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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第十章 結実
188/394

§176 小窓

22階層ともなると、もうすっかり「迷」宮だ。


アナが感じ取った魔物の部屋はエントランスから見て直ぐ近くにあったが、

そこには時間いっぱい使っても辿り着けなかった。


ハットバットは中級水魔法のアクアストームで2ターン。

ロートルトロールがいた場合はそこから中級火魔法を含めてもう1ターン。

バーンストームだけでは足りなかった。

しかし3ターンで収まるなら上々と言えよう。

魔物の部屋でも安心だ。


ヴィーの機動力が多少遅くなったのか、

ハットバット相手には全く攻撃を当てる事ができなかった。


その代わり2体同時に迫って来られても対処できるようになったので、

魔物5匹との戦闘であってもナズはフリーになる事が多かった。

そうなるとナズが力で平伏せるので、ハットバットは全く脅威と成らない。


前衛は安定しているし魔法の威力も申し分無く、

順調に魔物を蹴散らして行った。


その後は魔物の部屋を発見できないまま中間部屋に辿り着いたが、

そこでナズが夕食にしませんかと進言して来た。

時間だと言わなかった辺り、まだ夕食には少しあるのだと思う。

魔物の部屋やボス部屋まで探す時間は無いと言う事だ。


恐らく魔物の部屋へは、

この中間部屋を過ぎてもっと大回りを強いられるのだろう。


ゲートを家に繋いで解散した。

解散と言っても、パーティ解散の事では無い。

自由時間と言う事だ。

いちいち結成解散するのも面倒なので、

必要な時以外はずっとそのままである。


いつも通りナズは台所へ、アナは装備の手入れ、

ジャーブは畑で、ヴィーは台所で涎を垂らしながら作業を見詰める。


おいコラ。

掃除でも何でも、何かしら手伝えよ。


パニは横に着いて言葉やナズたちの調理を説明していた。

・・・まあ言語学習中だと思えば良いのか。


自分は自室でアイテムの整理やら課題や予定をメモしたりと色々だ。


今日の課題点を整理していた時に気付いた。

迷宮の地図が欲しい。

大体の位置で良いから把握したい。

前後の魔物は討伐するから、

簡単でも良いので位置関係の記録をして欲しい。


そういう技能がある者をパーティに迎え入れられたら良いのだが、

それには図形を描く才能が必要だ。

歩数から距離を割り出したり、空間認識力も必要になる。


迷路をグルグル回っていると、どっちが北だったかも不鮮明になる。

そういう事を直感で得られる第6感も欠かせない。

そんなスーパー人材・・・、ウチで抱える奴隷ちゃん達では無理だろう。


パピルスに向かって絵を描くなんて言う習慣はまず無いだろうし、

アナは迷宮の道順をある程度覚えているらしいが、

それは右、左、真っ直ぐと言った、文字で記憶しているのだと言う。

頭に地図がえがかれて大体の方向を考えているのでは無いようだ。

つまり方向感覚は鈍いと言う事になる。


ジャーブは字が汚い。


エミーと筆談した際、可愛らしい文字を書くナズとエミーに対して、

文字が理解できない自分でも解る程に乱雑な記号であった。

エミーは普通に読んでいたのでそれでちゃんと通用するのだろうが、

字が汚い奴に正確な図形は難しいだろう。

そんな能力があるかも不明だが。


ヴィーはそもそも文字が書けるかすら怪しいし、

パニもそういった経験は無いだろう。

そんな技能があったら独り立ちしている。


扱い易い測量具があって伊能忠敬のような技能を持っていれば、

自分でやっていたかもしれない。

何せこちらの世界で目指すべき目標は何も無いのだ。

ゆるっと生活できればそれで良い訳で、それが迷宮の攻略だった。


しかしそれも最終端に到達してしまったら、目標が無くなってしまうのだ。

人生の殆どを費やし、3,40年掛けて到達するであろう50層が、

高々1か月半で何とかなってしまった。


勿論スキップした階層はこれから潰して行くし、

何だったら他の町の迷宮にも入りたいのだが、

どれもこれも1年程度あれば終わってしまいそうだ。

そうなると残りの人生はどうするかと言う話になる。


何か仕事を見付けなければ。


ここで言う所の異国料理のレシピは持ち合わせているが、

酒場の女将さんのようにセンスある人には敵わない。

冒険者のジョブを得たので堂々と荷役依頼を受けられるが、

まあそれでも構わないだろう。


ルスラーンに呼ばれている騎士団?

