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異世界迷宮の追従を  作者: えぁりん
♭番外編    私の迷宮冒険録
134/394

    ∮011 レベル6

私達は情報収集や仲間の募集も兼ねて酒場に通うようになりました。


何時もはラティさんと3人での行動ですが、この時ばかりは旦那様と二人です。

ですので、夫婦の時間をちょっとだけ持てるようになりました。

帰り道では酔った勢いに任せて強引にキスを迫っちゃったり!


・・・とは言うものの、まだまだその先へとは行けません。

流石に外でなんて嫌ですし、宿にはラティさんが居ます。

2部屋取るにはまだちょっと収入的に寂しいのです。

勿論酒場も毎日という訳には行きませんので、10日に1回程度でした。

トホホ・・・お仲間が増えればもっと深層で狩りができるようになるそうなので、その時までの辛抱ですか。


お仲間を集めるには、酒場や探索者ギルドに通わなければなりません。

その酒場代を捻出するには、沢山魔物が倒せるようにならなければなりません。

そのためには仲間を集めないと・・・って、アレ?ダメじゃないですかコレは。

グルグル回っていますよ?


そうは言っても懐事情的に今はこの位しかできる事が無いようですので口出しはできません。

少しだけ旦那様との時間が持てただけでも感謝しませんと。

ゆっくりですが、段々と私達もお互いの距離を縮めて参りましょう。

今日もまた、帰り道の暗い所でギュッと抱きしめてくれたので私は上機嫌なのでした。


夜のマルアドの道をゆっくり歩いて宿に戻ります。

もうじき宿が見えて来るので、繋いだ手を強く握ると旦那様も握り返してくれました。

酒場に行く僅かな時間は貴重な夫婦の時間なのでした。


ラティさんは懐事情の事もありますし、何より騒がしい所は苦手なのだそうです。

初めてここマルアドの宿で出逢った際は、騒がしい食堂でお一人黙々と食事をされていたのでもう少し凛としている方だと思ったのですが、

ずっと一緒に生活をしてきて何となくラティさんの性格が分ったような気がします。

実力的にはガンダルさんよりもありますし、ちゃんと必要な情報を集めて来てくれますのでしっかりしている方なのですが、

いかんせんご自身に自信が無いというか・・・勿体無いですよね?


