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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第九章 進展
158/394

§146 涙腺

2つのミッションを無事こなし、

後は家に帰ってアナの作戦を確認するのみである。


家に帰ると言ってもどうせワープなので、

通常の帰宅とは異なり降って湧いたように現れるのだから始末が悪い。


一般的な冒険者ならば絨毯を吊るし、その部屋に出るだろう。

でなければ、家の近くにある目印となるような所へ送って貰うのが普通だ。

その場合は当然扉から入る。


ワープ持ちの自分はどんな部屋でも、そこがどんな状態でも、

お構い無く突然帰って来るのだからたちが悪い。


奴隷たちは主人を出迎えるタイミングが掴めず、

常に気を張っておかねばならない。


そういう意味では、優遇された生活や狭い家で家事が楽とは言え、

他の奴隷達よりも気苦労は多いのかもしれない。

ミチオ君はどうしているのだろうか。


家に直接帰っていたような描写は無かった。

日本人、いや地球での生活感が抜けないのであれば、

家の外壁にワープして玄関から帰っていたのかもしれない。


自分は合理主義者なので、まどろっこしい事はしない。

帰って横になりたければ、もうそのままベッドの横に出る。

迷宮から帰って来た時は納屋の扉、直ぐ横だ。


薄暗い納屋に直接出てしまうと、

転倒したりしたら色々大惨事になりかねないので、

これは止めるようにしている。


そういう事なので、

アナが作戦をメモにしたためる作業は自室だろうと思い、

書斎の直ぐ横に飛んだ。

しかしアナはおらず、椅子も使われた形跡は無い。


ポーチをベッドに放り投げ、居間へ移動する。

そこで3人が気付いたようで、居間の扉前で全員が整列して出迎えた。


「「お帰りなさいませ、ご主人様」」(ぺこり。)


「何だみんな、ここにいたのか」

「はい、ペンが1つだけでしたので、交代で使用しておりました」


「ああ、そう。買って来るよ・・・」

「あ、い、いえ、別に困っておりませんのでこれで大丈夫です」


「そう?エミーとは何か会話できたか?」

「はい、早速今日の夕食は魚の包み焼きにしようかと思います」

(ぺこり。)


うーんと、包むって事はパイかな?

パイで魚を包んで・・・うん、美味しそうだ。

手間が掛かりそうだし、金持ち向けメニューなのだろう。


「よし、じゃあヴィーも一杯食べそうなので魚は4匹渡そう」

「ありがとうございます。

 既に生地はできておりますので、後は包んで焼くだけです」

(こくこく。)


手際が良いな。

魚や肉も全部渡せたら良いのだが、

ナズでは持ち切れないし、エミーはアイテムボックスを開けられない。

何とかして喋れるようにしてやらないと900枠のバッグが勿体無い。


「それから、ウッツさんがやって来まして、桶を3つ置いて行きました。

 納屋に運んであります」

「おお、そうか!これで冷蔵庫ができるぞ!」


「以前仰っていた、冷たくする桶ですね?」

「そうだ、生肉や牛乳、卵なんかも、一度に買って置けるから、

 今後はそういう料理も考えろ」

(ぺこり。)