いや、ナイナイ。剣や槍の実力は皆無だ。

自分なら弓で戦わせて貰えるかもしれないが、

流石に治安維持とかはお固過ぎる。


そこへ興味があったのならば今頃は警察官か消防隊員にでもなっていたさ。


魔法が使えるので氷を売ったり風呂屋を始めても良いかもしれない。

テルマエユウキ、その銭湯ではフルーツ牛乳にピザとラーメン。

奴隷たちによるマッサージが行われます・・・。


あ、それ良いんじゃない?


「ご主人様」


妄想をするタイミングでいつもアナがやって来る。

こいつ、壁越しでも人の思考を見抜けるのか・・・?


「どうぞ、ハーブティーです」


1人分の茶器を置いてアナは退出しようとした。


「ありがとう。あー、そうだな。アナも付き合え」


寂しいので。


アナは一礼して部屋を出ると、彼女用の茶器を持ってやって来た。

自分の横にある椅子へ座り、先程メモを取ったパピルスを見詰める。

アナには自分の書いた文字が読めないのだ。


「これは何をお書きになっておられたのでしょうか?」


「うーん、迷宮での課題やこれからの予定、後は将来どうするかだな」

「将来、ですか」


「アナはこの先どうしたい?」

「えっ・・・ええと、宜しいのですか?」


そうだな、奴隷に夢なんて聞いても答えて良い物かどうか。

解答を持っていないか、恐れ多くて言えたものでは無いかどちらかだ。

友達や子供にするような感覚で聞いてしまった。


「ええと、そうだな、まあ。あれば言ってみろ」

「私たち奴隷の多くは、ずっと1人の主人に仕える事は殆どありません。

 大抵は衰えて仕事が遅くなったり、

 ナズさんのような綺麗な方でも、老いたら若い者と交換されます」


「そうだな、普通に考えればそうだ」


奴隷の定年退職・・・は優しく言い過ぎだが、

使えなくなったら売って新しい者に交換する。

要するにお払い箱だ。

年金やその後の人生は保障されない。

そもそも奴隷に生存権など無い。


「その先」を考えると、むごい仕打ちが待っているとハッキリと確信した。

だからこそ将来どうしたいかを聞いたら、答えは決まっている。

ずっと仕えたい、と言う事だ。


「ですので、わた──」


「解った、お前たちはずっと自分の手元に置く。それで良いな?」

「えっ?あの、はい。ありがとうございます」


アナが何かをお願いする前に、察して止めた。

主人に待遇を求めるのは失礼だろう。

言葉を選んでいるようだったので、先回りして助けてやった。


「でも・・・、本当に私達で宜しかったのでしょうか?」


「アナは聡明だと思ったのだがな。

 自分の人には言えない能力を知ったまま、

 お前たちを手放す事はできないと言っているのだ。

 自分の下を離れる事があれば、それは死ぬ時だ」

「そ、そうですね、畏まりました。これからもずっとお支え致します」


堅い、堅過ぎるな。


待遇的には良いのだから、

何としても嫌われないようにしがみ付こうとしているのか、

或いは元々忠誠心の強い素質があったのか。

深層心理までは判りかねる。


「仮にだが、お前たちが解放されたとしたら、お前はその後どうする?」

「ええっ!」


「いや、騒ぐな。仮にの話だ」

「そのような事は恐れ多くて、考えた事もありません」


「じゃあ今考えろ」

「え、ええと・・・そうですね、

 私は家事が苦手ですので迷宮以外ではお役に立てそうもありません」


「うん、それで?」

「ですので、ご主人様に見捨てられたら──」


「待て待て、見捨てる訳では無いぞ、そこを間違うな」

「は、はいっ。解放されてしまっても行く場所が無く、

 結局どこかのパーティに拾って貰えなければ暮らしてはいけません。

 税金を払うだけでも苦労致しますので」


そうか、解放されたら一般市民。

誰の庇護も受けない自由民となれば、税金は年10万ナールだ。

稼げるパーティに入れて貰わなければ、

今の暮らしよりかなり劣る生活を強いられる。


暗殺者と言うジョブの知名度は無いし、

武器を取り上げられたらそのジョブに価値は無い。

持て囃されなければ上位のパーティに食い込む事は難しいし、

そうなると生活するのは困難だ。


解放されても生活して行けるのは料理の腕と歌で人々を魅了できるナズと、

畑仕事ができて実家が農園だったジャーブだけとなる。


ああそうだ、ヴィーは竜騎士だし引く手数多(あまた)

パニも冒険者になれば案内だけで生活できる。

エミーも、病気の克服さえできれば料理番として死ぬまで奉公できる。


手に職が無いのはアナだけか。


解放される事を喜ぶ奴隷が多いかと思ったが、

そうもならない悲しい現実があるのだな。


ミチオ君が抱える竜騎士の奴隷、

ベスタは昔、ステーラの神殿に行きたかったと言っていた。

奴隷を解放してくれる夢のような神殿だ。


解放された先には何があるのだろうか?

