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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第八章 停滞
151/394

§139 色好

昼食を食べた後は全員に休息を命じた。

休息とは言っても、何もしない訳では無い。


アナとジャーブとヴィーは庭で打ち合いを始めた。

畑を荒らさないかと懸念をしたが、安全なスペースでやるとの事だ。

畑当番のジャーブがそう言うのだから、後は任せた。


一方でナズは今の所十分過ぎる程の活躍であり、これといった懸念は無い。

一番駄目かと思った子が、現状では一番良く動いている。

今朝の迷宮では完全にナズの機転によって救われた。

喜ばしい事だ。


従ってナズはエミーと一緒に自由にさせて置いたのだが、

部屋でくつろいでいると、

早速買って来たお茶を淹れて持って来た。


ミントの香りがするハーブティーだ。

厳密に言えばミントまで強い爽快感は無い。

少しスッとする感じ程度。


色は薄い黄色で、商館で出された赤いハーブティーとは異なっていた。

これはこれで好みの味わいだ。

ナズを抱き寄せて撫でてやったが、後ろにエミーも立っていて、

ナズの解放後にエミーも撫でられる事をせがんで来た。


「エミーは撫でられる事が怖くないのか?」

(こく。)


「そうか、褒める時は撫でた方が良いのか?」

(・・・。)


「どっちでも良い?」

(こく。)


「にしては、そういう態度では無かったな」

(こく。)


良く解らんな。


みずから頭を差し出して来た時だけ撫でようか。

ナズはともかく、殆ど自分と同じような年齢の女性なのだ。

子ども扱いも悪いし、本人の希望する着地点がイマイチ見出せないでいる。


「ハーブティーは美味しかったので、

 夕食や起床時に用意して置いてくれると助かる。

 朝は冷たくて良いからな」

(こくり。)


「ナズ、値段はどうだった?」


「それ程高い物ではありませんでした。

 茶器の方は高かったのですが、

 店員さんからは鍋で煮出せると聞きましたので、

 今回は布に包んで沸かしました」


ティーバッグか、やるではないか。


面倒が少ないならそれで良い。

専用の茶器でお金は全て使いました、では困る。


庶民的な価格であれば申し分無い。

雑貨屋で売っているのだし、大した事は無いのだろう。

ピンキリだとは思うが。


「それじゃあ鍋一杯作ったのなら、水差し1つ分全部茶にしておけ」

「そんなにお飲みになるのですか?」


「全員分だ、全員」

「いえっ、私たちは十分ですのでっ」


「水ばかり飲ませても体に良くない。茶を飲め、茶を」

「は、はい。ではそうさせて頂きます」

(ぺこり。)


「一息吐いたら、お前たちも飲んで休んでいて良いぞ」

「えっ、いえ、そのような事は──」(ふるふる。)


「い・い・ぞ」

「は、はい。かしこまりました。頂きます」(こくこく。)