早速納屋に行き、大中小3つの桶を居間に運ぶ。

この冷蔵桶は水の気化熱を利用して冷やし、

冷気を空気の層で逃さない仕組みだ。


頑丈で分厚く注文した一番大きな木の桶。

その中に、側面はできるだけ薄く水漏れしないようにと注文した木の桶。

こちらはニカワでコーティングされており、漏水の心配は無さそうだ。


2つを重ねて、その隙間に藁を敷き詰める。

詰めるための藁と上を覆って被せる布はついでに注文して置いた。

そこら辺の雑貨屋で買って来た物だと思う。


2つをセットしたら、今度は一番小さい桶を重ねる。

2つ目の桶には水で浸すので、

3つ目の桶が浮いて来ないよう、固定するための留め具を設計した。

重ねて留め具を嵌め、がっちりと固定され完全に動かない事を確認する。


外で砂を集めて桶の2層目に浸し、

風呂場でウォーターウォールを出して一旦水汲み桶に水を貯める。

そこからコップで掬い、こぼれ出ないよう砂に染み込ませた。


水だけではある程度蒸発したらタオル生地まで届かなくなる。

このため水の表面張力の原理を利用し、

常に上部へと水分が集まって来るよう砂を媒介させるのだ。


これは文系の自分でも判る。

砂が介在する事に依って表面を覆うタオルまで水分が移動し、

そのタオルは気化熱に依って乾かされて冷却を促す。


3層目は持ち込んだ本に書かれていなかったが、

冷却と言う意味では、外部の熱を水の層に伝えない方が良い。

発砲スチロールと同じ原理だ。


なにせ、この地方は熱い。

藁を敷いた空気の層がバリアしてくれるはずだ。


そして、最後に蓋だ。

低温層を開放していては、

周りの空気と混ざり合ってしまって結局冷えない。

蓋をする事に依って内部の冷気を閉じ込める。


これを風通しの良く日が当たらない場所へ置けば完成だ。

納屋は日陰だが風通しが悪く、台所は通気こそあるが埃立って良くない。

外は熱いし、最適なのは廊下の片隅だろう。


冷えるまでは時間が掛ると思うし、

ひとまずそこに置いて放置する事とした。


「もう使用できるのですか?」


「いや、実際に使用できる位冷たくなるまでは1日程度掛るだろう。

 また明日、様子を見てから使ってくれ」

「かしこまりました。

 ・・・それにしても凄いです、ご主人様は。いろいろな知識をお持ちで」


「ま、まあな」


ナズは褒めてくれたがちょっと恥ずかしいし、くすぐったい。

そもそも自分の知識では無く、持ち込んだ本に依る物だ。

留め具や3層目はアレンジを施したが、

本来は陶器の植木鉢等でやるものだと書いてあった。

材質の違いもあるし、果たして上手く行くかどうかすら怪しい。


部品を作ったのは大工達だしな・・・。

自分は設計と組み立てただけに過ぎないのだ。


居間に戻り、エミーが淹れたお茶をすする。


「アナ、そういえばどうなった?」

「はい、幾つか要点を纏めてみました。

 どうぞ、あ、お読みになれないのでしたね、申し訳ありません。

 読み上げます」


アナの作戦はこうだ。


ユーアロナにいる騎士団員達の間で、

今でもナズが歌っている旨の情報を広めて貰う。

そこで行動を共にしているであろうアイザックの耳へ入れる事が第1段階。

実家に知らせを送るだろうから、その後ナズを警戒するのが第2段階。


ナズに因縁を付けられたり売却を持ち掛けられたりするだろうから、

その際に決闘を申し込まれるよう仕向けるのが第3段階。

そこまで進めば、イルマが屋敷の動きを定期的に流す。これが第4段階。


第3段階が一番難しいとは思うのだが、それはこちらの問題だ。

そういう場は恐らく酒場になるので、

女将さんやマスターに協力を仰げるよう話して置こう。


「うん、良いんじゃないかな。では早速持って行こう」

「はい、ありがとうございます」


アナからパピルスを受け取り、

ゲートを出してボルドレック邸の例の場所へ繋ぎ、

腕だけ出して地面の感触を確かめて丸めたパピルスを突き刺した。

一瞬の事だし、誰も気付かないだろう。


「後は時がじゅくすまでお休みだな」

「そうですね」

「わ、私・・・ご主人様を信じておりますので」


ナズが心配そうに自分を窺う。

一番割を食うのがナズだから仕方無い。

主人である自分が負けたら、その後不幸な人生が一生続くのだから。


「ああ、大丈夫だ。ナズを手放すような事は絶対に無い」


今日アナが口頭で説明した事で、エミーもその計画を知る事になった。


これまでエミーには、

姉を迎え入れる計画であるという話をした事が無かった。

そういえば一度イルマを説得しに連れて行った時、

アナは何と言って連れて行ったのだろうか。


「エミー、もう解ってはいるだろうがお前の姉をボルドレックから奪う。

 その方法は決闘だ。失敗したら全員死ぬ事になるが、覚悟は良いな?」


いや、流石にそんな事は起こり得ない。


結局の所、ナズとアナを残して後は死後解放だ。

既に全員そうなっている。

覚悟と意気込みを聞いてみただけだ。


(ふるふる。)