自由人となれば税金を払う必要がある。

両親も奴隷なのだとすると、親元に帰る訳にも行かない。


1人で生計を立てなければならない時に、

今まで奴隷として生活して来たベスタに何ができるのだろうか。

家業があれば普通は子に継がせるだろう。

他にも稼げるジョブに就いていれば問題は無い。


だが、奴隷の子ベスタは村人だった。

何もできないし、何にも成れない。

受け継ぐ家業も技術も無い。


パワーはあるが、武器すら持たないで迷宮に行くのは難しい。

最初の銅の剣1本買う事すらも難しいだろう。


解放された所で、生きて行けなければその先に待っているのはまた奴隷だ。


「解った、変な事を聞いて悪かったな。

 アナを手放そうと思っている訳では無いので、心配しないでくれ。

 普通の奴隷達が何を望んでいるのか、ちょっと聞いてみたかっただけだ」

「は、はあ・・・」


アナは持って来たハーブティに口を付けて啜った。


沈黙が流れる。

変な事を聞いてしまったせいだ。

待遇が変わる事を恐れてか、いつもより緊張しているような気がする。


「何度も言うが、ナズとアナが1番で、ずっと手元に置くからな?」

「は、はいっ。そこは良く理解しております」


解っているなら良いや。

アナの手を取ってベッドに誘った。



   ***



アナと横になっていると、食事に呼ばれた。


呼びに来たのはエミーだったので、扉を叩いて礼をしただけだ。

それでも言わんとする事は解かる。


部屋から出る際にエミーの頭を撫でた。

ジャーブから貰ったカチューシャは、

ずっと以前から身に着けていたかのように馴染んでいた。


「その髪飾りはエミーに良く似合っているぞ」

(ぺこぺこ。)

「良かったですね、エミー」


アナも退室がてら声を掛け、エミーは恥ずかしそうに照れた。


夕食時に改めて、今日から酒場に赴くのを中止すると告げた。

そもそも奴隷の身分で連立って酒場に行くと言うのが間違いだと思う。


ナズが元々働いていた上に自分もメニューを提供したのだから、

そのお礼を最大限受けての待遇だ。

普通に考えたら酒場へ下賤な者を連れて行くだなんて断られる。


奴隷の集まる酒場だなんて噂が立っても困るだろう。


ナズが奴隷に落ちたと言うのは聴衆達からすれば周知の事実だし、

歌を「命じられて歌わされている」と勘違いされているならば、

ナズが給仕であっても有り得る話だろう。


しかしその店へたむろする客に枷が付いているのはまずい。


「アナ、今日から首の枷を外せ。ジャーブも手枷を外せ。

 パニも外して良いぞ。ナズとエミーは好きにしろ」


「は、はい。では私はこのままで」

「ええと、・・・やはり外さねばいけませんか?」

「分かりましたっ、たとえ外してもお仕えする心に変わりはありません!」

「そういえばナンでつけてるの?」


(ヴィー様、奴隷は身分を示すために枷や鎖を付けられます。

 ヴィー様やジャーブ様が普通とは違っているのです。

 ご主人様がとてもお優しい方だからだと思います)

(ふんふん・・・)「アタイは付けなくていーの?」


「ヴィーは商館で買った奴隷では無いからな。

 よく知らないが、枷は商館が用意する物らしい」

「へー」(ヴィー様っ、そこは、そうなのですね、ですっ)

   「そっそうなのですねっ」(これでいー?)(はい、大丈夫です)