私としましても、折角できました同志ですので大事にしませんと。

家にはまだまだ本は沢山ありますので、どんどん読ませて虜にしちゃうぞ作戦です。

本だけでしたら父との手紙に添えて送る位は出来るそうですので、今貸している1冊が終わりましたら次を送って貰いましょう。


「あっ、お、おかえりなさいっ。どっ、どうでした?」


そして、自分達の部屋に戻るとラティさんはいつも通り貸した本を読んで待っているのでした。


「うーん、まあいつも通りかな。

 俺たち位の実力者のグループは大人数しかいないし、ソロや二人位の探索者はやっぱり強い奴しか居ないなあ」

「そっ、そうですか・・・」


「でもなんか、仲良くなった奴から良い話を聞いたんだ。

 最近チビとノッポの凸凹組が探索者ギルドに現れて、どうも俺たちと同じくらいの所を回ってるみたいな話を聞いたよ」

「そっ、そうですかっ!」


「ここの宿では見掛けた事が無いから、別の所を取っているのか来たばかりだから野宿なのか判らないけど、

 ラティもギルドで見掛けたら声を掛けてみてくれないか?」

「わっ、わっ、分かりましたぁ」


朝に探索者ギルドで情報収集するのはラティさんの役目です。

いつも朝の食事前に募集掲示板の確認と、アイテムの売却をしてきてくれます。

私達の税金がお互いに3万ナールで済む事で金銭的に余裕があり、ある程度の貯金も出来ました。

その日暮らしからは一先ず脱却して、今は税金分を考えながら装備の更新が目下目標です。


私の装備は更新する必要が無いので、それも大きいのだとか。

本来私に必要な分が旦那様に行きますからね?いろいろと揃えて下さった父には感謝です。



   ***



その例の二人組を見つけたのはそれから3日後でした。


最近私達が狙っている魔物はコラーゲンコーラルという、すばしっこくてぴょんぴょん跳ねる魔物です。

ラティさんのレベルに合わせて私達も階層を進めていますが、現在は適正レベルより一つ落とした7階層なのです。

次の階層からは魔物の数が増えるらしくって、ガンダルさんももう1人は居た方が良いと言いますのでここが適正なのだとか。


出て来る魔物はコラーゲンコーラルとナイーブオリーブに時々コボルト。

稀にグリーンキャタピラーも出るのですが、2匹以上出る事はまず無いので安心です。

大変な魔物が出て来ないために稼ぎやすくって、私達のような駆け出し探索者には人気があるようです。


いつもは入り口の混雑を避けて中間地点よりもっと奥で狩りをしているのですが、

今日はたまたまラティさんが朝の日課である探索者ギルドでの情報収集に時間がかかったらしく、ちょっと遅れての出発でした。

中間のお部屋まで半分位の位置でしょうか、例の二人はそこで戦っていました。


ここでは魔物が一度に3匹が出るので、

2人パーティならば当然1人が2体を相手にするのですが

別グループの魔物が合流してしまったようで、前後に挟まれて1人が3体を相手にしておりました。


「くっそ、俺も焼きが回ったのか」

「アンタが選り好みしてるからだろうっ!」

「そんな事言ったってよ!」


男女で種族もバラバラ、背丈もチグハグなお2人組のパーティはどうやら苦戦しているようです。


迷宮での戦いには基本的に手を出さないと言うのが暗黙の了解らしいのですが、これはちょっと宜しくない状況では?

ああっ、男性の方が足を掛けられて転倒してしまいましたよ?


余り近寄ると魔物達がこちらも敵とみなして襲い掛かって来るらしく、

それは泥棒行為になるので他人が戦っている際は遠巻きに見守るだけなのです。

それにしたって大丈夫でしょうか。


もうひとりのメンバーの方が囲んでいる魔物を盾で押し払って、

何とか男性を立て直したように見えます。

が、今度は女性の方に5匹が付いて袋叩きに遭っています。


「ちょ、ちょっと、あれはどうなんでしょう?」

「うーん、厳し目みたいだね。勝てるのかもしれないけど、時間が掛かりそうだ」

「あ、あ、あのっ、あの装備でしたら、もう結構しんどいと、お、思うのですがっ」


「ですよね・・・」

「一応声をかけてみようか?」

「しっ、死んでしまったら装備は私達のものですがっ」


ラティさんが怖い事を言い始めました。


「うーん、それは流石に。目の前で助けを求めている人が居るなら救ってあげたい」


ガンダルさんは流石です!騎士の鑑ってやつですよ?

騎士を志しているのも納得の優しさですよね。


「おーい、そこの二人ーっ!囲まれているようだが平気かーい?

 アイテムは要らないから手伝おうか―?」


ガンダルさんが声を掛けると、あちらの女性が応答しました。


「誰だか知らないが宜しく頼むーッ!」

「姐さん、俺なら大丈夫だから!」


相手方のリーダーと思しき女性の方が許可を出したので、

私達は魔物を攻撃し始めました。

今度はこちらが挟む番ですよ?


私達3人でダッシュして女性を囲っていた魔物3匹を引き剥がします。

ラティさんが1匹を、ガンダルさんは2匹を引っぺがして、

私の方に1匹飛ばしてきました。


ナイーブオリーブを盾で押さえ付けながら、壁に追いやっておきます。

先程の女性は2体が相手になって防衛に徹しているようです。

男性の方はと言うと、ちょっと足元がおぼつかないのか、剣を振る扱いが大振りで厳しそうですよ?


「心安らまば平癒へいゆ、心和まば治癒の糧、

 きさげを集めあやまち癒せ、手当て!」


もう2回位手当を施して差し上げましょうか?

──手当!──手当!


「おおっ。誰だか知らねーがあんがとよ」

「回復持ちが居るのかい!済まないねっ!」


その後女性の方にも手当てを1度施して差し上げまして、

ガンダルさんとラティさんが1匹ずつ倒し、私の抑え込んでいる魔物を囲んでくれました。



   ***



「どこの誰だか知らないが、助かったよ」

「悪ィな、おっと、約束通り報酬は無しだ」


助けられたのに態度が横柄な方ですね?

こういう時は多少の分け前でも差し出すものではないでしょうか?

