§163 工夫
昨晩のお楽しみは取り止めた。
食後に風呂へ入り、早く寝たのだ。
大事な予定に遅刻でもしたら大変だ。
この機会を逃すと56層以降の攻略の道は絶たれてしまう。
騎士達に同行し、最低でも必ず中間部屋は越さねばならない。
昼食はエミーに頼んで、パピルスに巻いたサンドイッチを用意させた。
薄く焼いた生地で肉と野菜を包んで巻いた、我が家定番のラップサンドだ。
エミーはヴィーとジャーブ用に、チリソースを加えた物を別に作ったらしい。
気配りが行き届いている。
自分とナズ、アナ用にはアンチョビソース多めとの事。
ナズが説明してくれた。
留守を2人に任せ、鐘が鳴る前にはトラッサ騎士団宿舎の前に赴く。
入り口で警邏をする騎士たちは夜間に出していた篝火を片付けており、
中央広場で待つようにと言われ時間を潰す。
まだ騎士たちは宿舎で食事中なのだろう。
そしてヴィーはガチガチになっていた。
いつものように奔放な行動をされても困るが、
騎士たちが集まり出して失神でもしたら面倒だ。
「おい、ヴィー」
「ひゃい!」
「暴れ回られるのも困るが、緊張し過ぎも良くない。もう少し力を抜け」
「は、はいっ!」
「ちょっと付いて来い」
「はいっ」
入り口の門番の前に連れて行き、騎士に声を掛ける。
緊張のあまり同じ側の手と足を出していたので、思わず吹いてしまった。
「済まないが」
「うん?どうした」
「この娘がな?
昔盗賊だったのだが、奴隷になった今でも処罰されないかと心配らしい」
「ハァ?奴隷になった時点で盗賊は解除されていると思うが」
「まあそうなんだが、まだ幼いので良く解っていないらしい。頼む」
「しょうがないな。おい娘、腕を出せ」
「ええっ!は、はいぃ」
青褪めてガクガク震えながら、腕を少しだけ捲って差し出した。
「滔々(とうとう)流るる霊の意思、脈々息づく知の調べ、
インテリジェンスカード、オープン!
おっ竜騎士、まだ小さいのに・・・12歳か、その年でなら流石だな?
これからも真面目に生きるんだぞ」
「ほら、見てみろヴィー」
「ひゃい・・・」
ヴィーは固く瞑っていた眼を開けて、
恐る恐る自分のインテリジェンスカードを確認した。
ヴィーは商館で買った奴隷では無いので、
インテリジェンスカードを自分自身で見るのは初めてだろう。
それよりもインテリジェンスカードの文字が読めるのか?
自動的に竜人族語なのか?
そういえば自分が見た場合日本語であった。
インテリジェンスカードに記載されている文字は、
見た人物の理解出来る言葉に置き換えられていると言う事で良いな?