「私の場合は商館に身売りをした際に、

 最初に心構えの教育を受ける際に着けられました」

「私は10歳の時に、その時の主人から着けさせられました」

「俺は親に売られて直ぐですかね」

「ぼ、僕は着けられてから売られました・・・」


パニが不憫過ぎる。


泡銭あぶくぜにでツケを払った所で、

どうせ直ぐに消えて無くなりそうだ。

ろくでもなさそうな父親のようだったし、

今頃また借金をこさえているのでは無かろうか。


「まあそういう訳で、ヴィーは着けていない。

 そもそもどこに売っているのかすら知らん。

 それから奴隷が酒場で飲んだくれるのは体面的に色々宜しくないので、

 今後は外して一般客の振りをしろ」


「かしこまりました。

 そうですね、枷を付けたままお酒を頂いておりました。

 確かに、普通に考えてみれば異常です。

 そこまで気が回らずに申し訳ありませんでした」


ナズ以外の全員が枷を外してテーブルに置いた。

エミーもだ。


「それじゃあ今日は早めだが自由にして良いぞ。

 風呂に入った後はゆっくり過ごしてくれ」

「分かりましたっ」「はぁい」「かしこまりました」


ナズとアナ、2人を連れて風呂場に行く。


今日は事前に湯を溜めていないので、入りながらお湯を出す。

洗われながらウォーターウォール。

ご奉仕されながらバーンウォール。

お楽しみをしながらアクアウォール。


そちらへ集中してしまうと魔法が止まり順番や位置もいい加減になるので、

少ないしぬるいお風呂になってしまった。

バーンウォールとアクアウォール、ファイヤーウォールだと、

高温過ぎて湯気がモワモワだ。


ねたら火傷してしまうので、

5分位は掛け湯で我慢して貰った。

当然、その分お湯も減る。


やや少ない湯船に浸かりながら、

2人を横にはべらせながら通常の温度の湯を追加する。


ウォール魔法の効果が切れると滝のように崩れてバチャンと顔へ掛かり、

波立つ湯船にナズが可愛い悲鳴を上げた。


「いつもこうやって、お風呂をご用意されていたのですね・・・」


「こうやって」が「コレ」なら違うが、「魔法で」と言う事ならそうだな。

湯船に浸かりながらお湯を出している訳では無いので。


「あれ、ナズは見た事無かったか?」

「ええと、実際にお湯を作るのは初めて拝見しました」


「そうか。割とMPを使用するので、

 これまではアナが迷宮で魔物を探していたのだがな」

「そういえば昨日も今日も、迷宮に呼ばれませんでしたが」


「今後は不要だ。魔道士のジョブを得た事で大幅にMPが増えたので、

 もうアナの世話にならなくて済む。今まで助かったぞ」

「え、あの・・・」


そこで終わらせてしまうと、アナの仕事が無くなると思われる。

また拗ねられても困るので直ぐにフォローした。


「後で強壮剤を補充するので、2戦位付き合ってくれ」

「は、はい。かしこまりました」

「で、では私もっ」


「お前の仕事は酒場で歌って、

 ボルドレックの手先をおびき寄せる事だろう?

 心配だがこればかりはナズにしかできないんだから頼むぞ」

「そ、そうでした。頑張ります!」


余り長居をするのも悪い。


後ろがつかえているし、ナズはこの後歌だ。

ナズの髪は長いので拭くのも乾かすのも時間が掛かる。

ドライヤーなんて無いので、一生懸命拭いたらパタパタやるだけだろう。


団扇みたいな物があれば乾かし易いか?

明日ウッツの所に行って頼もう。

もう少しまともな濾し器が欲しいし、他にも麺打ち棒、掻き混ぜる杓文字、

それからちゃんとしたフォークも作って貰いたい。


そうなると図面だな。

酒場から一度戻って来た際に描くか。

図を描いて作って貰いたい物を依頼するのは冷温桶以来である。


風呂から上がるとナズはエミーに頼んで髪を乾かさせていた。

今までどうやっていたのか見た事は無かったが、

やはり拭いた後は手で掴んでパサパサやるだけだ。

それでは効率が悪かろう。


日もかなり前に落ちて外には夕闇が広がる。

ナズを連れて行く時間だ。

アナと3人で移動魔法を使って酒場に行き、女将さんと話をした。


「──そういう訳で、前回は騎士舎でナズの歌とタコスを披露したんだ。

 ここでどちらも注文できると言ってな?

 だから今後は口コミの客がまた増えると思う」

「そうかい、そりゃあ有難い話だけどさ、良いのかい?

