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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第十章 結実
194/394

§182 贅沢

昼の時間をナズが申告する。

結局の所昼までの短い時間では中間部屋を発見できなかった。


乗船の手続きやらなんやらで朝は忙しかったし、

迷宮自体に向かった時間が遅かった事もある。

ゲートを家に繋ぎアナだけはボルドレックの屋敷へ飛ばした。

そして手紙を探して直ぐに戻って来た。


迷宮内で合流したのでそのまま報告を受ける。


「ご主人様、明日の夜ホドワの酒場に、

 ムシャディと言う名の側近が派遣されるようです。

 いよいよですね?」


「解かった、警戒しよう」


2回目の帰宅用ゲートは納屋の横では無く自室へ繋ぐ。

誰かが残っていたらぶつかってしまうからな。


家に戻るとヴィーが鎧のままやって来た。


「あれっ、パニは?」


あー・・・。


「パニは船に乗って別の国に向かった。鎧はジャーブかアナに頼め」

「ええっ!?パニもうあえない?」


ヴィーの顔が曇り、悲しそうな顔になった。


おっ脈ありか?

少なくとも頼りにはしているようだ。

良かった良かった。


「使いに出しただけだ、心配するな。10日後には帰って来る」

「そ、そっか、良かった~。じゃ、アナねーちゃんおねがいしますっ」

「はい、では納屋に行きましょうか」


帰ると言うか、迎えに行くと言うか。

どっちでも一緒だろう。

荒くれ者達の中で弄ばれていないかだけが気になる。


他人の奴隷とは言えパニは耽美系なので、

むさ苦しい男共がムラムラっとしてしまう可能性も・・・。

い、いや、考えないで置こう。


ヴィーはアナと一緒に部屋を出て行った。

入れ替わりでエミーがハーブティーを持って来た。

2客持って来たようだが、惜しい。

アナは今出て行ってしまったばかりだ。


スっと健やかな香りを楽しみながら1口を啜った。


どうせ食事が整うまでの間は暇だ。

ゲートを開いて船に戻ってみた。


船室の中では相変わらずいびきが飛び交い、

キュゥキュゥと木の軋む音が響き渡る。

船には何度か乗った事があるが、当然モーター式でスピードは一定だった。


この船は帆船なのでスピードも風次第、

加速も減速も波の影響をもろに受ける。

左右の揺れは勿論の事、前後にも上下にも相当揺れる。

これでは慣れていない者は船酔いするだろう。


持って来たLEDライトでパニのベッドを照らすと、

直ぐに気付いて顔をこちらへ向けた。


「パニ、どうだ?」

「お帰りなさいませ、ご主人様。変わりはありません」


「そうか、トイレなんかは多分船の上から海に向かってするだろうから、

 勝手に動いて大丈夫だと思う。暇なら表に出ても良いぞ」

「はい、今の所大丈夫です。ありがとうございます」


「明日もこの時間に戻って来るからな。

 船夫たちが何時ごろ交替するか判らんので、

 安全な時間はこの時間帯だろう」

「かしこまりました」


船室の扉を開けて表に出ると、再び船は大きく揺れた。

壁を這いながら表に出ると、もう周りは一面海だった。


振り返って見回しても陸は見えない。

さほど海上に波があるようには見えないが、

それでもこれだけ揺れるのだ。


嵐なんかが来たら大変だろう。

そういう日取りは読んでから出航するだろうが、

海の天候は変わり易いと聞く。


或いは悪天候だと解っていても、

商機を急いでイチかバチか出航するかもしれない。


何せ安全なんて担保されない時代だ。

ブレーキの付いていないロケット弾に乗ってしまったのかもしれない。

これなら、自分で進退を判断できる迷宮の方が遥かに安全だろう。


嵐が来て船が転覆し、パニを失うのは避けたい。

船夫達の交替時間よりも前にここへ戻って来て、

夜にも一応顔を出した方が良いかも知れない。


甲板にいた手の空いていそうな船夫を探して声を掛けた。


「ちょっと済まないが」

「xxxx?xxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxxx」


うぉっ、長文が返ってきた。

しかも意味不明だ。

これだから人間族は。


手で話を中断するようにジェスチャーを取って、頭を横に振った。


乗り込む時には船長を紹介され、