ガンダルさんが最初に約束した訳なので仕方ありませんが。


「ああ、無事で何より。それより2人は厳しくないか?」

「そうなんだよ、私は早く探索者の居るパーティに入れて貰おうって何度も言ってるんだけどさ、コイツが・・・」


「だってしょうがないだろ!掲示板に出ていた募集主はどいつもコイツもみんな弱そうなのばっかりで、頼りになりそうに見えないんだから」


「という有様でね。どっちが頼りにならないんだかお恥ずかしい限りで」

「そうなのかい?僕たちでは駄目かな。丁度一緒に行けそうな人を探していたんだけど。

 君たちの話も酒場に流れて来ていてね、丁度探していた所なんだ」


「そうなのか、噂にねえ・・・」

「俺達の強さが巷に流れている訳だ、いやー照れちゃうねぇ」


「ちょっとバティは黙っておきっ!

 ・・・て事はアンタがリーダー・・・探索者かい?」

「いや、俺は戦士だ。戦士のガンダル。こっちが妻のシャムシー、僧侶だ。

 それであっちに居るのが探索者のラティ。おーい、ラティ」

「はっ、はいぃぃぃっ!」


さっきまで横で戦っていたラティさんがかなりの距離を取って遠巻きで見ていました。


・・・ええっ?

そんなに警戒しなくたって宜しいじゃないですか。

私が手招きして呼ぶと、観念してこちらにやって来たようです。

お礼はラティさんも受ける権利がありますよ?


