海鳥の声が聞こえていた。


先日マストの上で見張りをしていた、

獣人の船夫を甲板で見付けたので声を掛けてみる。


「やあ」

「どうも、きばらしですかい?きょうもてんきがよくていいね」


「その事なのだが、嵐の気配はどうだ?」

「うーん、このじきにしちゃあめはすくなーかなっておもーんですがね、

 ふるときゃふるし、なにもなーときはなーもんですぜ」


「嵐が来る前は分かるのか?」

「そんときゃなみがまずあれまさあ。

 つぎにとりのむれがね、ほにとまるんでさ」


ええと?

波が荒れて、鳥の群れが帆に停まるのか。

嵐を避けるために宿り場所を探すのだな。


見た感じ波は穏やかで、鳥たちは遥か先を飛び回っている。

船は相変わらず激しく揺れるが、船員たちが慌てている様子は無い。

それならば安心だ。


「そうか、じゃあ当分は大丈夫だな、邪魔して悪かった」

「いえいえ、あっしもしたにいるときゃーひまでさぁ」


見張りの交代要員なのだから他に仕事は無いのだろう。

疲労困憊していては見張り業務が散漫になってしまう。

船夫たちの仕事はもっと過酷な物かと思ったが、意外と緩いもんだ。

いやいや危険と隣り合わせなのだから、

その位は許されなければと言う事だろう。


いつものように船室へ戻る振りをしながら、自宅の廊下に戻った。

勝手口の扉を開けて畑を見る。


うん。

やはり、日が落ちる前のどこか寂しい日差しの感じ。

さっきよりは東にやって来たのだなと言う事が良く解る。


早くに帰っては来たものの、やる事と言えば風呂を入れる位だ。

そういえば手紙の内容はどうだったのか。

自室に戻るとアナが待っていた。


「お帰りなさいませ、ご主人様。宜しいでしょうか」


「うん、風呂を入れながら聞こうか」

「かしこまりました」


風呂場でスキルセットを入れ替え、

魔法使い、魔道士、遊び人、道化師の4つのジョブを取った。

ファイヤーウォール、ウォーターウォール、

それからアクアウォール、バーンウォール、の4つを順に出して行く。


効率は倍になった。

ただしMP消費がキツイ。


消耗も倍になり、2回目で早くも強壮剤のお世話になった。

いや、ワープのし過ぎだろう。

先程から全く回復の余地が無い。


その横でアナは手紙の内容を淡々と語る。


「こちらの情勢をお伝え致します。

 本日夕刻、ホドワの酒場にムシャディとその配下2人、

 合計3名が向かうようです。

 うち1人はかつてドラッドのお付きを務めた事があり、

 件のドワーフの顔を覚えています事から、

 この度の確認のために呼ばれたようです」


「ふむ、間違い無くナズだと認識されるのならば、逆に好都合だな」


「そのようですね、続けます。

 ・・・金を積めば相手方の所有者も折れるだろうと言う想定の上、

 白金貨を持参するようです。

 それでも不服を示された場合は、ボルドレック様の名に於いて

 決闘をけしかける事も辞さない構えのようでした。

 アナ様のご主人はそれをお望みでいらしたようですので、

 都合の良い運びになるかと思われます。

 ボルドレック様は、相手方を商人だと言う話で窺い知っておりますので、

 決闘を持ち出せば折れるだろうと言う算段のご様子でした。

 アナ様達のご武運を祈ります。 イルマ

 ・・・との事です」


「ふーん?何か猿芝居をしなくても勝手に吹っ掛けられそうな勢いだな?」

「そのようですが、余裕がある所はお見せしない方が宜しいかと思います」


「勿論解っているさ、それよりMPがキツい。

 強壮剤を取りに行くので手伝ってくれ」

「かしこまりました、武器と盾を持って参ります」


アナはラフな格好のまま剣と盾だけを持参し、準備完了のサインを示した。

もうアニマルトラップなど敵では無いと言う余裕だろう。

アナも随分と強くなった。


対峙した直後に状態異常耐性ダウンを掛ける。

アナは素早く背後ヘ陣取って滅多刺しにすると、

ものの数秒で石化してみせた。


やはり低層の敵はベースの耐性も低いのだろう。

2戦目、3戦目もアナは同じように完封して行く。

この所強壮剤を使用する回数が多かったので、

今度の予定も兼ねて多めに補充した。


勿論自分もMP回復のために矢は何度か撃ち込んだし、

石化した魔物を倒すにはデュランダルを使わせて貰った。

当然MPは満タンまで回復した事だろう。

風呂場に帰った後は強壮剤で補給しながら満水まで壁魔法を使用した。


外はまだ明るい。

何せ早めに切り上げ過ぎた。

こうも明るいとまだちょっと色々致すのは早過ぎる。


えーっと、そうだな。

久しぶりに要らないアイテムを売却しよう。


探索者ギルドの方では山椒の買い取りが定期的にあると聞いた。

ならば山椒は売らずに残して置いて、

それ以外を纏めて探索者ギルドで売る事にする。

まだ夕暮れには早かったので買い取りカウンターに集まる人も疎らだ。


さて・・・万能丸の元である麻黄はどうしようか。

換金効率を考えれば全て万能丸にした方が絶対に得だろう。

ただし、それは何も制約が無い場合だ。


麻黄を万能丸に変えると、その数は2倍に膨れ上がる。

現状でアイテムボックス5枠を超える全ての麻黄を変換すると、

その数は500粒以上となってしまう。


常識的に考えておかしいだろう。

絶対に密造しているとバレる。

仕方無いが原料のまま売るしか無い。


岩だって2枠を超えており、単純計算すると100個以上ある訳で、

これはもう裏口をお願いするしかない。

受付のお姉さんに頼んで、大口買取部屋に案内して貰った。


「どうも、大口担当です・・・やや、また貴方ですか。

 まさかまた岩って事は無いでしょうね?」


「済まないが、その・・・また岩なのだ」

「はぁー。

 そうならないようマメにお売り下さいねと前回言ったと思うのですが、

 ホントに。頼みますよ?」


チクリと一言刺されてしまった。


仕方無かろう。

前回は前回、今回は今回だ。

それに前回はホドワの買い取りカウンターヘ分散させたのだ。

最大限配慮はしたのだから許せ。


「あ、ああ。次は気を付けるのでヨロシク・・・」

「はい・・・分かって頂ければそれでかまいません。

 それではそちらの台にお積み下さい」


アイテムボックスから取り出して岩だけを積んで行く。

岩だけで132あった。

その他のアイテムもアイテムボックスにギュウギュウなのだ。

ゆ、許せ。他のアイテムも優に200を超えていると思う。


「その他のアイテムも一緒にお積み下さい」

「い、いや、多分あり過ぎてこの上には積めないのだ・・・」


「ええ!?一体どれ程お貯めになっているのですか、本当にもう・・・。

 勘弁して下さい。良いですか?

 その日手に入れたアイテムはその日に売る、

 これが探索者の基本ですからね!?」


その後もアイテムを取り出す度に長々と説教を受けてしまった。

結局1種類ごとに纏めて台の上ヘ乗せ、

大型ギルドボックスに投げ込む作業を繰り返した。