2人が部屋を出て行った。


作ったのはこの一杯分で、これから追加で沸かすのだろう。

早速水瓶が機能しそうで何よりだ。

水瓶と言うより、お茶のポットになるのだが。


「ちょっと出掛けて来る」

「いってらっしゃいませ」


台所で鍋に追加の水を注いで煮出し始めた2人に声を掛けて、

自分はトラッサの商館へ向かった。

目的は前衛、或いは中衛ができる戦闘奴隷だ。


パーティを作ると言う意味では、

変則スキルやボーナススキルがあるせいで、

一般人を入れる訳には行かない。

秘密を守ると言う意味では完全統治下の者、奴隷しか有り得ないのだ。


以前助けた後パーティが崩壊したらしい、どこぞの探索者は却下だ。

申し訳無いが。


どうせ自分たちのパーティに入れば、

たとえ初期Lvが多少低くてもあっと言う間に成長する。

センスや意気込みで評価すれば良い。


こういう時に頼りになるのはやはりシラーだ。


ホドワの商館主でも良いのだが、ちょっとチャラ過ぎる。

いや悪い人では無さそうなのだが、生理的な問題だ。

妾候補を探すならあちらでも良いとは思うが、

寡黙で真面目な戦闘奴隷を探すとなると・・・ね。

どうしても後回しにしてしまう。


以前と同じようにノッカーを叩き、ヨシフが出迎えた。


前に確認した時はLv25だった気がする。

今回もLv25であるので、そうなかなかうまくは行かないだろう。

一般人は1年で2層、適正階層であってもここから2年は掛かるのだ。


「やあ、またお願いできるかな?」

「これはユウキ様、ようこそおいで下さいました、どうぞこちらへ」


ヨシフとアグルスに連れられ、何度も通された応接間に向かう。


「して、今日はどういったご用件でしょうか」


シラーは出て来なかった。

ヨシフがそのままソファに座り、要望を聞く。


「シラー殿はまたお出掛けですか」

「はい、申し訳ありません。

 奴隷をご用立てできるのは明日以降となります」


「迷宮は進められているようですが、今はどこまで?」

「はい、お客様が勧めて下さったように、

 あの後直ぐに7層で戦ったのですが、

 今は少し余裕ができ、11層で修行させて頂いております」


「それならばヨシフ殿も、お供の奴隷達も強くなったでしょう」

「ええ、おかげさまで。

 頑張れば2,3年で父の跡を継げるかもしれません」


同じ時期に迷宮を始めた、探索者の奴隷か仲間がいるのだろうか?

迷宮での強さの指針は探索者だとアナが言っていた。

そうでなければ、後どの位鍛錬が必要なのかは判断できない。


しかし11層か。

ナイーブオリーブにニートアント、スローラビットなのだから、

狩り易いし確かにそこならばLv30に届くだろう。

4層で延々羊を追い回すよりは断然早いと言える。


しかし2,3年では難しいだろう。

そうしたいのであれば最低でも20層位に行かないと。

しかし彼は戦闘には向いていなさそうだ。

焚き付けた所大怪我をされて責任問題になっても困る。


「12層からは一段強い敵になりますので、

 ご無理をなさらずそこで修行するのが良いでしょう」

「ええ、解っております、ところで今日は?」


「ああ、そうでした。自分たちのパーティは20層を突破したので、

 そろそろもう1人、前衛または中衛ができそうな、

 動きの良い戦闘奴隷が欲しくなりましてね」

「そうですか、前回ご覧になられた時から殆ど変わっておりませんが、

 宜しいでしょうか?」


「お願いします。今度はゆっくり見たいと思いまして」

「どうぞどうぞ。

 いつも即断されるユウキ様は珍しいなとは思っておりました。

 ゆっくり選ばれる方の方が多いですよ」


そりゃそうだよ。

値段相応だとは言え、自分の部下になるのだから、

面接官張りに厳しい目で見るのが普通だ。



   ***



2階の男達、3階の女達を見せて貰ったが、

やはりピンと来る者はいなかった。

人を見る目などと言う物は持ち合わせていない。


アナは自己申告だったし、ジャーブは本当に1人飛び抜けていた。

ナズはドワーフだった事と、可愛かったからだ。

おっ?と思えるような、何か惹き付けられるような感じは、

現在この商館にいる奴隷達の中には無かったと言う事だ。


「うーん。残念ながら、これぞと言う者は見付かりませんね」

「そうでございましょうね。

 ユウキ様は既に2度もご覧になっておられるので、

 目が肥えていらっしゃる」


「新しく戦闘向きの者が入ったら教えてくれませんかね?」

「ええ?構いませんよ、遣いを送りましょうか。住所などは」


ええと、何だっけ。確か21の321だ。

んー、町の外だから、まずは外2区だったっけな?


「ホドワの外2区・・・の、ええと13の2の1です」

「かしこまりました。

 では何か良さそうな奴隷が入りましたらお知らせ致します」


「シラー殿にも宜しくお願いします」

「はい、では」


シルクスでは戦闘奴隷の扱いが無いと言っていたし、トリアは無理だろう。

アレクスムで探して貰っても良さそうだったが、こういうのは信用商売だ。

世話になっている所から揃えた方が良い。


次にホドワの商館へ向かった。


以前ヴィーが世話になったのだから、顔は繋いでいる。

イケイケでちょっとやんちゃな感じに苦手意識があるだけで、

あちらも商売としては真面目にやる方だと思う。


ナズが世話になったのだし、エミーの事も教えて貰った。

ヴィーも劇的に良くなったので感謝はしている。


ノッカーを叩くと、小間使いの男と共に商館主本人が現れた。


「おおー、これはこれは。ユウキ様でしたかな」


「そうです、戦闘奴隷が欲しくなったので見せて欲しいなと思いまして」

「そうですか!どうぞどうぞ。戦闘奴隷はウチの主力ですので、

 きっと目星い者が見付かるかと思いますよ」


小間使いの男に託されて、商館主の男は奥の部屋に帰っていった。


 ・ジャーハン  人間   男 26歳 奴隷商 Lv18


鑑定したところ、小間使いだと思っていたが奴隷商人だった。


羽振りが良い店なのだ。

当然お抱えの奴隷も優秀な者がいて、

早くに奴隷商のジョブへと就任できたのだろう。

と言う事はこの館主の息子か。


それならば奴隷の質は期待はできるか?