「なんかコイツも頼りになりそうもねーな」

「何て事言うんだい!今助けて貰ったばかりだろう」


「そんな訳で、この辺りの階層を潜れそうな人を探していたんだけど、

 良かったらうちのパーティに入らないかい?」

「ああ、こちらもこの階層位のパーティを探し──」

        「いや、それとこれとは話が別だ。

 探索者の判断ひとつでパーティが消えちまうんだからな。悪いけどパスだ」


「ええーっ、そんなぁ。ラティさんは頼りになりますよ!」

「ああ、こう見えても彼女はちゃんとやっているし俺たちは助かっているけど、・・・無理には誘わないさ。

 早く良い相手が見つかると良いな」


「あ、ああ。そうだな。じゃ俺達はこれで」

「ちょちょっと、何アンタ勝手に決めてんだい、こっちの女性の動きを見てただろう?」


何やら揉めているようです。

トラブルがありそうな方はちょっと・・・。


「で、では俺たちはこれで。行こうか、シャム。ラティー」

「おう、さっきは済まなかったな、じゃーなー」


二人の横を通り抜けて、私達は人の少なそうな奥へと進んで行きます。


「あっ、あのっ、わ、私・・・」


ラティさんが落ち込んでしまっているようです。

先程の男性の失礼な言い方のせいでしょう。


「大丈夫ですよ!ラティさんの事は頼りにしていますので!」

「うんうん、ラティはしっかりやってくれてるよ。いつもありがとう!」

「そ、そうでしょうかっ・・・」


ガンダルさんにバンバン肩を叩かれて、ラティさんが先行を開始しました。

迷宮や魔物相手なら堂々としているのに、

人が相手になるとダメになっちゃうのは困りものですね。

やっぱり追加のパーティは私達が見つけませんと。


その後一日は特に問題も無く、今日の稼ぎもちょっと少ない位ですが十分確保できましたので私達は宿に戻って休むのでした。


「今日の朝であった方は・・・何て言うか凄かったですね」

「普通は最初の仲間は同郷の友人や恋人と組む事が多いんだけど、

 あの二人はどうやって知り合ったのか気になっちゃうよね」

「べ、別々の種族で、おっ、お二人ともたた、探索者ではない様でしたっ。

 こ、ここまでずっと、パ、パーティ仲介を利用しておられるのだとっ」


「ええっ?そうなんですか?」

「よく判ったね?ラティは」


「あ、あの、リュックですっ」

「そうか、二人とも確かにリュックを持っていたね」

「リュックがあると探索者じゃないんですか?」


「あー、そうか。ええとね?──」


なるほど、探索者になってレベル8ともなればリュックが無くとも取得したアイテムをしまって置けると。

そろそろリュックを担いで戦う事が困難になる階層なので、できるだけ手ぶらが良いのだとか。


「じゃああちらの方々はずっと鞄を背負ったまま戦っておられるのですか?」

「い、いえっ、あ、あの、流石に戦う時は床に」


「置いてありましたっけ?」

「は、はいっ、ありました」

「そうなんだ、俺は魔物ばかり見ていて気が付かなかったよ」


流石はラティさんです、良く見ていますよね。

喋り方で結構損をしているとは思うのですが、探索者と言うか、心構えは確かなものだと思います。


「あ、あのぅ・・・私」

「ラティの実力が判らない人たちだった、それでいいじゃない」

「そうですよ!ラティさんのせいではありませんからね!」


「あっ、あっ、あっ・・・ありがどうござ゛い゛まずぅ・・・」


あ。またラティさんがべちょべちょに・・・。



   ***



翌朝、ラティさんが探索者ギルドで求人票を見つけて来たようです。

募集主は二人組で8階層から9階層を行ける相手を募集しているのだとか。

昨日会った二人組とは7階層で出会っておりましたので、また別の方のようです。


私達のパーティはラティさんが8レベルですので8階層に行っても問題はありません。

私の経験不足を考慮して一階層落として頂いているだけでしたので、

私が気合を入れて行けば大丈夫なはずです!・・・多分。


「へぇ、良いんじゃないかな?次の8階層からは一度に出て来る魔物も1匹増えて4匹になるから、

 2人増えたら1人1匹とシャムが余るからこっちが有利になるよね。

 ついでに8階層に行こうじゃない」

「で、では返事をしに行ってきますっ」


「まあまあ、今から返事を書いたってどうせ読まれるのは夕方だよ。ひとまずは食事をとってからでも良いんじゃないかい?」

「で、では、おっ、お食事をとりましたらっ」

「皆さんで一度向かってみましょう」


こうして私達はいつもの時間通りに支度をすると、今日は迷宮へ直行ではなくって探索者ギルドの方へ顔を出す事になりました。

ここしばらくずっとラティさんにお任せをしておりましたので、探索者ギルドも久しぶりです。

と言いますか、この町の探索者ギルドはラティさんが仲間になって以来では無かったでしたっけ。

あの時は私もガンダルさんと一緒によくここに求人票を見に来たものです。


もう2年ですか・・・。


懐かしく思いながらも私は入り口付近に置かれた丸テーブルの席に座って、ラティさんとガンダルさんの手続きが終わるまで待っておりました。


入口から入ってくる昨日の二人組。

・・・あら?

ちょっとこれはもしかして。


私が会釈して大きい女性の方に挨拶をすると、あちらも会釈をしてくれました。

男の人の方は・・・むーっ。態度が悪いですよねっ!

よくあれでパーティが成り立っている物だと感心致します。


「お待たせシャム。じゃあ行こうか」

「あ、あの、ガンダルさんと相談したのですがっ!

 あ、あ、相手方が8層を希望っされていますので、きょっ、今日は8層でか、か、肩慣らしと言いますかっ」

「そうですね、やってみましょうか」


「ラティのレベル的には行けない事はないはずだからね。なるべくシャムに2体回って行かないように調整してみる」

「あ、あの、私ならに、2体は行けますのでっ」


「そういえばそうだね、ラティは強いもんなあ」

「思えば、最初からラティさんはお1人で2体同時の相手されておりましたよね」

「そ、そ、そうでしょうか、あは・・・アハハ・・・」


「あー、君達」


入口の方で話し合っていると、ギルドの職員さんから声を掛けられました。


「私達ですか?何か御用でしょうか?」

「先程求人書類に顔合わせの希望を書いた・・・ええとガンダル、ラティ」

「はい!」「あっ、あ、あの・・・(ハイ)」


「間違い無いな?」

「ああ、はいはい。間違い無いです」


「お相手があちらで待っているので面談してくれ」

「ええ!?もうですか?」

「はっ、早いですねっ」

「・・・もしかしてさっきの」


他に該当しそうな人達なんて居ないじゃないですか!


「あれ、アンタら昨日の・・・」

「ハァー?わざわざ8階層以上に指定したのにっ」


「あぁ、君達だったのか。何だったら取り下げてくれて結構だ」

「そうですよっ、私達は8階層でも9階層でも行けますので嘘なんてついてませんからっ!ね?ラティさん?」

「えっ?あ、あ、あの、・・・(ハイ)」


「いや、そういう訳じゃないんだよ、すまないね。

 こいつはちょっと口が悪くってさ。

 アタシはチリー、ジョブは海女だ。折角の縁なんだしひとつ宜しく頼むよ」


「まだ入るって決めた訳じゃねえからな、お試しだ、お試し」

「バカッ!それで昨日みたいになるのはもうまっぴらごめんなんだよ」


むむむーっ。

男の人はやっぱり横柄な態度のようです。

そして、どうやらこちらの女性もいろいろ苦労が多そうです。


「いや、うーん、そうだな・・・。シャムやラティはどう思う?」

「ラティさんに失礼なこと言わなければ大丈夫ですよ?

