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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♯第八章 停滞
150/394

§138 低層

「現状で20階のボス以降は厳しい。

 自分たちの実力に合わないので別の所に行こう」

「「かしこまりました」」


「俺が最後に入っていた12階層からもう8層も進んで来ました。

 ユウキ様のお陰で一気に攻略が進めた事は、

 これだけで十分快挙としか言いようがありません」

「ア、アタイがまだうまくたたかえないから・・・」


「ヴィー、お前だけじゃない。

 アナも現状魔法を撃たれたら厳しいし、

 自分も奥の方にいた魔物の詠唱を止められなかった。

 ナズも牽制するのが精いっぱいで、

 まともに動けていたのはジャーブだけだった。

 ここが皆の限界なのだ、気にしなくて良い」

「ええと?・・・はい」


「今できる事は、鉄が手に入る事が判ったのでナズの鍛冶を進める事と、

 ヴィーの鍛錬を積む事、もう1人迷宮で動けそうな者を用意する事、

 麻痺や眠り、毒に対する装備を手に入れる事だ。

 不安要素は一切無しにして、万全の態勢で挑みたい。

 お前たちは絶対に落とさないからな」


「「ありがとうございます」」「流石、ユウキ様です」


ヴィーは意味が解らなかったようで、

さっきの内容も含めてコソコソとジャーブに聞いていた。

難しい表現や長い文章は、まだまだ理解が追い付かないのだろう。


「ヴィー、ここは暫くお休みして盾の練習だ」

「えっ、はい!わかりました!」


ヴィーへの説明はこれで良い。

迷宮初心者にここで戦わせるには荷が重過ぎた。

まだ5日やそこらしか経っていないのに一気に20階層だしな・・・。


昨日まで村人だったベスタが前衛として実戦を開始したのは18層であった。

ミチオ君はベスタが初心者である事を考慮して後衛に付けさせていたが、

ベスタ自身が前に出て戦いたいと言い出したのだ。

そう考えると、ベスタも相当凄い。

やっぱりヒロイン補正だ。


自分には主人公補正が無い。

仲間にはヒロイン補正も無い。

自分を含めて、皆ただの一般人だ。


ミチオ君に憧れて追い掛けて来た、只の大学生に過ぎないのだ。

これと言って取り得の無い平和な微温湯ぬるまゆで育って来た軟弱者。

その身の程を知った。


ゲートを繋ぐ。


皆ゾロゾロと入って行ったが、

その先は家では無くホドワの1層だった事にジャーブが驚いた。


「あれっ?探索をおしまいにして帰るのでは?」


「お休みでは無い。20層以後はまだ厳しいので、今できる事をする」

「はぁ・・・」


「アナ、どうだ?人は」

「チラホラと居ますが、それ程混雑しているようではありませんね」


「ホドワの1層だ、ミノが出る。

 革を集めたいが中間部屋とボス部屋まで解かりそうか?」

「ええとお待ち下さい、この動きが人のようなので・・・」


ぶつぶつ言っているので、動きからミノか人かを考えているのだろう。


「多分こちらです、ご案内致します」


アナの多分はかなり確証を持った多分だ。

安心して付いて行く。


迷宮の1層は狭い。


その気になれば自分だって半日で1層の地図位は作れそうだ。

装備が貧弱な2パーティと擦れ違ったが、

その後直ぐに中間部屋へ辿り着いた。

そこでも休んでいる2人組を見付けた。


1層だけあって初心者ばかりで、その構成人数も少ない。

ミノは倒し易いとアナから聞いた。

まさに初心者向けなのだろう。


程無くしてボス部屋に辿り着いたが、

ボスと戦っている者はいなかったようでそのまま扉が開いた。


煙が集まりハチノスが出現したが、ファイヤーボール1発で仕留めた。

皆を連れて来る必要性があるかと言えば、無かったかもしれない。


ドロップを拾って次・・・な、何も無い!


アイテムは?