と言っても岩以外ではコウモリの羽、カルバミ、麻黄の4種であり、

後は多くても50個程度だったのでそう時間も掛からずに済んだのだった。


全てをギルドボックスに放り込み終わると、

勝手に精算されて金貨と銀貨がジャラジャラと出て来る。


「はぁ。受け取ったら早く退室して下さいね、この時間は混みますので」

「あ、ああ。済まなかった」


追い出されるように退室させられると、

出入り口には大口の売却をしに来たであろう探索者たちが列を成していた。


す、済まないな皆の者・・・計画無しに大口になってしまったせいで。

自分が逆の立場ならもっとしつこく小まめに来るよう言っていた事だろう。

貯め込み過ぎもまた迷惑行為なのだ。

探索者の風上にも置けない。


大体毎回大口では目立つし、いつかは足も付く。

変に探られても困るので売る時はできるだけ小口で行くしかない。

特に大きなアイテムの際は気を付けよう。

∽今日のステータス(2021/11/28)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv56

  設定:探索者(56)遊び人:中火魔法/知力中(53)

     英雄(50)魔道士(32)防具商人(35)


  取得:村人(5)英雄(50)戦士(30)剣士(34)商人(30)

     色魔(1)奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)

     暗殺者(42)武器商人(30)農夫(1)薬草採取士(30)

     錬金術師(1)料理人(18)村長(1)盗賊(30)

     魔法使い(50)僧侶(19)神官(1)博徒(35)

     細工師(50)冒険者(1)機工師(1)目利(1)勇者(1)

     道化師(1)


 ・BP154

   鑑定          1pt   必要経験値減少/20 63pt

   キャラクター再設定   1pt   5thジョブ     15pt

   パーティー項目解除   1pt   MP回復速度×3    3pt

   パーティライゼーション 1pt   詠唱省略        3pt

   パーティジョブ設定   1pt   ガンマ線バースト    1pt

   獲得経験値上昇×20 63pt   ワープ         1pt


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv48

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv47

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv47

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv45

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv49


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv56

  設定:探索者(56)魔道士(32)勇者(7)目利き(14)

     道化師:中火魔法・破魔鏡/知力中・知力大(11)

     神官(13)


  取得:村人(5)英雄(50)戦士(30)剣士(34)商人(30)

     色魔(1)奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)

     暗殺者(42)武器商人(30)防具商人(35)農夫(1)

     薬草採取士(30)錬金術師(1)料理人(18)村長(1)

     盗賊(30)魔法使い(50)僧侶(19)遊び人(53)

     博徒(35)細工師(50)冒険者(1)機工師(1)


 ・BP154

   鑑定          1pt   6thジョブ     31pt

   キャラクター再設定   1pt   MP回復速度×3    3pt

   パーティー項目解除   1pt   詠唱省略        3pt

   パーティライゼーション 1pt   メテオクラッシュ    1pt

   獲得経験値上昇×20 63pt   ガンマ線バースト    1pt

   必要経験値減少/10 31pt   ワープ         1pt

   結晶化促進×16   15pt   知力          1pt


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv48

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv48

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv47

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv45

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv49



 ・戦利品

   コウモリの羽 ×2    岩       ×11

   麻黄     ×35   カルバミ    ×87

   山椒     ×23



 ・繰越金額 (白金貨2枚)

     金貨 59枚 銀貨 54枚 銅貨 67枚


  アイテム売却    (42603→55383й)

   スパイダーシルク ×  3     120

   毒針       ×  5      25

   ウサギの毛皮   ×  2      20

   鑄        × 50    1500

   コウモリの羽   ×203    7105

   コウモリの牙   ×  1      65

   岩        ×132    5280

   カルバミ     ×204   14688

   麻黄       ×276   13800


     金貨+ 5枚 銀貨+53枚 銅貨+83枚

  ------------------------

  計  金貨 64枚 銀貨107枚 銅貨150枚



 ・異世界52日目(昼)

   ナズ・アナ47日目、ジャ41日目、ヴィ34日目、エミ27日目

   パニ17日目、サンドラッド到着まで9日



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  22 ハットバット     /  パットバット

  23 ノンレムゴーレム   /  レムゴーレム

  24 ハーフハーブ     /  ハートハーブ

  25 ブラックフロッグ   /  フロックフロッグ

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