以前奴隷の身分に落とす前、確かにヴィーのジョブは盗賊だった。
そうでなければ奴隷に落とせなかったし。
その時のヴィーは恐れて目を逸らしていたので、
彼女自身でどうなったかを確認していない。
騎士から大丈夫だと言われ安堵したようだ。
緊張した顔が緩む。
「ほらな?もう心配いらないが、今日は大人しくしていろよ。
たとえ盗賊でなくても、騎士の前で粗相したら首を刎ねられるぞ」
「だ、だいじょうぶですっ」
「流石に子供にそんな事しないぞ」
「あはは、いえ、教育です。失礼しました」
門番の騎士に礼を言って再び広場へ戻り、部隊が集まるのを待った。
チラホラと準備のできた騎士が宿舎から出て来て、
端っこの方で準備体操を始めている。
鉄の鎧を身に着けながら凄い身体能力だ。
自分にあんな真似はできない。
と言う事は、多分今でもあの鎧は着られないのだろう。
今後高級な武具に替えたくなった際には、
Lvや職業補正の力で何とかお願いしたい所だ。
ぞろぞろと一団が出て来た。
そして中央付近に隊列を作る。
パーティは最大6人なので6列に並び、それが6行並んだ。
6パーティ36人部隊か。
日本の陸上自衛隊は小隊30人らしいので、
これは1個小隊で迷宮に挑むと言う認識で良いだろう。
それを構成するパーティが分隊で、パーティリーダーは班長なのだ。
あくまでも自衛隊に置き換えた場合の話だが。
でき上がった隊列のブロックに於いて、
右と左、どちらに並べば良いのか判断できなかったので、
彼らが作る列の後ろ3メートル位の間隔を空けて、
各隊列の後ろに1人ずつ並ばせた。
部外者は自分たちだけのようなので緊張する。
流石に話は回っていると思うので、
誰だこいつみたいな目では見られていない。
兵舎から3人の騎士が顔を見せると、
ガヤガヤとしていた騎士達がビシッと綺麗に整列をした。
お偉いさんなのだろうか。
自分たちもそれに倣う。
と言うか、最初から全員緊張している。
残り4人は奴隷なのだし、そもそも分不相応だ。
最も序列の低いヴィーを奥にすると何をしでかすか判らないので、
自分の隣に並ばせている。
先程緩んだ体が再びガチガチになっているようだった。
「敬礼!」
騎士たちが武器を掲げて、その後地面に突き刺す。
この国での敬礼はこれか。
自分は武器を持っていないが、奴隷たちはそれを真似た。
空気の読める子達で良かった。
槍が多めだが剣盾を扱う者もいるようだ。
1人だけバカでかい盾を持っている騎士がいたので、
あれは竜騎士なのだろうか?
大楯であろう武具を持つ騎士は武器を持っていなかった。
防御しかしない、と言う事だろう。
まさに騎士の鑑だ。
その後騎士団の母屋からルスラーンと、
決闘の際に立ち合いを行ってくれた騎士、
それから以前顔を合わせたシルクスの騎士団長が現れた。
誰だっけ?マーマーマー、面倒だから鑑定させて貰った。
・イルハン・シルキウス・アイドラッハ ドワーフ ♂
31歳 聖騎士 Lv27
・マリク 人間 男 34歳 騎士 Lv45
・ルスラーン 人間 男 36歳 聖騎士 Lv38
そうだ、マリクだ。もう1人は騎士では無く冒険者だった。
アムルで盗賊から盗賊呼ばわりされて立ち会った際に来た騎士だ。
副隊長なのかな?あの時は意外と偉い人が来ていたのか。
ルスラーンが挨拶を始め、今日の作戦に関わる騎士たちを鼓舞した。
今日何をするのかの大凡の説明は受けているが、
実際に自分たちが何をどうしたら良いかは聞いていない。
付いて来るか?と言われただけで、それ以上は何も無いのだ。
そんな事を思っていたら、ルスラーンから呼ばれた。
「そして今回、異例だが外部の探索者を呼んだ。
今回の盗賊2名を生かして捕縛した実力者だ。
道中の安全確保にも貢献して貰えるようなのでお願いする事にした。
ユウキ、前へ」
察した。
騎士たちの消耗を防ぐために、道中の敵を蹴散らせとのご命令だ。
この部隊の前で喋れと言うのか、緊張するなア。
急ぎ足でルスラーンの横に立ち、お辞儀をしてから口上を交わした。
「ただ今ルスラーン様よりご紹介に与ったユウキです。
56層への護送に参加させて頂ける光栄に与り、恐悦至極です。
皆様の足を引っ張らないよう頑張る所存です。宜しく願います」
再びお辞儀をして元いた部隊後列へ戻った。
「それでは各班、パーティリーダーのみ迷宮入口へ移動する。
残りの者は鎖、重石、駕籠を各自で迷宮まで運べ。
開始!」
リーダーと呼ばれた者達が集まり、
宿舎の横にあるそこだけ色が塗られた木の壁へ集まってゲートを開き、
次々と消えて行く。
彼らは騎士では無く冒険者なのだった。
えーっと、騎士と同じ格好をしているのだから騎士団員なのだが、
冒険者の騎士?