ねえ、ちょっと。

どこ行ったの?自分の革。


「何も出ないみたいなのだが」

「アイテムが絶対出現すると決まっていないボスのアイテムは、

 低階層ではかなり出難いと聞きます」


ジャーブが教えてくれた。

ナズとアナは首を傾げているので知らなかったようだ。

アナはトラッサの迷宮にしか行った事が無かったようだし。


「ハチノスの革は確定では無い?」

「結果だけ見ると、そうみたいですね」


そうか、ミチオ君がハチノスのアイテムに言及しなかった理由がこれだ。

ドロップ率の問題でお目に掛からなかった。


そりゃそうだよな。


1層でハチノスから革が確定で出るのなら、ここはお宝天国だ。

ミチオ君が戦ったのはベイルの4層だ。

そこでもまだ確定には至らないのだ。


ある程度初心者がふるい落とされた7層だったからこそ、

ほぼ確定で革が出た訳だ。

ここで革を集めてナズに鍛冶を進めさせる計画は頓挫した。


・・・・・・。


買うか。

冒険者ギルドの買い取り掲示板で。

必要総数が判らないので、後で家に帰って確認しよう。


では次だ。


ヴィーの鍛錬を進める事と、耐性装備を揃える事だ。

モンスターカードはジャミルにもう頼んであるし、

こちらは時間が解決してくれる。


それでは今日から3日位はヴィーの鍛錬をさせようか。

打ち合いで盾の使い方に慣れさせ、

その合間に低階層のボスへ連れて行き魔物の動きを覚えさせる。


良し、それで行こう。

ゲートを出して、今度こそ家に帰った。


出迎えに来たエミーのLvを調べると、探索者はLv27となっていた。

後Lv3、切り良くどこかで上げて置きたい。


そういえば以前殲滅した兎牧場はどうなっただろうか。

もう20日以上も経過している。

そろそろ増えていても良い頃合いと思う。


「ナズはちょっと付き合ってくれ」

「えっ、私ですか?」


いつもはアナを連れて行く所だが、

アナはジャーブと合わせてヴィーの稽古を付けて貰いたい。

消去法でナズしかいない。

1人で行くのは寂しいだけだ。


「解りました!私にお手伝いできる事なら何でも致します!」


ナズが大張り切りなのが心に刺さる。

特にやって貰う事も無いだろうし、寂しいから連れて行くだけなのに。


「じゃあ、他の者はヴィーと稽古だな。

 怪我はしないように注意して、何かあったらこれを飲ませてやれ」


滋養丸を3つジャーブに手渡し、

自分とナズはトラッサの9層の中間部屋に飛んだ。


「ご主人様、ここは?」


「以前兎だらけだった部屋の事を覚えているか?」

「はい、ご主人様が大怪我をなさった所ですね?」


つ、つまらん事を覚えているな、そっちじゃない。


「道順だ、道順」

「は、はい、そうですよね。ええと確かこちらだった気がします」


アナがいればこういう時は頼りになるが、

そのアナが講師となるので頼れるのは各々の記憶だけだ。

別にナズの記憶を当てにしようと言う訳では無い。

自分の記憶と合致させているだけだ。


まずは最初の隠し通路を探す。

思い出せる位置で壁に触れると、亀裂が入って通路が開けた。

迷宮の壁はどこも同じように見えるから判別が付き難い。

同じ迷宮ならずっと深層まで同じ模様なのだ。


「次は左だったよな?」

「そうですね」


そう、隠し通路を通ってから右手の法則から左手に切り替えたのだ。


ここからはあまり覚えていないので、

以前のように左手を伝いながら次の壁を探す。

ええと道中の敵をジャーブが避けて、

多分あの辺で次の通路を見付けたんだっけ。


──ゴトン。ゴゴゴゴ・・・


「お、ここだったっけな」

「そうですね、そのまま左側に1部屋と、

 ご主人様が大怪我をされたのは右側のお部屋でしたね」


今回はアナがいない。

他のパーティに出会でくわさないかと心配になり、

中間部屋からここまでは徒歩で来たのだが、

そもそも人があまり立ち入らないエリアだった。


心配は無用だったかもしれない。

いやしかし、万が一もあるから何とも言えない。

ここまでで出遭う魔物は火魔法1回(正確には2発)で消えたので、

オーバーキルも甚だしい。