そこで書状を見せたが船長もブラヒム語を理解できず、

一緒にいた船夫が通訳をしてくれていた。


船に乗るだけの毎日だ。

戦闘スキルなんて不要だろうし、ブラヒム語を必要とする機会など無い。

さっきの男が特殊だったのだろう。


困ったな。


話が通じる者・・・。

先程案内してくれた男は交代要員なのか、

出港後に船室へ入って来たのを確認した。


出向前に外で準備をしていたのだから、日中は寝る番なのだろう。

その時に寝ていた者達が今業務をする番なのだ。

夜しかあの男とは会えないし、夜では顔の判断ができない。

暗いであろう船上で見付ける事は困難だ。


話が通じそうな・・・獣人の男がマストの上で見張りをしていた。


彼なら通じるだろうか?

自分が話せばバーナ語に自動翻訳されるはずだ。


「おーい、見張りをしている君ー!」

「なーでござましょー?

 バーナごはなすにんげんさんたーめずらしねー」


ああ、これこれ。

脳の理解が追い付くまで多少時間の掛かる感じ。

多分バーナ語で間違い無い。


「済まないがー、皆の交代の時間を教えてくれー!」

「あっしは2じかんでこーたーですがー」


2時間・・・と言う事は日本時間に直すと3時間。

確かにマストの上での見張りでは、

そんなに長い事気を張っていられないだろう。

風を受けて体も冷えるだろうし。


彼が3時間で交代と言っても、それは朝晩の交代の事では無い。


「見張りの交代では無く、寝る時間の交代だー!」

「それならひがーみにつーたらでさー」


ひがみに?つーたら?


日が海にか、日没だな。

と言う事は迷宮から切り上げる辺りで、

そのまま船室に戻ってくれば良いのか。


「解かったー!有難うー!」

「あいあいさー」


アイアイサーだと?

イギリス海兵の返事だ。

船乗り共通語?


この世界を作ったのが原作小説の作者なのだから、

作者の知識が根底となる設定を作っているとも考えられる。

それとも言語体系的に進化を遂げた結果、

独自にこの返事へ辿り着いた?


海上では声が拡散して、ちょっと離れるともう聞こえない。

元は別の言葉が聞こえ易い言葉に変化する事もあるだろう。

その結果がこの「あいあいさー」なのだとすると、

今の返答は英語とは違うニュアンスなのかもしれない。


そもそも今のはバーナ語だ。

ブラヒム語(日本語)とは異なる訳で、

アレコレ考察するのは意味が無かったかもしれない。

そもそも理解可能な言語であれば勝手に自動翻訳されているはずなので、

彼はAiAiSirの意味する何かを言っただけのかもしれない。


ともかく交代時刻を聞けたのでミッション完了だ。

船室には戻らず、船内通路の壁から自宅に戻った。


まだ昼食は全て準備されていなかったが、

慌ただしく調理を進める2人を席に座り眺めながら待った。

ヴィーも基本的に暇なので調理をしている所を眺めている事が多いが、

今日に至っては甲斐甲斐しく皿を並べたりテーブルを拭いたりと、

それなりに手伝いをしている。


「今日はナズの手伝いか。偉いぞ」

「だってパニがいないし」


パニが来てから、この仕事はパニがやっていたのか。

それが10日も帰って来ないので、仕事を代わってやっているのだ。

恐らく言われたからではなく、ヴィー自身で考えたのだろう。


それだけパニの仕事ぶりを見ていたと言う事になる。

同じ竜人族同士何をしていたのか気になる、いや意識していると言う事だ。

良かった、こちらも順調だ。


エミーがスープ鍋を運んで来たので、ヴィーはテーブルの中央を空けた。

よそって配るまでを手伝っている。

零さないかハラハラしたがそんな事は無かった。

ナズが肉料理を仕上げて小皿に分け、それをエミーが配膳して回る。


昼食が整った。

ヴィーはジャーブを呼びに庭へ出て行った。

この動きまでがパニの仕事だったのかな。


細かく指示を出していないが、パニは良くやってくれていたようだ。

最初に指示をしたのはナズだと思うので、

逆に言うと指揮系統がしっかりしている。


食堂の娘だったのだし段取りは上手なのだろう。

自分ならばその場で行き当たりばったりの指示になってしまい、

無茶苦茶になっていただろうと予想する。


て、適材適所だからな。


ぬるま湯で育って来た自分には指示系統なんて無理だ。

サラリーマンになっていたら、部下を正しく扱えない無能者だったろう。

いや、社会経験を積めばできるようになるのか?

