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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第九章 進展
164/394

§152 真理

朝はヴィーたちの打ち合いの音で目覚めた。

ロートルトロールの戦い方への対処はできただろうが、

ヴィーはまだ鍛錬を続けている。


練習する事で成果に繋がる事を覚えたのだろう。

ここでの彼女の仕事は戦う事だ。

その仕事を全うするために今できる事を考えた上での鍛錬だとしたら、

勉強熱心で良い事だ。


是非、言葉の方もその意気込みで頑張って欲しいのだが・・・。


ナズは昨晩も変わらず、酒場で歌を披露した。

昨日の今日で噂話が広まるはずも無いので、

客層はいつもと変わらない様子だった。


ナズへの観客は次第に減って来たようだ。

最初は久しぶりのお目見えだった事で、

往年のファンが詰め掛けたのだろう。

初めて聞いた者には物珍しさも有ったと思う。


しかしタコスの方の評判が付いた事で、

仕込分が売り切れする日も出ているのだと聞いた。

売り切れる程なのか、・・・儲かってるんだな。


女将さんベースのアレンジ食材も加わっている事で深みが増し、

もう簡単に真似できるような味では無い。

そもそも材料が高いのだし、お試しで作ってみるには厳しいだろう。


歌に給仕にと頑張ったナズは、今日こそゆっくり休めている。

目が覚めた事に気付いた2人と朝の挨拶を交わしたが、

このゆっくりした時間を大事に過ごした。


エミーから食事の準備が整った事を合図され、3人で台所に向かう。


遅れてジャーブとヴィー、それからパニも一緒に入って来た。

エミーは庭へ呼びに行ったので、3人一緒だったのだろう。


「おはよう、今日はパニも見学か?」

「おはようございます、ユウキ様」

「ご主人サマおはよーございマース!」

「お、おはようございます・・・」


「パニ君には戦術面の通訳をして貰っていました」


「うん?」

「戦法に関する言葉が分からなくて俺には説明できなかったので、

 今まではこう、体で覚えて貰っていたのですが、

 パニ君がいてくれて助かります」

「ヴィー様に言葉を教えるのは、僕の仕事だと仰せつかりましたので」

「ふぅん、そーだったの」


確かに、ヴィーが習った言葉は生活する部分だけだ。


初めてここに来た時、ヴィーには水汲みと掃除の仕事を言い付けた。

商館もそこをベースに食事や挨拶、主従関係等を教育した。

戦闘に関する知識は戦闘奴隷としてみなされないと教育されないのだろう。

と言うか、たった7日にしては沢山覚えたものだ。


それで良く戦って来たな。

見よう見まねで頑張ったのだと言う事は窺える。

元々活発な子だったのだから、それで何とかなった。


しかし20層となると、本来は10年の域だ。

無知識では難しいし、その知識を得る過程を全部すっ飛ばした。

戦術を言葉として教えても理解できない、それでは駄目だ。

ヴィーがボロ雑巾のようにされてしまった事は当然の結果であった。


パニがいる事でジャーブのアドバイスを理解でき、

1層から魔物の動きを練習させた事は一定の成果があったのだろう。

その延長線にあるのが、今日の打ち合いと言う訳だ。

更に装備の補強も加わっている。


食事を終え迷宮へ行く支度を始めていると、玄関の戸を叩く音がした。

こんな朝早くから誰だろうか。

ジャミルの遣いでは無い。

彼はメモを裏口に残して行くだけだ。


自分達は着替え中だし、エミーでは会話もできないのでパニが対応した。

自室であっても玄関での声は聞こえるので、やり取りは判る。


「どちら様でしょうか」


「トラッサ騎士団の者だが、

 ここはユウキ・フジモト殿の家で間違いないか?」

「はっ、はい。今お開けします!」


ガチャガチャと鎧の擦れる音が2名分、騎士は2名で来たようだ。