騎士だが冒険者と言うジョブ?
まあ良いや。
各班に1名、冒険者がいるらしい。
そうでなければ騎士たちは移動もできないし、パーティも組めない。
それ以外に残った者たちは正真正銘、騎士ジョブの騎士だ。
5人が重たそうな鎖を携え、騎士団を後にした。
また別の5人はこれまた2、3人で抱えて何とかと言う、
重そうな鉄球を持って移動している。
そして簡易的に組まれたような木の檻へ、
持ち手を付けたような駕籠の中で、
以前捕えた見覚えのある男の姿を見た。
久しぶりに見たアムルの冒険者は髪と髭が伸び、窶れていた。
もう30日程も牢に繋がれていたはずだ。
こちらに気付き、牢を揺らした。
「よう、元気か?ボスを倒せば放免なんだってな?頑張ってくれ」
そんな事聞いた事は無いが、知ったような口で元気付けてみた。
頑張って貰わないと検証にならないのだし、
今後の探索者のために是非とも一撃ボスへ刃を入れて貰いたい。
自分たちは勝手にその先へ行かせて貰うけどな。
「くそっ!くそっ!チクショー!この野郎ー!」
冒険者の男は勇ましく吠えた。
名前も確か勇ましかったはずだ。
確認するまでも無いし、今更どうでも良い。
騎士たちに担がれて、駕籠は騎士団宿舎を後にした。
その後もう1人の男の方も本館から運ばれてやって来た。
こちらは捕えてから間も無いため、それ程やつれた様子は無い。
だがその目は絶望に染まり死んでいた。
「1人じゃないんだし、協力し合って頑張れよー」
「チッ・・・」
男から睨まれた。
こちらの男の名は知らない。
さっきの男は冒険者だったが、こちらは探索者だ。
迷宮から脱出するため移動魔法を使おうとしていた。
要するにその分弱い。
真っ先に倒されるか、囮に使われるのだろう。
死刑囚にもヒエラルキーがあるのかは知らない。
ルスラーンたちのパーティがこちらにやって来た。
「先程の口上は中々だったぞ。お前は本当に商人か?
これから行く56層へは自力で行けるか?」
「大丈夫です。こちらにも冒険者がおりますし、56層も案内不要です」
「おお、やはりか、流石だな。
56層へはギルドで案内していないからどうかと思ったのだが、
心配は無用だったな」
「そんくれえ自分でできなくっちゃ足手纏いだぜ、なあ若いの?」
「あはは・・・」
冒険者とは・・・それは自分の事だ。
何かあったらパニに擦り付ける。
あくまでも自分は商人だ。
探索者の所在を問われたらアナに任す。
確認される事は無いと思うが、そういう設定造りは大事だ。
ルスラーンもパーティ内の冒険者に送迎されたようなので、
騎士団駐屯地の庭には誰もいなくなった。
自分達も彼らが使った木の壁を利用して、
トラッサの迷宮横の木にゲートを繋いだ。
先行した冒険者の騎士達が外にいないと言う事は、
既に彼らは56層へ移動したのだ。
そして盗賊を運ぶ者、逃がさないための錘や枷を運ぶ者、
護衛が使う武器を運ぶ者の3部隊に分かれて徒歩で移動する。
ここまでやって来たらそのまま入るだけで、彼らは56層へ移動できる。
うーん、合理的。
ルスラーン達もいないので、既に入ったのだろう。
自分たちも迷宮へ侵入した。
階層選択画面で56を選び視界が開けると、
ルスラーン率いるパーティを先頭に、他6部隊のリーダーが整列していた。
ここダンジョンのエントランスルームでは確かに大部隊は入り切らない。
6×6の36人で精一杯だろう。
隊長たちは通路に食み出るのかな。
自分たちも邪魔になりそうだ。
先に行っても良いのだろうか?