義務教育は知識を得るには素晴らしいが、

自立と言う意味に於いては弊害があるのだと沁み沁み感じた。



   ***



午後も24層の探索を再開する。


魔物の殆どはハーフハーブ。

ノンレムゴーレムもそれなりに出現数が多いが、

それでも3体出る事はまず稀で、

その場合でも前衛2人がしっかりと止められる。


ナズが殆ど動かないと言う事は、前衛陣が安定している証拠なのだ。

56層でレムゴーレムを相手にした時は、緊張感で一杯だった。

もう自分たちの実力はもっと上に位置しているのだろう。


この位の段階でミチオ君は帝国解放会に招待されていた。


ゆっくりとあちこちの迷宮を進めていたペースを改め、

クーラタルに絞り2日で1層と言うスピードへ切り替えたのだ。


2日で1層か・・・。


自分達はこの24層での攻略に延べ2日を掛けているが、

未だ中間部屋すら辿り着けていない。


そういえばクーラタルの迷宮は地図があった。

この国の迷宮には無い。

その差がハッキリと表れている。


やはり地図はあった方が良い。

無いなら作るしかない。

案外、地図を売る商売も悪くないかもしれない。


これなら迷宮での経験が生かせる。


深層階で魔物を討伐しながら、

測量をする者の護衛をすれば良いだけだ。

火力だけはある我がパーティなので、打って付けである。

勿論、そういう技術がある者を奴隷として迎え入れられたらと言う話だが。


そこが一番のネックか。

そんな技能があれば奴隷に落ちる事なんて。

余程食うに困るような大事件が起きなければ、

滅多な事で起きる話では無い。


例えばセリーの家のように、

家族の大黒柱が大怪我を負って急に金が必要になったとか。


・・・他人の不幸話を待っているようで、

日本育ちの自分からすれば後味が悪い。

そんな状態を目撃したとしたら、

普通に金を貸してやってゆっくり返済して貰えば良いだろう。


やはり金儲けの手段は他に考えなければ難しい。


そんな事を考えながら魔法を撃った。

もう後列には何の脅威も無いのだ。

ジャーブとヴィーには悪いが手を抜かせて貰っている。


ハーフハーブが悪いよ?