 ナージャに何かあっても遅いんだよ?」


「逆だ、逆。何か無いと困るんだ。

 ボルドレック側から吹っ掛けられないと、正々堂々と叩き潰せない」

「ええっ、あんた、決闘を受けて立つってのは本当の話だったのかい?」


「嘘を吐いてどうする・・・。

 そうしないといつまでたっても逃げ回るだけなのだ。

 大丈夫、自分達は負けない自信がある。だから女将さんも乗ってくれ」


真剣な顔持ちで女将さんを見詰めた。


やや間があって女将さんが答える。

何かを考えて何かを諦めた、そんな感じだ。


「はあ。もう、そこまで言うんじゃあしょうが無いね。

 どうせ止めても無駄なんだろうよ。

 大金持ち相手に決闘なんてして勝てるのかねえ・・・」


「信じてないな?では勝った暁にはここで祝賀会を開かせて貰うぞ」

「ええっ?もう何だいそりゃあ。

 構わないけど、アンタみたいな威勢の良い子は心配なんだよ」

「大丈夫ですよ、リアナさん。ご主人様は絶対に勝ちます」


「うーん、ナージャがそう言うんなら相当強いのかね、アンタは。

 でも絶対油断はしちゃダメよ?」


「勿論、用意周到に準備している。

 それで今までウチの使用人たちがここで飲食したが、

 今後は警戒のためこの猫人族の娘と2人でこっそり様子を窺いたいのだ。

 そういう席があると聞いたので、用意して貰えると有難いのだが」

「ああ、奥の席だね、こっちだよ」


女将さんに付いて行くと、

薄いカーテンで遮られ対面ソファが置かれている一角に案内された。

なるほど、外から見ると席だとは思えない。

酒樽や何かの袋が積まれているので一見すると食材置き場のようだ。


薄いカーテン越しにステージが見える。

流石に人集ひとだかりができれば見通せなくなってしまうが、

それでも声は届くので良い席だと言える。


ここでひっそりと、怪しい視線でナズをさぐる者を探すのだ。


「ありがとう女将さん、助かるな。

 勿論注文はそれなりにさせて貰うので宜しく」

「そうかい、そりゃ嬉しいね。

 それで注文の仕方なんだけどね、そこに小窓があるだろ?」


女将さんは、外から見えない方に取り付けられた小さな木の窓を指さす。


「そこにパピルスが置いてあるから、

 注文を書いたら戸を開けて向こう側に置いとくれ。

 私らが気が付いたら、そこの窓から渡すんだ。

 忙しいと遅くなるけど堪忍しておくれよ」


お忍び席と言うだけあって、本当に忍んでいる。

どんな人物が来るのか興味も湧いたが、やはりお偉い様なのだろうか。

以前はナズの歌で評判だったのだ。

実力者がこっそりとお忍びで来たっておかしくはない。


「こんな一角があったと言う事に逆に驚きだ」

「うちはチョット他では手に入らない良い酒も入れてンだよ。

 名前は聞いちゃいないけど、結構身なりの良いお方が見えるのさ」


そうか、・・・そうだよな。


迷宮が中心にある町の、その直ぐ斜向はすむかい位の好立地なのだ。

宿屋で言えば高級旅亭とも言える良い位置取りだ。

安宿なんかでは無い。


当然それなりの客が来る。

ただ客層は圧倒的に探索者が多いので、

表向きにはそういった者向けの酒場となっている。


女将さんの優しい気性も相まって、

彼らを無碍にせずちゃんと客として持て成しているのだ。


だがその裏で、金持ち相手に貰う物は貰うと言う2つの顔を持っていた。


道理で1つ70ナールもする小さいタコスがたくさん売れる訳だ。

金持ちたちがこっそり来て、お土産に買って帰るのだろう。

店頭で出す量は元々知れていたのだ。

くそう、商売上手だなあ・・・。


やはり商人相手に喧嘩をしてはいけないと、肝に銘じた。

∽今日のステータス(2021/11/18)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv54

  設定:探索者(54)遊び人:中水魔法/知力中(49)

     英雄(48)細工師(49)暗殺者(41)魔道士(20)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv46

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv45

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv45

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv44

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv45


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv54

  設定:探索者(54)遊び人:中水魔法/知力中(49)

     英雄(48)細工師(49)暗殺者(41)魔道士(21)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv46

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv45

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv45

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv44

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv45



 ・戦利品

   鑄       × 2

   豚バラ肉    ×21

   コウモリの羽  ×69



 ・異世界48日目(14時頃)

   ナズ・アナ43日目、ジャ37日目、ヴィ30日目、エミ23日目

   パニ13日目



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  20 ロートルトロール   /  ロールトロール

  21 ピッグホッグ     /  ピックホッグ

  22 ハットバット     /  パットバット

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