トラッサとは違い、2階は戦闘奴隷が集められた階だったようだ。

男と女で部屋は分けられているものの、値段の差は無いとの事だった。

つまり非処女で、中古奴隷なのだろう。

使い潰し、或いは取っ替え引っ替えなのだろうか。


深層に潜る際に不要になった奴隷ならば、能力は期待できない。

彼らでは対応できなかったと言う事だから。


全員を見せて貰ったが高い者でLv12、低くてもLv7で、

低層階なら今直ぐ連れて行ける強さの者達が大半だった。

突出して強そうだったり、何か一芸に秀でた者はいないようだ。

勿論、得意な事は何だと1人ひとり丁寧に聞いた。


「うーん、生憎どの奴隷も中層以降は厳しそうですね」


「お判りになりますか?流石でございます。

 奴隷を欲して迷宮に行く方は殆ど使い潰しますので、

 深層へ連れて行くとなると、やはり一から大事に育てるしかありません。

 みな奴隷だからと使い捨てですよ。可哀想ですがね」


中層まではレンタルの感覚なのだろう。

必要なら揃えて、要らなくなったら売却して取り戻す。

それ以後は探索中に知り合った仲間とパーティを組む。


奴隷ならば就けるジョブにも限りがあるだろうし、

そこまで育てるメリットが薄いのだろう。


例えばパーティでの分配の際は、

1人にカウントされないのかもしれない。

難しい攻略法を強いられる魔物相手では、

率先して突っ込ませられたりして、

消耗が早く回復薬を多く必要とするとかだ。


奴隷の扱いはピンキリだと聞いた。


ミチオ君や自分はこの世界に於ける通常の奴隷の扱いをしていない。

アナが言う前主人の感想では、

外で寝る訳では無かったので他人よりマシだったと言う程だ。


アナの元主人達はお互いに奴隷を持っていたので分配は半分だし、

2人の奴隷が前衛を務める事になれば痛み分けは半分ずつだ。

5人パーティのうち1人が奴隷などといった格差は、

アナの元主人に限っては存在しなかった。


やはり戦闘奴隷は不憫だ。

アナが身持ちを引き締めた理由が解った気がする。


「上は綺麗所ですが、見ますかね?」


「一応見て置きたいですね。

 ナズは綺麗所の枠だったのですが、しっかりと戦っています。

 今ではウチの主力で、本当に良く働いてくれます」

「ナズ?さんですか?」


「ああそうか、ホドワの酒場のナジャリですね。ご存じかと思いますが」

「おお、良く知っております。

 そうでございますか。で、戦っている・・・本当ですか?」


「結構強いですよ?20層の敵を物ともしませんから」

「ええ!?あの娘が?それならば本当に相当な強さですね・・・。

 酒場に居た頃は争い事はからっきしだったと聞いていたのですが」


「みんな表面だけで判断して、本質を見ませんからね。

 大体、本当に弱かったら絡んで来た男を一撃で殺ったりしませんよ」

「な・・・なるほど、一理あります」


階段を上がり、3階の綺麗処を案内された。

トラッサの商館より広く、

ベッドで寝かされているらしい7人の可愛い女性たちが出て来た。


そして、こちらが選ぶ立場では無くあちらが値踏みするような力関係だ。

勿論そんな高飛車な女はゴメンである。

見た所、私を買ってと言うオーラを発している者はいなかった。


商館での生活はある程度のラインが保証されている。