もさもさしてるだけだし。


たまにノンレムゴーレムの足元を潜り抜けて後列に顔を出すが、

オーバーホエルミングで蹴り飛ばして前列に送ったり、

ナズがフルスイングで弾き飛ばしたりして視界から消える。


24層に配置すべき魔物では無い。

アイテムの希少性からここなのだろうが。

ノンレムゴーレムさえいなければ倒し易さはナンバーワンだ。


本体は弱く倒し易いが、一緒に出て来る別の魔物が厄介で倒し辛い。

それこそが万能丸の希少性を高めているのだろう。



   ***



中間部屋を見付けた所で、一息入れる事にした。

アクアウォールを出し各自で水を補給する。


「ふー、ようやくだな。長い事掛った気がする」

「最初に来られてから、もう10日も経っていますね」

「道が入り組んでおりましたので、少し迷いました。申し訳ありません」

「以前ここに来た時は練習のためだったのでしたからね。

 午前中の探索時間も限りがありましたし、仕方無いでしょう」


「もうそんなに経っているか。

 あの時と比べたらもう全然ノンレムゴーレムは怖くないな」

「ヴィーも上達しましたし、

 良い装備をお与えになった事が大きいのでしょう」

「えへへ、アタイエラい?」


「ああ、偉いぞ、頑張った」


ヴィーの頭をヨシヨシした。


ナズとアナが見詰め合ってヴィーの後ろに並ぶ。

はいはい、解かりました。

君たちも頑張りましたよ。


「ジャーブも、ヴィーの練習に付き合って貰って悪いな」

「お、俺は大丈夫ですので」


「いや、流石に判っている。

 それより、どうだ?まだ続きは行けそうな時間か?」

「そうですね、もう1時間位は大丈夫かと」


結構ある気がするが、ボス部屋を発見できそうな時間では無い。

では残りは探しつつ討伐で、見付けたらラッキー位で行こう。


「では欲張らず、時間までは探索を進めようか」

「「はいっ」」「分かりました」「あーい」


迷宮探索で最も煩わしいのは通路の吻合ふんごうだ。


袋小路ならば、調べれば行き止まりだと判る。

直ぐ近くに魔物の気配が無ければ、

隠し部屋や通路などが無いと確定するのも早い。


道が入り組んで吻合ふんごうすると、

以前来た場所なのか、それとも初めての場所なのか、

そもそもどこから来たのか、前回どちらに曲がったのかが判らなくなる。

アナのように、方角では無く右左直進で考えると尚更混乱する。


魔物の配置を理解できているからこそ目立った混乱は無いが、

吻合ふんごうした箇所を見落とし、

同じ方向へ曲がった事に後から気が付いて、

来た道を戻ったりする事が多くなった。


簡単でも良いから、マッピングはした方が良いかも知れない。

マッパー欲しい。

絵なら描けるが、正確な地図のような物は体感から書く事が難しい。

大体、空間認識が得意ならば来た道に気付く。


自分が余計な口を挟むと益々アナを迷わせる事になるので、

敢えて口を挟んでいないのだ。

悲しい現実である。


迷宮では定期的に魔物の配置が動く。


全く狩られていないとその場に留まるが、

基本的に多くの魔物は自力で徘徊をする。

遠くの目標にしている魔物が動かれると、

どこだっけと言う事になりかねない。


戦闘を挟むと集中が切れ、

意識していた配置を追えなくなり混乱に拍車を掛けるのだ。

迷宮が広くなり、魔物の数が多くなれば尚更だ。


アナの能力は便利だが、その処理が追い付かなくなって来ている。

20層ともなると、それだけ広くなっていると言う事だ。


1戦を終え、アナに尋ねる。


「どうだ?追えているか?」

「今の所は大丈夫かと思います。

 中間部屋までは苦労しましたが、残り半分の苦労は無さそうです」


まあ、それもそうか。

中間部屋を見付けるまでは全てが不明。

そこさえ見付けてしまえば、残りの未探索範囲は限られる。

中間部屋までが困難なのだ。

今後中間部屋までの距離が更に拡大し、倍以上になったら・・・。


困るなあ。


6人目に迎えるべき仲間は本当の意味での探索者が欲しい。

我々のパーティには後1人分の枠があるのだ。

ゆっくりじっくり探そう。


「ご主人様、久しぶりにハットバットの群れです。

 ノンレムゴーレムと一緒に2匹確認できますが、

 まだいるかもしれません」