何も言われていないし、大人しくしていようか。
「お、来たな、ユウキ。先に行ってしまって良いぞ?」
「勢い余ってボス部屋には入るなよ?」
「はっはっは、幾ら何でもそれはせんでしょう」
「ええっ、宜しいのですか?」
「おぅ、行け行け。その方が我々も楽になる。
追い付いたら横を通って行くからな」
「は、はあ・・・」
確かに、全体行動なのだから横取りもクソも無い。
敵の行動パターンが変わって被害を受けたら、ダメージを受けた方が悪い。
勝手にして良いと言うならば先へ進もうか。
ちょっとレムゴーレムとも戦ってみたいし。
「で、ではお許しが出たので先に行こう。
レムゴーレムは魔法が効き難く、
かなり固いので殲滅に時間が掛かる。
なるべく毒を入れて行きたいので、
アナは色合いが違ったら直ぐに報告してくれ」
「はい」
「レムゴーレムを優先する順序は、ジャーブ、アナ、ヴィー、ナズだ。
飛行系の敵はナズに叩き落として貰え、ラフシュラブはアナに任す」
「「「はい」」」
自分たちで簡単なブリーフィングを済ませて、迷宮奥へ進んだ。
昨日の監視兵に見送られて通路を進む。
道順が判らないので完全に手探りである。
ボスの待機部屋や中間部屋までの道順を教えて貰えないと言う事は、
騎士たちにもノウハウが無い。
56層へ囚人を送るのは初めて、
或いは情報が蓄積されていない位に稀な事なのだろう。
誰もいない迷宮、誰も攻略しない階層だ。
徘徊する魔物の数は多く、集まる部屋にも注意しなければならない。
その点、アナが居れば大丈夫だ。
「アナ、魔物の集まる部屋はどうだ?」
「在りますが、ここからは遠いので一先ずは安心です。
迫る場合は報告致します」
「うーん、それでは騎士たちが向かった場合大変な事になる、
大体で良いから場所を言え」
「それではええと・・・、
ここから見て左正面にあるので、入り口から見て右奥でしょうか」
既に右折を一度しているので、入り口から見たら、の位置は解り易い。
「では自分たちがその方角へ移動する事にして、
追い越された場合は注意喚起しよう」
「魔物の部屋を制圧されますか?」
どうだろう・・・。
メテオクラッシュ、行けるか?
この階層で1発圏内と言うのは絶対に無理だ。
自分が放った15層では1発に収まった。
ケトルマーメイド相手だったので土属性・・・弱点込みだ。
この階層のレムゴーレム相手ならば、
恐らく通常魔法で40ターン以上は掛かる。
1つ手前の階層では弱点属性を突いて、きっかり20ターンだった。
出て来る魔物を考えると、魔法の脅威があるとしたらロールトロール。
それも3層下なので、出現率は低い。
数が少なければ何とか弓で抑えられる可能性は非常に高い。
以前ニードルウッドに砲撃された時には、
詠唱を中断する手段が近接のデュランダルしかなかった。
ピックホッグも魔法を使うが、ダメージだけならばそれ程脅威では無い。
ロールトロールの雷魔法に依る麻痺が目下懸念材料である。
レムゴーレムがメインのこの層では、
囲まれる事に因って他の敵の割り込みを防ぐ事ができる。
9層ではスローラビットの大群に囲まれたが、それは小さかったからだ。
部屋の角で4人がアーチ状に身を寄せ合えば、
対峙するレムゴーレムの数は極小に抑えられる。
メテオクラッシュ何回で倒せるかが判れば、
その数に依っては行ってみると言う選択もありそうだ。
それ以上となると、やはりロールトロールに依る雷魔法の脅威がある。
「よし、では例の大魔法を使いレムゴーレムが何発で倒せるか試してみる。
10回位で収まれば行ってみても良いだろう」
「早速ですがレムゴーレム3体と、恐らくですがパットバットが居ます」
アナはパットバットを認識できていない。
やはり気配を殺して飛行するのだろう。
相手は超音波で気配を探る、あちらの方が1枚上手なのだ。
鑑定を行うと通路の先にレムゴーレム3体がいた。
パットバットは2匹、合計5体だった。
「コウモリは2匹だ。ナズ、頼むぞ」
「はい」
状態異常耐性ダウンを鑑定ウィンドウに対して掛け、5匹全部を指定する。
目視で難しい場合は鑑定ウィンドウで選択できると言う事を最近知った。
確かに、よくあるゲームでは敵のステータスバーをターゲットできた。
この世界も何かのゲームの世界なのだろうか、そんな気がしてならない。