気に入らない主人に買われた先でご奉仕をする位ならば、

ここでお高く留まっていた方が楽だと言う訳だ。

その態度がいつか身を滅ぼさないと良いけどな。


「あー、駄目ですね。寝込みを襲われて刺されそうな勢いです。

 彼女らは娼奴としても合いそうにありませんね」

「左様ですか、残念です」


ぞろぞろと部屋に戻って行く中で、かすかに舌打ちの音が聞こえた。

流石にイラっと来たので申告した。


「今舌打ちされましたよ!?」

「恐らくメディナでしょう。

 あの者は常に態度が悪いのです。お許し下さい」


「再教育などはしないのですか?」

「何度もしているのですが聞く耳を持ちませんで、

 あれはそのうち娼婦に落とされると思います」


「身持ちを改めないと身を滅ぼしますね」

「当然です。この世界、奴隷達も厳しいのです」


それより、奥にもう一部屋あるのが気になった。


「まだ奥に一部屋あるようですが?」

「あちらも娼用ですが、特殊でして」


「何かあるので?」

「お客様、男はお好みでいらっしゃいますか?」


「ああ、そっちね」

「はい、そっちです。

 勿論ご購入後はご自由にして頂いて構いませんので、

 迷宮へ連れて行っても差し支えはありませんが」


「じゃあ一応見ますか」

「はい、どうぞこちらへ」


3階一番奥の部屋の前に案内され、出てきた男の娘たちを吟味する。


やはり男娼と言うだけあって、皆小さく可愛らしい。

男だと言われないと、気が付かない位可愛い男の娘もいた。

ちょっと興味が湧いたが、勿論そっちの気は無い。


 ・パニ ♂ 15歳 竜人族 村人 Lv1


可愛いので手元に置いてやりたいなと言う親心的な物だ。

戦闘用には絶対向かないだろう。

皆貧弱過ぎる。


「ちなみに、1人いくら位なのです?」

「女性よりは人気が無いので30万ナール前後ですかね」


ふーん、そうなのか。

思った程高くは無いのだな。

金持ちの道楽としては、女性を選ぶより安上がりで需要があるのだろう。


そうこうしているうちに、全員部屋に戻された。

1階へ戻りがてらジャーハンに尋ねる。


「さっきの竜人族の男、ヴィーの相手にどうかな?

 アレなら年が近くて、主導権はヴィーが持てそうなので」

「ヴィーと言うのは、この間お客様が教育を施した娘ですかね?」


「そうそう」

「おお!それならば、奴隷同士子供を儲けた際には売却も期待できます。

 竜人族の子でしたら、竜騎士に就かせると買取も高額です。

 あの娘は竜騎士でしたね、強い子が生まれる可能性がありそうです」


ふーん、それも良いな。

ただ、今は部屋が。

まあ元々6人の予定だったし良いか。


「ブラヒム語は?」

「大丈夫でございます」


「よし、買いましょうか」

「ありがとうございます!ではこちらへ」


「ああ、それから遺言で死後解放を。

 自分は迷宮でいつ死ぬかも判らないし、

 折角つがいにしてやるなら、幸せに暮らして欲しいですからね」

「おお、なんとお優しい。

 あの娘のブラヒム語の教育は完全ではありませんでしたので、

 2人が一緒になる事で、より多くの言葉を覚えるかもしれませんね」


そういうメリットもあるのか。


ただヴィーは未成年だし、今はパーティの主力だ。

仲良くはして貰うが、しばらくは別部屋で寝て貰おう。

台所かな?