パニが慌てて戸の格子を外した。

姿は見えないが用件は理解した。


「ごっ、ご主人様に何か御用でしょうか?」

「ああ、ではこれを。主人に渡せ」


「承りました、ご苦労様です!」

「ではな」


戸を閉める音がして、パニが渡されたであろう伝書を部屋に持って来た。


「どうぞっ、き、騎士様からです」


「ああ解ってる。アナに渡せ」

「は、はい、どうぞ・・・」


パニは下がって不安そうな様子でこちらを窺っている。

そうだな、パニは騎士団とのやり取りを知らない。

迷宮で盗賊を捕まえてその後どうするかを話したのはジャーブまでだった。


エミーもヴィーもパニだって、その後に加えた奴隷たちなのだ。

自分と騎士団の繋がりを知らない訳だから、

突然家の前に現れて手紙を渡されたらびっくりするだろう。

警察から出頭するように命じられたと勘違いされてもおかしくない。


「ああ、パニはもう下がって良いぞ、心配要らない」

「は、はい。それでは失礼しました」


パニは部屋から出て行き、アナはメモを読んだ。

まあ読まなくても意図は判るが。


「以前、ご主人様が捕まえました盗賊を処刑する日程が決まったようです。

 5日後朝に、トラッサ騎士団に集合せよとの事です」

「5日後か、解った」


と言う事はナズの歌の日と被る。

女将さんにその日は休む事を伝えて置かなければならない。

そこは問題では無いが、流石にエミーとパニは家で留守番だろう。

戦闘メンバーはヴィーまでだ。


ヴィーが粗相しなければ良いのだが、

そういえば騎士団を恐れていたのだっけ。

いきなり連れて行って暴れないように、先に言って置く必要がある。


そういう事を忘れて色々やらかして来たのだから、

今回はちゃんと気を付けよう。


鎧を付け終わったヴィーが居間にやって来て、今日の活動開始だ。

今日も鋼鉄集めに20層へ行こうと思っていたが、取り止めにした。


騎士団の同行要請が5日後と言う事ならば、

後5日後には56層のゴーレムと戦う事になる。


戦うと言ってもボスでは無く雑魚なのだが、

それはつまり23層のボスでもある。

ナ、何を言っているのか混乱しそうだ。


大丈夫、間違ってない。


つまり今日明日で23層のボスへ到達して置かないと、

いきなり5日後に初対面では何かと宜しくない。


21層には踏み込んだばかりで攻略となると1日以上掛かるだろう。

迷宮の広さ的にその位が限界だ。

アナ曰く人気階のようなので、

飛ばせばボスまでは今日中に行けるかもしれない。


だが、明日と明後日でハットバットのいる22層を攻略し終えて、

更に23層のボスまで行けるかと言ったらノーだ。

絶対間に合わない。


騎士団と共に行動するのだから失態を見せる訳には行かない。

23層へ送って貰うべきだ。


まずは5人でトラッサ1層へ向かう。

そこから全員外に出て待機させ、

入り口にいた男へ声を掛けて送って貰った。


入口の案内はギルドとの契約で午前中だけなのだと言う。

そりゃあ、1日中ずっとここに立っていても需要は無いだろう。

夕方から新しい階層に行く探索者はいない。


初めてこの迷宮へ入った時、もう辺りは既に暗闇だった。

あの時は誰もいない迷宮へ入る事に、随分と恐怖したものだった。

それが今では公開されている最終層を目指すのか。


案内可能な階層はやはり55層までらしい。


55層のボスを自分で倒したら56層へ行く事はできるが、

騎士が入り口にいるため奥へ行く事はできないとも言われた。

勿論5日後には連れて行って貰えるはずなので、

自分で行く意味は無いのだが。


パーティを一旦解散し、自分1人を23層へ送って貰う。

そして自宅に戻り、エミーを加えて入口へ戻った。

今回はナズがパーティにいないと、不測の事態があった場合対処できない。

パニの育成はお預けだ。


ノンレムゴーレムの攻撃手段はパンチと、・・・土魔法は有ったっけ?

