表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

4/35

第4話、二日目は現実逃避しながらの畑作り、そして猪肉の実食

こ〜こ〜は〜夢の中〜

今ごろ〜お店で〜熟睡中〜

だから〜起きるんだ〜

よ〜し〜落ちれば目が覚める〜


そんな歌詞を口遊くちずさみながら、崖から飛び降りる。


──いえ、そんな勇気ありませんでした…


猪に襲われて痛かった。その時点で夢じゃないと分かっている。


だが死ねばどうなる?

もしかしたら元の世界に戻れるんじゃないか?


その考えが脳裏のうりに浮かび、つい身体が動いてしまっていた。


意気地なしで勇気がなかったから、結果止めてしまったけど…


崖から離れ、本拠地に帰る。


本拠地と言っても、『特殊サバイバルキャンプコーナー』だ。


敷かれた人工芝に、売り物で飾られた棚々が並ぶ場所。


そこに設置した組み立て椅子に座り、晴れた青空を見た。


この森に来てから丸一日。

飛行機はおろか、知っている星座も見られなかった。


そう、知っている星座がなかったのだ。

それはつまり……


…………。


よし!畑でも作るか!


現実逃避を決め込んで、俺は長期間を生き抜くための努力を始めた。


コーナーにあった畑作りセット。

農具、肥料、種、種芋と、一通りの物が揃っている。


それを説明書通りに習いながら、畑を作ろうと決めた。


『木の少ない土地を見つける』


『土を柔らかくする』


『順番通りに各種の肥料を蒔く』


『水と合わせながら、土を馴染ませる』


『指示通りに種、種芋を植える』


簡単な方法ではこれが一番だった。


木の少ない場所は、まさに自分がいる場所である。


あまり木は生えてなく、低い草木が生い茂っているくらいだ。


俺は中斧を手に取って、まずは伐採ばっさいから始める。


根っこはスコップで掘り返し、固い土はくわたがやした。


本を見ながら肥料と土を混ぜ合わせ、水を軽くく。


じゃがいも、人参、玉ねぎと、各野菜の種と種芋を植えて、目印を立てる。


『じゃがいも』

『人参』

『玉ねぎ』


自然と選んだ野菜だったが、目印に書いた名前を見て、ふと納得してしまう。


あ、これカレーの材料だったわ。

俺はカレーが食べたかったんだな。と、


コーナーにはレトルトカレーは勿論、カレーのルーもある。


だが一度食べてしまったら、もう補充は効かない。


俺はそれを大事に取っておくと決めた。


何かの記念日だけに食べよう。


そう心に誓って、野生動物に備えるように、コーナーにあった保管ケースに入れる。



────。

────。



俺は昨日から何も食べていない。


夕食と朝食を抜いた状態で、今の俺は立っている。


だから限界だった。


故に挑戦しなければならない。


自然の恵みを口に入れる挑戦を。



『猪の生肉500g』



干し肉とは別に、すぐに食べる用と分けておいた猪肉だ。


火の準備は整っている。

鉄串もあれば、皿もあった。


あと必要なのは、それを焼いて頬張る覚悟だけだ。


昨夜は決め切れず断念したが、もう腹の虫が限界までに鳴り響いている。


コーナーにある食料は長期賞味期限ながもちで、食べるのがとても惜しい。


非常時を除いては、現地で手に入った食べ物を食べなければと思っていた。


覚悟を決め、俺は猪肉を鉄串に通す。


作った肉焼き場に鉄串を刺して、焼き上がるのをじっくりと観察した。


ジュ〜〜


肉から漏れた肉汁に、わずかながら食欲がく。


黒く焦げついた辺りで、鉄串を火から離し、その匂いを嗅いだ。


生臭さはなく、普通に肉の焼けた匂い。


これなら食べられる。そう気持ちを軽くして、一口噛み付いた。


「…………」


知っていた。味が薄い。そして獣臭い。


何も調味料をつけていないんだ。

そりゃあ肉の味しかしないだろう。


塩はあるが取っておきたい。別に食べられない訳じゃないんだ。貴重な塩は保管しておく。


そうして俺は肉の味しかしない焼肉を、腹一杯に食べた。

『猪の生肉500gを使用した』


『獣臭い焼肉が完成した』


『体力が回復した』

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