たとえウサギがひしめき合っていたとしても、1ターンだ。

何も心配は無い。


「ええと、多分ここですね、えいっ!」


準備も何も、合図をする前にナズが勝手に壁に触って呑み込まれて行く。


中では再び20匹前後の兎がひしめき合っていた。

当然ファイヤーストーム1発(正確には2発)だ。

そして眩暈がする程グラっと来た。

ここまで全く回復してないな、そういえば・・・。


ウサギは20匹位だが、他の敵もかなり混じっている。

ニードルウッドは3匹確認できた。

ミノは4匹。


スパイスパイダーは確認できなかったので判らないが、

アイテムを拾えば判かるだろう。

そういえばスパイダーシルクはレアドロップだったんだっけ。

じゃあもう良いや、ゼロだゼロ。


「集めて来ました!」


ナズは嬉しそうに拾ったアイテムを鞄に詰めて帰って来た。

落ちているアイテムは他に無さそうだ。

あれから誰かがここに捕らわれた形跡も無い。


「じゃあもう1部屋行くぞ」

「かしこまりました」


もう1部屋へ向かう際に、ナズが疑問をぶつけて来る。


「どうして今日はアナさんでは無く私なのでしょうか?」


これは、アレだ。

恋愛ゲームに有りがちな選択肢だ。


 >「アナが忙しそうだから消去法だ」

 >「たまにはナズと来たかったんだ」

 >「何となくだな」


え、ええと、ここは2番だ、2番。


「たまにはナズと一緒に来たって良いだろ?

 何かを探す必要が無いんだからアナじゃなくて良い」


「そ、そうですよね、ありがとうございます」


ほら、ほら。

多分好感度が上がる音がしたに違いない。


  ──ピン、ポロロロロン♪†


「・・・・・・。私、ご主人様のお役に立てているでしょうか?」


う・・・、また難しい事を聞いて来たな。

この選択肢は間違えてはいけない気がする。


 >「役に立っているさ」

 >「そういう事を考えては駄目だ」

 >「あまり役に立っていない」


いっ、1番を選びそうになるが、多分これは地雷だ。


3番は危険牌に見せかけて、多分半分正解なのだと思う。

ナズルートに入らないための安パイといった所だ。

ナズを持ち上げたいなら2番だ、2番!


「そういう風に自分を卑下しては駄目だ。

 ナズは最初に選んだんだ。解るか?」

「ええと、ご主人様は迷宮に入るために私達を買われたと・・・」


「そうだ。

 その時商館の者からは迷宮に向かない者だが一応見るかと言われて、

 そこでお前を見付けた。

 たとえ迷宮に向かなくてもお前を選んだんだ、その意味が解るか?」

「ええっと・・・」


「ほら、魔物の部屋だ、準備は良いか?行くぞ!」

「あっ、は、はい!大丈夫で、きゃっ!」


ナズが言い掛けた時にはもう壁を触ってしまっていた。

足元がうねり、全然大丈夫じゃなかったナズが尻もちをついた。

どうせ魔法で一瞬なので、

ナズの格好が上下逆になってしまったとしても問題には成るまい。


中は先程の部屋よりは少しニードルウッドが多いかな、といった具合だ。

燃えている中で確認したが、8まで数えたら燃え尽きて消えてしまった。

替わりにミノは少なかった。


「ひ、拾って参りますね!」


転倒したナズが起き上がり、急いで駆けて行った。


「おめでとうございますー!ご主人様ー!」


何がめでたいのか判らないがナズから祝福を受けた。

何も無く祝福したならナズの頭がおめでたい。

流石にそんな事は無いだろうと思うので、

何かしらめでたい事が有ったのだ。


まだアイテムは散らばっているが、ナズが駆け寄って来た。


「どうぞ、モンスターカードです」


「おお、そりゃめでたい」

「あ・・・・・・(えへ)」


ついでにナズを抱き寄せてでた。

めでたしめでたし。


「よしよし、良い子だ。残りのアイテムも頼むぞ」

「はいっ!行って参りますね」


ウサギの部屋で手に入れたカードは結局兎では無かった。

前回も蜘蛛と言う変なモンスターカードが出て来た。

そういえばあのモンスターカード、何の効果だったか聞き忘れたままだ。

次回ジャミルに聞こう。


今回のカードは牛だった。


牛歩万里を駆けるだったっけ?