「おー、ではハットバットはノンレムゴーレムに杭打つので飛ばしてくれ」

「では、なるべくナズさんに送ります」

「わ、私の出番ですね、頑張りますっ」


鑑定・・・っと。

ハットバットが3匹、ゴーレムが1匹だ。

マリモ・・・じゃなかった、ハーフハーブは空気で良い。


「アナ、ナズ、ハットバットは3匹だ。

 ジャーブ、ヴィー頼むぞ、ハットバットを後ろへ送ってくれ」

「「「「はい」」」」


ノンレムゴーレムはヴィーが率先して取りに行った。

自信の表れだろうか。


手が空いたジャーブはハーフハーブを通路の遥か奥の方へ吹っ飛ばす。

事実上魔物の数が4匹になった。

そしてヴィーに群がるハットバットを追い払い、ナズとアナの方へ誘った。


まずは1匹、ナズがハットバットを叩き落とす。

アナはエストックで突いて拾い上げ、

ノンレムゴーレムに目掛けて切り払った。


オーバーホエルミングで集中し、

ハットバットをノンレムゴーレムに矢で突き刺して固定する。


続いて、ジャーブが下から切り上げてトスされたハットバットが、

空中でバランスを失って天井に叩き付けられる。

ナズはそれを下から突き刺して振り下げ、叩き落とす手前でアナに投げる。


アナは盾を使ってノンレムゴーレムの足元に向かって弾き飛ばした。

またオーバーホエルミングで狙う。

足なのでノンレムゴーレムが激しく動いたら外れそうだが、致し方無い。


3匹目はアナが直接ノンレムゴーレムの腹に向かって突き刺したので、

そのまま狙いを付けて固定した。


後はヴィーが耐えてくれれば、バーンストームとアクアウォールだ。

しかしヴィーの盾がデカ過ぎて、

足元に固定されたはずのハットバットが見え難い。


「ヴィー、ハットバットが外れたら申告しろ!」

「はぁい」

「その場合は俺が取りますのでっ」


ジャーブは立ち位置を変え、ノンレムゴーレムの左足側に回る。

続いてアナはノンレムゴーレムの背後に回り、滅多刺しを始めた。


「わ、私は奥の魔物を誘って来ますね」


完全に存在を忘れてた。

登場直後にご退場して頂いたんだっけ。

ハーフハーブはナズに任せてノンレムゴーレムとハットバットへ集中した。


囮になって引っ張って来ると申告する辺り、ナズもかなり度胸が付いた。

技術面だけでなくメンタル面でも強くなったと思う。


4ターン目のアクアウォールでハットバットは消えた。

恐れていたような、固定が外れて逃げられる事も無かった。

と言うかさっきからノンレムゴーレムが動かない。


ヴィーに攻撃の手が生まれていると言う事は、そういう事なのか。

ノンレムゴーレムも石化した。

かなり耐性があったように思えたが、確率が0だった訳では無いようだ。

確かにミリアも石化させていた訳だし。


ただこれはノンレムゴーレムに関しては、と言う事だ。

1つ上のランクであるレムゴーレムでもこう行くとは限らない。

確率はもっと下がる、若しくは完全耐性があるかなのだろう。

最初からそれを期待して戦闘を組み立てない方が良いと言う事だ。


魔物を片付けてナズを追う。

引っ張って来るかと思ったら、その場で戦っていた。


「おーいナズ、もう良いぞ。アナ、頼む」


防具商人と博徒を付け替えて状態異常耐性ダウンを掛け、

アナに石化して貰った。

その後ヴィーから剣を借りて滅多打ちにする。

防具商人はLv17となっていた。


ボス部屋を発見するまでの行程でもう少し上がる事だろう。

次の25階層中盤程まで行けば恐らく防具商人Lv30となり、

目利きが取得できるかもしれない。

期待が高まった。


その後数グループの魔物の群れと対峙し、本日の探索は中断とした。

ナズには早めに切り上げると伝えてあった。


アナを除いて一旦全員を家に戻し、

その後アナだけをボルドレック邸に飛ばし、メモの確認をさせる。

その後は自室へ、昼の行程と同じだ。


更に自分はパニの下へと飛んだ。


暗い船室に響き渡るいびきは少なくなっており、

船夫たちは覚醒が近いのだろう。

或いはもう目覚めている者もいるかもしれない。

ランタンの火が灯される前で良かった。


そっとパニのいるベッドに潜り込む。


(ご主人様、お帰りなさいませ)

(シーッ。そろそろ起きている者もいるかもしれない。

 自分が抜け出している事は秘密だ。挨拶をする必要は無いからな)