レムゴーレム3匹が通路一杯居並び、もうギチギチだ。
パットバットは1匹がこちらに来たが、
もう1匹は並んだレムゴーレムに依りブロックされてしまった。
却って好都合ではある。
弓に頼らず、メテオクラッシュを発動させる。
ポイントは余っていたのですんなりセットできた。
残り1ポイントはMP回復速度上昇へ。
ボーナス魔法は消耗が激しく、急激に枯渇したら大変だからだ。
流石に発動2回目とあって、
ヴィーも恐怖に怯える事は無く、しっかりとレムゴーレムを見据えていた。
但しレムゴーレムは魔法の発動中にもお構い無しに攻撃を仕掛けて来る。
やはり痛みを感じないのだろう。
うーん無機物ゥ・・・。
隕石のエフェクトが終わるまで敵の動きを目視しにくいと言う欠点があるが、
そもそもレムゴーレムのパンチ1発は溜める動きが長いので何とかなった。
エフェクトが落ち着き、2発目が可能となる。
ボーナス魔法と言うだけあってエフェクトも長めだ。
通常魔法では13秒程度で次の魔法が撃てるようになるが、
メテオクラッシュは18秒程度を要した。
人間は20秒付近から長いと感じる。
だから、日本でのTVCMは1尺15秒なのだ。
そして人が満足したと感じる最低時間は30秒。
ロングバージョンは30秒、人気がある商品のCMはこれに当たる。
そう、2発のメテオクラッシュがそろそろ終わり、
長いとイライラし始める30秒を超える。
もっと言うとこの長さの時間分だけ魔物の進攻を耐えられるか、
と言う現実的な疑問が湧き始める。
3発目、かなり息切れがする。
MPに限界を感じるので、今の1発でデッドラインを越えたのだと思う。
5匹相手なら3発が限度のようだ。
魔物の部屋で数が増えるとどの位消費量が増えるのかは未知数である。
ただ1匹当たりの係数は少なそうではある。
17層で放った際はもっと大量の敵を相手にして何とか耐えられた。
ジャーブの制しているレムゴーレムに矢を撃ち込んで回復する。
弾かれて散らばるが仕方無い。
2本撃ちした場合、回復も2倍になっている点は大きい。
頑張って2本を射れるように練習した事は、
今となっては本当に良かったと思う。
全ての矢がレムゴーレムに当たり、
気分は急激に回復して落ち着きを取り戻した。
エフェクト継続中に4回の狙い射ちをし、合計8発の弓撃を加える。
多分この回復状況でなら魔法はもう2発行けそうである。
魔法使い最大のネックはMPの数値がはっきりと判らない事だ。
どの位減って、どの位回復したかが全て感覚であり、全く掴めない。
4発目のメテオクラッシュを発動する。
いい加減倒れて欲しいが、それは無理か。
ミチオ君は12層でメテオクラッシュを発動させた時に、
それに耐えた魔物がいた。
自分は様々なボーナスをつぎ込んだ状態で発動させて、17層で通用した。
多分そこがギリギリ倒せるラインだったのだろう。
やはりこの魔法だけでは56層を制するのは難しいか。
9ターン目のメテオクラッシュでもレムゴーレムは生き残った。
ただしパットバットは消えた。
火属性には耐性は無いが、弱点でも無かったはずだ。
土属性には弱点があったはずなので、こちらが有効だったのだろう。
と言う事であるならば、
土耐性で火属性には耐性が無いレムゴーレムならば倍の18ターン。
通常の全体魔法より倍以上には強い事が判る。
しかし厳密には大魔法の属性効果がどの位影響しているのか不明だ。
弾かれた矢を回収しながら、MPが尽きたら回復のために矢を放つ。
地味な作業を繰り返しながら火の海を発生させたが、
合計16ターン目でレムゴーレムは煙となった。
18秒×16ターンで、ええと180+18×6、だから180+108。
288秒と言う事は約5分。
多分ジャーブ達のダメージが加算されたのだろうから、
無傷なら17か18ターン、300秒掛かるならばきっかり5分だ。
ひとつ前の55層で戦った時とは若干歯応えがあるものの、
戦っている時間に直すとあまり変わらない結果となった。
55層ではウォーターストーム連射で40発20ターン、
約300秒なので5分とちょっとだ。
だがしかしこちらの階ではコスパ的にあまりにも宜しくない。
これならば前階でウォーターストーム連発した方が消費量も低く、
戦い易いんじゃなかろうか?