エミーが拒否を示した。

死にたくないのか、姉を必要としないのか。


ナズからペンを渡されたエミーが、

パピルスにさらさらと何かを書き始める。

ナズは書かれている所までを読み上げた。


「わたし・・・のために・・・そのようなきけん・・・なことを

 するのはおやめ・・・下さい・・・いまでも・・・スワラニガ・・・、

 ハリャラナ・・・あ、満足ですね、十分満足です。・・・しています、

 だそうです」


「うん、エミーの気持ちを初めて聞いた。満足しているならそれで良い。

 だが、放って置いてもどのみちナズが危険なのだ。

 結局争いは避けられないので、ナズとエミー、両方を一気に解決させる」


エミーはナズの顔を見て首を傾げた。

あるじだった子息を殺したのが、

目の前にいるナズだと言う事実をエミーは知らない。


「エミーは、以前の主人に付いてはどう思っていた?

 殺されたと知った時はどうだったか?」


再びエミーが筆を執る。

此方の顔を窺うように見えたので、もう一言付け足した。


「嘘偽り無く、正直に書いて良いぞ。

 誰にも教えないし、何を書いても咎めないから安心しろ」


立場を考慮し、本心を書けないかもしれない。

その可能性を先に潰した。


「ええと、わたし・・・はあのかたが・・・怖くて・・・

 仕方ありません・・・でした、亡くなった・・・ときいた・・・ときは

 なみだが・・・でましたが・・・かなしくは・・・ありませんでした

 どなたか・・・しりませんが・・・ジラファーニモルク・・・

 アサンマリ・・・と聞きました・・・」


「ちょっと待て、今の所もう1回」

「え?・・・ええと、エミーちゃん、多分文字が間違ってますよね?」

(こくこく。)


エミーは書いた場所をぐしゃぐしゃと塗り潰し、

別の場所から書き始めた。


「その方は奴隷になったと聞きました・・・私ですよ、エミーちゃん?」


エミーは筆を止め、目を見開いてナズを見詰めた。


次第に涙が溢れ、頬を伝って落ちる。

直ぐにアナが察して手拭いを持って来た。


軽く頬をぬぐった後、

エミーはさらりとパピルスに何かを書きしるし、

床へ手を付きナズに向かって平伏した。


読めないが理解はできた。

多分感謝の気持ちを書いたのだろう。


「わ、ちょっと。エミーちゃん、めて下さい。

 ここでは私もエミーちゃんもご主人様のしもべですので、

 皆一緒ですよ?」

「エミー、かしこまる必要はありません。

 皆、ご主人様の下に来るべくして来たのですから」


アナが何だか悟りの境地のような事を言い始めた。

因果律、そんな物を信じた事は無い。

効率主義であり、現実主義者なので。


ただ最近思うのは、何かの件が必ず何かと関連していると言う事だ。

世間が狭いと言うのもあるかもしれない。

地球や日本のように、人口が多く個も重視される社会では無い。


全てが1つのコミュニティで完結する位の狭い町ならば、

悪い奴は常に数名だし、良い奴も常に数名だ。

何か取引すれば、必ずコミュニティ全体の利益になる。


その位この世界、いやユーアロナとホドワの町の規模が近くて狭いのだ。

シルクスやアレクスムの話は入って来た事が無い。

要するに、ここは田舎なのだろう。


そういう事ならば、ボルドレックは田舎の大将と言う事になる。

そう考えると・・・何だ、大した事は無さそうだな。

田舎の実力者ならば、地元しか知らずに態度が横柄なのも頷ける。

全ての田舎の金持ち全員がそうだとは言わないが、井の中の蛙ってやつだ。


少しだけ明るいきざしが見えた気もした。


ナズはいつの間にかエミーを抱いて撫でている。

エミーの方は、抱き付くと言うよりもナズにしがみ付いている。

筆談の結果、2人はより仲良くなれそうだ。


き、気が付いたのは自分だからな?そこんとこ感謝してくれ?おーい。


「ま、まあちょっとそっとしてやるか。アナ、風呂に行こう」

「そうですね、準備して参ります」


アナの準備が終わるまで、

遊び人にセットされた魔法の確認とボーナスポイントの配分を調整する。

どうせザコ狩りしても経験値は微々たるものだ、

必要経験値減少とMP回復速度を交換・・・と。

今更必要は・・・


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv45

  設定:探索者(45)遊び人:火魔法/MP中(35)