そのまま交代要員が集まるのを待つ。

いや、交代する者達が先に来てしまう事は無いだろう。

持ち場はどうなるのだと言う話になる。


この場合は今寝ている船夫たちが起きて、交代準備をするのが先のはずだ。


暫くベッドに寝転がって身を潜めていると外から金物を叩く音が聞こえ、

その音と共に船夫達は皆一斉に飛び起きた。

扉が開かれランタンには明かりも灯された。


合計4ヶ所の壁へ掛けられていたランタン全てに火が灯ると、

船室はボヤッと明るくなったのだった。


そしてガヤガヤと声を掛け合って船夫たちは部屋から退出して行く。

まだ交替の者達は集まって来ていないので、

船室にはパニと自分の2人だけが残された。


「昼は食べたか?」

「はい。パンを1つ頂きました」


「水は?」

「少し頂きました」


「多少は寝たか?」

「い、いいえ、ご主人様をお待ちしておりました」


「そうか、数日はこんな感じなのだ。暇なら寝てくれて構わないぞ」

「かしこまりました」


「何か欲しい物があったか?」

「いいえ、特にありません。このままで大丈夫です」


「そうか、では今のうちにトイレに行って置け」

「あ、あの、先程致しましたので大丈夫です」


「そうか、気分はどうだ?気持ち悪くなってはいないか?」

「お気遣いありがとうございます。

 でも大丈夫です、僕たち竜人族は頑丈ですので」


頑丈そうに見えないから聞いたのだが。

本人が良いと言うならやっぱり良いのだろう。


やがて昼に動いていた者達が集まり始め、またガヤガヤと騒がしくなった。

ある者は酒を飲み、ある者は持って来たパンをかじりながらだ。


食事は既に取ったと思うので、

今彼らが飲食している分は個人の物なのだろう。


足りなくなったら高く付く、とは彼らの荷物を分けて貰う事になる訳だ。

折角持ち込んだのに他人に取られては堪らない。

そりゃあ高く付くわな。


その後暫くすると、やはり入り口近くの者がランタンを消して回り、

再び船内は闇に包まれた。


「彼らも就寝か。夜は寝て良いからな」

「はい。休ませて頂きます」


暫く目をつむり、全員が就寝するのを待った。


・・・・・・・・・

・・・・・・

・・・

そろそろ良いか?


(パニ、それではまた明日の昼に来る。

 足りない物があったり、面倒事が起きたらその時言ってくれ)

(かしこまりました)


ゲートを出して自室に戻るとアナが待っており、直ぐ食事に呼ばれた。


「いやあ済まん済まん、遅くなったな」

「大丈夫です」

(こくり。)

「パニ君の所に行かれていたのですよね、この位何でもありません」

「パニどうだった?」


「ああ、別に船内で休んでいるだけだからな、問題は無さそうだ」

「そっか、よかった」


「それより食事を待たせて済まないな、早速頂こう」

「「「「いただきます」」」ーす!」


パニはパンだけだった。


この世界の住人達はパン1つで食事を済ます事が基本だと、

ロクサーヌは言っていた。

それならばパンだけになっても問題は無いと思うが、

染み付いた生活習慣と言うか、贅沢は急には抜けないだろう。


食事を持って行ったら絶対変だし、匂いだけでもで怪しまれる。

少なくとも商館にいた時よりは良い待遇であるので、

余計な心配をする必要は無いはずだ。


我々だけ豪華な食事で申し訳無いなと思いながらも、

それがパニに与えた仕事なのだから仕方無いと収めた。

いや寧ろ3食与えられて寝るだけの仕事なのだから、逆に楽なのか?


帰って来たらパニには多少贅沢をさせてやろう。

それが褒美で良いと思う。


今日はスープに肉料理、更には煮た果物も用意されている。

コンポートっちゅう奴だな?


果物もちゃんと調理するあたり、日本の感覚とは違う。

日本人なら生で食べたい。

魚も、卵も、果物も。


刺身は前回やらせて頂いた。

卵は・・・ちょっと難しいだろうか。

米も無いのだし、敢えて生で食べる必要は無い。


何だか良く解らないヨレヨレの甘ったるい果実を頬張りながら、

次は生で食べたいとエミーに伝えた。

∽今日のステータス(2021/11/26)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv54

  設定:探索者(54)遊び人:中水魔法/知力中(50)

     英雄(49)魔道士(24)防具商人(7)


  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)商人(30)色魔(1)

     奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)暗殺者(42)

     武器商人(30)農夫(1)薬草採取士(30)錬金術師(1)

     料理人(18)村長(1)盗賊(30)魔法使い(50)

     僧侶(19)神官(1)博徒(35)細工師(50)

     冒険者(1)機工師(1)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv47

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv46

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv46

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv44

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv47


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv54

  設定:探索者(54)遊び人:中水魔法/知力中(50)

     英雄(49)魔道士(26)防具商人(19)


  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)商人(30)色魔(1)

     奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)暗殺者(42)

     武器商人(30)農夫(1)薬草採取士(30)錬金術師(1)

     料理人(18)村長(1)盗賊(30)魔法使い(50)

     僧侶(19)神官(1)博徒(35)細工師(50)

     冒険者(1)機工師(1)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv47

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv46

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv46

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv44

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv47



 ・戦利品

   豚バラ肉    × 6   コウモリの羽  ×19

   岩       ×47   麻黄      ×92



 ・異世界51日目(昼前)

   ナズ・アナ46日目、ジャ40日目、ヴィ33日目、エミ26日目

   パニ16日目、サンドラッド到着まで10日



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  21 ピッグホッグ     /  ピックホッグ

  22 ハットバット     /  パットバット

  23 ノンレムゴーレム   /  レムゴーレム

  24 ハーフハーブ     /  ハートハーブ

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