魔法があった場合はナズに止めて貰うとして、

アナとヴィーがそのパンチに耐えられるかどうかだ。


ギリギリ耐えられるようではアナが手を出せないので、

石化発動に時間が掛かる。


魔法は効き難いらしいが、

ミチオ君らが対峙した際は既に雷魔法を所持しており、

ルティナの援護射撃もあった。

オーバードライブもあったので、手数は多い。


こちらは階層が低いとはいえ、

パーティは1人少ないし魔法も1段階弱い。

オーバードライブも無い。


一緒に出て来るはずのハットバットには水風土が有効だが、

土属性はノンレムゴーレムの耐性と被るので、

遊び人の空きスキルには水魔法を設定した。

これならピックホッグ対策にもなる。


ハットバットが後ろに飛んで来ないか注意する必要もある。

ミチオ君は単体魔法を外していたので、元々素早いのだろう。

全体魔法を使って行けば必中なのだし、

弓はオーバーホエルミングで狙えば良い。


準備と説明をしたのち、23層の攻略を開始した。


アナは手始めにノンレムゴーレム2匹の気配を辿り案内した。

全員初心者なのだから、これは良いチョイスだ。


ジャーブは剣を、ヴィーは盾を構えて走る。

噂のゴーレムはやはり巨大、いや重量感がありそうで、

20層のボスであったロールトロールより、

更に重たいパンチを放って来そうだった。


但し、動きは遅めだ。

奇抜な動きでフェイントや連続攻撃を仕掛けて来る賢いトロールとは違い、

ノンレムゴーレムは1歩1手が遅い。


パンチの振り被りモーションがある。

打ち込んだら絞るようで、そのまま止まる。

真っ正面に受けなければ何とかなりそうだ。

但し、当たったらえらい事になりそうではある。


アナは縁で受けずに正面から、勢いを殺すように引き当てしている。

ヴィーは・・・吹っ飛ばされているあたり、まだまだだろう。

ガードしたけど飛ばされたらダメージなのか、

転んだ位の判定なのか貫通なのか、良く解らない。


「ヴィー!大丈夫か!」

「へっ、へーきっ!」


平気らしい。

ジャーブはカウンター型だが、食らって反撃する訳では無い。

ヴィーが飛ばされた後のフォローに回り、

ノンレムゴーレムのパンチを剣体で逸らして上手くかわした。


振り絞って腕を伸ばすノンレムゴーレムに、

ここぞとばかりに大振りの一撃を2発食らわす。

反対手の攻撃が振って来たが、それも剣で上手い事逸らしていた。


アナは・・・一応剣で突いているように見えるが、まだ石化させていない。

状態異常耐性ダウンは掛けたはずだが・・・。

ゴーレムは石化しない?


ミリアは石化させていたはずなのだが、アレとコレとは違う物なのか?

単純に運が無いだけか?