     魔法使い(37)英雄(37)博徒(30)武器商人(13)


  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)商人(30)色魔(1)

     奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)暗殺者(1)

     防具商人(1)農夫(1)薬草採集士(30)錬金術師(1)

     料理人(18)村長(1)僧侶(19)神官(1)細工師(1)


んんん?


細工師と言うジョブが増えている。

冷蔵庫組み立てたから?


組み立てだけで得られるのか。

そういう事なら大工だって小物を作っているのだから・・・、

いや、多分そういう物では駄目なのだろう。

きっと科学的に作用するような、精密な道具を作らないと駄目なのだ。


例えばガラス瓶や鏡なんかだ。


そもそも、細工師ギルドと言う物を聞いた事が無い。

細工師が外に漏れ出ないよう、ペルマスクでは職人たちを囲っていた。

恐らく職人ギルドに登録すると移動魔法を利用したら盗賊へ落ちるだとか、

そういう制約はあって然るべきだと思う。


この国・・・いや、

細工職人がいる国以外では細工師と言うジョブが存在しないのだ。

魔法使いよりレアなジョブかもしれない。


逆に言うと、細工師に就いている事が判れば捕縛や拉致も有り得る。

どの国だって職人は欲しいだろう、イコール国力に繋がるのだし。

英雄に次ぐ危険なジョブを得てしまった。


 ・細工師

  効果 知力小上昇 器用小上昇

  スキル 破魔鏡


破魔鏡?はまきょうって何だ?


細工師だから鏡は確かに作れるだろう。

鏡と言う位なのだから、何かを跳ね返すかもしれない。

Lv1で何でも跳ね返したら、それは流石にぶっ壊れだ。

そんな事なら迷宮で重宝されるし、もっと公になっていても良い。


物知りセリーだってそこに言及は無かったし、帝都の書物にも無かった。


生活が保障されているのだし、迷宮に行く必要も無い。

何だったらそこから拉致も有り得る。

やはり細工師は隠匿されているのだ。

一部の国に依って。


破魔鏡が何かを反射する鏡だとして、

恐らくLvで成長する、割合反射なのだろう。

Lv1なら1%反射。


つ、つっかえねー!

10年修行して1割ないし2割程度しか反射できないのだとしたら、

跳ね返した感じは体感できないだろう。

これはもう世間的に言えばゴミスキルだ。


しかしLv50なら50%反射だ。

ダメージを半分にできてそれを相手へ返せるのだとしたら、

これは物凄い事なのでは?


