さくらの少年
桜ばかり
降ってくるから
今日で最後の
登校日だったから
校舎に背を向けて
歩きだしたかったのに
もう、最後の日だったのに
それすら叶わなかった。
みんな、泣いてくれてたのに
目の前にいるのに
写らなくて ごめんねと
一緒にいるつもりだったのに
自分だけ写真だったから
いるつもりだったのに
今日で最後の登校日
親は来てくれたのに
泣いてばかりだったから
目の周りが赤かったから
なんども なんども ごめんねと
繰り返すけれど
絶対に声が届くことは もうなかった。
桜の花びらが風にのって
散っていくのを
みんなはキャッチすることに
夢中だけれど
1人だけ大事そうに
抱えてる額縁には
僕の写真
いつか撮ってた
いつだったか撮ってたような気もする
あんまり笑わない方でごめんね
笑ってない写真だったから
少しは笑っておけばよかったと
今更 思う。
今日で最後だったから
みんな みんな 別れてく。
それぞれの道に 別れてく。
僕の写真を持った
女の子
親と一緒に
帰っていった。
その背中を
眺めて終わる 僕の道
桜と共に
散っていく 僕の道
ありがとうと
呟くけれど
絶対に声が届くことは もうなかった。
桜とともに散っていく
15年間も散っていく
思い出になって散っていく
過去になって散っていく
そして僕の記憶も
そこで 途絶えた。