詳しく覚えていないが、俊足のスキルだ。

戦闘中に限って速く動ける不思議な効力が発動する。

何を以て戦闘と判断するのだろうか。


ダメージを与えたり食らったら?

対人の場合は?

模擬戦でも?

謎は深まるばかりだが、実際に合成してみれば判るだろう。


問題は、誰の装備品に付けるかだ。


アナは回避アップのブーツを持っている。

交換するなら回避2倍の靴にするべきだ。

ナズは現状重さを感じていないし、中衛だ。

素早く動く必要は無い。


ジャーブ?

あいつはあまり動かない。

待ち受けに特化したカウンタータイプだ。

そもそも防御スキルを持っているし、

動き回って避けるより身を挺して受けて欲しい。


ではヴィーだ。

素早く先陣を駆け、素早く避け、素早く反撃して欲しい。

現状彼女は素早い方だが、更にそれが生かされれば鬼に金棒だ。

竜に稲妻かな?炎は既に持っているし。


ではコボルトを入手したら・・・ってコボルト需要多いな。


現状に於いて別の仲買人に買取を依頼した所で、

ホドワとアレクスム両方で買い取りが掛かっているのだから、

取得効率は変わらないどころか、競合し合って自分の首が絞まる。


効率良く入手するには・・・自分で狩るか、あのコボルトハンターだ。


金を積んでまた売って貰うか、悩ましい所だ。

しかしそう何度も依頼を出すと噂も立つだろうし、

ナズが合成を成功させてしまった事で顔は割れてしまっている。

難しいなあ。


「それじゃ、帰ろうか」

「はい、またお供させて下さいね」


良かった、ナズの選択肢は間違っていなかったようだ。


家に帰り再びエミーを確認した所、探索者はLv29と成っていた。

多分ギリギリ29に成ったばかりだと思う。

惜しい。


夜に風呂を入れる際に一緒に連れて行って、

今日消費した削り賭けと滋養剤、強壮剤補充のために、

ボスを3匹も倒せば上がってくれるだろう。

∽今日のステータス(2021/10/19)


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv45

  設定:探索者(45)遊び人:火魔法/MP中(35)

     魔法使い(37)英雄(37)博徒(30)武器商人(11)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv40

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv39

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv35

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv36

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 探索者 Lv27


  ↓


 ・フジモト・ユウキ 人間   男 21歳 探索者 Lv45

  設定:探索者(45)遊び人:火魔法/MP中(35)

     魔法使い(37)英雄(37)博徒(30)武器商人(11)


 ・ナジャリ     ドワーフ ♀ 16歳 鍛冶師 Lv40

 ・アナンタ     猫人族  ♀ 20歳 暗殺者 Lv39

 ・ジャーブ     狼人族  ♂ 28歳 騎士  Lv35

 ・ヴィクトラ    竜人族  ♀ 12歳 竜騎士 Lv36

 ・エマレット    狼人族  ♀ 19歳 探索者 Lv29



 ・収得品


   モンスターカード  牛

   ウサギの皮 ×  57

   ブランチ  ×  20

   皮     ×  11



 ・異世界36日目(昼前)

   ナズ・アナ31日目、ジャ25日目、ヴィ18日目、エミ11日目



 ・トラッサの迷宮

  Lv   魔物       /    ボス

  7 ミノ         /  ハチノス

  8 ニードルウッド    /  ウドウッド

  9 スローラビット    /  ラピッドラビット


 ・ホドワの迷宮

  Lv    魔物       /    ボス

  1  ミノ         /  ハチノス

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