せっかく風呂を用意すると言ってアナに支度させたのだ。

グイっとLvを上げて、スキルを使ってみたい。

魔法2ターンで終わる敵を、何とかアナに耐えて貰おう。


早速アナとケトルマーメイドのいる17層へ向かう。

遊び人の魔法は土魔法にセットした。


「ご主人様?ここを2人でとなると、危険では?」


「何とか魔法2回を詠唱する時間だけ耐えてみてくれ。無理なら戻る」

「かしこまりました、やってみます」


忖度したのか、アナは最初に3匹のグループを見付けて来た。

いや、アナが捌ける範囲と言う事だろう。


ケトルマーメイドは一斉に襲い掛かると言うより、

浮遊していて突然突撃して来るタイプの魔物だ。

集中放火されなければアナは強い。

3匹をしっかりと牽制して、自分は安全に魔法を使う事ができた。


3匹倒してLvは9。


経験値効率は200倍だ。

厳し目なのか、こんなものなのか。

他と比較できないから良く解らないが、

倒してLvが上がらなくなるまではやってみよう。


「よし、その調子でどんどん行こう」

「かしこまりました。もう少し多くても行けそうな気がします」


問題は頻繁に出て来るグラスビーだ。

一階層下なので、割合で言えば3匹か4匹に1匹は出現する。

遠距離からの毒スキルを詠唱されたら止めなければならない。

そもそもスキル以外の攻撃も毒を持っている。


先日の特訓の成果が出たかどうか判らない。

中衛と中衛の距離なので魔物までの距離は近いし、

命中補正だって付いている。


オーバーホエルミング無しでも狙えばちゃんと当たるし、

一度に沢山出て来る訳では無いので問題無いのだが。


Lv24まではサクサクと上がり、

次のLvアップは7回の戦闘を必要とした。

一先ずここまでだろう。


早速破魔鏡とやらを使ってみる。

心の中で念じると、対象選択のカーソルが出現した。


カーソルは動かせない。

目視の中心だ。

どうやって決定するんだ?


アナを中心に捉えているが、選択の仕方が判らない。

パーティライゼーションの時は、

アイテムを見詰めて目視のカーソルを合わせ、これだと念じた。


では人間も一緒かな?

心の中でアナと念じるとカーソルは消失した。

見た目には何も変化が無く、

使ったかどうか、使われたかどうかすら判別できない。


手当ては対象を見詰めながら詠唱するとそのまま発動したので、

対象を決定する作法は少しだけ勝手が違うようだ。


一応、自分にも使用した。

自身を対象にする場合は自分の手を見詰めて、

そこを指定すれば良いと言う事も解った。


恐らく、錬金術師のメッキもそうなのだろう。

こちらはまだ一度も使っていない。

投資のお陰で防御力は足りているので、必要となる機会は無かった。


ミチオ君達、皮の鎧で良く突き進んでいるよな・・・。

ああ、ロクサーヌが全回避するんだっけ。

ミリアもレイピア1本で石化しまくっていたが、

だとすると彼女も回避能力が高いのだろう。

元は漁師だし、素早そうだ。


いや、魚の気持ちが判るとも言っていた。

アナも持っている相手を推して量る能力だ。

ミリアの場合は、更に魔物の動きも悟れるのだろう。

言わないだけで。


何だ、ミリアもチートヒロインじゃないか。

ヒロイン補正、良いよな・・・。

アナも凄いけど、魔物の動きまでは解らないようだ。

普通にダメージを受けていたし。


実際に経験してみると、彼女らが如何に規格外だったかと言う事は明白だ。


「よし、パーンに行ってみよう。新しいジョブを試したい」

「ええっ?また新たな力を得られたのですか?」


「ああ、細工師と言うジョブを得た。恐らく先程冷蔵桶を作った時だ。

 アレは多分実用品として成功したのだと思う」

「な・・・なるほど。冷やす事のできる桶も凄いとは思いますが、

 その・・・新しいジョブも聞いた事がありません」


「細工は本来、門外不出の技術だ。

 精巧な工芸品は多大な財を成すから、普通は国がかかえ込む。

 転職できるギルドはそういった国に依って隠匿されているから、

 普通ではお目に掛かれないジョブなのだろう」

「それでは、知られたらとても危険な、恐ろしいジョブとなりますね?」


「そのスキルが破魔鏡と言うらしい。

 良く知らないのだが、意味合い的に魔法を跳ね返せそうだ」

「それをパーンで試される訳ですか・・・、大丈夫でしょうか?」


「既にマーブリームの水魔法を受けているだろう?

 あれと同じ程度か、それよりは少し優しいはずだ」


6層の中間部屋を経て、ボスの待機部屋に人がいない事を確認した。

この作業は絶対必要なのだ。

アナが居てくれないとボス部屋に直通はできない。


「いくぞ!」「はいっ」


部屋に踏み込み、煙が集まる。

アナはパンチを盾で防ぎ、パーンの動きを止めた。

パーンは連続攻撃を諦め、後方へ飛び退く。


赤い詠唱マークが出るが、今回は止めない。

受けてみようではないか、さあ来い!