そう言えばミリアが大活躍していたような描写は無かった気もする。


そうか・・・睡眠や麻痺はするが、

これが石化耐性を持つ魔物だったのか。

元々石だしな。


水魔法は次で3ターン目になる。

遊び人の補助スキルは知力中上昇だ。

英雄と合わせて、2つ。

同じジョブの効果を重複させても有効である事はミチオ君が示した。


だから同じ魔法であっても以前よりは威力が上昇しているはずだ。

但し比較した訳でも無いし、あれから3層も先に進んでいる。

少なくとも威力上昇のマージンは取ったと言うだけで良い。


ヴィーは相変わらず力で押し返そうとして押し負けている。

最近には珍しい突撃娘だ。

もうちょっと何とかしないとボス戦は厳しいだろう。


6ターン目の魔法でノンレムゴーレムは塵になった。

単純に倍の時間が掛かっている。

知力増大の効果があったにも係わらず、だ。


足元からさらさらと崩れて行き、砂が途中から煙になる。

頭の部分から核と言うか、何かの塊がボトッと落ちてそのまま残った。

ドロップアイテムの岩がノンレムゴーレムの核らしい。


よくあるファンタジー的なゴーレムならば、

真理(emeth)の前のeを潰すと、

死の言葉(meth)になり消滅するのが定説だった。


ヘブライ語の文字遊びだ。

ゴーレムの物語を最初に描いた人も、

そんな事を思い付くなんてきっと中二病だったのだろう。


こちらの世界のゴーレムは単純にただの岩の塊からできているようだし、

どこにもそんな文字は無かった。

勿論後ろ側もしっかり見させて貰った。


そもそも魔物全てが最初から魔法生物として造形されているため、

錬金過程で作成された人工生命体とは異なる。

この迷宮に出るゴーレムへ文字1つ奪うだけで死を与えられるのならば、

全ての魔物が同様に弱点を持っていないとおかしい。


そんな事ならもっと迷宮は楽になっているはずだ。

世の中そんな甘い話は無い。


アナは2グループ目の魔物を探していたので、

探索よりボス部屋を探すようにとお願いした。

この階層はボチボチと人がいるらしい。


岩はコンクリートの材料なのだと言っていた。

建材としての需要があるのだろう。

と言う事は大工の関係者か大型需要に一獲千金を狙うハンターどもか。



   ***



アナは人の気配を元に中間部屋を探し当てた。

ここまではいずれもノンレムゴーレムばかりで、6戦をこなして来た。

相変わらずヴィーは軽い。

休憩がてら、水を飲みながらヴィーの調子を尋ねる。


「盾で受けても飛ばされているようだが、痛くは無いのか?」

「ちょっとだけ」


「バカッ!痛みがあるなら早く言え!油断して大怪我をされたら堪らん」

「は、ハイッ!」


僧侶に付け替えて手当てを施す。


2回でもう良いと合図をしたので、大したダメージでは無かったようだ。

アナが炙り猫になった際は4回、焼き猫になった際は6回だった。

その半分ならば、そう危険を感じる程のダメージでは無さそうだ。


しかしガードしても飛ばされても、しっかりとダメージは蓄積するらしい。

止められなかった分の威力が貫通するのだろう。

交通事故に遭った際の鞭打ちのような物か。


「ヴィー、受けるだけでは無く、受けてかわす事も必要です」

「うけて何?」


「こう、衝撃を抑えるのです」

「何をおさえるの?」


うーん・・・。

パニを連れて来よう。

家に飛んで、パニを加えて戻った。


「アナ、もう一度最初から」

「はい。ヴィー、盾で受けた際に、

 衝撃を抑えるために体をひねったり逸らしたりするのです。

 こうやって、こうしたり、・・・こうです」


今度はアナが身振りを添えて伝える。


パニがそれを竜人族語に訳して伝えた。

自分には同じ事を2度繰り返して言っているように聞こえる。

違いが判らないのが困りものだ。

コーヒーのCMには出られそうもない。


ただ、何となくヴィーは理解したような気がする。


「ジャーブ、ちょっとヴィーを大振りで思いっきり叩き斬れ」

「は、はい。行くよ?ヴィー」

「あいっ」


ジャーブが構えから横斬りで思いっきり振り回すと、

ヴィーは盾で受けた瞬間に、

剣先の弧の曲線上に盾をずらして切っ先を逸らした。

ジャーブの大剣は大きくインパクトせず、そのまま空を切る。


ブォンと大剣が空を切った音を鳴らし、

今のに当たったら無茶苦茶痛そうだと言う事は良く解った。


「横は良いな。縦でやってみろ」

「かしこまりました、行くよ?」