応接室で出されたハーブティーを啜って待っていると、

商館主が先程見た竜人族の男の娘を連れてやって来た。


「いやー、どうもどうも。お買い上げありがとうございます。

 それにしても、戦闘用が欲しいと仰っておられたのでは?」


「ウチのヴィーが、少し言葉が判るようになってから色付き出しまして」

「あの竜人族の娘でございますね、それで相手をですか。

 それでは子を儲けられました際にはぜひうちに!」


「いやいや、まだ先の話でしょう」

「いえいえ、こういうのは5年先、10年先で計画しませんと」


「いやー、商売上手ですね」

「ははは、そうでもなければこの世界でやっては行けませんよ」


どこの世界も商売は厳しいと言う事だ。

先手先手の行動が実りに繋がる、当たり前の話だ。

ヴィーが子供を儲けるとなると、少なくとも直近の話では無い。

勿論売るつもりも無いので、話半分だ。


と言うか奴隷の子を持つ奴隷の親は、

子供を売られる事に対してはどう思っているのだろうか。

今度アナに聞いてみるとして、ひとまずは代金を支払った。


「当館では娼用の奴隷を購入されたお客様に、

 身体の確認などを行っております。

 女性ですと胸や腰回りの確認を、

 男娼となりますとアレ(・・)の具合を気にされるお客様も多いので」


アレとはあれだ、ナニだ。

ナニとは、あれだ。

何はともあれだ。


「い、いや、別に必要無い。特に病気や傷などは無いのだろう?」

「はい、童貞で傷などはありません。

 ウチでは病気の者はお売りしない決まりとなっておりますので、

 その点に付きましてはご安心下さい。

 たとえ傷がありましても、ちゃんと回復させてからお出ししております」


だからエミーが売られた際はトリアに移したのか。

相手がボルドレック家では断る事も難しいだろうし、

ていの良い厄介払いだったのだな。

少しだけトリアにいたエルフの奴隷商人に同情した。


「それは良かった。怪我はともかく、欠損なんかは?」

「そういう物も全て、教会でお金を払えば綺麗さっぱりですよ。

 もしご所有の奴隷が傷付きましたら、遠慮せず教会へお連れ下さい。

 怪我は放置すると病気になったり、腐ったりすると命を落としますので」


そうか、この世界には手当てと言う回復魔法がある。

怪我全般には有効なのだろう。

そうなると、大事故に遭っても死亡のハードルは低い。


その代わり魔法に頼ると医療が発達しない。

だから病気の対応ができない訳だな。

それに怪我の放置で腐ると言うのは多分、化膿や破傷風だ。

そうなる前に直ぐ治るんだから早く治せよ、と。


では、どうやって性病になっているか調べるのだろうか?

医療が発達していないなら見分けが付かないはずだ。


「娼婦の病かどうかはどうやって判るんだ?」

「おや、御存じありませんかね?広く知られておりますが。

 血を取ってウサギに垂らすと、そのウサギは毒に掛かるのですよ」


「ウサギ?」

「迷宮や野を這うスローラビットです。

 どういう訳か性の病気に侵された者の血を浴びせると、

 スローラビットは必ず毒に掛かります。

 白いですからね、色が変わると直ぐ判りますので誰でも判別できます。

 毒になったウサギは3分もあれば倒れるので、後処理も簡単です」


何でウサギなんだろう。

他の魔物では?

梅毒と兎は関係あるのか?

ウサギだけは梅毒菌に対する抗体を持っていないとか?


まあ、誰にでも簡単に判別できるのならば安心だ。

今度ちょっとエミーで調べてみるか。


「そうなのか、怪我や病気の心配が無いなら安心だ」

「はい、当館は自信を持ってお出しできる奴隷ばかりですので、

 また何かご用命がありましたら是非またウチで!」


やり手でイケイケなだけあって、しっかりしている。

この風貌なのはそれなりなのだな。

別に悪い人物では無いと言う事は知っていたし、苦手意識がやや薄れた。


そして死後解放のオプションを付けた事でしっかり3割引きが利き、

30万500ナールが21万350ナールとなった。

金貨21枚と銀貨4枚を支払って、パニを連れてホドワの商館を後にした。


靴を履いていないが、家まで頑張って貰いたい。

パニは無言で付いて来た。


1人増えた事で、ベッドと手拭い、歯ブラシとタオルが必要になる。

帰り掛けに家具屋、雑貨屋、服屋に立ち寄り、生活用品を買い揃えた。


パニはいずれも店の中には入ろうとせず、店の入り口で立って待っていた。

家具以外の大きな荷物も無いし、

他の小物はポーチに全て入ったので持たせる事もしていない。

何を買ったか、なぜ立ち寄ったかは本人は知る由もない。


本来の奴隷はそういう動きをするものなのだろう。

これまでは何を買ったら良いかすら判らなかったので、

ナズやアナとは店の中であれこれ相談しながら買い物をしていた。


「それじゃあ家まで歩くが、足は痛くないか?」

「はい、大丈夫です」


パニが初めて口を開いた。

透き通る高い声だ。

リリックボイスと言う奴か。

男娼なのも頷ける。


何故そうなったかは後で聞くとして、

往来がある所で色々根掘り葉掘り聞くのは可哀想だろう。

もしかして知人がいるかもしれないのだし。


家路を急いだ。

∽今日のステータス(2021/10/19)


 ・繰越金額 (白金貨2枚)

     金貨115枚 銀貨194枚 銅貨 36枚


  ホドワ商館   (300500→210350й)

   パニ身請け          300000

   遺言作成              500


  家具購入             (1500й)

   ベッド              1200

   椅子                300


  雑貨購入               (25й)

   手拭い  ×2            20

   房楊枝                 5


  服購入              (1150й)

   下着   ×3           450

   普段着  ×2           700


     金貨-21枚 銀貨-30枚 銅貨-25枚

  ------------------------

  計  金貨 94枚 銀貨164枚 銅貨 11枚



 ・異世界36日目(昼過ぎ)

   ナズ・アナ31日目、ジャ25日目、ヴィ18日目、エミ11日目

   パニ1日目

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