・・・・・・・・・。


意外と詠唱時間ってあるもので。

止めようと思うと意外と短いが、さあ来い!と思うと長く感じられた。


全身が強めのドライヤーを当てられた位の熱風に包まれる。

確かに熱いが、何とか耐えら・・・いや熱い。

徐々に熱くなるタイプだ。


「あちっアッ!あつ、あつ、あつ!」

「ああああつあつあつあつあつあつあつああああああ!」


そうだった、アナは熱いの苦手だった。

悪い事をしたな。

確かに熱いがダメージ的には大した事も無さそうなので、

こればっかりは耐えて頂く他無い。


程無くして熱さは無くなったので肌が露になっている手首を確認したが、

特に火傷などは負っていないようであった。


現在Lv25なので、1/4カットでこれか。

いや、そもそもカットされたのか全部受けた上で反射したのか、

そもそも反射したのかどうかすら判らない。


何も起こらなかったように見える、と言うのが実際の感想だ。


再びパーンが徒手攻撃をアナに浴びせる。

今のうちにジョブを入れ替えて、アナと自分に手当てを使用した。

火傷は無いが、肌に痛みは残る。


痛みが引くまでは手当てを4回。

僧侶のLvが低くこれまで殆ど育てて来なかった所為せいなのだが、

今更言っても仕方無い。


パーンが再び後方へ飛ぶ。

これまで自分は何も手を出していないので、アナには申し訳無いと思う。

実験が終わったら直ぐに倒すので我慢して欲しい。


足元に赤い光が見え、パーンの詠唱の完了を待つ。

・・・・・・・・・うーん。10秒以上はあるのか?

魔法の効果時間もその位だし、

詠唱も効果時間も、等しく異世界時間15秒なのかもしれない。

意外と長いんだな。


なんて思っていたら熱さがやって来た。


「あっ!ああち、あち、あち、あち、あああつい、

 あつっ!あああつっああい゛い゛い」


「あ゛あ゛あ゛あ゛あ!あ゛ああ゛あ!あ゛あ!あ゛あ゛あ゛!」


アナがこれまで聞いた事の無い悲鳴を上げて床を転げ廻る。


手当てを掛けまくって援護した。

ダメージは回復できたとしても、熱さの感覚はリアルタイムだ。

痛くは無いが、熱かったと言う事実は残る。


済まないアナ、主人の我儘で焼き猫にしてしまって・・・。

後でたっぷり撫でよう。


結局2回を食らって色々と解ったので、

土魔法、水魔法とオーバーホエルミングで矢を射出し、

パーンを肉にした。


「ご、ご主人様、流石にこれは」


「ああ、済まなかった。もう実験はしないし、熱いのはナシだ」

「あ、ありがとうございます」


涙目のアナをりしながら実験の終了を告げた。

土魔法をセットしてしまったので、風呂の予定は流れてしまった。

∽今日のステータス(2021/10/24)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv45

  設定:探索者(45)遊び人:火魔法/MP中(35)

     魔法使い(37)英雄(37)博徒(30)武器商人(13)


  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)商人(30)色魔(1)

     奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)暗殺者(1)

     防具商人(1)農夫(1)薬草採集士(30)錬金術師(1)

     料理人(18)村長(1)僧侶(19)神官(1)


 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv39


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv45

  設定:探索者(45)遊び人:土魔法/MP中(35)

     魔法使い(37)英雄(37)博徒(31)細工師(25)


  取得:村人(5)戦士(30)剣士(34)商人(30)色魔(1)

     奴隷商人(1)騎士(31)賞金稼ぎ(31)暗殺者(1)

     武器商人(13)防具商人(1)農夫(1)薬草採集士(30)

     錬金術師(1)料理人(18)村長(1)僧侶(19)神官(1)


 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv39



 ・収得品

   銅    × 4   遠志   × 3

   蜜蝋   ×11   ヤギの肉 × 1



 ・異世界37日目(15時頃)

   ナズ・アナ32日目、ジャ26日目、ヴィ19日目、エミ12日目

   パニ2日目



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  6 エスケープゴート   /  パーン

  15 フライトラップ    /  アニマルトラップ

  16 グラスビー      /  キラービー

  17 ケトルマーメイド   /  ボトルマーメイド

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― 新着の感想 ―
[一言] 主人公は思い遣りがなさすぎる。
[気になる点] 本文中) 武器商人と細工師をつけ替えた、記述がないのは分かりにくいです。 また、最後に手当てを使いまくっているけど、石化を狙わず魔物に魔法を撃たせたいのだから、博徒の代わりに僧侶を…
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