「ヴィー様頑張って下さい」

「あいっ」


再びジャーブが後ろ手で構える。

ノンレムゴーレムもやって来るような、溜めの一撃だ。

いつ放たれるかは完全にジャーブの匙加減だ。

申し合わせたタイミングでは意味が無いのだ。


大きな振りが放たれる。

自分ならここでビビってオーバーホエルミングしてしまう。

いや、ヴィーの動きを観察するために使用した。


ヴィーが盾を正面に構える。

インパクトした瞬間に盾を引いたような動きがあったが、

そもそもジャーブの攻撃は前へ繰り出す動きでは無い。

上から下へ叩き付ける攻撃なのだ。


後ろに盾を引いただけでは衝撃を流し切れず、

ヴィーは盾ごと地面に叩き付けられた。

手当てを一応施してやった。


「わっ、ヴィー大丈夫かい?」

「へっ、へいき!」


「ヴィー、ノンレムゴーレムのパンチならばさっきので良いが、

 今のジャーブが放った剣の動きは上から下だ。

 それではアレはかわせない。

 一先ず今日はこれで良い。今の感覚を忘れるなよ?」

「は、はいっ」


念のため、パニは自分の後ろから付いて来るように言って置いた。

と言うか、パニに迷宮へ直接飛んだ事が知られてしまった。

疑問に思っていないようだったので、

混乱しているか気が付かなかったか何かだろう。

気付かなかったなら、もうそれで良い。


中間部屋から出ると初めてのハットバットと対峙した。

ノンレムゴーレムが2体、ハットバットが3体だ。


「アナとジャーブはゴーレムを!ナズとヴィーでハットバットを。

 後ろに逃すな?パニがいる」

「「「はい」」」


自分もハットバットを牽制すべくオーバーホエルミングで援護を行った。

ここで放つ魔法は水。

後で回収できるので、遠慮無く矢を放つ事ができる。


やはりと言うか当然と言うか、

ハットバットはヴィーの届かない場所を移動して中列まで移動して来た。

自分の弓で牽制する事で何とか最後尾まで到達する事は防いでいる。

ナズも槍を振り回して牽制できるのは1匹までだ。

その位にハットバットは素早い。


「ヴィー、盾を鳴らしなさい」


ノンレムゴーレムと戦闘しているアナが命令をする。


「盾?えっ?なんで」


こういう場合はなんでとか、そういう事を言っている場合では無い。

アナは何かに気が付いたのだ、つまり直ぐにやらせるべきだ。

理由を聞くのは後にして、ヴィーには自分から強く命令した。


「いいからやれっ!」

「あいっ」


ヴィーが盾をガンガン鳴らすと、

ハットバットはその音を嫌ってヴィーから遠ざかる。

コウモリは超音波を使って障害物を感知し、

暗闇も安全に飛行するのだと聞く。

その阻害か。

でも、何故アナはそんな事を知っているのか。


とりあえずヴィーの周りだけ蝙蝠が嫌って離れてくれたおかげで、

ナズの周りに2匹集まり、自分が1匹を担当できた。

3ターン目の水魔法を唱える。


邪魔だったハットバットはここで煙へと変わった。

3ターンで倒せるならば、特に恐ろしい攻撃も無いようだし何とかなる。

ただしそれは雑魚だからだ。


56層ではハットバットでは無く、パットバットが現れる。

見た事が無いので、サイズ感や倒し易さは判らない。

食らうと麻痺するスキルを持っているらしいので、そこは注意が必要だ。

ただし、スキルなら詠唱がある。

その間は止まるだろうから、ナズと自分で抑えれば大丈夫だ。


小さく素早いハットバット相手にヴィーが翻弄された。

本来ならばノンレムゴーレムをヴィーが相手して、

アナはハットバットの相手をすれば都合が良いのだろう。


ノンレムゴーレムを相手に石化武器では無双できない。

麻痺か眠りを入れてやらねばアナは太刀打ちできないのだ。

現状でコボルトのモンスターカードを持っていない事が悔やまれる。


雑魚がノンレムゴーレムだけになったので、

安心してヴィーを送り出しジャーブと交代させた。


残り3ターン分の魔法を唱える間、

ヴィーはさっき学習した事を試したり失敗したりして経験を積んだようだ。

倒す前の1ターン分の攻撃は3回とも防ぎ切ったような気がする。

まぐれか、上達か、これだけでは判断できないが良くやった。


ハットバットからはコウモリの羽が出た。

また、何に使うか良く判らない物が・・・。

現地人に聞くのが一番早い。


「ジャーブ、この羽は何に使うんだ?」

「薄くて軽く、破れ難いので日除けや外套、扇なんかに使われますね。

 雨の多い地域では傘に使うのだとか」


蝙蝠こうもりの羽でコウモリ傘か?