 ねぇ?ラティさん」

「えっ?あ、わ、私ですかっ?あ、あの、ハイ、そうですね」


「ああ、こいつが失礼な態度を取ったらアタシから謝らせるよ。

 ホラ、バティも頭下げてっ」

「うわっ、ちょ、ね、姐さんっ!」


「で、8層か9層に行くパーティの募集と言う事だったみたいだけど、本当に8層行っちゃっていいの?」

「俺なら平気だぜ!8層だろうが10層だろうが、一対一なら余裕で倒せるからな!」


「バカッ!相手は4匹なんだよ!アタシ達じゃ無理だって何度も言ってるだろ!いい加減にしないとアタシもうアンタと組むのは降りるよっ!」

「ええっ、そりゃねぇっすよ姐さん!」


「そこまで言うのであれば、腕の方には自信があるんだな?」

「おう、ちょっと良いパーティに巡り合わなかったが、

 6層程度の魔物なら何でもないぜ。

 11層までの敵ならあちこちで一通り戦った事があるから、

 何が出て来てもへっちゃらだ」


「あ、あ、あ、あのっ!・・・か、か、階層が上がれば魔物の攻撃方法が増えると言うか、変わると言うか・・・」

「そうだ、ラティの言う通り、低階層で余裕に戦って来た相手だって深層では魔法を使ったりスキルを多く使ってきたりするから、

 特に次の8層から出て来るニードルウッドは魔法が怖いっていう話だよ?