いや待て、前提がおかしい。
メテオクラッシュと合わせて使えば良いのだ。
何と愚かな事を。
魔法は1種類しか発動できないだなんて誰が言った?
無詠唱なんだから自分の魔法は共鳴しない。
それは転移者だけに与えられた特権だったはずだ。
それならば一気に半分だ。
行くぞ、魔物の部屋!
180秒で片付けられるなら勝機はある。
ドラマの間のCMを見ている間に終わらせてやる!
「行けそうだ、魔物の部屋に向かうぞ」
「かしこまりました」
「やはりご主人様の魔法は物凄いですね・・・」
「ユウキ様はこの国の烈士に肩を並べられそうです」
「いまのでいーの?」
そうお世辞を言われると悪い気はしないが、
この階層の魔物の部屋を討伐するに当たってはギリギリだと思う。
判断を間違ったらかなり拙い展開になる。
当事者にしか判らない苦悩を吐露してもしょうがない。
以前17層にあった魔物の部屋へ向かった時と同じ位の緊張感を持ち、
アナから案内された次のグループへ挑んだ。
「今度は魔法を更に複合させてみる。上手く敵を捌いてくれ」
「はい」「ええっ?」「はい?」「わかんないけどはい!」
出て来たレムゴーレムは2匹、パットバットが3匹、ピックホッグもいる。
6匹だ。
ジャーブとアナがレムゴーレムを、
ヴィーとナズがパットバットを追う。
メテオクラッシュとウォーターストーム2連射、合計3発を発動させた。
先程使用したMPが完全回復されていなかったので、
激しい眩暈に襲われる。
急いで弓を構えてピッグホッグに射出した。
ターゲットは大きい方が良いし、
突き刺さらないレムゴーレムに撃っても悲しくなる。
だが撃ち込んだ後で回収できない事に気付いて却って後悔した。
どのみち乱戦状態になるので回収は不可能だ。
今手持ちにある矢の数で戦うしかないのだ。
通常魔法であるウォーターストームは、
メテオクラッシュとは効果時間が違う。
要するに再詠唱するタイミングが異なって来る。
エフェクトの終わり頃に近付いたら、
頭の中でウォーターストームを連続で念じた。
マグマの中に水魔法のエフェクトであるバブルが舞う。
全然意味が解らない光景だ。
実際の自然現象なら一気に蒸発して雲になっている事だろう。
アレとコレとは互いに無干渉なのだ。
そういった意味で言えば、
互いに干渉し合う物理現象を引き起こす壁魔法は異例だと思う。
ボーナス魔法にメテオウォールがあったら地殻が割れるぞ、多分。
ナズがパットバット1匹を叩き付け、ヴィーの足元へ送った。
ヴィーは送られて来たパットバットを踏み付け、一方的に剣で斬り付ける。
ターゲットが定まっていないピックホッグはアナを襲っているので、
アナは手を出さない代わりに防御を優先している。
どうせレムゴーレムは石化しないしこれで良いだろう。
エフェクトの終わりを狙ってメテオクラッシュの再詠唱をする。
次はウォーターストームの番だ。
2回唱えるとちょっとフラフラして来た。
しかしメテオクラッシュ1回分程は消費しないようだ。
やはりコスパは良い。
再び弓を構えて回復をする。
折角なのでナズが追い回しているパットバットを狙ってみた。
が、外れる。
オーバーホエルミング無しだともうこれだ。
大人しくレムゴーレムを狙った。
6本の矢が床に散らばり、そしてアナがピックホッグを石化させる。
今回は状態異常耐性ダウンを使用していなかったのだが流石である。