シャレが利いていて宜しい。

不織布や油和紙みたいな物か。

或いはそれら2つの利点を持った素材と言う事だ。


確かに強度があればそういった需要へ応じられるのだろうから、

これは建材の部類なのか。

岩と同じで縁の下の力持ちだ。


鍛冶の材料にはならなさそうなので、無理して集める必要は無いと思う。

岩も同様だ。

サッサとボスまで辿り着きたい。


次にノンレムゴーレムとハットバットが混合で出た際は、

アナとヴィーの立ち位置を交換させた。


やはりと言うかアナはハットバットをものの見事に石化させ、

直ぐさまノンレムゴーレムの囲みに加わった。

ヴィーと合わせて盾が2人になれば安泰だ。


ジャーブは相変わらず凄い。強い。

この男はパーティさえ崩壊しなかったら、

この辺りを余裕で攻略できていただろう。

その原因を作ったろくでも無い彼の幼馴染に感謝した。

ジャーブには悪いが。


仮にハーレムに拘ってメンバーを揃えていたら、

恐らくはここらで困っていたはずだ。

やはり男手があると違う。

パニを身請けした際のハードルも下がったし、

ジャーブを身請けした事は本当に良かった。


水魔法3回目でナズが追い回したハットバットは消え、

手の空いたナズはジャーブの加勢へと回った。

たとえ前衛が防衛一辺倒であっても、

自分が魔法を放って行けばいつかは魔物を討伐できる。

それまで耐えて貰えればそれで十分なのだ。


ハットバットの2倍の時間を掛けて、ノンレムゴーレムが消えた。

ノンレムゴーレムがその場から余り動かない事に気付き、

5ターン目はウォーターウォールを出したのだ。


無機生物なのか、痛みを感じていないのだろう。

斬られても疲れても動きを止める事ないノンレムゴーレムは、

水壁の真っ只中に居ても避けると云う動作をしなかった。


こいつは脳が入っていない。

いや、脳が岩だった。

石頭っちゅーやつだ。


全体魔法より単発魔法、単発魔法より壁魔法の方が威力も高いらしく、

持続的にダメージを与えた事で、ノンレムゴーレムは5ターン目で消えた。

次回以降積極的に狙って行きたい。


全体魔法は水で覆い尽くしてダメージを与える魔法だが、

壁魔法は物理現象その物が出現する。


水の中で崩壊したノンレムゴーレムは、

サラサラと消えず砂が水と混ざるように溶けて行った。

魔物の消え方も様々で感心する。


以降前線を水壁魔法の位置で死守して貰い、

4ターンとちょっとで倒せる事が判明したため、

ノンレムゴーレム退治は大幅に楽な作業となった。


但しハットバットとセットで出た場合、

奴らは壁魔法を避けて飛ぶため全く意味を成さなかった。

先に3ターン分ウォーターストームを掛けるべきだったのだ。


ヴィーもこれまで色々学習したが、自分も学習が必要だ。

いや、これは当然そうなって然るべきだろう。

足りていないのは自分の想像力だった。


意外と倒し易いと知ったノンレムゴーレムは、

その後に問題が起きる事も無かった。

ヴィーも弾き飛ばされる事は何度か有ったが、

その頻度はかなり減ったようだ。


ボス部屋付近で戦っていたパーティが待機部屋を休憩拠点にしていた事で、

アナはそこまでの道順を予想して案内した。

その結果、午前中にボス部屋を見付ける事ができた。


午後からは鍛錬の時間だ。

∽今日のステータス(2021/10/29)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv46

  設定:探索者(46)遊び人:火魔法/知力中(37)

     魔法使い(39)英雄(38)博徒(34)細工師(32)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv40

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv40

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv37

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv38

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv28 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv28


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv47

  設定:探索者(47)遊び人:水魔法/知力中(38)

     魔法使い(40)英雄(39)博徒(35)細工師(34)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv41

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv41

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv38

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv39

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 料理人 Lv28 OFF

 ・パニ       竜人族  ♂ 15歳 探索者 Lv31



 ・収得品

   豚バラ肉 ×  8

   蝙蝠の羽 × 26

   岩    × 39



 ・繰越金額 (白金貨2枚)

     金貨 90枚 銀貨185枚 銅貨 63枚


  迷宮案内料            (2300й)

   23層移送            2300


            銀貨-23枚

  ------------------------

  計  金貨 90枚 銀貨162枚 銅貨 63枚



 ・異世界40日目(朝)

   ナズ・アナ35日目、ジャ29日目、ヴィ22日目、エミ15日目

   パニ5日目、56層同行まであと5日



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  21 ピッグホッグ     /  ピックホッグ

  22 ハットバット     /  パットバット

  23 ノンレムゴーレム   /  レムゴーレム

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