 失礼ながら君は魔法を食らった事は?」


「はぁ?ニードルウッドが魔法を撃って来るって話は聞いた事ないぜ」

「あ、あ、あの、ニードルウッドはよっ、4層以上で水魔法を撃って来ます・・・。

 じゅ、11層では腕を振り回しながら唱えて来るのでっ、・・・た、大変です。

 みっ、ミノは9層からととと突進の前動作が無くなりますので、やっ、やっぱり大変です・・・」


「へーっ!そうなんですの?流石ラティさんはよく知っていますね?」

「たた、探索者ですのでっ!情報は・・・・そっ、その、大事と言いますか・・・」

「とまあ、うちのラティはこれで優秀なんだ。ラティを悪く言わないのであれば加入を認めるけれど、どうする?」


「バティ!」

「あ、・・・ああ。すまなかったな・・・」


不本意そうにバティと言う男の人が頭を下げました。

本当に申し訳なくなっているとは思えませんが、ラティさんの重要性が解って貰えるなら良しとしましょうか。


「本当かい?助かるよ、ホラ、この通りこいつが我儘でさ。

 断られることが多くって」

「はぁ?俺は命を預けても平気なパーティに入りたいって思ってるだけで、

 別に我儘なんて言ってねーよ!みんな頼りなさそうに見えるだけだっ」


私から見たら、こちらの方の方が頼りなく見えるのですが。

見知らぬ魔物相手に無謀に突っ込んで行きそうで・・・。


「ではこちらのパーティでは俺とラティの指示に従ってくれるね?」

「・・・まあ、しょうがねえな」

「コラッ!もういい加減にしな!バティが追い出されたら、もうアタシはこっちの人達に付いて行くから!」


「じゃあまあ、お互いにお試しで組むと言う事で」

「おう、そういう事だな」


「はぁー」「ふぅー」


私と同時に背の高い女性はため息を吐いたので、顔を見合わせてしまいました。


「あ、自己紹介しますね。私はシャムシー、僧侶です。

 一番後から迷宮に入るようになったので知識は余り無いのですが、どうぞよろしくお願いします」

「ああ、アタシはチリー、海女のジョブになってる。

 実家は食堂をやってるんだけどウチは兄弟が多くてね、アタシの居場所が無い感じで探索者になったんだ。

 宜しく、ええっとそっちの」

「らっ、ラティとも、も、も申します・・・。れっ、レベル8のしがない探索者です・・・」


「ラティさん!」

「はっ・・・ハイ、な、ナンでしょうか」


「もっとシャキッとしないからあっちの男の人に舐められるんですよ!」

「そうだよ、レベル8なら十分8層で戦えるじゃないか。

 いいかい?バティに何か言われたらアタシに言うんだよ?」

「は、はいぃぃ・・・」



「俺はバティスって言うんだ。見ての通り狼人族で獣戦士だ」

「へぇ、獣戦士なのかい。どっちも探索者じゃないんだな」


「俺は強くなりたいんだ、探索者みたいな弱ったらしい仕事はしない主義よ」

「でもその探索者が居なければ迷宮でパーティは組めないよ?」


「だから強い奴等が要るパーティを探してたんだがな・・・」

「ええっと、君は色々知らないようだから言わせて貰うけれども、

 強い探索者が居るパーティに空きなんて無いよ?」


「探索者じゃなくって、えーっと、冒険者っていう奴?がいるパーティならよ」

「それは無理だろう」


「どうして」

「既に強い仲間がいるからだよ?」


「俺だってそこそこやれるぜ」

「冒険者は探索者がレベル50になってやっと就けるジョブなんだよ。

 そこまで育った仲間がいるから、皆迷宮は40層くらいで戦った事がある人たちばかりだ。

 7層の魔物に囲まれて苦戦してる君達ではちょっと難しいと思うよ?」


「俺だって40層に行けばそんくらい──」

「2人でかい?そこでは魔物は基本的に5匹が一度に出るけれども」


「だからそのために強いパーティリーダーがいる所に入ってだな」

「そんな所に行くパーティに空きなんて無いって。6人で戦ってやっとなんだから」


「だからそこに俺が入ってだな」

「低層から長年一緒にやってきた仲間ならともかく、

 加入したばかりで強さも判らない者を40層には連れて行かないんじゃないかい?」


「じゃあその低層からゆっくりと上がって行ってだな」

「40層行けてる人がわざわざ低層階での経験を必要とする人を連れて行かないと思うんだけど」


「あー!じゃあ、もうどうすりゃいいんだよ!」

「低層でアタシ達の実力にあったレベルの探索者がいるパーティに入れて貰って、地道に稼いで強くなる、それだけだって何度も言ってるだろうがっ」


「くっ・・・」

「バティ君、強い人たちの仲間に入れて貰って、楽に経験を積もうと言うのは無理なんじゃないかな?」

「そうですよっ、逆に私達が40層に行けるようになった時に、7層までしか戦った事のない人、入れたいって思いますか?

 ラティさんだってお断りしますよ、そんな人。ねぇ?」

「そっ、そ、そうです・・・かね?そっ、そうだと、お、思います」


「うっ・・・」


こうしてバディスさんは皆さんに理詰めにされて返事ができなくなり、私達の仲間に加わる事になったのでした。


私達の冒険はこれからだ―みたいな流れですよね?

違うんですよ、ガンダルさんが騎士に成るまでです。


バディスさんがラティさんに意地悪な事を言わないかどうか、ちゃんと監視しませんと。

そう思って決意の目でチリーさんを厳しい目で見つめると、チリーさんも頷いてくれました。


ともかく、これで私達は余裕を持って8層へ挑戦できるようになりましたので、

魔物の数が増えれば収入も増えますし、これでようやく旦那様と二人きりの宿を借りる事ができますね!

レベル6(ガ9 ラ8 チ5 バ6)3年目春



後書きのあとがき


本当は23話あったのですが書いてて苦痛だし読み返しても苦痛だし、

もういっその事ここで終わらせちゃっていいかなと思った結果ここで終了です。

反応を知りたくて某所で先行公開していたのですが、

実際人気無さそうでしたし切り上げて正解だったと思います。


両方で見てくれた方もいたようなのですが、

同じ世界線だと全く気付いてもらえませんでしたね?


じゃあこっちに持ってくること自体やめたらと言う話なんですが、

コラボしちゃってる手前そういう訳にも行かない事情がありまして。

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― 新着の感想 ―
[気になる点] 始めはルティナ枠かと思ったら、話が進むに連れ奴隷商に居た僧侶か、モンハウで全滅してたパーティーか、オレンジ名かと思っわれたラティも優秀だしジャーブー外して2人加入? 今年なのか去年な…
[良い点] 普通の冒険者パーティのレベルがわかり興味深かった。 それなりに面白くはあった。 [気になる点] 甘いもの食べたいのに煎餅を無理やり食べさせられているような感じ。 [一言] 外伝にしては長い…
[一言] こちらの結末も読みたいです。 (本編完結後の後日談として数年後の話しにすればどうでしょう)
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