皆もうじきLv50に届きそうだ。
メテオクラッシュ10回目の時点で全ての敵が煙へと変わった。
9ターン分のメテオクラッシュと後ちょっと、と言う所なんだろう。
正直、ウォーターストームの追撃タイミングはかなり逃したと思う。
だが同時発動して行く事で時間を有効に活用できる事は良く理解した。
3面攻撃ならばかなり戦闘が有利に運ぶ。
弓も合わせれば4面攻撃だ。
ただ今日に限って言えばもうこの方法は取る事ができない。
そろそろ徒歩の騎士たちが迷宮に到着する頃だろう。
見られたら絶対に拙い。
これ以上は魔物の部屋以外では使えないのだ。
魔法の実験はこれで終わりで後は時間を掛けて倒すと、ナズ達に説明した。
勝機は見えたが、果たしてこれで行けるのか?
∽今日のステータス(2021/11/07)
・フジモト・ユウキ 人間 男 21歳 探索者 Lv52
設定:探索者(52)遊び人:水魔法/知力中(44)
魔法使い(47)英雄(45)細工師(46)暗殺者(20)
・BP150(余り1pt)
鑑定 1pt 必要経験値減少/10 31pt
キャラクター再設定 1pt 結晶化促進×16 15pt
パーティー項目解除 1pt 6thジョブ 31pt
パーティライゼーション 1pt 詠唱省略 3pt
パーティジョブ設定 1pt ワープ 1pt
獲得経験値上昇×20 63pt
・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv44
・アナンタ 猫人族 ♀ 20歳 暗殺者 Lv43
・ジャーブ 狼人族 ♂ 28歳 騎士 Lv43
・ヴィクトラ 竜人族 ♀ 12歳 竜騎士 Lv42
・エマレット 狼人族 ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF
・パニ 竜人族 ♂ 15歳 探索者 Lv41
↓
・フジモト・ユウキ 人間 男 21歳 探索者 Lv52
設定:探索者(52)遊び人:水魔法/知力中(44)
魔法使い(47)英雄(45)細工師(46)暗殺者(21)
・BP150
鑑定 1pt 必要経験値減少/10 31pt
キャラクター再設定 1pt 結晶化促進×16 15pt
パーティー項目解除 1pt 6thジョブ 31pt
パーティライゼーション 1pt 詠唱省略 3pt
パーティジョブ設定 1pt MP回復速度上昇 1pt
獲得経験値上昇×20 63pt メテオクラッシュ 1pt
・ナジャリ ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv44
・アナンタ 猫人族 ♀ 20歳 暗殺者 Lv43
・ジャーブ 狼人族 ♂ 28歳 騎士 Lv43
・ヴィクトラ 竜人族 ♀ 12歳 竜騎士 Lv42
・エマレット 狼人族 ♀ 19歳 料理人 Lv32 OFF
・パニ 竜人族 ♂ 15歳 探索者 Lv41
・収得品
ヒレ × 1 コウモリの牙 × 4
岩 × 4 ダマスカス鋼 × 1
・異世界45日目(早朝)
ナズ・アナ40日目、ジャ34日目、ヴィ27日目、エミ20日目
パニ10日目、56層同行の日
・トラッサの迷宮
Lv 魔物 / ボス
54 ピックホッグ / ※
55 パットバット / ※バッドバット
56 レムゴーレム / ※




